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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第五章
99/192

7話

 

 そして次の日。

 俺は目が覚めて早々にリリーナの部屋に向かう。


「おーい、リリーナー! 起きろー!」


 部屋の外からリリーナを起こすべく、ほかの二人に迷惑にならない程度に声を出す。

 しかし、返事はない。

 俺はリリーナが寝たふりをして少しでも時間を稼ごうとしてるのではないかと勘繰り、まずはこの前習得した『聞き耳』スキルを発動させてリリーナの部屋のドアに耳をつける。


『聞き耳』スキル。

 それは一時的に通常の何倍にも聴覚を鋭くして、普段は聞こえないような小さな声や音をまるですぐそばで聞こえているようにしてくれるという優秀なスキル。効果範囲はまだしっかりつかんでいないが、隣の部屋の音や声がしっかりと聞き取れるということぐらいは実証済みである。

 この優秀なスキルをレベルが上がって新たに得たスキルポイントを振って覚えたのである。ちなみにスキルは盗賊のザックに教えてもらった。職業盗賊はかなり優秀なスキルを覚える。俺は本当にいい弟分を得た。

 ちなみに本来の使用用途はザックによると『敵感知』と併用して使うものらしい。『敵感知』で敵の存在を捉え、『敵感知』では完全に捉えきれない敵の数、距離、方向を正確に捉えることができるスキル。それが『聞き耳』スキルだ。

 その他にも滅多にいることはないみたいだが山賊のような『敵感知』反応しない敵にも効果があり、なにか気配を感じたら即聞き耳というくらいのものらしい。

 本当に色々な部分で便利なスキルだ。

 その優秀すぎるスキルを使ってリリーナの部屋の中の音を盗み聞き……盗聴……いや……確認すると、中からはリリーナのすうすうという寝息のみが聞こえてきた。

 どうやら図々しくもまだおねむのようである。メイドのくせに生意気だ。


「仕方がない……」


 寝ているからと言って甘やかすほど俺は甘くない。今日一日は俺はリリーナのご主人様。俺が上であいつが下だ。俺の命令にリリーナは絶対服従だし、リリーナは俺の命令に逆らうことはできない。

 俺はポケットから針金を取り出すと、この前『聞き耳』スキルと一緒に教わった盗賊スキル『鍵開け』を行使してリリーナの部屋の鍵を一瞬のうちに音もなく解除する。

『鍵開け』スキル。

 これは文字通り鍵のかかったものを解錠するスキルのことで、針金のようなピッキング道具があれば大抵の鍵を開けることができるスキルらしい。大抵の、というのは鍵穴に魔法がかかっていたり、鍵穴が何らかの理由で塞がっていたりというピッキングではどうにもならない場合のことである。

 逆に言えばそんな特殊な鍵穴はほとんどないので、だいたいの鍵をこのスキル一つで解除することができるのである。


『鍵開け』スキルを使ってリリーナの部屋の解錠を済ませた俺は、音を立てないようにこの前ザックから教えてもらった最後のスキル『忍び歩き』を使って音もなく侵入。

『忍び歩き』は『鍵開け』と同じくそのまんまのスキルだ。

『忍び歩き』を発動させると自分の足音を完全に消すことができ、『敵感知』や『聞き耳』と併用して魔物に奇襲を仕掛けるのに大変優秀なスキルである。

 効果の確認はこの前ミカを後ろから不意に驚かすというドッキリ企画で実証済みである。その対価はミカの『金剛力』フルスイングだったことが俺の唯一の誤算である。


「コイツも大人しくしてりゃあ可愛げもあるし、お嬢様っぽくて女らしいんだけどなー。やっぱ属性って大事だわ。属性一つですべてが台無しだわ」


 自分のベットの上で幸せそうな顔で安眠しているリリーナに勝手な感想を抱きつつ、どうやってリリーナを面白おかしく起こしてやろうか考える。


「水を顔にぶっかけるのは芸がないよな。大声を出して驚かすのも普通すぎる。かといって胸でも揉もうものなら明日には俺はこの世にいないだろう。どうしたものか……」


 部屋に侵入することばかり考えていて、その後のことをなんにも考えてなかった。


「んー、とりあえず日課のリリーナのパンツの色チェックでもしとくか」

「しとくか……じゃないわよこの変態!」

「ゴルバチョフ!」


 布団を静かに捲り、ネグリジェの裾を持ち上げようとしたら目を覚ましたリリーナに頭を杖で殴られた。


「ってーっ! おい! ご主人様に対してなんてことしてくれるんだ!」

「はあーっ!? ご主人様?」


 リリーナが大声で叫ぶものだから俺は咄嗟に口元に人差し指を当て、静かにという旨をリリーナに伝える。

 リリーナもまずかったというのがわかったらしく、声を抑えて改めて質問してきた。


「で、ご主人様って勝負に勝った賞品のことでしょ。でもそれは明日って話したじゃない。なんであんたがここにいるのよ」

「何言ってんだお前。お前は日付が変わる時刻も知らないのか? そこに壁掛けの時計があるんだから自分の目で確かめてみろよ」


 俺はそう言うと、わざわざ火属性魔法で小さな光を作ってやり、壁掛け時計を見るように親指で指示する。


「はあ~? あんた何言って……ユウマ、あんたまさか……」

「今の時刻は深夜十二時五分。明日一日俺のメイドという賞品の()()だ。つまりリリーナ、お前はもう一時的に俺のメイドだ」


「嘘でしょ……」


 俺の楽しい楽しい一日が始まった。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ねえ、明日の朝からにしましょうよ。私まだ一時間も寝てないんだけど」

