8話 ファンタジーといえば鍛治、鍛治の次は魔法。
この間ははとても癒された。あー癒された、めちゃくちゃ癒された。何時でも遊びに来てって言われたから、ギルドに用事のある帰りにでも寄ろう。
アレから数週間経ったが、その間狩などをしてレベルを上げたり、金を稼いだりしていた。
結局、サリュは、家事がほとんどダメで、一緒に狩りに着いてきて居る。
撫子は忙しいので、2人で狩をしている訳だが。狩る魔物は、血吸いウサギや、ゴブリンが主だ。
オークもアレから何匹か狩っている。撫子に教えて貰い、弓術もある程度使える様になった。
しかし、武器が心許ない。サリュ共々剣はなまくらだ。
そろそろ、試したい事もあるし、鍛冶屋に行く事にした。
館からサリュ共と、2人で歩く。途中、ベーコンを焼いた生地で挟んだ軽食の様なものが売っており。腹の虫が鳴るサリュへと買ってやった。食べ終わる頃。丁度、鍛冶屋と思われる店を見つけた。
カウンター近くに漢臭い親父が座りながら武器を磨いている。店の中には美人と言って良いだろう、そんな女性が商品を綺麗に並べ直している。
「あーらっしゃい、なにかおさがしでー?」
「あなた?その態度はお客さんに失礼だと思うわ。御免なさいね?いつもこうなの。」
やる気気が全く見えない旦那を咎めながらフォローする。奥さんなんだな、このオッさんに
似合う様な似合わんような・・・武器を棚から取り眺めながら、このオッさんの技術が知りたいと、武器に解析をかける。
鉄剣 等級5
等級と言うのはその商品の出来の事だ。最高が1で、最低が10だ、強さの事ではない。
例えば、オリハルコンの剣 等級7 は、鉄剣 等級5より弱いと言う事はない。
あくまでも、鉄で作った剣では、等級5程の作りの剣だ、と言う事だ。
「なあオッさん、刀ってわかるか?」
「ああ、解るぞ、よく知ってたな?刀なんて。あんな使いづらい剣が欲しいのか・・・?」
「いや、使える訳ではないけど購入出来るなら此れから練習する。上手く使う為の理屈は知ってるからな」
「成る程、売りもんは今無いが作ってやる事はできる。だが坊主、幾つだよ。なんで刀なんかほしい?」
やる気の無かったオッさんが刀って言葉を聞いた後、急に神妙になる。んーなんて答えるかね、正直に言うべきか・・・と考えていると。
「あなた?何歳だろうがお客様な事に変わりはないでしょう?作ってあげたら良いじゃない」
奥さんがフォローしてくれる。良かっためんどくさい事にはならなそうだ。
「あー、まあそうだな、作ってやる、どんなのが良い?」
「刃渡り30センチ程の短刀が2本。60センチ程のが一本。拵え、細工と鞘は洋風にしてくれ。装飾剣みたいな。後はウォーハンマーが欲しい。」
「あー解った、ウォーハンマーと短刀なら細工をする前の物がある。60センチの方は一週間程かかるぞ?」
「ああ、それで頼む。あー ちょっと待っててくれ」
サリュが大人しいなと思い、そちらを向くと、何かの武器を手に取り見つめている。近付いてみると、
モーニングスターとよく言われる棒に棘付きの鉄球が付いた物だ。
「それが、欲しいのか?」
「あ、いや でも さ いそうろうの身分でそんな事は言えないよ。」
欲しいらしい。
「あーサリュには普段は短刀を使って貰うつもりで居たんだが。まあ、敵によって使い分けるのが良いよな、俺もそうする積りでハンマー買う訳だしな。良いぞ、買ってやる。」
「え、でも あの うーん」
「実際サリュの武器が良い物になれば狩りが楽になるだろう。そしたら新しい武器を買う意味もある。」
サリュの背中を押す様に買う理由を作ってやる。と言うか実際そうなんだが、費用対効果で考えれば、絶対にちゃんとした武器にしたほうが良い。なまくらなんてもってのほかだ。
「いいの?ワヒ…あ、クロト…クロトありがとっ!」
