3話
三日間置きという投稿予定を守らずにすいません。
でも、今日から毎日投稿です。
「なんでこうなった……。どうしてこうなった……。なにがどうしてこうなった!!」
じゃんけんによって二グループに分かれることのできた俺たちは最後に改めて今回の勝負内容、勝敗の決定法、禁止事項を確認し、同時に屋敷を出た。
そして現在俺はクエストの指定場所である岩石地帯へ続く、街の前の草原を歩いている。
ルールは単純にまとめると三つ。
一つ目は二グループ二名ずつに分かれて、一日の獲得金額によって勝敗を決定する。
二つ目は時間は日の沈むまでということで六時まで、それまでにギルドのお姉さんに報告して報酬をもらったものまでを一日の獲得金額とする。つまり、六時ちょうどに終えたクエストは今回の勝負では無効となる。
そして最後に互いのチームの邪魔を禁止する。
これはお互いに得がないので必要ない可能性が高いが、念には念を。ということで一応入れておいたルールだ。
今あげた三つの事項が今回の勝負のルールとなる。
それは別に問題ないのだ。俺だってまともなルールだとは思う。まあ、裏がないルールだから卑怯な手を使いにくいという意見もあるが、リリーナ相手くらいなら卑怯な手を使わずともどうとでもなるだろう。
では、何が問題なのか。
それは―――俺の今回のパートナーだ。
「なんで……なんで俺のパートナーがアイリスじゃないんだ!! どうして未来のパートナーであるアイリスが俺の隣にいない! どうして俺の隣にはミカがいるんだ!!」
厳正なじゃんけんの結果、俺のパートナーはミカに決まった。
しかも一回もアイコになることなく、まるで神様が運命で決まってますよ。とでも言いたいかのような速さで勝負は決した。
「なんでユウマは本人を目の前にそんなこと言うかなー。そりゃあアイリスちゃんはかわいいけど、わたしだってかわいいでしょ? ユウマの最愛にして最高のかわいいかわいい幼馴染じゃない」
ミカが自分の思うかわいいポーズを取りながら俺に言う。
ちょっと萌えた。
「最愛じゃないし、最高でもないし、かわいいは一個で足りる」
「えー。まったくユウマはひどいなー、もうー。……あ、でも一個はかわいいつけてくれるんだ」
「そりゃあ幼馴染補正だな。幼馴染じゃなかったらミカは俺にとってドジでしつこいだけの面倒な女、ということになっていたはずだ」
「ユウマの中の私っていったい……」
俺の言葉に肩を落とし、明らかに落ち込むミカ。
でも俺だって頑張ったのだ。ミカにかわいいを一つつけてやっただけでも、俺の心からあふれ出ている善意とか優しさとかを感じてもらいたい。
「それにしても私たち、なんだかんだいってこの異世界に慣れちゃったねー。こっちに来たときはどうなるかと思ってたけど、なんだかんだ言ってどうにかなってるし、ユウマとちゃんと会えたし。私、もうこっちの世界で生きてくのもいいかなーって思うよ」
岩石地帯へと続くそよ風の気持ち良い草原を歩きながら、ミカがなんてことなしに言う。
ミカの言葉に聞きながら俺はもう歩き慣れたこの草原を見渡す。
広大な草原、心地よいそよ風、少し鼻を利かせれば鼻孔をくすぐる緑の香り、ここで横になって寝られたらどんなに気持ちがいいだろうかと思えるようなそんな草原だ。
ネックがあるとすれば、ところどころにコットンラビットやワイルドボアがうろついていることくらいだろうか。
さすがに昼寝中にワイルドボアやコットンラビットに襲われて死ぬなんて悲しすぎる。
この草原はどこのエリアに行くにも絶対に通る道だ。宿敵であるスモールゴーレムが生息する岩石地帯に行くにも、ワニバーンやジャイアントクラブが生息し、この前俺たちが水着で遊んだ湖に行くにも、ファイヤーバードを討伐しに行った夏には火山、冬には氷山となるあの山に行くにも、どこに行くにもこの草原はクエストを受ける冒険者が絶対に通る道だ。
誰しもが最初はこの草原でコットンラビットを狩っただろう。誰しもがこの草原でワイルドボアを狩っただろう。誰しもがこの草原をイニティの庭だと思っているだろう。そう思えるくらいこの草原は俺たち冒険者たちにとって慣れ親しんだ場所となっている。
でもこう思えるようになったのもこの数か月くらいでだ。この異世界に飛ばされてしばらくはこの草原に慣れなかった。こんなバカでかい草原を見たことなんてなかったし、歩いたこともなかった。
他にも岩石地帯や、火山、湖、どれを取っても始めて行く場所だった。
それらを今ではもう当たり前のように感じるし、あって当然だと思える。
「そうだなー。最初は異世界なんて楽しいことだらけで、日本にいるくらいなら異世界に行きたいって思ってたけど、実際来てみると、慣れてきちゃって当たり前みたいに感じて、これが普通になるもんだな」
「だよねー。……ねえ、ユウマはさ……今でもずっとこっちに居たいって思う?」
ミカが何気ないような声音でそう言った。
でも、長い付き合いの俺にはわかる。こういう時のミカは本気だ。
