2話 自分の体を把握しよう
「ある程度は解って頂けましたか?」
「あー、うんそうだな、でもまだ撫子がなんで俺をお兄様と呼ぶのかが解らない。日記にはそこまで書いてなかった」
「別の、続きの日記が有るんです、今お持ちします」
「あっ!ちょっと待って正直もう読むの疲れたからさ、口頭で説明してくれよ・・・」
そう、俺はもうだいぶ疲れていた。精神的に、俺がまるで小説の主人公の様だ。と、そう思っていたのだが、主人公とメインヒロインは父と母だった訳だ。うーん。
撫子はベッドから少し腰を浮かせた。しかし俺の声を聞くとすぐスカートの裾を手で治し、
ニッコリと微笑むとまたベッドに座り直す。
いや、なんかさっきより近くなってないか?
「な、なあ、さっきより近づいて無いか?」
「お兄様を100年もお待ちしたのですから、この程度の役得は許されるかと思います」
「しかしだな、初めてあった訳だしそんなに懐かれる理由が解らない」
「その辺りの理由も説明いたしますね」
また、微笑むと撫子は話し始めた。聞けば、俺自身が、元の体ではなくこちらの世界の新しい体だそうだ。
まず転生の場合、新しい体に自我が芽生える前に転生が為されるらしい。
だからただ転生させただけでは転生陣から最も近い条件のあった体、つまり、ギリギリ生として生まれる瞬間自我が薄ければ薄いほど完全に近い形で転生が成されるらしい。そんな都合よく俺が死ぬタイミングで赤ん坊が生まれる訳じゃ無い。
母達はホムンクルス、いやクローンか、それを作り、俺を最後に見た7歳時点の体まで成長させ、転生させる俺の体として作り上げたらしい。
では、撫子はなんなのか。彼女は、母が俺の転生がいつ成されるか解らない為に、父さんが死んだ後に、
俺の為に作りあげた母のクローンだと言う事だ。
だが、母と言うわけでは無く母の遺伝子に改変を加えて生まれたクローン。遺伝子的にはむしろ母の姉妹に近いのかも知れないとの事だった。
そして、記憶以外の母の知識の一部、価値観、考え方、俺への愛情を与えられている為にこう言う感じになったみたいだ。
撫子は0歳の時点から、きちんと育てられた為、母を母と想い育った様だった。
まあ、確かに、俺より後に生まれた母の子なら、俺の妹になるのかも知れない。
しかし、話し方がなんとも堅苦しい。どうにかならないもんかな。
「なあ、大体解ったんだけどさ。撫子のその話し方はなんとかならないかな。妹は実際そんな話し方はしないだろ?」
「そう言われましても、ではせめて呼び方を少し砕いて兄様と……」
「んーまあ、あんまり変わってない気もするが・・・おいおい慣れていけばいいかな。でだ、
7歳時点の体ってのは解った。たださ俺まだ、自分の体がどんなんか理解できてないんだ」
「では、そちらの姿見で確認しましょう。兄様どうぞこちらへ」
促されて、俺は鏡の前に移動する。その前にはあどけない顔、伸びきった白く透き通る髪の毛、灰色の瞳。
耳は普通だ。父の遺伝が出たんだろうか?
背は130程だろうか、7歳って事だしな、こんなもんだろ・・・
「なあ、父さんや、母さんは白髪だったのか?」
「いえ、母様、エルフは決まって色の濃淡は有りますが金色の髪の毛です。父様は、濃いブラウンの髪でした。人族には金色、茶系、が通常です。ごく稀にアルビノと呼ばれる白髪が生まれることもある様ですが」
「あー、じゃあ俺はそのアルビノってやつなのか?」
「いえ、そう言うわけでは有りません。兄様のその色は獣人族、白狼種のものだと思われます」
「は?んんっ?」
「兄様は、人種の父様、エルフの母様、獣人族の白狼種、竜人族の龍人の遺伝子を受け継いでいます」
「んんん!?なんでまたそんな事になってるんだ?」
「はい、前提として、まず人種、妖精族、獣人族、龍人族、魔族では殆どの確率で、子を作る事は出来ません。遺伝子が2つ均等に混ざらなければ子は出来ない。実際、何度も奥方様や、母様と試したそうですが子を成す事には至りませんでした。そして、父様と母様は兄様の新しい体は丈夫にと、お望みになりました。ですので、獣人族、龍人族の仲間にお願いし、いえ、お願いされて、が正しいでしょうか。4つの遺伝子を得た子、兄様の体を作る事にしたのです。」
「お願いされてってなんだよ・・・」
「獣人族、龍人族の方々は、父様の妻と成られた方々でしたので。2人の子供である兄様の体になるのであれば、私達の子にもなるのだからと。そう仰られたそうです。」
親父いいいいいいっ!ハーレムかよ親父!これじゃマジで主人公じゃねーかよ親父!
