プロローグ
ど素人です。批判や文句と共にアドバイスも頂けると幸いです。更新は不規則ですがよろしくお願いします。
静まりかえった空気に、甲高い金属音が鳴り響いている。
音の源には相対する二人の剣士。
片や一目で業物だと分かる大剣を持ち最低限の鎧で身を守る筋骨隆々の大男。
片や双剣を持つ年の頃14~15歳の少年。
二人が対峙するのは薄暗い森の中。少年にとってその場所は、感慨深い場所であった。
だが、そんなことお構い無しと言わんばかりに大男は少年を攻め立てる。
二メートルを超えてるであろう肉体とほほ同じ大きさの大剣をまるで手足の延長のように軽々と振り回し、木々ごと少年を切り捨てようと迫る。
とはいえ、それを甘んじて受け入れるほど少年も諦めがいい方ではない。
大男のそれに負けない業物である二本の剣を巧みに操り、器用に大男の大剣を捌き続ける。
しかし、それにも限界がある。
体躯も膂力も劣る少年では、大男の猛攻に正面から打ち合い続けることは敵わず、どっしりとした踏み込みからの、鋭い唐竹割りの一撃に大きく後退させられ体勢を崩された。
そして、その機会を逃すほど大男は甘くはない。
彼我の距離を刹那で無にし、今度は弾丸のような速度で突きを放った。
少年はそれを────受けない。
紙一重で躱し、男の間合いから高速で離脱。
そのまま高速移動による撹乱に出た。
元々スピード・テクニカルファイターである少年とパワーファイターである大男とでは真正面での斬り合いになったときはどうしても少年が不利になる。
故に少年はスピードファイターの基本に究極である一撃離脱戦法に持ち込み、自身の土俵の上に立とうとしていた。
当然ながら、それは悪い戦法ではない。
むしろ、正解だ。
ただ、今回は相手が悪かった。
何せスピードファイターの最大の武器である速度ですら少年は負けているのだから。
大男は少年にあっという間に追いつき、再び斬撃を浴びせる。
体勢も良くはなく、少年の体には次々と傷が増えていく。
こうなってしまえばジリ貧。
故に少年は一か八かの賭けに出ざるをえなくなった。
即ち、反撃覚悟の捨て身特攻、だ。
重く鋭い一撃を繰り出す大剣の横っ面を片手の剣で強く叩き、もう一本の剣で斬りかかる。
片方で弾き片方で攻撃できる、剣一本や剣と盾よりも手数が多いという双剣の利点を最大限に活かした攻撃。
それは果たして────
「っ!?」
入った。しかし甘い。
剣は大男の強固な肉体を浅く斬り裂いて終わった。
だが、確実に隙はできた。
ここから一気に攻め立てようとした瞬間。
「ーーーーっっっ!!!」
大男が少年の近くを上回る速度で大剣を振り回した。
咄嗟の回避で攻撃を受けることは免れたが、折角の隙を不意にされた。
「―――!」
せめてもの牽制として少年が叫ぶと少年の剣の切っ先から一筋の電撃が迸る。
「ーーーっ」
流石に光速、迅い。
迫る光速に対して大男は避ける手段を持たない。
そう、避けることは出来ない。
だが────避けなければいい。
「ーーーーっ」
男も何かを叫ぶと、彼を包み込むようにうっすらとした膜が形成され、電撃を受け止めた。
その膜は大男が走り出しても消えることはなく、ただ忠実に主を守り続ける。
元々大した威力を持たない、当たれば身体が麻痺し
、一瞬は動きが止まると踏んで放った牽制の電撃であったが、こうなった以上牽制が牽制として成り立たない。
次の策を練る時間も、仕切り直す余裕も与えず、大男は少年に迫る。
「ーーーっ!!!」
少年は覚悟を決め、再び叫ぶ。
すると大男を撹乱する時よりも一段速く身体が動いた。
考えることも退くことも許されないのなら、突っ込んでしまえばいい。
だが正面での打ち合いは少年にとって不利。
しかし、それが超接近戦なら話は別。
少年は双剣使いのスピード・テクニカルファイター。
大男は迅いパワーファイター。
圧倒的なリーチと膂力を誇る相手でも、その間合いの内、懐に入ってしまえばリーチが短くて手数が利点の少年が有利。
そう考えた。
そして見事、少年の急激な加速は大男の認識を上回り、少年を懐へと導いた。
「ぅ、ぁああああああっ!!!」
正真正銘、勝つか負けるかの大きな賭けだった。
少年は加速中、身体の制御が効かない。
しかもその加速は直線のみ有効で、大男のような手練には見切られる可能性があった。
そうなれば、少年は確実に両断されていただろう。
そんな危険な賭けに少年は勝った。
後はやぶれかぶれでも剣を振りまくって刺すなり深く斬るなりすれば少年は自分よりも圧倒的に大きい相手との死合に勝利する。
────はずだった。
勝利を確信していなかったと言えば、嘘になる。
だが油断をしていたわけではなかった。
ただ少年はヒートアップした戦いの中で、失念していただけだ。
その可能性を。
今まさに勝利しようとしている少年を打ち砕いたのは、少年の顔ほどもある巌の如き────膝。
体勢を低くし、必殺の一撃を放とうと詰め寄る少年の顔面に、大男の膝蹴りが突き刺さった。
鼻は折れ、血が噴き出し、顔面はひしゃげた。
それでもまだ、男の攻撃は止まらない。
頭から仰け反る少年の、がら空きの胴に剣を持っていない方の腕でボディーブロー。
膝蹴りで飛んだ少年の意識を呼び戻したその一撃に少年は身体をくの字に曲げ、硬直。
そこに生まれた隙で大男は少年の横っ腹に回し蹴りを叩き込んだ。
見た目に反さない強力な膂力で蹴り飛ばされた少年は、多くの木々に激突し、その木々をへし折って、折れた木が十を超えた辺りでようやく止まった。
視界はハッキリせず、意識も朦朧としていた。
薄れゆく意識の中で少年は思った。
(みんなは無事だろうか…)
大男が歩み寄ってくる。
身の丈ほどもある大剣を持っているのにも関わらず、それを感じさせない歩みだ。
数瞬後に訪れるであろう未来を想像し、少し怖くなった。
だが、それでも少年は気丈に大男を睨みつける。
それが彼にできる最後の抵抗だったからだ。
大男は少年の前で立ち止まるとゆっくりと剣を持ち上げる。
最後に少年と大男の目が合った。
その目に慈悲の光はない。
あるのはただ目の前の対象を抹殺せんとする無慈悲な虚ろのみ。
既に振り上げられた鉄塊は今か今かと少年の血を啜るのを楽しみしているかのように躍動している。
そしてついに、少年に死をもたらす凶刃が振り下ろされて────
アドバイス等を頂けると有難いです。