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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第四章
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21話

「さてと、とうとう来ちまったわけだが……」


 現在俺たちは―――いや、イニティの街の冒険者全員はヴォルカノのいる城の前まで来ている。

 近くに来て見て見ると、遠くから見ていた時とはまた違った感想を覚える。遠くから見ていた時はただの茨に包まれたオンボロ城くらいに思っていたが、近くで見るとそのオンボロさや不気味さがさらに際立った。

 無数の茨に巻き付かれており、遠くからは見えなかった壁の罅、一つとしてまともに残っていない窓、おばけでも出そうなくらい気味の悪い雰囲気、いや、おばけ屋敷なんて生易しい言葉では足りないくらい不気味な城だ。

 壁の罅割れや窓の様子をたとえるなら、それは解体途中の高層ビル。こんなところに住もうなんて普通のやつじゃ絶対に思わない。

 まあたぶん、最初はここまでオンボロではなかっただろうけど―――。絶対にリリーナの魔法によって破壊されたのを無理やり直したからだろうけど。

 後ろを見てみると、そこにはイニティの街の冒険者たち。

 剣、槍、ハンマー、弓、杖といった各々自分の職業にあった装備、なおかつその中でも最強の装備に身を包んでここに来ている。

 士気は高く、やる気も満々。みんなこれ以上にないコンディションでここに集まっている。

 そして俺のすぐ近くにいる俺のパーティーたち。


「頑張りましょうね。ユウマさん!」


 長い銀髪に碧眼、小学生くらいの身長に雪の様な白い肌。まだまだ成長ののりしろを残してますとばかりの体つき、青と白を基調とした魔法少女を連想させるドレス状の服にその身を包む優しい女の子アイリス。


「ねえユウマ。今日は『エクスプロージョンインフェルノ』撃っちゃダメなわけ?」


 炎を連想させる真っ赤な長髪に、俺より少しばかり高い身長。俺と同じか少し上の年齢で、モデル顔負けのプロポーション、黙ってさえいればお嬢様にだって見える、おとぎ話に出てくる魔女の服をかわいくアレンジした様なローブに身を包む、能筋魔法使いリリーナ。


「さすがにちょっと怖いね……。でも、ユウマならどうにでもしてくれるよね!」


 俺と同じ黒い髪に黒い瞳、俺より若干低いが女子としては平均的な身長。中肉中背のまだ少しあどけなさを残した子供っぽい顔立ち。格闘着だけど下はスカートというチャイナドレスと武闘家の服のいいところ取っちゃいました! みたいな動きやすい恰好をしている幼馴染の女の子ミカ。


 魔物に回復魔法を掛けちゃったり、魔法使いのくせに魔法も使わず魔物に突っ込んでいったり、何もないところで転ぶようなドジっ子だったりと、みんな困ったところもあるがいい仲間(かべ)たちだ。もちろんアイリスを除く。


「よーしっみんなーっ! 聞いてくれ! これからイニティ冒険者たち一同による、ヴォルカノ討伐作戦に移る! かなり危険を伴うクエストだが、死ぬ気で挑んでくれ!」


「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」


「それでは全員、用意っ!」


 一息を吐いて。


「戦闘開始っ!!」


 こうしてイニティの冒険者たちによるヴォルカノ討伐作戦が決行された。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――


「作戦通り魔法班、まずはこの城の窓を全部塞いでくれ!」


 作戦が決行されるなり、俺はこの日のために三日間練りに練った作戦を披露する。

 そのための第一ステップである魔法班によるこのオンボロ城の窓を全部塞ぐ作戦だ。

 俺だって魔王軍幹部相手に始まりの街の連中だけで真っ向勝負を挑むほど馬鹿じゃない。作戦くらい立てる。

 なんでだか知らないがここまで来てもヴォルカノはおろか、他の魔物すら出てこないので好き勝手にやらせてもらおう。

 本当は魔法班の魔力をこんなことに使いたくなかったので武闘家たちに大きな岩で塞いでもらうつもりだったのだが、ヴォルカノの城の偵察班の情報からそんなことをしたら城が壊れるという話を聞いたので却下となった。

