8話
あれから俺たちは倒したワイルドボアを眺めながら小休憩を挟み、クエスト自体も終了していたので街に戻ってきた。
そして街に帰ってきた俺とアイリスはクエスト成功の報告をしに、ギルドへと足を運んでいた。
「そう言えばユウマさん、さっき『スプラッシュ』を使ってましたが、いつスキルを取られたんですか? クエストに行く前はまだ取ってませんでしたよね?」
「ん? ああ、クエストに行く前にちょちょっとな。俺も魔法を使ってみたかったし、中距離攻撃が一つぐらいは欲しかったからさ」
そう、俺はクエストに行く前にスキルポイントを2使ってアイリスの使う水属性の攻撃魔法『スプラッシュ』を取得していた。
さっき使った感触では、アイリスより魔力の低い俺の『スプラッシュ』はアイリスの様に大砲から勢いよく水を出しているようにはならなかったが、それでも水鉄砲の超強化版みたいな威力は発揮してくれていた。
まさか一発で倒せるとまでは思っていなかったが、おそらく窒息でもしたのかワイルドボアは一発であの世へと旅立ってくれた。
「そうだったんですか。……あの、ユウマさん。他の私が使える魔法もお教えした方がいいでしょうか?」
アイリスが突然そんなことを言い出した。
それもなんだかとても不安そうな顔で……。
俺にとっては願ったり叶ったりな提案ではあるが、なんとなくアイリスの心境を察した俺は質問に迷わず即答する。
「確かにいくつか教えてもらいたい魔法はあるな。例えば『ヒール』とか回復魔法があれば、アイリスにもしものことがあった時に俺が回復してやれるしな。でも、他の魔法は今のところいいかな」
そんな俺の言葉が意外だったのか、アイリスが不思議そうな顔で俺を見た。
「な、なんでですか? だ、だってユウマさんみたいに強い人なら、私の魔法を全部覚えるだけでも、相当戦えるはずなのに……」
ここまで言われて、俺はなんでアイリスがいきなりそんなことを言い出したのか、どうしてそんな不安そうな顔をしているのかが確実にわかった。というか答え合わせが済んだ。
「俺は前衛職だからな。それに俺はアイリスの言うような強い奴じゃないよ。だからサポートは専門のアイリスに任せるよ。アイリスの方が魔法の効果は高いし、こんな優秀なヒーラーがいるなら俺は後ろは何も考えずに任せて、相手に突っ込んでいけるからな」
「ゆ、ユウマさん……。私、絶対にユウマさんに迷惑を掛けない様に頑張ります! どんな怪我でも絶対に助けます!」
「それは安心だな。アイリスが後ろにいてくれれば俺も安心だ。あはは、だから泣くなって。大丈夫だから」
そう言って俺は瞳を潤ませるアイリスの頭を撫でてやった。
アイリスは不安だったのだ。俺は冒険者だからスキルポイントを割けば、全部のスキルを覚えることができる。だからスキルを教えてしまったら自分の立場がなくなってしまうと不安だったのだ。
俺から言わせれば、適材適所というものがあるし、全部のスキルが取得可能といっても普通の1.5倍もスキルポイントを消費するので、あまり乱用はできない。だからアイリスが心配するようなことはない。
それに俺がアイリスを見捨てるという選択肢は最初から存在していない。
俺は涙を流しながら歩くアイリスをなだめながら、ほっこりした気持ちでギルドでクエスト成功の報告を済ませた。
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次の日、俺とアイリスは今日もクエストを受けようと、ギルドのクエスト板とにらめっこしていた。
「あいかわらずなクエストばっかりだな……」
「そうですね。今日はいつにも増して討伐系クエストが少ない気がします。どうしますかユウマさん? 今日は止めておきますか?」
アイリスも俺と同意見のようで、俺たち二人に今日は街で大人しくしていようか、という雰囲気が出始める。
お金には一応少し余裕があるし、こっちの世界に来てからまだ街の中をゆっくりと見て回っていないのでアイリスに街を案内してもらうのも良いかもしれない。
それにこっちの世界に来てから、なにかとやる気を出している俺だが、基本的にはまだニート思考だ。働かなくていいなら働きたくない。ただで食える飯は上手いのだ。クエストは行きたいときにお金とかを気にしないで行けばいい。
「そうだなー。今日は止めておくか……ん? アイリス、これなんてどうだ?」
そんな中、俺は一つそれなりなクエストを見つけたのでアイリスに尋ねる。そのクエストは―――。
『スモールゴーレム討伐、一体十万ギル』
というクエストだ。
金額を見てみれば難しそうに見えるが、相手はゴーレム一体。それもスモールというのだから小さいのだろう。そのくらいなら俺とアイリスでもどうにかなるかもしれない。
それに最近絶好調な俺は少しランクの高いクエストを受けて見たかった。
そんな根拠もない自信を胸にアイリスの意見を待った。
「……そうですね、確かにスモールゴーレムは今までのクエストに比べて難易度が非常に高いですが、ユウマさんとならどうにかなるかもしれませんね」
アイリスは少し不安そうな顔をしながらも、このクエストを受けるのに賛成のようだ。
「よしっ、なら決まりっ! ちょっと行ってくるよ」
というわけで、今日はスモールゴーレム狩りに行くことになった。