そう言うと、サリュが腕に抱きついてくる。最近一緒に狩りも行く様になったし。俺に慣れてきたらしい、ちょっと最近スキンシップが過剰だ。同じ歳なのに獣人特有の発育の良さでこうして並ぶとアンバランスだ。おっさんが苦笑いしている。
「さてそれで決まりか? えーと、代金は全部で幾らだー?取り敢えず刀は短刀が2本で金貨6枚、長いのが金貨5枚、ウォーハンマーが金貨1枚、モーニングスターが2本で金貨1枚だ。で、いくらだ・・・」
「金貨13枚ですよあなた」
「あーあと、クズ鉄を30キロ程欲しいな」
「何に使うかは知らんが、クズ鉄30キロならサービスしてやる。運賃払ってくれれば届けるが、どうする?」
「自分達で持って行く事にする」
「なにっ?持って行く?押し車でも貸してやる積りだったが」
「あと、頼みがあるんだが、1週間、刀を作るところを見にきて良いか?」
「んあ?あーまあいいぞ」
頭をボリボリとかきながら言う。子供のただの興味だと思ったのか見せてくれるそうだ。
袋から、金貨を代金の枚数ぶん出すと、カウンターに置く。
明日から、早速見学させて貰うと告げて。今日はこれで引き上げる事にする。
ひょいとクズ鉄を担ぐと、おっさんが驚いた顔をして居た。
その顔が妙に面白かった・・・
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此の館に越して来た時に館の隣にある空き倉庫に鍛冶場を作って欲しいと頼んで居たのだが、それの進捗状況をきく。
都合よく俺が出掛けている間に仕上がった様だ、早速1人で移動してみる。
倉庫の中に いやこれからは鍛冶場と呼ぼう。
鍛冶場に入る。
火炉
金床
ハンマーやハサミが置かれている。
おお、男の浪漫をくすぐるな。
けれども、今日はこれらを使うわけでは無い。
鍛治はまた今度だ、俺の本日の目的は精錬だ・・・・・
俺はクズ鉄を作業台に出す。勿論鍛冶屋からクズ鉄を運び出した後は人の居ないところでインベントリにしまい直した。
人前で使えないのはすごく不便だ。
それはまあ、置いといてだ。
此処で話は変わるが、俺がこの数週間で得た知識を整理する事にした。
まずこの世界には大きく分けて 火魔法 水属性 風魔法 土魔法の4属性魔法と特殊魔法という括りがある。
4属性と呼ばれるらしい。特殊魔法は属性に含まれない。
火魔法は 火を出したり、攻撃に転用したり。
水魔法は水を出したり飛ばしたりは出来るが空中にそのまま浮かせたりは出来ない様だ。
風魔法は風をあやつる魔法、風の流れを作ったりだ。
土魔法は地面を隆起させたり土壁を作ったりと主に防御に使われる。
後は特殊魔法と呼ばれる。
空間魔法や 精霊魔法 治癒魔法 付与魔法 身体強化魔法などがそうだ。
俺の五大元素魔法の記述は無かった。
撫子なら知っているのでは無いかと尋ねてみると やはりというか、
「父様がお使いなった魔法と母様に聞いて居ます」
との説明で、
火 水 大地 風 空気 を扱う事の出来る魔法らしい。
魔法とは、基本的には同時に2つ以上の属性を使うのは相当難しいらしい。せめて2個までだ、けれども俺の五大元素魔法は別の様で、五大元素の枠の中でなら同時発動が可能な様だ。
魔法で水を出し、それを熱するとか、そのまま風魔法と空気魔法で熱水を空中で浮かせてぐるぐると循環させる。なんて事も出来る。
そして魔法の使い方だが、詠唱と呼ばれる言葉に魔力とイメージを乗せて発動させる、それが最も一般的な発動の仕方らしい
この世界の魔法の使い方は単純だ、見て覚えた魔法を記憶のまま、お決まりの詠唱で発動する。それだけだ。
だが、俺がイメージのみでインベントリが使えた事から、イメージと魔力の練り。そして発動のキーワード。コレで上手くいけば発動出来る筈なのだ。
つまり、根気さえあれば新しい魔法を作り出すことも出来る筈だ。
それで、此処からが本題なのだが。俺が気になっているのは大地魔法だ、土魔法とは違う。
大地と言うくらいなら、鉱石なども扱えるんじゃ無いか?