 そのためまずは『フリーズ』や『アース』によって形成された氷や岩によって窓という窓を全部封鎖する。


「よしっ! それじゃあ水魔法を使える魔法使いの皆さん! どうぞ!」


 一部を除く全部の窓の封鎖が終わったのを確認してから俺は次の指示を飛ばす。

 俺の指示によって入り口付近に複数の魔法使いたちが現れる。そしてみんながみんな詠唱を始める。青白い幻想的な光が辺りを包み込む。


「準備ができた人たちから―――どうぞ!!」


 俺の掛け声とともに魔法使いの皆が唯一塞がないでおいていた窓目がけて一斉に魔法を放つ。

 始まりの街の初心者同然の魔法使いたちでもこれだけ数が集まれば上級魔法に匹敵する威力を出すことだって可能だ。

 戦いは数だよ兄貴!!

 魔法使いのたちの杖から放たれる水がまるで滝の様な勢いで窓からから城の中へと流れ込む。

 城の罅の入っているところから外へ逃げようと水が少しだけこぼれ出る。が、どうにかそれくらいは耐えられるくらいの耐久力がこのオンボロ城にも残っていたようで崩れはしなかった。

 一階、二階と水は浸透していき、この城の最上階である三階まで水が溜まり始めた。その証拠に三階の罅から水が出てきている。


「そろそろ頃合いだな―――よしっ! 次、電気魔法の使える皆さん! おなしゃす!!」


 城の中を水一杯にできたことを確認してから『フリーズ』で窓をある程度塞ぐ。あえて少しだけ開けているところから水があふれ出ているが関係ない。

 そしてそのあえて開けておいた隙間に向かって電気魔法の使える魔法使いの皆さんに電気を流してもらう。

 そう、俺の作戦は感電大作戦だ。

 この世界での俺の最大の武器は現代知識しかない。チートももらえていない。もとから高い能力もない。そんな何にもない俺の唯一の武器、それが現代知識。

 この世界に来て徐々に確かめていたことなのだが、どうやらこの世界には俺らにとって当たり前のことが当たり前ではないらしい。

 世間話にかこつけてリリーナやアイリスにいくつかの質問をしてみたのだが、どれも知らない。と答えられた。

 例えばこの世界は球体でできていて、どこまでも続いているわけじゃないし、ずっと真っすぐ歩いていれば同じ場所にいつかは戻ってくる。と言ったらそうとう驚いていた。

 まあここが地球ではなかったとしてもこの理屈は同じなはず、という、もしかしたら間違っている可能性のある知識でもあったが。

 その他にもゴムには電気が通らないとか、植物は光合成をして生きているとか、今使っている水は電気をよく通すというのも二人は知らなかった。

 勘違いをしないでほしいのだが、あくまでそういう知識がないだけで電気を通さない物体があることは二人も知っていたし、植物は水を上げて太陽の光を浴びせれば生きていけるということは知っていた。