「まあ、日本かこっちかって言ったらやっぱりこっちだな。そりゃあ、ネットや二次元みたいな日本への未練がないって言ったら嘘になるけど……こっちに大事なもんができすぎた」
アイリス、リリーナ、ファナ、ザック、シュリちゃん。
その他にもこの街の冒険者たち、ギルドのお姉さんたち、日本にいた頃では考えられないほど知り合いができて、話して、笑った。
本当に日本にいた頃では考えられない。毎日親のすねをかじって生活して、ミカの学校に行こうという毎朝の呼びかけを無視し、ネットに入り浸って、好き勝手に生きてきた。
それが今では嘘のように変わった。
「……そっか」
「ああ……。それにミカだっていてくれるしな」
「え? 今なんて言った? 最後の方聞こえなかったんだけど」
「な、なんでもない! なんにもない! なんでもねえ!」
「なんでもない、の三段活用!?」
危なかった。
ついうっかり変なことを口走ってしまうところだった。もしミカに今の言葉が聞こえていたとしたら俺は今ここで死んでいたことだろう。そしてラティファと末永く天界で幸せに暮らすことになっていたはずだ。
―――それも悪くないかもしれない。
「それよりほら! もうすぐ目的地の岩石地帯だぞ! 気合入れろ! それに俺たちにしんみりした雰囲気は似合わねえだろ。いつもみたくおちゃらけた感じで行こうぜ!」
「んー……。さっきの気になるけどしょうがないか。どうせユウマのことだから私に対する愛の言葉とかだろうし、もう聞かないであげるよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「『リスント』!!」
ミカの言葉にいら立ちを感じた俺は即座にミカに向かって拘束魔法『リスント』を唱える。
詠唱を終えた瞬間俺の手からひも状のゴムの様なものが飛び出し、ミカの体を拘束する。
「ちょ!? なにすんのユウマ! ……ま、まさか! 拘束して身動きできない私にえっちなイタズラする気じゃ! ダメだよユウマ! いくら幼馴染だからってそういうのはちゃんと手順を踏まないと……」
「ただ拘束されただけでなんでそこまで想像できるんだよ! 怖えーよ! 俺なんかよりよっぽど想像力豊かだよ!」
「だってー、いつもユウマ、リリーナに拘束魔法をかけるときあんないやらしい拘束の仕方するし、いつも鼻の下伸ばしてるし……」
「の、伸ばしてねえよ! き、気のせいだ! それに俺だって好きであんな拘束の仕方してねえよ! 何でか知らねえけどあんな拘束の仕方になっちゃうんだよ!」
「無意識であんないやらしい拘束の仕方を!? さすがユウマ……鬼畜だね」
「嬉しくねえ!!」
なんで腹いせに拘束魔法を唱えただけでこんな言いがかりを掛けられなければならないのだろう。
でも、なんだかこんなやり取りが俺たちらしくて、楽しい。
「ったく。―――そろそろ岩石地帯だ。頼むぜ相棒」
「―――ねえ。なんでユウマは拘束魔法を解いてくれないの? なんで素振りしてるの? それでなんで私の足を持ってるの!?」
「そりゃあ愛刀ドジっ子ブレードを使うための素振りだよ。使うのも久しぶりだし、少し肩慣らしをな。それよりミカ、少し太ったか? なんか前より重い気が……」
愛刀を適当に素振りするイメージをしながら質問を投げかける。
「なんでユウマは女の子相手にそんなこと聞くかな! それは確かに最近少し太っちゃったけど、それだっておいしい料理ばっかり出してくるユウマのせいじゃん! 私悪くないもん!!」
「ひでー責任転嫁だな、おい! 俺はちゃんと栄養とか考えてるだろ! お前が毎食お代わりばかりするのが悪い!」
ミカは基本的にご飯を二杯はお代わりする。しかも大盛。
クエストを受けてお腹が減っている時などは、俺たちでも一杯お代わりするくらいなのに、ミカのやつはニ、三杯平気でお代わりする。
本人曰く「『金剛力』は体力とかいっぱい使うんだよ! だからこれは『金剛力』使うための栄養補給だよ!」と言い張っている。
「―――ねえ、ユウマ」
「何だよ。素振りならやめねえぞ。やめてほしかったらごめんなさいユウマ様。これからは絶対にユウマ様の指示に従います。どんな命令でもです。なのでどうかご慈悲を。くらい言ってもらおうか」
アイリスに筋力増強魔法をかけてもらってない俺じゃあミカを自由に振り回すことはできない。でも左右に揺らすことくらいは出来る。
ミカの素振りを続けながらミカの言葉に返事を返す。
「は―――吐きそう……んくっ……」
「リリースっ!!」
なんか危ない音が聞こえたので咄嗟にミカを地面にリリース。
ユウマはミカを地面に置いた。
「お前までゲロインの座を狙ってるのか! ゲロイン候補はリリーナだけで十分なんだよ! てかゲロインなんていらないんだよ! 俺がほしいのはヒロインだけなんだよ!!」
「ゆ、ユウマ……。さすがにそれは理不尽だと思う……。ううっ……」
結局、ミカの体調が完全に回復するのに三十分の時間を要した。




