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1話 学園への道のりと宿場町。

 ラルンド領を出発して3日、俺は既に馬車で出発した事を後悔し始めて居た。まず遅い、恐ろしい程遅い。ラルンド領を移動している時は然程、感じ無かった。スピードが遅い事もだが尻が恐ろしい程痛いのだ。


 この馬車の作りは母さんや親父が500年程前に、既にサスペンションなどを開発していた。それが一般に流通した物らしい。其処から500年も経っているのに全く進化して居ないのでは無いだろうかーーと言うか、この世界って技術の進化があり得ない程遅いんじゃ無いのか?いや、地球の18世紀から21世紀に掛けての進化が急激過ぎたのだろうか・・・


 まあ、それは置いておいてだ、馬車の移動を舐めて居た。王都の位置はラルンド領を西に50キロで精霊の森、森を迂回して200キロ、其処から150キロの位置まで進むと幾つかの村や町が見え始め、王都へと着く事ができる。400キロ以上は進む計算だ。この馬車は少し性能が良いらしく、軽く作られていて馬が引くのも楽そうだ。何せ俺達の荷物や、馬の飼料や、水を空間倉庫に入れる為、荷物自体が少ないからだ。


 もしこれがマジックバッグや空間倉庫無しの旅ならーーー考えるだけで嫌になる。


 馬は1日10キロの草と30リットルの水分を取るからな・・・それだけで大荷物だ。そして移動が終わった後は餌と水をやり、馬具を確認し馬の疲れを取ってやる。頭が痛くなるな・・・因みに俺は撫子に治癒魔法の訓練を受けた為、基本の治癒魔法は使える様になった。なので馬の疲労は治癒魔法で取ってやっている。



「ねえ、わひと?今はどのくらい進んだ位置にいるの?」


「んー森を抜けたばかりだから250キロ程は進んだな、あと150キロと少しくらいかな?」


 サリュは、はぁ と大きな溜息をつくと、俺が思ってはいたが口に出さなかった事を言う。


「わひととサリュなら走れば休憩を入れても1日かからなかったね・・・」


「ああ・・」


 俺もとうとう溜息交じりの返事を返してしまったのだ。



◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎




 変わらず荒野を進み続ける。あれからまた2日ほど、150キロ進んだ。撫子に用意して貰った地図によるとそろそろ、宿場町の筈だ。俺とサリュの尻はもう限界だ。サリュは尻尾をへにゃっとへたらせゲンナリした顔を俺に向けるんだ。


「そんな顔されても俺にはどうしようも出来ないぞ?」


「だってぇ~・・・もうお尻が痛くて痛くて。ツライ・・・」


 そんな話をしていた頃、視線の先に宿場町らしき町の様子が見える。ああ、やっと着いた。これで今夜はゆっくり休めると安堵の気持ちが湧き上がる。


「サリュ!町が見えてきたぞ!今夜はベッドで眠れそうだ!」


「やったね!わひと!サリュは早く身体をきれいにしたいよ・・・ホコリまみれで毛がバサバサするから・・・」


 俺は自分の髪を手櫛で梳くとその言葉に頷く。そのまま馬車は進み町の入り口へと到着する。町の守衛の様な男が立っている。この世界ではどの町や村ですら入り口には守衛を置いているらしいのだ。村であれば村人が交代で行う、と言う事もある様だが・・・


「お、君達も今年の学園の入学生かい?」


 俺達は馬車を入り口手前で止め、守衛らしき男へと身体を向ける。


「ええ、そうですね、宿場町があったので一泊しようかと思いまして。入れますか?」


「ああ、どうぞどうぞ」


「え?」


「通って良いよ?」


「あ、はい、では・・・」


 やけにあっさり通され俺は気が抜ける。てっきり身分の確認くらいはするものかと思っていたからだーーまあ、通れるんなら良いか・・・


 この時期には王都に行く為に此処を通る物達が多いのだろう。俺達は子供だから、学園に入るとすぐ解ったんだろうな。それで簡単に通してくれたんだろう。


 俺は馬車を進めながら町を見やる。人がチラホラと歩いている。活気がある町とは言い難いが、そこそこには賑わっていそうだ。続き馬車をゆっくり進ませると、宿と書かれた建物を見つける。入り口あたりに馬車が1台止まっていた。その馬車の後ろに自分達の馬車を止める。馬車置き場等は無いのだろうか・・・


 俺とサリュは馬車から降りると、宿の中へと進んで行く。カウンターの向こうには宿の主人らしき男が前の客の受付をしていた。前の客は、12、3歳ほどの小綺麗な格好をした少年と、旅装束に身を包んだ見るからに出来そうなフードを被った剣士風の男。そして宿の主人に宿泊の手続きを頼んでいる見た目普通の男の3人組だった。宿の主人は受付をする客の事をパチパチと瞬きをしながら見つめていた。3人組は宿泊手続きを済ませると、やたらとゴツい男に部屋へと案内されて行った。


 カウンターの前に進み、泊まりたいと言う事と、馬車をどこに停めたら良いか聞いた。


「ば、馬車はう、うちの者が裏の馬房に移動してお、おきますから・・・」


 目の前にして見ると、この宿の主人は汗で顔がビッショリだった。最初は太っているからだと思っていたのだが・・・太ってるからなのか?