 しかし、知ってはいてもそれがどういう現象でどういった名称なのかは知らないのだ。

 つまりこの世界では俺の現代知識はすごい武器になる。

 俺以外にもこの武器を持っているやつは少なくとも三十人近くはいるが、そいつらはミカも含めて全員チート持ちだからそうそう現代知識を使った戦いなどしないだろう。

 だってそんなの使う必要もないくらいすごい力をもらってるから。

 それに異世界で現代知識を使おうなんてアニメや漫画、ラノベなんかを見ていないとそうそう思いつかない。

 それに相手にはその知識がなく、知識がないということは対抗策もない。

 だからこそ最強の武器にもなりえる。


「見てろよヴォルカノ。これが俺の現代知識―――いや、現代魔法だ!!」


 俺が意気込む中、作戦の成果は徐々に姿を見せ始めた。

 水が少なくなってきたかな? と思った頃に水魔法で再び水を追加し、大丈夫と思ったら電気を流しなおす。ということを繰り返して早十分。

 とうとう水の圧力に耐え切れなくなった窓代わりの『フリーズ』は罅割れ、壊れ、水が逃げ場を見つけたとばかりに勢いよくそこから外へとあふれ出す。

 そして、水と一緒に出てくる意識のない魔物の数々。

 どうやら俺の現代知識大作戦は成功のようだ。


「うおーっ! すげーっ! すげーぜユウマ!!」

「見てみてっ! 私たちの水魔法と電気魔法でこんなに強そうな魔物が簡単に倒せてる! レベルもすごい上がってるわ!」

「これならヴォルカノだって楽勝じゃねえの! てか、もう死んでたりして」


 作戦の成果を見て、他の冒険者たちが喜々とした声を上げる。

 そりゃあ普通に戦ったら勝てるはずのない魔物をこんな簡単に倒せれば喜びもするだろう。

 中には大量レベルアップをしている人もいるそうだ。


「よしっ! 思ってた以上に効果ありだ!」


 俺もほかの冒険者と同様に嬉しさのあまりにガッツポーズ。

 だが、ここで喜んでいるだけの俺ではない。


「よし! 氷魔法を使える皆さん! 急いで『フリーズ』で水の出を抑えてくれ! このまま城の中を永久凍結させてやれ!」


「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」


 俺の指示通り氷魔法を使える魔法使いが一斉に『フリーズ』を唱え、放つ。

 すると、壊れた窓の部分からあふれていた水が次第にでなくなり、城全体の水が凍ったことが確認できた。


「―――これでどうよヴォルカノちゃん。死んでくれちゃってもいいのよ」


 が、ここで安心するような俺でもない。

 この前も言った通り、「倒せた!」は倒せてないフラグだ。

 ちゃんとこの目で確かめない限り安心はできない。


「つっても、この状況じゃ確認も何もないわけだが―――」


 城の中を凍らせてしまったのだから中を確認するすべはない。

 だとすると―――


「このまま城をぶっ壊して氷ごとヴォルカノをやる以外に方法は―――ねえな。……よし、リリーナ、たの―――」


 む、と続けようとして、ことは起きた。

 城が勢いよく爆発したのだ。

 いや、表現は少し違う。炎の柱に包まれた。雲まで届きそうな火柱が城を焼け焦がし、燃やし尽くす。


「……な……っ!」


 一瞬リリーナの暴走を疑ってリリーナを見るが、リリーナは杖すら構えておらず、明らかに魔法を放った形跡はない。


 ということは―――


「おうおうおうっ! 人様の家に水に電気に氷ったぁどういう了見だいべらんぼめい!」


 灼熱のヴォルカノが―――姿を現した。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――


「おうおうおうっ! なんとか言ったらどうなんだい!!」


 目の前に灼熱のヴォルカノが現れた。

 アイリスの言っていたとおり全身に炎を纏い、周りの空気を揺らがせている。それが纏っている炎の温度の高さを証明している。

 頭にはなぜかねじり鉢巻きの様なものを巻いており、服は袖の部分がギザギザに切られている。

 なんというか江戸っ子をそのまんま現したような奴だ。


「やっぱりあんなんで倒せるわけねえか」


 ヴォルカノを前に少しの恐怖感と、やっぱりあんな方法で倒せるはずなかったかという残念賞感に包まれる。

 そして、緊張からか俺の頬に一粒の汗が伝う。

 ―――汗?

