4話
「さて、ミカの体調も整ったみたいだし、本格的にクエストやるか。いいかミカ! お前のせいで遅れた時間分はしっかり自分の力で取り戻せよ」
「私、絶対さっきの時間は私のせいじゃないと思う。私を拘束して振り回したユウマのせいだと思う。街頭アンケート百人に聞きましたで百二十人が絶対にユウマが悪いって言うと思う」
「百人にしか聞いてないのに百二十人が俺が悪いって言ってる時点でホラーだな。都市伝説かよ」
ミカの体調が回復してから改めて岩石地帯に入り、今回の討伐対象であるスモールゴーレムを探す。
今回受けたクエストは『スモールゴーレム三体討伐』報酬は十万ギルで岩石地帯までの移動時間は片道一時間くらい。往復で二時間、スモールゴーレムは見つけさえすればミカが瞬殺してくれるので最短で三十分かからずに終えることができるはずだ。
上手くいけば午前中にもう一クエストくらい受けられるかもしれない。
今回の勝負で重要視されるものとして報酬が一番のように思われるが、実は違う。時間だ。
例えば三時間で五万ギル稼げるクエストを一回受けるのと、一回のクエストで二万ギルしか稼げないが所要時間は一時間のクエストがあったとしたら、どちらが得になるかとなると当たり前に後者となる。
つまり報酬がいいからこのクエスト! というのは今回に限っては間違いになる。
その点今回俺が厳選に厳選を重ね、慎重かつ丁寧に選んだスモールゴーレム三体討伐、報酬十万ギルは三時間で十万ギルを稼げる良クエストにあたる。
今回のパーティー編成は火力とサポートがしっかりと別れた編成だ。リリーナチームが火力はリリーナ、サポートはアイリス。こっちのチームは火力はミカ、サポートは俺。
似たような編成であるが、違う部分が確かにある。それは火力担当であるミカとリリーナの性能の差だ。
魔法と物理というわけではない。同時に相手できる相手の数の差だ。
リリーナは各種属性魔法で広範囲攻撃が得意だ。つまり多対一の対戦に向いている。それに対してミカの『金剛力』というチートは単体相手や数の少ない相手にその本領を発揮する。
物理的に攻撃するミカは自分の間合いに敵がいなければ攻撃を仕掛けることができない。一体に対して一度に与えられるダメージの多さならリリーナを上回るミカだが、多数に対し遠距離から効果的に攻撃をできるのはリリーナだ。
つまり今回俺が選ぶべきなのは、スモールゴーレム三体討伐の様な少ない相手を討伐するだけで大金の手に入るクエストだ。
「やっぱり岩石地帯って歩きづらいねー……って、おわっ!?」
俺の隣を歩くミカが転んだ。これで岩石地帯に入ってから三回目である。ちなみに何にもない草原で転んだ回数は四回。これでも今日はまだ少ないのだからミカの天然ドジはすごい。
「大丈夫かよ。さすがに転び過ぎだぞ」
「だってー、ここ足場悪いんだもん。そう言うならユウマが抱っこするとか、おんぶするとかしてよー。もうこんなとこを歩きたくなーい」
転んでしりもちを付いたままの状態でミカが弱音とわがままを吐く。
そんなミカに仕方なく俺は手ぐらい差し伸べてやろうとため息を吐きながら近づく。
日本にいた頃からこんなことはしょっちゅうだったし、日本でさんざん世話になってるのだからこれくらいはしてやることにする。
「ほら、手貸してやるから立てよ」
そう言ってしりもちを付くミカの前で手を差し伸べた俺に、ミカが目を変に光らせて反応する。
「おりゃっ!」
俺の手を取り立ち上がったミカはそのまま俺の腕にしがみついてきた。
「のわっ!? なにすんだミカ!」
「えへへーっ。こうしてれば転びそうになってもユウマが支えてくれるし、私安全!」
「あのなー。幼馴染だからってこういうのはよくないと思うぞ。こういう女子側としてはなんともない感じでやってることでも、男子からすれば特別なことで勘違いするんだ。それでもしかして俺のこと好きなの? って勘違いして告白したら「え? ごめん、それちょっと無理」とか、真顔で返されて一生のトラウマを抱えるんだ」
「……ねえ、なんでそんなに話がリアルなの……?」
俺の女子に伝えたい男子の内心事情をミカに伝えたところで、ミカがなにやら寂しそうな、それでいてどこか悲しそうな目で俺を見る。
まずい! このままでは小学生の時のトラウマがバレてしまう。
「ち、違うぞ! 俺の話じゃないからな! 俺ほどの男にもなればこんな小さなことで勘違いなんてしない! 女子に手を取られたくらいで勘違いしないし、朝学校に行ったら自分の席に女子が座ってても勘違いしないんだ! そう! これは俺の友達の話だ!」
「……ユウマ、日本での友達って私しかいないじゃん」
「―――」
やったーーーっ!!
やっちまったーーーっ!!
そりゃあミカだって俺と同じく日本からきて、それに幼馴染で家が隣同士なんだから俺のことそりゃあよく知ってますよね!
俺に友達がいないことなんてバレバレの筒抜けですよね! そうですよね! はい!
「いいいいいい、いるしーっ! 俺、友達いっぱいだしー! 中学生の時には友達百人できるかな達成してたしー!!」
バレてるとわかっていても、それでも強がってしまうのが男の子である。
違うかな? 今回の場合は違うか? いや、あってるってことにしておこう。そうした方が俺の精神衛生上の為だ。
「……それってネットの中のこと? ネットでだってユウマ友達いないよね? 友達になった次の日にはその友達がユウマの行動について来れなくてユウマが逆上して友情破綻してたよね?」
「――――」
そうだったーーーーーっ!!
俺ってばネットですらボッチだったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
その日に友達になって、次の日には俺が圧倒的に強くなってて、あまりに下手な動きをする仲間を罵倒していつも一人だったなぁ!!
そりゃあ周りはちゃんと学校に行ってる学生だったり社会人なんだから学校に行ってない学生の俺より時間少ないのは当たり前なのに昔の俺ってばマジ最低!!
「そそそそ、そんなことねえし。ちゃんとパーティー組んでたしー……」
自分で言ってて自信を無くしつつ、ミカから目を背けて言葉を発する。
「それだって全部自分の他のアカウントだったり、私だよね? 私が学校行ってる間は自分で一人何役かしてパーティー組んで、学校から私が帰ってきたら私にパーティー組めって言って組んでただけだよね? だって私ユウマが私以外とパーティー組んでたのほとんど見てないもん」
「―――」
んがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!
そうですよ! 俺ってばミカしか友達いなかったですよ! ネットですらボッチになっちゃうボッチの中のボッチですよ! ボッチの中でもボッチになっちゃうキングオブボッチですよ!
悪いかこのやろーっ!!
「ううっ……」
「ユウマ、もう日本でのことは忘れよ? ねっ?」
「う、うん……」
幼馴染にトラウマを掘り出されて、泣いてる男がそこにいた。
っていうか俺だった。




