8話 授業が始まる
更新が遅れてしまいましたので今回の話は少し長めです。
宿に着いてから、エマとクルエラに話をした。一応学園の寮に入る事にしたと話を誤魔化して。仕事が見つかるまで一ヶ月ほど宿代を出してやる予定だったが、幸いにもエマが仕事を見つけて来たらしい。新しい服を買い、見た目を小綺麗にして職探しに行かせたのが功をそうした見たいだ。
「商いをしている商人様の家で奉公をする事になるかな。お屋敷とは別に奉公人用の離れがあるみたいだからクルエラの面倒も見れるわ」
小綺麗にして見ればエマは実際の所、可愛く見える。愛らしいと言うか美人系では無いがキュートな顔だ、クルエラもとても可愛い。悪いイメージにはならなかったのだろう、一安心だ。
「そうか、それは良かったな。しっかり働いてクルエラの面倒を見てやらないとな、頑張れよ」
「クルエラ!良かったね。サリュ達は学園に住んでるからエマもクルエラもいつでも来てね!」
「うん、少しずつだと思うけど、宿代とかご飯代とか、返せる様に頑張るね。クロトさんには本当にお世話になったと思う。ありがとう」
お互いに頑張ろうと、励まし合い新居へ移る準備を済ませ、夕食を取り早めに身体を休める事にした。
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翌朝、エマとクルエラに別れを告げ学園へと向かった。学園の場所や風景は覚えたので空間移動も使えなくは無いのだが、あえて問題を起こすのもなんだし歩いて行こう。
「サリュは昨日の騎士科の説明はどんな感じだったんだ?」
「えーとねー、みんな学園では平等っていう話と、騎士とは主君に命をささげる程の心がまえでいなければいけない!とか、そんな話?かな」
「どんな授業をするんだ?」
「ただひたすら、訓練あるのみ!って言ってたよ!」
「そ、そうか」
騎士科ってのはだいぶ熱血なんだな・・・暑苦しそうだ。話ながら大森林の中に通った道を抜け学園の大門の前で門兵に昨日の試験時に渡された白色のドッグタグを見せる。サリュの色は騎士科の銀色だ、職人科の鉄に似ているがパッと見ても分かるほど輝きが違う。
「2人とも通って良いぞ勉強頑張れよ!」
「ああ、ありがとう」
門兵達はどの生徒にもこうやって声を掛けている、生徒がどんなに位の高い貴族の子供でも、学園では教師や学園内で勤務している者達の方が立場が上、そういう事らしい。
やはり母さんが作っただけあって考え方は前世の学校などに近いんだろうな、まあ学校なんて通った事は無いんだけどな・・・歩きながら目線は遠くだ・・・
「わひと?どうしたの?ボーッとして」
「ああ、いやなんでも無い」
人工的な小川に沿って歩き校舎まで移動する。俺たち総合科は本館、真ん中の建物で、騎士科は本館の左手前、魔法科は右手前、商業科は右奥、職人科は左奥にある別館と呼ばれる建物にある様だ。本館には様々な施設がある、食堂や職員室や学長室等だ。
魔法薬や錬金術などの実験は魔法科のある建物で行う。騎士科にはトレーニングルームが完備されているらしく、総合科は授業によってどちらも使用出来る様になっている。
だから基本的に総合科は騎士科や魔法科の生徒と顔を合わせる事があるが、騎士科と魔法科、商業科と職人科は食堂で昼を食べる時ぐらいしか顔を合わせる事は無い様だ。
「あーもう、着いちゃった。わひとお昼はサリュといっしょにご飯食べるよね?」
「ああ、食堂は正午から空いているらしいから食堂の入り口で待ち合わせしよう」
「うん!早くお昼にならないかなー」
「昼を食いに来たんじゃ無いぞ?ちゃんと訓練しろよ?」
「むうっ。そういう意味じゃ無いもん!」