 自分の頬のあたりを乱暴にぬぐい、自分が汗を掻いていることに気づく。


「お……おかしいだろ……おい」


 今の季節は秋。と言ってももう冬に近い秋だ。日本で言うところの十一月とかそのあたり。そんな季節に特に運動もしていないのに汗。


「きゃあっ! どうしたの! マイ! マイ!?」


 一人の女冒険者が倒れ、隣にいた友人らしき女の人が悲鳴を上げた。


「っ!!」


 思い当たる節は一つしかない。

 ヴォルカノだ。

 アイリスの話だとアイツの周辺しか温度が上がっていないもんだと考えていたが、それが考え違いだった。

 アイツのいる辺り一面の温度が急激に上昇するんだ!


「なんだいなんだい。俺を目の前にして数分で倒れるたぁその女、根性ねぇな。俺っちが今度気合を入魂してやらぁ」

「マズイ……。このまま長期戦に持ってかれると何にもできずにこっちが負ける。逃げ切れるとも思えねえし、やるなら短期決戦、電撃戦か」


 早々に思考を切り替えた俺は溢れ出す汗をぬぐって指示を飛ばす。


「おいみんな! アイツはヤバい! 短期決戦に持ち込む! みんな各々最強攻撃をぶち込んでくれ!」


 周りの冒険者がバタバタと倒れこんでいく中、どうにか意識を保っている冒険者たちがヴォルカノに全力攻撃を叩き込む。

 まず魔法使いたちにより魔法攻撃、それに続いて弓による追撃、魔法攻撃によって生まれた爆煙に紛れて近接武器持ちの冒険者が近接攻撃。

 が―――


「うあーーーーっ!!」

「きゃっ!」

「なんだお前ら。これがお前らの全力か? 弱っちい……。もっと俺っちを燃えさせろ! 熱くさせろ! 楽しませろ!」


 爆煙が晴れたところから無傷で現れるヴォルカノ。


「おいおいマジかよ……」


 あれだけの攻撃を受けて無傷のヴォルカノ。

 それを見て絶望を覚える俺。倒れていく仲間たち。


「ねえ! どうしようユウマ! みんなっ、みんな倒れてくよ!」

「わ、私っ、回復します!」

「ねえユウマ! 私も魔法撃つわよ! 文句はないわよね!」


 どうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするアイフル。


「俺らの全力攻撃は通用しないし、弱点っぽそうな水魔法は王都の連中が使っても意味がなかったてーし、こうしてる間にも仲間はどんどん熱中症で倒れてく。アイリスが治療してくれてるけどそれだってジリ貧だ。アイリスが倒れたら終わる。残る戦力は俺とリリーナ、ミカとアイリス、残り数人だ」


 頭を必死にフル回転させるが、暑さのせいかぼーっとしてまともに頭が回転しない。


「そっちからこねえならこっちから行くぜ、最弱冒険者ども!」


 まともに状況分析も対策もできていない中、とうとうヴォルカノが動き出した。


「おわっ!」


 ヴォルカノは一瞬で近くの冒険者三人の元へとたどり着くと、右腕を薙ぐだけで三人を一掃した。

 あまりの突然の攻撃にフッ飛ばされた三人は意識を失った。まともに当たっていないはずの胴体の鎧に焼け焦げた跡がある。

 まともに攻撃を食らっていないのにあれとか頭がおかしい。


「そ、そうだ! おい! みんな! 鉄製の鎧を着ているやつは脱げ! 鉄は熱を持ちやすい!」


 遅すぎる俺の指示に鎧を着た冒険者が急いで鎧を脱ごうとする。

 だけどこれも焼け石に水だ。逆に防御力を自分から下げてもいるから悪手かもしれない。


「おっ? 少しは頭の回るやつがいるんじゃねえか! おもしれえ!」

「なぬっ!?」


 俺が大声を出したからだろうか、ヴォルカノが近くの冒険者を薙ぎ払うのを止めて俺に向かって突進してきた。


「やべっ!」


 あまりにいきなりだったのと、頭が暑さのせいでやられていたこともあってかなり反応が遅れた。―――避けられない!


