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大帝国に生きる~俗物皇子と覇者皇帝~

 それから体感で何時間にも感じられた…実際は五分も経ってないが、

ともかく父上とカロルのお話は終わった。まぁカロルは一切口を利いてないけど。


「うぬら、少々戯れるがいい」

「「「ハハァッ!」」」


 父上の一言でようやく普通の社交界っぽいことが始まった。

僕は何か抱きついてきちゃったカロルを頑張って抱っこして

ユージーンたちのいるお菓子コーナーへ足を運んだ。


「…ローレン。お前って訓練とかは普段カスいけど父上相手には結構すごいよな」

「…褒めるのか貶すのかどっちかにしてよ」


 バカめ、あの時の父上相手には怖すぎて下手が出来んからああなるんだ。


「さっきのは漏らすかと思ったぜ」

「バーウェルは間違いなくちびってたね」

「だろうな。デカいほうもやらかしてたら面白いんだが」


 父上の事を忘れるかのようにその辺の食い物を食いまくる2人。

っていうかよく食えるなお前ら…本当に怖がってたのかと疑問に思うよ。


「おにぃたまぁ…こわかったよぅ…!」


 カロルの顔面が涙と鼻水で酷いことになってたので仕方なくハンカチで

ぬぐってやる……うわ…ベッチャベチャじゃないか…!


「ほら、カロル。蜂蜜タルトだよ」

「―! …んあー…!」


 あーんってお口を開けてくるので食べさせてやる。


「おいひぃ!」

べながらひゃべんなよ」

「ヴァル。説得力が無いぞ」 


 ほっぺたが膨らむまで喰ってるヴァルジオを窘めんとするユージーン。

…そういえば宮にも格差があったな。この辺の食べ物は

僕でも月一くらいで毎度は食べられないやつがちらほらとあるし。


「やあ、元気そうだね兄弟たち」


「んだよ飯喰ってんだから邪魔するブフォ!?」

「うわきったねぇ!! ってそれどころじゃねぇ!?」

「ふぇ、フェルセフト兄上…?!」

「…みゃ?」


 まるで気配を感じさせることなく僕らに話しかけてきたフェルセフトに

ヴァルジオは盛大に口の中のものを噴きやがったので僕は酷いことになったが、

当然そんなことを言っている場合じゃなかった。


「あ、あああああアニキ!? 何で?! アニキ何で?!」

「ヴァルジオ。とりあえず深呼吸しなさい」

「うはぁっふ?!」


 色々な意味で一目…いや千目は置いてるフェルセフトがそう言うので

ヴァルジオは何だか呼吸を止めそうな勢いだ。


「さて、大分気分も解れてるようだから、手前と行こうかローレン」

「…へ? 何で?」


 思わず素で返して「プギャー?!」となりそうだったが、フェルセフトは

裏しか感じられない良い笑顔だが怒りは感じられない顔で僕を見てくる。


「「!?」」

「ふぇ…?」


 絶句するユージーンとヴァルジオにさっきから状況がわかってない

ぽえぽえしてるカロルをよそに僕は肩をぐわしとフェルセフトに掴まれた。

あれ、何かすっごく寒気がする…!


「ふーむ…変だな…? どうして手前にはそんな有象無象と同じ態度なのか?」

「な、なんのはなしですか?」


 ちょ、何で手の力が強くなるのフェルセフト兄上様…?!


「まぁいいや。とにかく手前と行こうよ。父上の元に」

「ヘァッ!?」


 うおおおおい?! ちょ、おま!?


「おにぃたま…?」

「おや、カロル。御前も父上の元に行きたいのか?」

「え…?!」


 父上という言葉にビキリと固まるカロル。ちくせう。

フェルセフトに崩せぬ牙城なんてきっとこの世の何処にも無いんだちくせう。


「ハハハ…無理もナシ。じゃあ少しローレンを借りてくよ」

「うええ?! ちょ、フェルセフトお兄様?! 待って待ってちょっと待っ…!」


 僕の抵抗なんてゴミにすらならねぇんだ。


> > >


 僕は父上と向かい合うように座らされた。


「ご苦労」

「はい、父上」

「元気そうだな、ローレンシェームス君」

「ど、どどどもうもエールゼファー様」

「気安くルゼと呼んでくれて構わんよ」

「ふぁっ!?」


 ふざけんな。僕に死ねと言うのかアンタは。

っていうかさっきから真顔じゃねえか。何がしたいんだよちくせう。


「戯れも其処までだエールゼファー」

「失礼しました、父上」

「うむ」


 人生の山場が不意打ち過ぎる。何だってんだよ今日は。

テロリストうんぬんはそれなりに珍しくないからいつも通りだと思ってたのに!


