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10話 辺境伯の館へ

重いまぶたを開ける、いま何時かは解らないが、 濁ったガラス窓から光が差し込んでる。


撫子が俺を起こしに部屋に入ってくる。

ダブルほどのサイズのベッドがある、簡素な部屋だ。病室みたいで俺は妙に気に入ってる。



「10年も住んでた(・・・・)様なもんだしなぁ。」



ボソリと呟きベッドから体を起こす。

さてと、今日は何をするか。朝飯でも食いながら考えよう。

しっとりと湿って気分の悪い上着を脱ぐ、寝汗をかいたみたいだ。


アスガレリアのラルンド、この地域には四季がある様で、日本とほぼ同じ四季だ。

月の数え方は一の月、ニの月、三の月とそのまま数えて行く。今は九の月の終わりの辺りだ、この世界に来たのは七の月の初めの頃だから。

3ヶ月弱たった事になるのか。


今日は暖かいんだろうな。上着をクローゼットから出し、日中着に着替える。

さて、と部屋から出ようとすると入口の前には、まだ撫子が居た。



「何してんだ?」


「兄様の、御着替えを拝見して居ましたけど?」



聞かなかった事にしよう。

俺が先に歩き、撫子が少し後ろを付いて来る。

食堂に移動すると、朝食の用意が済んだ後で、サリュが席に着いた所だった。



「あ、ナデシコさん、ワヒト、おはよう。」


「ああ、おはよう。」



俺も席に着き、頂きますを言う。

サリュも〝イタダキマス〟が気に入った様だ、俺の真似をする。

相手の命を頂く。作ってくれた人への感謝の意味だ、と教えた事があり。

命を頂くと言う所が獣人族の文化にマッチして居て、気に入ったらしい。

行儀は悪いが、俺は食事をしながら撫子に問いかける。



「インベントリを誤魔化す為にさ、ダミーに使えそうな収納系のアイテムってないか?」


「それならば、マジックバックと言う物があります。ギルドの近くに専門店があります」


「そうか、なら午前にでも行ってみるよ」


「それとこちらの町の領主であるルース・ラルンド伯が、兄様にあって見たいそうです、本日午後から、ラルンド邸に、薬を届けに行くのですが兄様にも来て頂けますか?」


「あー良いけど、サリュと出掛ける予定だったんだよ、一旦帰ってくれば良いか?」


「でしたら、サリュも一緒に、ラルンド伯はそう行った事は気にしない方ですので」


「そうか、じゃあ。ギルドで待ち合わせる事にしよう」



食事を済ませ、サリュと朝の鍛錬をし。マジックバッグ屋を探す、途中サリュがあっちこっちに寄り道して大変だった。主に食べ物系の屋台だったが・・・


ギルドの前に着く、すると入口近くにいたガタイの良い男に話しかけられる。



「おう、クロトにサリュじゃねーか?素材の買取りか?」


「いや、今日はマジックバッグ屋に」


「なるほどな!まあ、背負って来たり、引きずって来たりとかなあ。オーク狩ってくる時なんて、ガキどもが1匹丸々引きずってくるから。アレはかなりエグい光景だな!」



ギルドでは10歳登録だが、5歳で登録出来る獣人のサリュがいる為、サリュの

名義で売っている。手伝うのは冒険者じゃ無くても良いらしいので文句は言われない。


ちなみにサリュのランクはCランクで適正ランクだ。



話しかけてきた男はこの街に5人滞在して居るAランク冒険者のうちの1人、ラッチェスという男だ。

子供の俺達が冒険者をして居るのが珍しかったのか、ギルド内で話し掛けてきて色々と教えてくれて居る。



「そう言う事なら、マジックバッグ屋は隣だぞ!」



なぜ今の今まで気が付かなかったのか、だが、看板もなし店先に商品も出てない。

まあ、気がつくはずもないか。商売する気あるのかな?



「わかりにくいよな!良いのがあると良いな!」


「ありがとう、ラッチェス。」



礼を言い、隣の店に入る。店の中はきちんと店らしかった。色々な見た目のバッグが置いてある。 店主らしき女性が話しかけてくる。ブロンドのショートカットの快活そうな女性だ。



「いらっしゃい、マジックバッグ買うの初めて?説明いる?」


「あー、そうだね、説明して貰おうかな?」


「あはは、なんだか子供らしくない子供だね。えーとまずねマジックバッグって言うのは、魔石付きの普通のバッグに拡張呪文を掛けたものなんだよ。魔法のランクにもよるけどランク3 くらいの魔法でバッグの容量の30倍くらいかな、ランク1で10、2で20って具合にね!うちの店は、アタシがランク4だから40倍まで掛けれるよ!凄いっしょ?」