「ふんっ!」


 大した反応もできず、ヴォルカノの振り上げた手をただ見つめることしかできない。

 もうだめだ。そう思って恐怖のあまりに眼を閉じるという悪手を取る。しかしなぜか痛みはいつまで経ってもやってこなかった。


「……ほへっ?」

「大丈夫? ユウマ……!」

「ミカっ!!」


 俺を吹き飛ばすために振るわれていた腕はミカによって止められていた。


「さすが『金剛力』! 魔王軍幹部も怖くないぜ!」


 さすがの魔王軍幹部でも女神様からのチート相手は多少なりとも分が悪いらしい。


「おうっ! お前女のくせに力強ぇな! 俺っち燃えてきた!」

「それ女の子に言う褒め言葉じゃないから! あと、あんた最初から燃えてんじゃん!! どうせならそのまま燃え尽きちゃってよ!」


 そう言ってミカがヴォルカノを投げ飛ばす。

 投げ飛ばされたヴォルカノは何事もなかったかのように地面へと着地し、距離を取るようにそのまま少し後ろに下がった。


「サンキューミカ! さすがは『金剛力』―――ってお前……手!」


 ミカの手を見ると、ヴォルカノに触れていた部分だけ赤く腫れていた。火傷したのだ。


「うん……。少しなら相手できそうだけど、あんまり長くは無理かも。それにさすがに一人じゃあいつを倒せそうにないよ。いたたー」

「そうか……悪い」

「ううん。こっちこそごめんね。役立たずで……。でも、時間くらいは稼いで見せるから、その間にユウマはどうにか作戦考えて。それじゃあ任せた!」


 そう言ってミカは今度は自分からヴォルカノに突っ込んでいく。

 ヴォルカノとすごい格闘戦を繰り広げるミカ。その途中何度こけたり、その辺の岩に頭をぶつけたり、間違ってほかの冒険者を殴ったかはわからない。でも、確実に時間は稼いでくれてる。


「っ!? やばっ!」

「もらったぜ嬢ちゃん!」


 勢いのある格闘戦の途中、ミカが足を滑らせて態勢を思いっきり崩した。それを隙と見たヴォルカノが容赦ない拳を叩き込もうと振りかぶる。

 誰もがミカがやられた。そう思った瞬間。


「『ウインドブレス』!!」


 すごい風がミカを吹き飛ばし、そのまま柔らかく地面に倒れさせた。


「未来の大魔法使いであるリリーナ様を放っておくなんて、あんたいい度胸じゃない! 私を無視したこと、死んで後悔させてあげるわ!」


 リリーナだ。リリーナが咄嗟の機転で風魔法でミカを移動させたのだ。


「『アースブレイク』!!」


 そのままの勢いでリリーナは攻撃態勢に移る。リリーナの魔法によってヴォルカノがいる場所の地面が勢いよく突起する。ヴォルカノはそれを瞬時に察知し、後方へ回避。

 そこへすかさずミカが巨大な岩を投げ飛ばす。

 それすらもヴォルカノは簡単に避け、ミカの投げた岩は――――


「ですよねーっ!! 俺の方に来ますよね!! そうですよね! ぶべらっ!!」


 見事に俺に命中した。


「ごめーんユウマー!」

「ったくアイツのドジもここまでくると才能だな。……が、今ので頭がさえてきやがった」


 ミカの投げた岩が当たったことで強制的に頭が活性化させられる。


「私も援護します! 『アグレッシオ』!! 『ヒール』!!」

「わあっ! 火傷治ってる! ありがとうアイリスちゃん!」

「はいっ! ミカさんも頑張ってください!!」


 回復に回っていたアイリスもほかの人に回復を任せ、戦闘に参戦してきた。


「えいっ! やあっ! わっ!?」


 ミカがヴォルカノに岩を投げ、突撃し、転ぶ。


「『エレクトリカルブレード』!!」


 リリーナが魔法で杖を電気でできた剣にし中距離攻撃。あいつ、あんな戦い方もできたのか。


「『スプレット』!!」


 アイリスが『スプラッシュ』の上位互換である『スプレット』でリリーナとミカのアシストする。


「よっ! はっ! とりゃっ! ちょろいちょろい! こんな攻撃朝飯前だってんだい」


 が、ヴォルカノはそれすらもいとも簡単に避けてしまう。


「いいねえいいねえ、いいなぁおい! 楽しくなってきやがった! この街にもこんなに戦える奴がいやがったのかよ! 魔王からはちょっとした偵察でいいから行ってくれって言われてつまんねえと思ってたが、こりゃあ魔王もいい仕事くれやがったぜ!」


