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3話 元の世界に残してきてしまった君を想って。

さてと、ショックは過ぎ去った、ギルド登録ですらこの場所でできてしまう始末。

この世界を知ると言うことも、撫子のおかげで済んでしまっている。俺の人生はこのダンジョンで終わってしまうのでは無いだろうか。アレ?入院生活と変わらないんじゃ無いか・・・?



「で、でさ、何で此処でギルドカード登録ができるんだ?」



最も疑問だった事を思い出し、問いかける。

撫子はアタフタする俺を微笑ましく見ている。コレさ、お姉さんだよな?兄様とか言ってるけど精神年齢も違いすぎるし。妹的な尊敬の目では見てないだろうし・・・

実際そうだから仕方ないし、元々姉も妹も居なかったんだ、これで良いか。



「ギルドカードという技術を作ったのが母様だからです。この世界には無い科学技術や、転生した際に与えられた能力を使い作成したそうです。当時全体的に冒険者は戦闘能力的にも、態度や、振る舞い的にも質が悪かったそうです。能力の指標がないので自分の能力に見合わないクエストを受けたり、ですね。詐欺や冒険者による盗賊行為も横行して居たそうです。ギルドカードを採用したことにより。適正クエストの受注、身分証明代わり。クエストの受注履歴のおかげで、身分やその冒険者の行動の証明になり、詐欺行為も大分減ったと聞きます」



おー、母さん凄いじゃないか。母さん主体の技術ばかりで父さんは目立ってないなあ・・・

しかし、便利なカードだ。早速撫子に頼んで作ってもらう事にしよう・・・



◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎



時間的に今は何時くらいだろうか?このダンジョンの中は全く外の光が入って来ないし、自分が何時ころ転生してきたかも解らない。腹も空いてきた・・・



「撫子、今って何時くらいだ?外からの光が入って来ないからさっぱり解らん・・・」


「大体ですが、夕方時でしょうか、そろそろ夕飯を頂く時間でしょうか。兄様の体は肉体保持液から出たばかりですので胃に優しいものを後ほど用意しますね?先にギルドカードの登録を済ませてしまいましょう。その後、私が食事の支度をしている間、兄様はギルドカードにて能力の確認を済ませておいてください」


「そうだな、そうするよ」



俺は頷くと辺りを見回す。カードが保管してある部屋らしいがさながら研究室と言った様相だ。

研究室の奥にある扉を開けると、その部屋に入っていく、数分後すぐ戻ってくると銅色のカードを持って戻ってくる。



「このブロンズカードに一定の魔力を込め、自分の名前を声に出すと、それがスイッチとなり肉体に刻まれた名と示し合わせ問題が無ければ登録されます。コレは空カードと言い、最初に魔力を通した者のギルドランクや、ギフトの種類を表します。ギルドランクが上がったりクエストクリア、クエスト失敗の度に更新されます。冒険者は必ず持って居て偽装する事は出来ません。能力等冒険者ギルドや、魔術協会、魔道具協会が束になっても解読出来ないのですから」



「魔術協会、魔道具協会ってのは今度また聞くとしてさ。どんな技術で作ってあるんだ?そのギルドカードは。」


「兄様の元の世界のひらがな、カタカナ、漢字、ローマ字という物を、ランダムに組み合わせ幾つかの命令文を作っている様です。そして、その命令文自体を除くロックを「ニシンスウ」で作った命令文でロックをしていると、母様から伺って居ます。」



うわぁ、そりゃ、この世界の住人には解読不可だろうよ。新聞文字から適当に切り出した脅迫状みたいなもんだろうな。それを毎度同じ文章でも文字を変えて命令文を作るんだから・・・と言うか、日本語もこの世界の理では言語として認識されるんだな・・・


その後の説明として。


名前


ギルドランク表示 F,E,D,C,B,A,S,SS, と言うランク付けらしい。SSが最高ランクだ。


ギフト表示 個別能力ランク1から5。魔法の属性別ランク 1から5まで。


ランク別クエストクリア回数。

ランク別クエスト失敗回数。


ランク別モンスター討伐数 F100匹、E50匹 と言った具合だ。




◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎



「では、兄様はそちらのカードに魔力を………」


「解ったやってみる」



返事を返し、手に持ったブロンズのカードに魔力を通す。言われた通りクロガネ ワヒトと声に出す。カードの表面波打ち文字が表示されて行く・・・



ワヒト クロガネ


ギルドランク F



ギフト 解析眼 千里眼 龍化 闘気 思考力 真理理解


クエストクリア数 ギルドにて表示


クエスト失敗数 ギルドにて表示


モンスター討伐数 ギルドにて表示




表示された情報を眺める。書かれた内容から何と無くのスキルは解る

俺がギルドカードに魔力を込めるのを確認した後、撫子は部屋を出て行った。食事の時にでも解らない所を聞けば良いかと、掌の中でギルドカードを遊ばせる。

よく見ると銅色だったギルドカードがゆっくりと、まるで酸化が進む様に黒ずむ。



そして、数分後には黒光りする程の漆黒のカードに成ったのだった・・・



◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎



真っ黒に成ってしまったギルドカードを眺める。まだ、撫子は食事の支度をしているのだろう。

うーん、どうしたもんか、ポコポコと浮き上がった文字は普通に読める。まるでクレジットカードみたいな作りだな。ブラックカードって言うなんか凄いクレジットカードがあるんだろ??いや、俺には縁がないものだけどさ。