「ローレンシェームス」

「は、はい!」

「リーリンは息災か」

「え? あ! はい! 母上は元気です!」

「うむ、ならば良い」


 父上は優しく見つめてるつもりなのか? その顔クッソ怖いんですけど?


「汝を呼んだのは他でもない。明朝、汝は余と遠乗りに出る」

「はぁ…………………えっ?」


 え…? え……? ええええええええ!?


> > >


 死ぬにはまだ早すぎる。何でこんなことになった。どうしてこうなった?

駄目だ僕の脳みそではさっぱり理由がわからん!


「…」

「…」


 今現在僕は父上と2人きりで道なき道を騎馬で歩いている。

例に漏れず父上の馬は何処の黒い王かと思うやたらとデカい馬なので、

僕の乗っている子馬が色々と可哀想である。さっきからずっと撫でっぱなしだよ。


「アエテルニタスの男児は必ずすることだと余は言った」

「え…あ! はい!」


 聞いたかどうだかわからないがとりあえずイエスと言っておくしかない。

いいえ系の返答は父上の温度が下がるのだ。経験は全てを物語る。


「あの…父上…この先って…」

「テオスマキナ公爵領の禁猟区だ」

「ああ…テオスマキナの…テオスマキナッ?!」


 テオスマキナ公爵領…かつては神聖王国テオスマキナと呼ばれた領域。

しかし今は帝国の属領だ。理由? 隣にあったから? いいや、

帝国が大躍進するキッカケの一つがここにあったからだ。


 大帝国ことカエルム=アエテルニタス竜主大帝国も元々は大陸中西の半海洋小国

カエルム王国でしかなかったのだが、内陸の隣国ヴァーリスの竜支秘術、当時は

西の大国でもあったテオスマキナの魔道鎧マギトラキシの技術を会得し、

そして先代皇帝のアエテルニタス一世の恐るべき才能と今もなお帝国最強と名高い

老将ハーフエルフ魔兵団を以って次から次へと周辺国地域を併合、属州化し

瞬く間(人から見て約二百年だが)に大帝国となった。


 まぁそれはともかく、今僕らが向かっている禁猟区ってのが危険度SSSと

言っていいっていうかそういう意味でヤバい生き物がウジャウジャいるのが

テオスマキナ公爵領の禁猟区なのだ。


「な、何故そんな所に…」

「うぬであれば理解していると思ったが」

「おうふ?!」


 え? 何? やっぱ僕今日死ぬのか? だって…あんな所に行くとか

父上以外には大体狂気の沙汰だよね? っていうかこの間

政治犯だかの罪人を簀巻きにして捨ててきたっていう場所だよね?

え、何? そういうこと? は? へ? ヒャーハハハオワタァ!!


「…何か勘違いをしているようだなローレンシェームス」

「え? いや、だって父上この間…」

「そうするのであればコロッセウムで飼っている禁猟区の鉄鋼獣フェロベスティアン

汝を喰らわせてしまえば済む話だ」

「ヒェッ…?!」


 サラッと怖い事をぶっちゃけました父上ェ?! っとおちけつおけつち…

冷静に冷静に…!


「ふむ…」


 父上は何かを考えているようだが、顔を直視したくないので計りようが無い。


「……アエテルニタスの男児は余の血を引く以上、

その全てが余に準ずる存在でなければならぬ」

「…」


 嫌な予感しかない。


「ローレンシェームスよ。これから禁猟区の森に入り、

余が見繕った先の鉄鋼獣…飼い慣らされておらぬ野生種のと闘ってみろ」

「!?」


 何かよくわからんけど場所が禁猟区の森かコロッセウムかの違い以外で

僕の命は潰えそうなんですけれども。あと父上、あの鉄鋼獣を飼い慣らしてるのは

世界広しといえども父上とごく一部のバケモノだけだと思います。


…。


 僕は父上から渡されたあの時の脳天氷柱ドーンなテロリストが使ってた

毒汁たっぷりの山刀があるが、無茶苦茶だと言いたい。

大体これから僕が闘わなきゃいけない鉄鋼獣って大帝国のコロッセウムで

今までに何人もの剣闘士や犯罪魔術師をぶっ殺しまくってきた

ちょっとした最強生物の類じゃん!? 鉄鋼とか言ってるけど?!