「へー 成る程、じゃあ、大きい鞄を買って魔法をかけて貰った方が良いと?」


「まあ、そう言う事になるねー」


「質問だけど、大きい物はどうやって入れるんだ?」


「お、良い質問だね!普通のマジックバッグは入口を越すサイズは入らないんだけど、ランク4で使える様になる外殻拡張って魔法があってね。バッグそのものを決まったキーワードで、決まった時間だけ拡張出来る様になるんだよ。」


「大きい物を入れたい時だけ、キーワードを言ってしまってから、物を入れバッグ自体の大きさを戻すって感じだな」


「そう言うことさ!アタシのオススメはね!ウエストバッグに普通の拡張を掛けて、武器や食料品、それで、コッチのリュック型に拡張と、外殻拡張を掛けて、魔物の素材入れ、大型の武器とかテントとか突っ込んどくのがオススメだよ!こうやって背負えば邪魔にもならないしね!良いだろう?」



店主はリュックを背負いながら教えてくれる。店主が見せてくれたのは元の世界での、サイクルバックパックみたいな作りのものだ。確かに便利そうだな。デザインも悪くないし、背負いながらも戦闘するには邪魔にならなそうだ。まあ、インベントリのある俺には関係なさそうだが。



「後はなんと!このリュックは魔物の革を使ってるから、背中の防御にもなるよ!」


「成る程。それは考えてあるね。」


「そうでしょう、そうでしょう!」



店主は満足そうに頷く。



「サリュはどれが欲しい?」


「良いの?えーとね、ウエストバッグのこっちのタイプのやつかな。」



良いの?と言いつつ、ちゃっかり選んでいた様だ。

じゃあ、俺はバックパックタイプにしよう、インベントリの誤魔化しの為に買うのだから。大きい方が魔物を入れていても違和感がない。店主に伝えて金額を聞く。



「ああ、そっか初めてだったね。マジックバックは魔石に魔法効果を込めるんだけど、魔石内の魔法が切れるとただのバッグに戻るんだ。だから、月に一度魔石の更新をしなきゃならないのさ。だからマジックバッグ屋は拡張魔法と付与魔法が必要なのさ!コレでもアタシは、できるオンナなんだよ?そう言う事だから今日貰う代金はバッグ代と魔石代、初回分の魔法代だよ。」



ウエストバッグが銀貨1枚

バックパックが銀貨5枚

魔石が2個で銀貨4枚

魔法代がランク4拡張が一回銀貨5枚

外殻拡張も銀貨5枚、だそうだ。


バックパックには今後は必要ないが、怪しまれない様に今回は払っておこう。

全部で銀貨25枚だ。結構するな。それで月に一回5万だ維持費も馬鹿にならん。

だが、効果が切れると言うのは良いのかもしれない。マジックバッグの盗難をする意味があまりなくなる。何が入ってるか解らないバッグを盗むのもな。



考えながら、代金を払い。商品を受け取ると早速店を出て、


ギルドの前、待ち合わせした場所で撫子を待つ事にしたのだ。



◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎



ギルドの近くの屋台で串肉と、パンでハムと野菜を挟んだ物をかい、サリュと食べる。

こいつ、来る時も結構食ってたよな。と思いながら、サリュを眺める。



「ハムハムッ・・・ングっ!」



喉に詰まらせやがった。早速マジックバックを使うフリをして、アスガレリア製ステンレスの取っ手付きカップに水を汲んで渡してやる。

このカップは暇な時に〝抽出〟の逆魔法、で新たに作った〝合成〟で作ったなんちゃってステンレスだ、耐食性だけ高めて、硬さなどは模索中だ。取り敢えず錆びるということはない。


ゴクッゴクッ!


「はあ、危なかった、モグモグ。」



・・・懲りないやつだ。

すると目の前に馬車が止まる。

うちの馬車だ、中には撫子が乗って居る。

因みに御者はケインと言う若い男だ。普段から馬車の御者をしてくれて居る。



「あ、坊ちゃん!サリュちゃん。乗ってくだせえ、中でナデシコ様がお待ちですから!」



ケインがそう言うと馬車の扉が開く。



「クロト、気を付けて乗ってね。」



撫子に手を引かれ。、俺とサリュが馬車に乗り込む。席に座ると馬車が進む。中では、マジックバックを撫子に見せたり、インベントリとどう組み合わせるかを話し合ったりした。