「ねえほら、あんたぁ、聞く事あんだろう?」


 そして宿の主人の腕にベッタリと張り付く様に、やけに色っぽい女性が自分の腕を絡ませているのだ、店に入った時からずっと・・・


「あ、ああ、あんた等は、今年、学園に入る子達なのか?」


「えーと、まあうん、そのつもりではあるけど・・・」


 そう主人に返しながら隣にあるサリュの顔をちらりと見る。サリュも何時もの様に俺の腕に絡み付いていた。側から見ると腕を組んだ二組のカップルがカウンターを挟んで向かい合うと言う不思議な光景だ。片方の女性、店主に絡み付いた妻?らしき女が俺の周りをキョロキョロと見ると、


「ねえ、あんたたちはサ。連れは居ないのかい?まさか子供だけで来たのかい?」


「ええ、まあそうですね」


「えぇ!子供だけの旅なんて危ないじゃ無いかい!この辺は物騒なんだ。気をつけなよ?」


 そう言葉を返して来た。そして、宿帳に名前を書き宿の説明を受ける。残念だが風呂は無かった、だが桶に湯なら汲んでくれるそうだ。


「えーと、じゃあ、2人で1部屋、銀貨1枚で良いよな?」


 俺は店主に言われた金額を口頭で確認し直すと、懐からあらかじめ用意して置いた銀貨を店主に渡すーーと驚いた事に店主はギュッと俺の手をそのまま握りしめて来たのだ。そして先程の客にした様に目をパチパチと動かす。


「あんた!ほら、こんな可愛い子が困ってるじゃ無いか、やめな!」


 女に言われ手を離す店主。


「ゆ、夕飯は宿のだ、代金に含まれて居ますっあ、あと1時間後にでもどうぞっ」


 そう言うと、俺達の後ろに並んで居た、これまた10歳前後の子供を含んだ4人組の客に視線を動かした・・・俺とサリュはカウンターから身体を動かすと、丁度、先程俺達の前の客を案内して居た大男が戻ってくる。そして店主にボソリと呟くと鍵を受け取り俺達へと向き直った。


「コッチだ、付いてこい」


 男は言葉を発するとこちらも見ずに先行して歩き始め、部屋の前に着くと鍵を開け俺達を部屋の中に案内した。

 俺達が部屋に入ると・・・


「腹が減っただろう、飯は1時間後だそれまでゆっくり休めよ」


 ぶっきらぼうにそう言うと部屋を出て行った。


 俺とサリュはその後、男が持って来た湯桶を受け取るとお互いに背中を向け合い身体の汚れを取った。少しドキドキしたのはサリュには言わないでおく。

 夕飯の時間食堂へ行くと、数組が食事を摂って居た。結構泊まっている様だ。5組程いるだろうか・・・


「ねえ、わひと~早く食べようよ~サリュお腹すいたよ~」


「ああ」


 メニューはこうだ、パンと、スープ、そして冷たいお茶、遠吠え鳥の骨つきもも肉を薬味で匂いを取り、焼いた物が出て来た。鳥の焼いた物は地球で言うなら、山賊焼とでも呼ばれる様な料理だった。サリュの早く食べようという発言に負け、俺達は食事を摂った。他の旅の者達も食事を終え、各自部屋へと戻って行く様だった。




◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎




 サリュはベッドの上に嬉しそうに飛び込むと、ゴロゴロと転がり回った。


「やわらかいよぉーベッド最高ぅー」


「ああ、疲れが取れるな・・・」


「わひとー早く寝ようよー」


「ああ明日も早いし、明日中には王都につけるかもしれない(・・・・・・)しな」


 俺は明日は早いからそろそろ休もうと、そう言うと、ベッドの側の燭台の火を吹き消し、ベッドに静かに横になるとサリュが腕に絡み付いて来た。


「おやすみぃわひと」


「ああ、おやすみサリュ・・・」


 目を瞑ると段々と眠気が襲って・・・おそって・・・・















 くるワケあるかっなんだこの宿、怪しすぎるだろ!怪しすぎて夕飯に解析眼かけたけど冷たい茶の成分なんだよ!サイミンダケの茶ってなんだよ・・・店主の側にいた女も能力値が一般レベルじゃ無かった。もちろん案内のゴツい男もな!


 ふうっと溜息をつき気持ちを落ち着かせる。サリュの肩をトントンと叩くとサリュが目を開ける。サリュの目の前で口元に指を当て静かに、のポーズをとる。もちろんサリュにもお茶は飲ませてない。飲むフリをして空間倉庫に2人ぶんの茶をぶち込んで置いた。


「ん?」


 サリュが何か声を出しそうだったのでサリュの口を手で塞ぐ。サリュは、じいっとこちらを見ると目を細め近づいてくる。眼前まで顔が近づきやっと意味がわかった様でコクコクと頷いた。そういや猫って意外と視力が弱かったな、動く物を捉えるのには適した目らしいが・・・まあ、それは今は良い。


 サリュの耳元で小さい声を出す。


「この宿怪しすぎるからさ、これから俺が指示を出したら、その通りに動いてくれるか?」


 コクコクともう1度サリュが頷く。俺達は狩りをする時にスムーズに連携が取れる様にハンドサインを決めていたのでそれを使う事を伝える。



そして俺はこの宿を覆う様に空間認識サーチ地図ソリッドをかけた。


 




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