実際はそんな生易しい硬さじゃねえってばよ!?


「倒せとは言わぬ。傷を負わせろ」

「(〇A〇)」


 僕の目の前には件の鉄鋼獣がいる。父上いわく「若い小型の個体だ」そうだが、

あのですね父上。それでもトラくらいの大きさです。あと僕、中身はともかく

外見は完全に六歳児のそれですよ? どう考えたって

頭からペロッと食われるオチしか見えないんですけれども。


「………」

「汝が日々鍛錬をしているというのは偽りか?」


 いや、父上。僕ぁ六歳児なんですよ?! 例え前世の体でも!

生身で恐ろしく硬い毛皮に覆われたトラみたいな生き物をどうしろと?!


「グルル…!」


 鉄鋼獣はコロッセウムで見たことのあるやつに比べたら、体格も態度も小さい。

でもね、もう一回言うけど地球のトラくらいの大きさなんです。

普通のトラでも難易度ナイトメアですから。だというのに鉄鋼獣ですんで!

どう考えたって難易度マストダイ余裕ですから!


「グルルルルル…!」


 コロッセウムで見てたから捕食者としては賢いほうではあるらしい鉄鋼獣は

僕の後ろの父上が怖いから自分から襲い掛かっては来ない…

が、僕が攻撃に転じようとしたら多分僕の首はスパコーンと吹っ飛ばされる。

大事なことなので何度も言いますが、今の僕は六歳児です。

あのしん☆ゃんの一コ年上でしかないんです!


「ふむ…では、後ろから駆るか」


 ふとした時、父上は鉄鋼獣の背後に立っていた。これには鉄鋼獣も酷く驚くが、


「グァオォォォオォオォ!!」


 言うまでもなく滅茶苦茶弱い方クソザコなぼくを蹴散らして逃げようとするじゃない?


「うわああああああああああ!? インシネレーター!!!!!!!」


 当たり前だが僕は死にたくないので、とうとう魔剣の一振りを召喚した。

よりにもよって一番見せたくなかった父上にだ。


「グァウ!?」


 鉄鋼獣は僕の手に現れた赤熱したままの刀身で出来ているように見える魔剣…

赤刑剣インシネレーターを見た瞬間元の位置に跳ね戻った。


「ほう…?」

「…」


 父上は珍しくハッキリと笑みを浮かべていた。僕はサッパリと呆けていた。


「…あれ…何だコレ…」


 今の今まで一回たりとも呼んだ事が無かった。なのでまず呼んだら来るかも

不明だったし、そもそも呼んでもちゃんと使えるのか不明だと思ってたので、

どうしたものかサッパリだった。まぁさておき、今僕は凄く妙な感覚だった。


「わ…かる…?」


 僕はインシネレーターを上から斜めに下向けで上段に

握りこめば握りこむほど、魔剣インシネレーターの使い方が

忘れたことを思い出すように頭と体に染み渡っていく。


「グ…グル…グルル…!」


 鉄鋼獣もやはり獣だから火を本能的に恐れ………てるように見えませんな?!

いや、怖いんだろうけどそれでも後ろの父上バケモノよりマシとか思ってそうだね?!


「グァルルルルルルォォォォオオオ!!」

「わあああああああああ来るなああああああああああ!?」


 訓練してたとはいえ、ガチ本番なんてやったことのない僕がマトモに、

それも一回も振るったことの無い魔剣の"使い方を知ってて"もぶっつけ本番で

出来るはずも無かったので盛大に空振ったわけでしたが、


―ジャリィィィン!


 空振った剣の太刀筋がそのまま赤熱する刃となって飛び、

鉄鋼獣をバターみたいに……音はともかくチュルンと焼き斬って

あまつさえ灰も残さず焼き尽くしてしまった。

これはどう見ても要取り扱い注意厳守魔剣さんですね。


「汝の…いいやローレン、お前の固有能力は悪くないな」


 父上はゆっくりと大きな拍手をしていた。顔も不敵な笑みだ。怖い。


「流石はアエテルニタスの子。余の血を色濃く受け継ぎし息子だ」


 スゥゥっと僕に近寄った父上は…多分僕を始めて撫でた。例えガチ六歳児でも

こんな状況で撫でられたら絶対嫌な思い出にしかならんと思います。


「成人を迎えた暁には余が直々に稽古を付けてやる。それまでは

エールゼファーかフェルセフトにお前を鍛えるよう言ってやろう」

「ぶほ…ッ?!」


 父上、僕がガチ六歳児だったら自殺してますよ。

これ、絶対他にも召喚できることは気付かれないようにしないと…。

間違いなく常在修羅場ってレベルじゃねぇ地獄の劇場に立たされる!