苦笑いを返し、手をひらひらさせてサリュと別れた。廊下を歩いていると、やけに他の生徒の視線が気になる。俺に気づくとヒソヒソと話ている。なんだろうか、白髪が珍しいとか?視線には二種類あり、ねっとりと下から舐め上げる様な視線、コレはラルンド領でもよく感じていた視線だ。
どうにも見た目が中性的で髪も長いせいか俺の事を女だと思う奴もいるらしい。そろそろ髪を切ろうかな・・・良い加減この視線もウザったくなって来た。
「なあ、あの子結構可愛くないか?今年の新入生はレベル高いらしいな!」
「バカっ!あいつは男らしいぞ?」
「は?マジかよ・・・」
案の定、思った通りだったのだが、もう一つの視線が良くわからない。ハッとした顔をすると俺を指差し、友達などとコソコソと話している。取り敢えず気にしない様に歩くか・・・
教室の扉をガラガラと開け中に入る、中に居た生徒の数名がこちらを見ている。ロシェルはもう来て居た様だ。席は決まってなく好きな所に座るらしい。教室はカーブした長ベンチと長机が
教卓を中心い囲んでいる。
ロシェルは後ろの端の方に座って居た、ロシェルくらいしか話せる奴もいないしな、取り敢えずロシェルの所に行こう・・・
「おはようロシェル」
「あ、ああ。おはようクロト」
ロシェルは、なんだかギクシャクしているみたいだ。
「ここ、良いか?」
ロシェルの座った隣を指差して、彼が頷くのを確認してから腰を下ろす。
「あー、クロト聞きたい事が有るんだけど・・・」
ロシェルが、意を決したという様子で俺に話しかけて来た、声はかなり抑え気味だ。
「昨日ルィエ先生が、君の事をデュアリスとそう呼んで居たけど、君は先生や。賢者である学長、ええと、あーうん、英雄ラインハイト・デュアリスの縁類か何かなのかい?」
ああ、成る程。
今日の視線はこれの事か、しかしなんて説明しよう。英雄の父さんと母さんの子だと言っても、この見た目で400年も生きているのかって事になる。まあ母さんはあの見た目で500歳程だが。
だからと言って母さんが運良く人族との間に子供ができたと誤魔化しても。もしその話が広まったら、父さん一筋の母さんに悪い。
「まあ、そうだな親戚みたいなもんだよ」
「親戚・・・ラインハイトは孤児でデュアリスはランダット王国が建国された時に王に名乗る様に言われた名で人族に親類は居ないはずなんだけど・・・それに英雄の奥さんは皆、英雄が亡くなった後には子孫を残さなかったって聞いてる。唯一、ルィエ先生だけ賢者ディアンススが弟子に取り、子として養子にしたって噂があるくらいだよ」
ロシェル詳しい・・・あー確かにその辺の事何も考えて無かった、どうしたもんか・・・
「ええと、だな、まあ色々有るんだよ。色々、な?」
「そ、そうか、色々あるんだな…」
ロシェルは無理やり自分を納得させた様だ。残りの生徒が俺とロシェルを伺っているのが解る、まあ少しずつ説明していけば良いかな、俺がそう考えているとガラガラと扉が開いた。教室に入って来たのはルィエだった。
「さて、私が担当する授業は総合科に相応しく、戦闘に関わる全てを担当します。具体的に言えば、剣術、魔法、戦術、これらには各教師が授業を行いますが、それらの総まとめとでも言いましょうか、私の授業では実践的訓練を行う事になります。本日の授業では午前の時間を使い、あなた達が現在どの程度動けるかを見ようと思います。では、訓練場に移動しましょう」
ガタガタと生徒達が席を立っていくのを確認し、俺も席を立つ事にする。
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今の時点で5人目の試験?腕試し?が終わったところだ。
ルィエは息も切れた様子もなく淡々と生徒達と手合わせをしては手元にあるノートに各生徒ごとに癖や現在の強さなどを書き込んでいく。