【転生したら親父とお袋が異世界でハーレムを作ってた!】
って事だ、なんか、小説のタイトルにでもなりそうだなあ・・・・
「じゃあさ、この身体で、出来る事ってなんだ?ワザワザ4人分の遺伝子を使ってまで、この身体を作ったメリットってあるよな?」
「そうですね、勿論メリットがあります。説明いたしますか?」
「ああ、頼むよ」
俺は軽く笑みを作ると頷く。それを見て撫子は満足したように微笑むと、ベッドの近くにまた移動する。
俺は姿見にもう一度だけ視線を移す。しかし、全くの別人でも無いな何と無くだが、何故かこの身体でも以前の面影があるような気がする。まぁ、両親共に違う身体で転生し、4人から作られた身体なので、似てると言う事は、偶然なのだろうが・・・
表情の作り方とかだろうか・・・ニッと、口角を上げる。斜めから、鏡を見上げる様に。怒った顔をしてみたり・・・
視線を感じて撫子の方を向く。
「兄様、とても可愛らしいと想います。」
くわっ!クッソ!めっちゃ恥ずかしい・・・
視線を姿見に戻す。眉間にシワが寄っている。
顔から視線を外し身体をみる、手足を動かし、体の調子を見る・・・よし、イメージ通り
「悪い。まだこの姿になれなくてさ、なあ、今自分の体を見ていて思ったんだが。竜人族やエルフの特性が見た目に出て無いがどうなんだ?」
「では、身体能力の説明と併せて、兄様の外見の説明も致しますね?」
話しながら、俺はベッドに腰掛ける。それを待って、やはり隣に撫子が座る。これは何だろうな、母の愛情を取り込んでるって言ってたから、母親的な愛情表現なんだろうな。
一応兄妹でも有るのだし、あまり勘違いはしない様にしよう・・・
ではまず外見の説明から始めます、撫子はそう言うと俺の体を少し眺めると。
「兄様?上着を脱いで頂いて宜しいですか?」
「おいっ!何でだよ!」
「説明に必要な事ですから…」
「そうか、まあ、そうだよな、体の特徴を説明するわけだし・・・」
俺は上着を脱ぐと脇にそれを置く。撫子の方に向き直し、これで良いか?と言わんばかりに撫子の目を見る。撫子は軽く頷くと、口を開く。
「まず、外見は、人族の父様に近く調整してあります。人族が最もこの世界で多く兄様がこの世界で生きていきやすいようにとの4人の方々の配慮です。奥方様達のどうせ似るなら自分達より愛する父様にとの意見もありましたが……」
おい・・・それが本命なんじゃあるまいな・・・
「そして髪、体毛の色は獣人族である奥方様のものを引き継いでいます。当初の予定では父様の遺伝を引き継ぐ予定でしたが。白狼種の白髪遺伝はかなり強く抑える事が出来なかった様です」
「成る程、ある程度調節できるものなんだな」
「母様の部分の遺伝は瞳の色になります。エルフの瞳は千里眼や審美眼の能力を備えています。とても役に立つからと、母様が残されました。それにより、白髪、色素の薄い瞳はアルビノの人族の外見に酷似していますしアルビノ自体が希少で見慣れていないので、暴露ると言う事は滅多な事では無いと思われます」
確かにハーフなんて存在しない世界だ、下手に目立つものでも無いだろう。
「最後に竜人族ですが。彼らの種族は元々、人化の法と言う技を産まれながら使う事が出来ます。兄様の場合人族の外見が元々有りますのでそれが常時発動される様です」
「ん?その言い方だと俺も竜化?で合ってるかわからんが、それが出来るって事か?」
「はい、通常皮膚が鱗の様に変化致しますが。兄様の場合は真皮の部分が鱗化するかと思われます、
表皮までの竜皮化も出来ますが、オススメ出来ません。竜皮化後表皮は灼け爛れ元に戻るのに自然回復か、回復魔法による治療、などが必要になります。ですので竜化など以ての外です。幾ら治るとは言え、治療が済むまで、かなりの激痛が生じます」
なんか物騒な話だな・・・まあだが、回復魔法あるんだな・・・良かった、早速覚えなきゃな。
だが、モンスターがいる様な世界だ、いつ何が起こるかわからない。ある程度の覚悟は必要だろう。
「では、兄様、兄様が包まれていた皮膜を破った時の様に皮膚に魔力を通して見て下さい、それによって兄様の場合真皮が竜皮化すると思われます」
「掌が光った時、撫子は部屋にいなかっただろう?」
「ええ、ですがまず、私があの部屋を訪れたのは兄様の魔力を感知したからですし、あの袋自体中から魔力を当てないと破れないものですから…」