> > >


 帰り道、僕はひたすら愛馬の仔馬くんを撫でてセルフ馬セラピーをしてた。

父上は多分上の兄姉で慣れてるのかまるで感知してこない。

 っていうか道中で襲い掛かってきたある意味勇気ある魔獣らを

「戯れるのも悪くない」とか言いつつぬっ殺してくのやめてくれません?

どこの拳王さんってレベルの戦闘方法は僕の中のエルフらしさを

悉くぶっ壊してるんで、色々ときついんですよ。せめてテロリストの時みたいに

魔法でチャチャッとやっちゃってくれませんかね? 何で一々殴る蹴る握りつぶす

絞め殺すとかエルフっぽさを全壊してくんですかね?


「ローレン。一つ教えてやろう。エルフにとって魔法は最後の手段だ」


 うん、前提がおかしいね父上。エルフにとって魔法はむしろ小手調べじゃね?

チャチャっと魔法使ってサクッとぶっ殺がエルフのデフォ戦闘じゃないですかね?


「………」

「………」


 はい、無言でしか対応できなかったのですっごく気まずいよー?


「ローレンよ。城に戻ったらお前に面白いものを見せてやろう」

「え」


 父上の言う面白いものというのは嫌な予感がバリバリですよ。


> > >


 父上の寝所…即ち禁裏とかいう場所だ。ここに入っていいのは

妻や妾といったごく一部の者のみで、許可の無い者は無用な接近だけで

死んだ実感も持てずに屠殺されると聞いたことがある。


 ………何で僕がこんなところに居るんだろうね?


「男で此処に立ち入った者は先代とお前を含めて4人だけだ」


 残り2人が誰かなんて興味が無いっていうか

僕ぁとっととパラドプール宮おうちに帰りたいんですけど。


「な、何故僕がそんな光栄な立場に…?」


 父上はゴキゴキと首を鳴らして体をほぐしている。


「お前ならば察していても良いのだがな? 実父たる先代は兎も角、

フェルセフトは招かれて即座に気付いたぞ?」

「フェルセフト兄上様と一緒にしてはフェルセフト兄上様に殺されます僕が」


 …寝所。体をほぐすゴツ怖いオッサン。共に居るのは少年……

………おい、まさか…嫌だ嘘だそんな事ぉーウツダドンドコドーン!?


「だーから、なーに勘違いしてんだよーオメーは?」

「ファッ?!」


 声は兎も角、父上の雰囲気がまるで別人になって…っていうかヒゲも何処へ?!


「バァーカ。付け髭だあんなもん。いくらハーフエルフだからって

オメー人間やドワーフみてぇに体毛モッサリするわけねぇーだろーが」

「えぇっ?!」


 僕の前にいる父上(?)はあの見事なカイゼル髭をヒラヒラと風魔法で

遊ばせられていらっしゃる?! ホントにマジで付け髭?!


「どーよ? 面白かった? 笑っても良いんだぜ?」

「(〇A〇)」


 僕は酸欠の魚みたいに口をパクパクさせるしかできなかった。


「襲名したばっかの頃はさー? このスタイルでいたわけだけどよー?

やっぱどいつもこいつも何処かで余を舐め腐ってる感じだったんだよねー?

ところがどっこいあら不思議、付け髭付けーの言動苛烈にしたらさー?

どいつもこいつも今みたいにみーんな跪くか死を覚悟しちゃうのよー?