なんでそんな事がわかるかって?〝空間認識〟のおかげだ。これを使うようになって2年間の間に認識の範囲であれば指の動きや唇の動きなどからどんな文字を書いて、何を話しているかくらいは解るようになった。
そこまで詳細に空間を把握するためにはかなり多くの魔力を消費する為、普段は察知程度に機能を抑えている。今はクラスメイトの動きを理解する意味で詳細な空間認識を行なっているところだ。
「やはり、学園に入学するだけあって皆なかなかやるみたいだな」
「あー、まあそうだな」
ロシェルと会話しながら思う。そうでも無いなと・・・確かにここに居る生徒は平均12歳程度だ、その年齢にしては良い動きをしているのだろう。だがステータスに限って言えば現在のサリュの半分程度。因みにサリュの現在のステータスはこんな感じだ。
サリュ・ベルトス♀
年齢 9
Lv 20
ライフ 1200/1200
マナ 110/110
str 1460
def 860
agi 1830
mat 305
dex 201
int 203
ギフト 成長促進 俊敏
魔法技術 身体強化魔法 3(4割増加 マナ=仕様秒数
スキル 迅歩3 暗殺2 短剣術3 剣術2 弓術2
既にBランクのサリュだ、入学したばかりの生徒では太刀打ち出来ないかもしれない。正直総合科の生徒よりも強いだろう。タグ判定では魔力やmat、魔法才能の部分も判定しているし。ただ強いだけでは無く総合力を見てるんだろうな。
こうやって手合わせを見ていて初めて知った事だが、魔法と言うのは魔法名を唱えるのとは別に詠唱と言うのが必要なようだ、例えば今手合わせをしている生徒だが・・・
「炎よ我に力を。空を裂き敵を穿て!〝炎矢〟!」
生徒が詠唱をすると手の平に光が収束し炎の矢が放たれるのだ。
炎の矢はルィエに向かって飛んで行く。速度は矢と言うには少し遅めだ。矢の速度は前世の記憶だと和弓、ロングボウ共に秒速35メートルくらいだと何かの本で読んだ事があったな。
そう考えると時速120キロくらいか?それに比べればだいぶゆっくりだと思う。スローボール程度だな。10メートルも離れれば確実に避けれるだろう。逆に言えば、近距離であれば避けられないか・・・いや詠唱を急いでも3秒はかかる、その間に守りを固めるなりなんなり出来るはずだ。
うーん魔法って意味あるのだろうか・・・
「魔法の旨味は一体一では活かせないのさ、パーティ同士の戦いや近接格闘に至るまでの牽制、死角からの不意打ちが主だね、後は密集地における大規模殲滅魔法、まあこれは複数の魔術師で行うのが前提だけどね、稀に魔法名だけで魔法を発動出来る者もいるみたいだけど・・・ルィエ先生みたいにね・・・」
おっと、思考が口から漏れてたようだ、ロシェルが俺の疑問に答えてくれる。確かに近接格闘中、相手の攻撃を避けながらの詠唱は難しいだろうな。結局の所、一対一に置いては攻撃力と速さが物を言う訳だ。まあ、俺自身については魔法名を唱えるだけで発動出来ている訳だから近接戦闘にも難なく魔法を使う事が出来る。
ルィエも魔法名だけで魔法を発動しているようだ。生徒が打った魔法を同じ魔法同じ威力で発動し、打ち消している。今日の手合わせは、各々が得意な獲物を使い魔法ありでルィエと手合わせをする、といった試験になるようだ。ルィエは自分からは攻撃せずただ避けるか魔法攻撃を相殺するのみ。ルィエが相手の実力を把握した時点で終了の様だ。
どうやら考え事をしているうちに俺の番が来たみたいだ。ルィエに促され目の前まで歩く。
さて、どうやって攻めることにしようか・・・
どうにも更新頻度がイマイチなせいかお気に入りを外してしまう方が多い様です。
正直、自身のモチベーションも下がり気味です。悪循環ですね。