 こちらの三人相手に余裕の表情で、むしろ楽しそうに笑うヴォルカノ。


「こりゃあ俺も本気で行かねぇと悪ぃよな? いっくぜー……!!」

「本気出す前に消えろやゴラーっ!」


 アイツが気合を入れようと隙をさらした瞬間、密かに『潜伏』スキルで後ろに回り込んでいた俺がヴォルカノの頭目がけて剣を突き刺す。

 が―――


「おい……。マジかよ……俺のショートソードが……」


 ヴォルカノの頭に到達する前に俺のショートソードは溶けてしまった。


「おいおいおい。またショートソード買わなきゃならんのか……。勘弁してくれよ。今月で三本目だぞ……って、おわっ!?」


 殺気を感じてしゃがむと、頭上にはヴォルカノの腕が通り過ぎていた。そして俺の髪が数本散ったのも見えた。

 その髪も一瞬のうちに燃え尽きる。


「あっぶねぇー……。もう少しでこの年で禿になるところだった」


 自分の髪の毛があることを確認し、とりあえず一安心。


「おい兄ちゃん。さっきは結構頭の回るやつだと思ったが、こんな卑怯な作戦を取るのはちょっといただけねぇぜ」

「悪いな。卑怯が俺の専売特許なんだ。悪いとは思うなよ。てか、ショートソード弁償しろ」

「口だけは達者みたいだな……燃え尽きろ!」

「『逃走』! &『スプラッシュ』!!」


 ヴォルカノが腕を振るった瞬間、俺は咄嗟に『逃走』スキルと『スプラッシュ』でヴォルカノの炎攻撃を回避。その際、少し服の袖が燃えた。


「あっぶねぇー。さっきから命何個あっても足らねぇぞおい」


 とりあえずそのままヴォルカノから距離を取りみんなと合流。


「おいおい。なんなんだよあの化け物。リリーナよりよっぽど化けもんじゃねえか」

「ちょっとそれどういう意味かしら!!」

「それよりユウマさん。どうしますか? もう戦えるのは私たち四人だけみたいなんですけど」

「まあ、最初から最終的には四人で挑むつもりだったからそれはそれで構わないんだが……正直、やばいな」


 こちらの戦力のほとんどが戦う前から意識を失うか、意識朦朧としていて、戦いを長引かせればそいつらの命も危ない。

 俺たちだってこうしているうちにも汗を掻き、いつ熱中症になってもおかしくない状況だ。

 そのための電撃戦だったが、あいつはそう簡単にはやられてくれない。

 みんなを見ると、俺と同様にたくさんの汗を掻いている。そんなに時間はかけられない。


「……なあミカ」

「ん? 何ユウマ?」

「その恰好なんだけど、汗で体にくっつくと体の線が出てエロいな」

「こんな時に!?」


 少しでもみんなの緊張感を解こうという名目の元にミカにセクハラをかまし、気分を入れ替える。


「とりあえずもう少し考える時間と情報が欲しい。みんな好き勝手に戦ってくれ。ただ、リリーナ。お前は今回の戦いで決定的な火力になる可能性が高い。魔力の残量に気を付けろ」

「わかりました!」

「わかったわ! とにかく暴れればいいのね!」

「任せて!」


 各々がヴォルカノに向かって攻撃を再開する。

 俺たちの戦いはまだ、始まったばかり。

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