などとくだらないことを考えていると、扉が開き撫子が部屋に入ってくる。



「兄様、食事は食堂の方に準備をしています」


「そっか、ありがとう、もうさ、お腹すいてやばいんだわ」


「あまり料理は得意では無いのですが......では、案内いたしますね」



撫子が先を歩き、案内してくれる。たまに後ろを軽く振り返り、俺がきちんと付いてきているか確認している様だ。

やはり、姉だろあれは。

まぁ、でも心配してくれるのは悪い気はしない。

そんなことを考えていると、あっという間に食堂についた。研究室の、隣の部屋だったらしい・・・



「兄様、こちらの先にどうぞ、」



言いながら、撫子が椅子を引いてくれる。

うーん、なんだか偉くなった気分だ。

椅子に腰をかけると、撫子は向かいの席まで移動して席に着く。

テーブルを見ると湯気の立つ料理が見える。白いシチューの様な物に何かの肉。たくさんの野菜が入った粥の様なものだ。匂いは凄くいい匂いだ、食欲をそそる。そう言えばだ、この肉体的には勿論だが精神的にも昨日、手術の前日の夕飯から食事を取っていなかった。

そりゃ腹もすくさ。



「えーと、食べても良いかな?」


「はい、兄様のお口に合うかは解りませんが是非召し上がって下さい」


「えーと、じゃあ頂きます・・・」



最後は少しボソボソっと声を出してしまう。撫子が頂きますの挨拶を知らないかと思ったからだ。



「はい、では、イタダキマス。」



お、知ってたみたいだ。母さんの記憶、嫌、そうじゃ無いか母さんと一緒に食事をした事があるのかもしれないな。


中の肉は 石投げ鳥 と言うモンスターの肉らしい。獲物を見つけると口に咥えた石の塊を落として来るらしい。狩るのは難しく無いが、意外と厄介な相手らしい。



「あー、身体があったまるわ〜、味も良いし、料理得意じゃ無いって言ってたけど、凄く美味しいじゃ無いか・・・」


「お口にあった様で、何よりです......」



撫子は俺の言葉に微笑み返してくれる。

クリームシチューの様なその味にペロリと全部平らげてしまった。

うん、凄く満足だ、俺は椅子から立ち上がると、皿を下げにきた撫子、俺よりも身長が高い撫子の頭を、背伸びをしてめいいっぱい伸ばしたその手で、撫でながら声をかける。



「凄く美味しかった、なんだか、とてもほっとする味だったよ、ありがとう撫子。」



急に頭を撫でられた撫子はふっと顔を上げると少しびっくりした顔をする。ほんのりと頬が色付くと直ぐ顔を下げてしまう。



「あっ...いえ...兄様のお世話をするのが...撫子の役目ですので......」



今日初めて見る感じだ、慌ててるというか、なんと言うか。ちょっといきなり過ぎたか??



「あー、そうだ、ギルドカードのことで聞きたい事があるんだが。色がなぜか黒くなってしまったんだ、後はギフトの魔法ランクの後ろの数字のゼロ表示ってなんなんだ?」



撫子はふーっと、息を深めに吐くと、少し落ち着いた様で、表情を元に戻し話し始める。



「やはり、黒くなったのですね。ギルドカードは表示のギルドランクが所有者の実際の戦闘能力や総合的な実力と噛み合ってなければ黒く色が変わります。

例えばCランク相当の実力があるのに表示がまだDランクなどの場合、カードは黒くなります。その場合ギルドに行き申請すれば、ギルドランクを上げるための資格試験。それか、特別クエストのクリアにより適正ランクに上がったとカードが判断しカードの色は元に戻ります。ちなみにですが、ゼロの数字の場合は、適正はあるが、まだ魔法を覚えていない、使えないと言う意味です。少し練習などをすれば直ぐランク1に上がるかと思います。」



なるほどね、俺はFランクよりはまだマシ、と言うことかな?

ちなみに、撫子の話によると。

FからCはブロンズ。

B、Aランクがシルバー。

Sランクがゴールド。

SSランクはプラチナらしい。


シルバーとプラチナの違いがよくわからんなぁ。

ぱっと見わかるもんなのか??


さて、腹もいい感じに膨れたし、休みたいところだ。この7歳の体は眠さにだいぶ弱い様だ。

軽く目をこすり撫子の方を見ると。ハッとした顔をした後、軽く頭を下げる。



「兄様、申し訳ありません。色々あり、お疲れでしたよね?直ぐに寝室の用意を致しますので、少々お待ちください。」



軽く急ぎめで部屋から出て行くと数分後には戻ってきた、相当急いだらしい。



「母様たちが使っていた寝室にて、準備をしてまいりましたので、お休みになりましょう。場所はお判りかと思いますが、だいぶお疲れの様なので、付き添わせて頂きます。」


「あー、いいよ大丈夫。撫子も無理しないでゆっくり休むんだよ?じゃあ、おやすみ。」



軽く背中越しに手を振る、扉を開け、廊下を抜ける。少し歩き寝室に入る。

ボスッとベッドに倒れ込み、今日の事を思い出す。


色々あったな。まさか、異世界なんかにくるとは。元の世界で死んでしまったんだ。もう一度生が得られただけ、とても幸運なんだろう。


けど、そう、手術が失敗し、俺がいなくなった後の彼女の事を考える。

後、数ヶ月後に俺と同じ手術をする予定の、彼女の事を。

せめて、その手術の日まで彼女を支えてくれる。


いや、これからの彼女を側で支えてくれる誰かが


現れる事を、遠くなる意識の中


祈って・・・・・



今日という1日が終わる・・・・



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