サリュにはインベントリという特殊な魔法が使えるという事は、バレて居るし、本人も口外はしないと約束してくれて居る。

馬車がラルンド邸に着くと、一旦門で止まり確認の後は、またしばらく走り出したあと止まった、どうやら着いた様だ。


さすが辺境伯邸だ、庭も広けりゃ館もデカい。門からここまでの間に見た鍛錬場では兵士達が鍛錬をして居た。そうだよな辺境伯邸なんだ、それなりにお抱えの騎士も居るだろう。撫子に聞くと騎士の数は50名ほど居るらしい。


騎士が50名って事はなんだかんだ言って一般兵を集めれば1000名規模の部隊になるって事だな。


となると

其れなりじゃ無かった、めちゃくちゃ多いじゃないか。マジかよ舐めてたよ。

辺境伯凄いな。

人口は20万前後、辺境伯傘下の貴族などが治める土地も合わせれば。人口は50万人程だと言う。


まあ、獣人国のガルス帝国に隣接して居るんだ、このくらいの領土を治めていないとダメか。まあ、獣人が出入りしてるくらいだ。今の所、関係は良さそうだが。

因みに冒険者ギルドは何処の国にも属さない。法の罰はその国で受けるが戦争などに強制参加。とはならない様だ。

傭兵扱いで、参加とかはあるらしいが。


さて、今は館というかちょっとした城というか・・・まあ、その中を歩いて居るところだ。まあ広い、本当に広い。メイドの数も半端じゃない。

いかにも仕事の出来そうな執事が案内をしてくれている。

客間の前に着いた様だが、中から怒鳴り声が聞こえる。ガチャリとドアが開き男が出てくる。


痩身の背の高い男だ、180くらいだろうか。俺達を見た後、彼はサリュに視線を移すと。上から下まで眺め、サリュの耳に目線を移すと、サッと下を向き何も言わずにその場を離れていった。



「旦那さま、お客様をお連れ致しました。」



執事がラルンド卿に頭を下げると、ラルンド卿が返事を返してくる。



「ああ、お前は客をもてなす準備をしてくれ。ああ!良く来た!ナデシコ殿!弟君を連れて来てくれたのだな!

いやぁ、ナデシコ殿も美しいが君も美しいな!いや。男子に美しいは失礼であるな!ハッハッ!」



ラルンド卿はそう言うと、豪快に笑う。背は190センチはあろうか。貴族らしい格好はしているが。服がパツパツだ、肩幅も広く、筋骨隆々といった具合だ。


しかし、此処でもナデシコ殿。

俺はナデシコを見ると、ラルンド卿が俺の顔を見て、俺の言いたい事が解ったのか、こう付け足す。



「イヤ、我輩も、もう45程にもなるが。ナデシコ殿は我輩が小さい頃からこう美しくあったからな。エルフだから当たり前なのであろうが。我輩の父の時代からこうして薬師として世話になっているのだ。まぁ本人はただの治療師だと言って譲らんがな!ハッハッ」



成る程、それで殿付けか。



「さあさあ、其処で楽にしてまぁ座って話そうっ!我輩、ナデシコ殿の弟に会うのが楽しみでな!君がそうなのだろう?後は、そちらの女性は?」



ラルンド卿はサリュをの方を向き紹介を求めてくる。

ちょっと暑苦しい人だ、そして声が大きい。



「えっと、サリュ・ベルトス、です。色々あってナデシコさんとクロトのところでお世話になっているんです」



「あー、クロト・デュアリスです。姉がいつもお世話になって居ます」



俺達は軽く頭を下げて自己紹介をする。



「あー、そう硬くなる必要などないのだぞ?まぁ茶でも飲みながら話そうではないか!」



ラルンド卿に促され、俺達はソファに腰を下ろす。

メイドに出された紅茶の様なものを一口。するとナデシコがラルンド卿に問いかける。



「先ほどの方は、カザール子爵ですか?」


「ああ、そうだナデシコ殿も知っておったか、ふむ、そうである、カリュクス・カザール子爵であるな」



ラルンド卿も、紅茶を口にやる。少し考えた様子で話し始める。

チラリとサリュを一目だけ見る。



「最近、隣のガルス帝国から獣人が此方の冒険者ギルドに来るのが多くてな、来るのは良いのだが。どうにもその後、行方不明になる物が多いのである。それで、少しある噂(・・・)の有るカザール子爵と話して居たのだよ。」


「そうですか。それで噂というのは?」



ラルンド卿は少し考えると・・・



「ナデシコ殿になら言っても良かろう・・・・・獣人の奴隷を多数、囲っているという噂だ。」

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