俺はクズ鉄を手に取ると解析をかける。
鉄屑 等級9
さらに、解析眼の新しい使い方、無機物を解析をした時に真理理解を試みると。その物が何で出来ているかが理解出来るようになると言う事に気が付いたのだ。理解を試みる度合いで成分、素材と分けて調べることも出来る。
鉄屑 等級 9
鉄 炭素 クロム ニッケル ーーーーーー
正確にはこの世界にある鉱石、金属がそのまま、鉄や炭素、クロム、ニッケルである可能性は低いと思うが、近いものであるからこそ解析眼の結果がこう表示されているのだろう。
なので、便宜的に地球の呼び方で呼ぶ事にする。
本当はアスガレリア鉄、とかが正しいんだろうな。
さて、続きだ、解析結果で様々な素材が表記されて行く。
まず俺がやりたかった事は成分の抽出、クズ鉄を握ったまま解析、真理理解 2つにギフトの組み合わせでクズ鉄の構成を理解して行く。よし、殆ど理解出来た。
そして、イメージ 。
鉄 クロム ニッケル 炭素 マンガン 錫 色々なものを細分化し取り敢えず、大まかに
鉄とクロム、ニッケル、炭素 そしてそれ以外を抽出する強いイメージ思い浮かべる。頭の中にあるのは分子図だ。真理理解が解析で得た情報を整理し分子図をイメージさせてくれる。
ズルズルと液体金属のように金属が動いて6つの塊が出来る。
1番大きな塊が鉄、高純度鉄と呼ばれるものだろう、後はほんの小さな塊が4つ。
良し、上手くいったようだ。
早速、純鉄に解析をかけてみる・・・・
鉄 等級2
かなり質の良い鉄が出来たようだ。
後は鍛冶屋を見学してからだな。プロの鍛冶屋の精製した刀を解析して、より良い状態を探って行く予定だ。なにせ、基本が出来ていないからな俺は。
其れ迄は、先程の抽出の時に金属が流動した過程を思い出しながら、新たな魔法を試みる。
大地魔法に、真理理解、思考、解析眼。これらを使って作った新しい変形と言う金属を変形させる魔法だ。
金属を棒状 板状 球体 四面体 と掌の上で連続して変形して行く。
これを修練として刀が出来るまで毎日の日課とする事にした・・・・・
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アレから毎日、鍛冶屋に通っている、火炉の使い方。鉄を熱し高温にする事でスラッグや炭素をぬいて行く事、芯は柔らかい鉄を使い、両側を硬い鋼で挟む。
刃などもそうだ、其れを最後に焼き入れをする。
「あとは、研ぎをして、細工を施して完成だ。明後日になったら取りに来い。」
「ああ、有難うオッさん。勉強になったよ!」
うん、勉強になった。後は自分の鍛冶場で魔法では無くオッさんの様に精錬から、研ぎまでやってみよう。
あいにく思考、解析、真理理解のギフトのおかげでオッさんの技術の大半は理解出来ている筈だ。
「じゃあ、明後日また来るよ。」
俺は鍛冶屋を出る、館に向かって歩き始めた、暫く歩くと町の住人に話掛けられる。
「おお、クロト君。調子はどうだい?」
「ええ、まあまあですよ。」
俺はそう返事をする。最初の頃は7歳の見た目で、こんな話し方をする俺を皆変な目で見ていたが。
撫子の弟という事で、勝手に納得した様だ。
しかし、俺もたった1ヶ月ほどで馴染んで来たものだ、〝クロト〟と呼ばれる事にも違和感を感じなくなって来たアダ名とか見たいな感覚だ。
さて、今日はもうする事も無い。
シイロの顔でも見に行こうかなと思う、名付けまでさせて貰った上に、あれだけ可愛い。うん、もう俺はシイロにどハマりしてしまった様だ。
そう考えながら、アルグス家へと足が進むのであった。