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七天勇者の異世界英雄譚  作者: 黒鐘悠 
第一章 Welcome To Anotherworld
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第6話  チームワーク

剣が舞う。剣閃が一つ光る度にゴブリンの首が一つ飛ぶ。悠斗達がズタボロになった理由である数の暴力を物ともせず、ただ冗談の様に一匹、また一匹と消されていく。ゴブリンにとっては悪夢の様な光景だろう。最後の一匹となったゴブリンが怒声をあげて一人でも道ずれにしようと半ば瀕死の悠斗に飛びかかる。が…


「やらせるか…よ!!」


グオオンと鳴りそうな勢いで大輝が大剣を振るい、ゴブリンは両断される。


全身に切り傷や打撲傷を受け、致命傷こそ避けたものの満身創痍の悠斗に双葉があわてて<キュア>をかける。そこで初めて悠斗達を助けた人物を見やると皆一様に驚くが、特に驚いたのは悠斗のようだった。


先ほどまで多数のゴブリン相手に無双し、悠斗達を助けたのはストレートにおろした髪を途中で止めた白刃に次ぐクラスの中心人物秋雨凛紅あきさめりんくであった。


秋雨凛紅はクラスで学級副委員長。学校で生徒会副会長といった役職に就いている真面目な少女だ。さらには剣道部のキャプテンも兼任していてその剣の腕は全国常連、中学の公式戦は三年連続制覇といった素晴らしいものだ。


悠斗や大輝達がそんなことを考えていると、不意に凛紅が話しかけてくる。

悠斗に。


「悠斗、あんたいったい何しているの?たかがあの程度の奴らによってたっかてボコボコにされて…」


「う、うるさいな…僕だってまだ鍛えてはいるし素振りもやっているけど君みたいにあんな戦い出来るわけないだろ?」


ま、そうでしょうね。と笑う凛紅を見てあぽーんとする双葉。彼女の頭の中は「え、なにこの人達仲良さげなんですけど」で埋まっているだろう。


それも無理はない。唯一の共通点といえば剣道位だが悠斗は幽霊部員であまり剣道部に来てはいないし、実力も天と地の差だ。

学校で話しているところもみたことない。そんなふたりがいきなり当たり前の様に話始めたのだから。


「ん、どしたの安木さん?そんな変な顔して?」


「あ、あのお二人ともあまり話すところを見ないのであまり仲がよくないないのかと思っていまして…」


「二人って僕と凛紅のこと?ああ、確かに学校ではほとんど喋らないからねー」


あははーと笑いながらさりげに凄いことを宣う悠斗。そう彼らの学校では三年の付き合いでありながら呼び捨て出来る者など元々一人しかいなかった。

そのあまりにも凛とした雰囲気と美しさ故に先輩ですら、秋雨さん頑張っても秋雨、としか呼べずにいた。だから凛紅を名前で呼べる者など勇者扱いで、ましてや呼び捨てにできるやつは勇者通り越して英雄扱いなのだ!が、思いもよらない所に英雄登場である。


悠斗の凛紅呼び捨てに再び大口を開けて唖然としていた双葉に呆れた様子で凛紅が話しかける。

「私もね普通に話しかけてくればいいって言ってるのに悠斗は『そんなことしたらほかの人たちに殺される』っていって断るのよ」


「と、とにかく!助けてくれてありがとう凛紅」

「どういたしまして」


「もし良かったら一緒に来てくれないかな。凛紅みたいに強い人がいてくれると心強いしね!」


「も、もちろんよ。あんたなんかがいると双葉ちゃんが怪我しそうで怖いし」


若干頬を朱に染めながら了承する凛紅と、トンでもない事がトントン拍子で決まったこの状況に大輝と双葉は三度あぽーんとする。こうして《剣士》三人、《支援術士》一人という素晴らしい脳筋パーティーが出来上がるのであった。