何コレくっそウケるんですけどー? ってヤツでさぁwww」


 今僕はどんな顔面なのかわからない。何故なら表情筋が暴走パニくってるから。


「…おーい、ローレンくんやーい?」

「(〇A〇)」

「初見のエールもフェルも面食らってたけど、お前ほどじゃねーぞ?」

「(〇A〇)」


 僕をエールゼファー兄上様やフェルセフト兄上様と一緒にしないでほしい。

っていうか僕の反応は至極一般的な反応であると言いたいが、

顔面の筋肉がおかしくなったままなので口もマトモに機能しない。


「はぁー…ったくぅー……………………余を失望させるな、ローレンシェームス」

「うわへへっ!?」


 見た目は兎も角いつもの父上に戻ったら僕の顔面の筋肉もどうにか戻った。


> > >


 今僕はあの別人過ぎる父上とどういうわけか2人だけで、

実は生まれて初めての帝都の…それも若干隠れ家的な酒場バールに来ていた。


「久しぶりだなー?! おまいらー!! まだ生きてたのかよーオイィー?!」

「生きてるよバーカ! てめえこそどっかでくたばってるもんだと思ってたぜ!」

「余がそんな簡単に死ぬわけねーだろーがバーカ!」

「バーカバーカ!」

「バカバカうるせぇブワァーカ!」

「てめぇもなーこのブワァーカ!」

「乾杯しようぜバカヤロー!」

「おう乾杯だぜバカヤロー!」


 今僕の目の前でちょっと小汚いけど悪い人じゃなさそうな厳ついオッサンと

雰囲気のせい+髭なしだから本当に唯の下級市民ムキムキエルフにしか見えない

実父エルザードがバカバカ気安く(?)罵り合い(?)ながら乾杯イッキしてる。


「ち、ちうえ…?」

「おいロール! 誰が父上だバカヤローw 此処じゃ親父ぃでいーんだよ!」

「ほぉー? こいつがお前の新しい息子のロールって小僧かバカヤロー?w」

「そーだバカヤローwテメーんとこのクソガキと違って妻に似てて美形だろー?」

「うるせーよバカヤローwエルフの面なんてみんな同じに見えんだバカヤローw」

「言いやがったなバカヤローがw俺の妻でこいつの母も猿人だバカヤローw」

「バカヤローうるせぇバカヤローwもっぺんイッキ勝負だバカヤローw」

「上等だバカヤローw潰してやんよバカヤローwカンパーイ!www」

「カンパーイ!www」


 僕ぁどうしていいかわからんよ。


「あーゆーおとーさんだと大変でしょ?」

「……ええと…はい、間違いなく…?」

「何で疑問系なのよロールくん?」


 せっかく好みのタイプのバインバインな飲み屋のおねーちゃんに

優しく無防備に話しかけてもらってるのにあの父上…いや親父のせいで

せっかくのまたとない機会が全然生かせねぇ。


―うひゃひゃひゃひゃひゃっはー! これで余は17杯目ぇー!

―げひゃひゃひゃひゃひゃっほー! 負けねえぞオラァーッヒャー!


「…何だこれ」


 アエテルニタス皇帝エルザードは誰に対しても強烈だ。しかし相手の能力を

じっくりと見極めるだけの余裕も持っているので、彼にあからさまな悪感情を

持つものは思ったほどよりは少ない。しかしだからといって対峙した者が

彼を前に平常でいられる者が多くなるわけじゃない。彼は帝国の象徴にして

帝国の力そのものを体現する真正なる現人神である。


「……というのが、ちちう…親父への公式な見解らしいよ」

「あ、やっぱそーなん? ちょっとガン飛ばしただけで気絶とかするもんねー☆」


 しかしガチだが秘密のプライベートでは権威は例の付け髭もろとも取り去り、

若い時代が長いエルフの見た目通りに心が無駄に若い…っていうかチャラい。


「人は変わるものっていうけどさー? 俺ハーフエルフじゃん? ってことは

間違いなく半分人じゃないじゃん? だからこーゆとこでガス抜かないとさー?

マジで昔うっかりテオスマキナでやらかしたみたいな凶戦士やっちゃうのよー?」


 その話は真面目に語らないでね父上。色々危険な臭いがする気がするんだ。


> > >


 僕は父上との新たな関係性をどうにか利用したい…利用したいのだが…

なんか…あんな父上…親父の姿を見てると…なんか削がれて殺がれるんだ…。


「おk、ローレン。次はドコ飲みに行っちゃうー?」

「東西南北のバールは全部回った気がするんでs…だけど」

「おkおk、レッツゴー二週目ぇーwww」

「ち…親父ぃ…ハジケすぎてやらかさないでね」

「ハッハッハ! 余をダレと心得ておるかw 余はコーテーヘーカぞーwww」


 僕は今日ほど酒を飲んだら間違いなく危ない

今の自分の体を恨めしいと思ったことは無いんじゃないかと思う。

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