「それはお前が悪い。俺はちゃんといい子だから六時には夕食を取って、お風呂にも入って、七時には夢の中にいたぞ」

「いや、ユウマは全然いい子じゃないでしょ。それに一億歩譲っていい子だったとしても、いい子はそんなに早く寝ないわよ! ……はあ~、通りで昨日はやたら静かでユウマの姿を見ないと思ったわ。嵐の前の静けさってやつだったのね」

「嵐か……なんかカッコいいな。知識の嵐ユウマとかみたいな二つ名がほしい」

「どれだけポジティブなのよ……」


 まだ今日が始まって三十分も経ってないのに楽しくて仕方がない。

 これは本当に良いことがありそうだ。


「それで、まず私は何をすればいいの? 言っておくけどミカとアイリスが寝てるからってエッチな命令はなしよ」

「わかってるよ。俺だって自分の命をそこまで粗末にはしないさ」

「そう、それなら安心だわ。それで、なにすればいいのかしら?」

「とりあえずこれに着替えてもらおう」


 俺はそう言うと『ゲート』を使って、こんな日のためにコツコツ作っていたあるものを取り出す。


「……ねえ、これって……」

「あぁ、メイド服だ。形から入るのも大事だろ」


 そう、俺の手に握られているのは白と黒を基調として作られたフリフリのメイド服。変にアレンジなどを加えていないシンプルなメイド服だ。


「あんたこんなのものまで買ってたのね。メイドもいないのに」

「はあ? そんなわけないだろ。作ったんだよ、自分でな」

「え? なに、どういうことよ?」

「最近、街の衣服屋のお姉さんに『裁縫』スキルを教わってきたんだよ。そしてそれが試作一号」

「ユウマ……あんたホントにどこに向かってるわけ……」


 リリーナが俺を若干冷めた目で見てきたが、気分のいい俺はそれすらも喜びに変えてしまった。

 一応説明しておくと、俺の取った『裁縫』スキルは名前の通り裁縫ができるようになるスキルだ。

 ただ俺の裁縫の経験など中学の時の家庭科、それも不登校になるまでのほんの一時だけの知識しかなかった。それだけが不安材料だったのだが、教えてくれたお姉さんが「知識がなくても道具と想像力があれば大丈夫よ。あとはスキルがサポートしてくれるわ」と言ってくれたので取った。

 帰りに道具を一式お姉さんに売ってもらい、早速試しに何か作ることにした俺はお姉さんに言われた通り、まずは作りたい衣服の想像をする。

 その時俺は一番想像しやすかったメイド服を想像した。するとお姉さんの言っていた通り、指先がまるで自分のものでないように勝手に動き出し、ものの数時間で一着のメイド服(しかも店で売っているような仕上がり)ができた。


「……はあ~。まあ、しょうがないわね。着替えるから部屋出てなさい」

「何言ってんだリリーナ。俺はご主人様だぞ? メイドの着替えを覗くのは当たり前だろ」

「そんな当たり前はないわよ! バッカじゃないの! ほら、さっさと出て行って。『ウインド』!!」

「のわっ!」


 リリーナの生着替えを拝もうと正座待機していたのに、初級風魔法で簡単に部屋の外まで吹き飛ばされた。

 もう一度入ってやろうとノブを回そうとすると、ノブが回らない。どうやら何かの魔法でドアを封じられてしまったらしい。

 なんでこういうことだけ頭が回るんだあいつは―――

 あと、今度ザックあたりに『透視』スキルみたいなのがないか聞いておこう。

 しばらくリリーナの生着替えを妄想していると、部屋からリリーナが出てきた。


「く、屈辱だわ。高貴なる私が使用人の服を着させられるだけじゃなく、ユウマなんかのメイドをしないといけないなんて……」


 中から出てきたリリーナは一言で表すなら素晴らしかった。

 フリフリのカチューシャから始まり、胸元の赤いリボンが大きな胸に乗っかって一味違うエロスを漂わせ、スタイルのいいリリーナだからこそ実現できている腰の辺りをキュッと絞ってからの大きく開くフリフリのスカートが華やかさを増し、わざと少し短く作ったことにより剥き出しになっている足が窓から差し込んでくる月明かりに照らされ妖艶な雰囲気を醸し出す上に、必死にパンツを見られないように顔を真っ赤にしながらスカートを下に引っ張るツンデレお約束の反応。

 すべてが完璧だ。


「パーフェクトだぁぁぁぁぁぁぁぁあ――――っ!!」


 完璧だ。完璧すぎる。

 自分の才能が恐ろしいぜ。

 これが何かを秘めている女の子をアイドルにスカウトする奴の気持ちなのか。もしかしたら俺は恐ろしい魔物を生み出してしまったのかもしれない。

 ははは……怖いぜ、こんな逸材を見つけ出し、最高の形にしてしまう自分の才能ってやつが……。


「最高だぜリリーナ! お前もやればできるじゃないか! 無駄にでかいおっぱい! 羞恥心だらけの顔! 恥ずかしそうにスカートを引っ張る姿! お前にしては上出来だ! 満点だぜ!」


 俺がここまでリリーナをべた褒めするくらいには完璧だ。

 もう完璧なんて言葉じゃ足りそうにないな。

 そう、いうなれば――――


「完全完璧という意味で全壁!」

「くうぅぅぅぅぅぅぅぅぅうーーーーーっ!! 少しはだまりなさいよーーーーーーっ!!!」

「フラフープっ!?」


 魔法使いとは思えないパンチをモロにもらった俺はそのまま気を失った。


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