とても高く、樹齢百年はいっているであろう木々が覆う森に剣の音と悲鳴、怒号がとびかっていた。悲鳴や怒号の正体は悠斗達が屠ってきたゴブリン達だ。

凛紅が入ってから更にパワーアップした悠斗達パーティーは続々と襲いかかってくるゴブリンを倒していた。


「安木さんは下がって回復の準備を!大輝、僕と一緒にタンクを頼む!凛紅は隙を見て特攻!」


「「「おう(はい)(了解)!!!」」」


今度の相手はゴブリン二匹とホブゴブリン一体。

通常種よりも大きな体躯を持つホブゴブリンを膂力のある大輝が正面から相手取り、隙を突いて凛紅がトドメ。ほかの通常種は悠斗が倒す作戦だ。

現状、回復以外の戦力としてはあまり役に立たない双葉は少し離れたところで現場待機が望ましい。

だが、少しでも悠斗達の役に立ちたいと志願した彼女の意思を尊重し、魔法による援護で妥協した。


ゴブリンの攻撃を悠斗が革のバックラーで防ぎブロードソードで弾く。そこへ双葉が魔法を放つ。

「【光よ来たれ、輝きを弾丸へと変えよ】、『ライトスピア』!」


光魔法Lv1『ライトバレット』。魔力と言う今まで自分たちにとって無縁であり、神秘でもある力から生まれた光の弾丸がゴブリンに殺到し、ゴブリンの体を穿つ。

ゴブリンは悲鳴をあげながらも生へしがみつこうと双葉に飛び掛かった。

咄嗟の事で反応しきれなかった双葉はぎゅっ、と目を瞑ってしまった。

迫る死の刃に、それは致命的。だが、彼女に冷たい鈍色は届かなかった。


「させないっ!!」


まるでアニメやマンガのような声をあげ、双葉に飛び掛かるゴブリンを斬りつけて止めを刺す。

既に一体は悠斗が屠った。

今ので今回エンカウントしたゴブリンは仕留めたことになる。


「安木さん、大輝達のカバーにまわろう!」


「は、はい!あ、あの、ありがとう、ございますます!」


「どういたしまして。さあ行こう!」


敵を倒して、間髪入れずに悠斗は双葉にカバーに回るように言った。

未だ死にかけた恐怖が抜けきっていない心優しき少女には酷だが、そこで躊躇って大輝や凛紅に何かあれば、後悔してもしきれない。

幸い、双葉も文句を垂れることなく、悠斗の指示にしたがった。


大輝と凛紅vsボブゴブリンはボブの優勢かに見えた。もともとゴブリンなので力は強くボブという上位種なのでパワーに特化し二メートル近くある身長と百キログラムはある体重から繰り出される攻撃は、強力だ。しかし、これを大輝は正面から受け止めていた。本人達は知らないが、じつは大輝達には異世界転移ボーナス的なやつで身体能力に補正がかかっている。

しかし、それを含めてもボブゴブリンの攻撃を正面から受け止める事が出来る大輝は凄いと言える。


「大輝、一旦下がって攻撃の準備!安木さんは大輝の回復と攻撃魔法の準備をお願い!凛紅!いっしょに来てくれ!」


悠斗が指示を出しその通りに仲間が動く。悠斗の指示が良いのか、他の仲間がいいのか、あるいはその両方か。とにかく組んで間もないパーティーとはおもえないほど、悠斗達のパーティーのチームワークは良かった。

「はぁああああああっ!」


悠斗の口から気合いが迸りブロードソードがボブの足を深く斬りつけた。

ボブは「グワッシャアア!?」と謎の悲鳴をあげ崩れ落ちる。

しかし、まだまだと言わんばかりに棍棒を振り回し悠斗を引き剥がす。


「凛紅!チェンジ!」


悠斗がなんとか棍棒を受け止め、押さえつけて叫ぶ。


「任せなさい!」


凛紅はそう言うと飛び上がり袈裟斬りを見舞う。ボブは悲鳴をあげ再び棍棒を振り回すが、凛紅には当たらない。


「大輝!凛紅とチェンジ!」


回復を終え大輝が行きよいよく飛び出しその勢いのまま大剣を振り回す。ボブも負けじと棍棒を振り回すが大輝の勢いに勝てず体に斜め一文字の切り傷を食らう。これで倒した、そう思ったのも束の間、「グワッシャアア!グギャアアアア!」などと悲鳴をあげ襲いかかる。

しかしホブの刃が届く前に、誰よりも速く動いた少女がその巨体を切り裂いた。


「《剣舞ブレイドダンス》!」


凛紅が叫ぶと凛紅の背後に三本の刀剣が出現する。

三本の刀剣はどこぞのロボットアニメに出てくるようなロマン兵器の如く、凛紅の意思によって素早く動き、ホブゴブリンの巨体に突き刺さり、絶命させた。


それを見た悠斗と大輝は口を揃えて叫ぶ。


「「ナニあれ、マジかっけえ!!!」」


得意げな顔をしている凛紅とそれをキラキラした瞳で見つめる悠斗と大輝。彼らの中で唯一双葉だけが覚めた目をしていた。


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