成る程、確かに納得。俺は頷いて見せると目を瞑り全身の皮膚に薄く魔力を這わせる様にする。
すると体の中、皮膚の下からピキピキと音がする。それが全身に広がったと思うと、ピリピリとした日焼けの後の刺激が全身を包む。
「うーん、あんまり快適では無いな・・・」
「竜皮化して居なくても、上級の皮装備並みの防御力がありますが。竜皮化すればこの世で最も防具として優れていると言うオリハルコンと並び称される防御力ですので、最高の防御と言っても良いかと思います。真皮の部分の変化ですので、表皮は傷つきますが………おそらく毒に対してのみ表皮に傷が付くので弱いかも知れません」
「オリハルコンあるんだなあ、まあでも致命傷を受ける事は少なそうだ、毒に対しては、まあ早いうちに、対策を考えよう・・・それよりも、俺って今どんな見た目なんだ?」
ベッドから立ち上がり、姿見の前に移動する。手や腕の甲、頰の下顎の周りからうなじから下へポコポコと皮膚の下にうろこ状、ヘビ柄に近いのかもしれない。その様な痕が、体表を覆っている。
顎の辺りからは出ているが顔に出なかったのは幸いだ、首なんて絶対に守るべき所だしな。
確認後ベッドに戻り服を着る。服を着るとほとんど目立たない。魔力を纏うのを止めると肌のピリピリが消える、少しだけ、撫子の座る場所から離れベッドに腰掛ける。
「今の説明でもエルフの瞳や龍皮について触れましたが。次は身体能力の説明に移りますね。」
「ああ、よろしく頼む。」
撫子によれば、各種族特性というものがあるらしい。
人族は、閃き。新しい技術や魔道具など。
妖精族は新しい魔法を作る力や賢さ、そして、長寿の肉体。
獣人族は、基本的な肉体の能力、人族や、エルフ族の何倍もの身体能力。
竜人族は、肉体の堅牢さ、純粋な力に特化している。
魔法の威力も並ではない。
デメリットとして。
人族や、エルフ族は、肉体が脆い。獣人族や、竜人族には遠く及ばない。
獣人族はパワー、スピード、肉体の柔らかさ共に高性能だが、魔法の才が無い。そして頭が少しばかり緩いらしい。
竜人族は、長寿でも有り。肉体、魔法の威力と圧倒的ではあるが。スピードは、獣人族には劣る。しかし圧倒的な魔法の攻撃範囲で殲滅に関して言えば最強では有るが、
そして最後に、絶滅寸前らしい・・・
まあ、全体的に、各種族の良いところ取りみたいだな。
人族の思考力、エルフの賢さ、寿命と精霊の力、獣人族の身体能力、そして竜人族の圧倒的なパワーだ。
まあ、最も個人の資質で、種族の壁をも越える事が出来るのだろうが・・・
獣人族の身体能力を越える人族、と言ったように。
地球でも有るだろう。日本人から見た外国人の運動能力は圧倒的だが、日本人がオリンピックでメダルを取れない訳ではない・・・
少し気になる事がある。自分がどのくらいの強さなのかと言う事だ。
現在この体格は7歳時点で大した事はない筈だ。
「なあ、俺の元いた世界ではゲームや、冒険物の小説、読み物かな?そう言ったものにはステータスと呼ばれる、身体の能力を視覚的、または知覚出来る能力があったりするんだけどさ。そう言う便利な能力ってあったりする?」
「解析眼という能力が有ります…父様が持っていた能力だったと記憶しています。恐らく父様の固有能力では無いかと母様から聞かされています・・ですが、才能、ギフトと呼ばれる技能を視覚的に確認するアイテムは存在しています。冒険者を管理する為のギルドカードにはどの程度のギフトが有るのかを表示する機能が付帯されていますね」
ギルドね、やっぱりあるんだなあ。ま、組合みたいなもんだしな。
自分の能力を知る為には、必要だよなギルドカード。登録しに行った方がいいのか?
「ギルドカードはやっぱり冒険者ギルドで登録するのか??」
此処はテンプレ的に勿論ギルドに行って冒険者に絡まれるってやつだろ?ある意味楽しみだ、是非行かねば。
「そうですね、冒険者ギルドで行います、本人の魔力によって空のギルドカードにステータスを記録していきます。ギルドカードの技術は秘匿とされ冒険者ギルド以外では登録できません」
ほらほら!キタキタお約束だよなー!テンプレきたー!
「通常はですが・・・・・・実は此処でも登録する事が出来ます。」
ーーーーーーーテンプレ来なかった・・・・
なるべく、毎日更新できればいいなと、思っています。
多種族間で、子は出来ない設定でしたが、ごく稀に、出来ると言う事に変更しました。