20話
次の日。
「今日はこの辺りでいいだろ。リリーナ、準備の方は?」
「任せなさい。いつでもオッケーよ!」
今日もヴォルカノの城に攻撃できる限界の位置まで迫ってから、リリーナの魔法攻撃を仕掛けるための場所までやってきた。
「あの、ユウマさん。どうして昨日とは場所が違うんですか?」
「あ! それ私も気になってた!」
アイリスの素朴な質問に乗っかてきたミカ。俺はその質問に答える。
「それはなあ、場所の特定をされないためだ」
「場所の特定―――ですか?」
「ああ、毎回同じ場所から魔法を撃ってたら相手に自分はここから攻撃してますよ。って教えてることになるだろ? だから毎日大きく場所を変えて、相手に場所の特定をされないようにするんだ。まあ、たまには昨日と同じ場所から撃つのも効果的だけど、今回は回数が少ないから毎回場所を変えるのがベターだな」
普通の魔物はそこまでの知力がないようだが、幹部クラスとなるとわからない。某大作RPGでも後半の幹部クラスの魔物や、序盤でもボスだけなら話すのが当たり前だ。
それを踏まえて考えるなら今回の相手であるヴォルカノもある程度の知力を持っている相手だと考えるのが普通だ。
「火属性だからたぶん熱苦しい感じのやつだろうな~。ファイヤーッ!! みたいな……。俺そういうやつ苦手なんだよなー。いかにも熱血系みたいなやつ」
「いやいや、ユウマはとにかくリアルが充実している人全般が嫌いじゃん」
「うむ、確かに」
ミカの言う通り俺はリア充と呼ばれる奴が嫌いだ。たとえそいつが自分以上に不細工だったとしても、たとえそいつに彼女はいなくとも、たとえそいつが小さいころからの幼馴染だったとしても、俺がそいつはリア充だと判断すれば一瞬で嫌いになれる。絶交できる。
ちなみに俺のリア充の定義は現実に一人でも友達がいる。だ。これに抵触する奴は全員リア充。反論は認めない。
「ミカは例外だけどな」
「え? 私なにが例外なの?」
「俺のヒロイン候補から」
「えーっ! 一応入れといてよー!」
「一応でいいのか……」
これから魔王軍幹部のいる城に攻撃するというのにお気楽な会話をしながら攻撃の時に備える。
「よし、もうそろそろいいだろ。リリーナ。やれ」
「任せときなさい! 昨日より派手にやってやるわ! 今度こそあの城を完全に完膚なきまでにフッ飛ばしてやるんだから!!」
というわけで昨日と同じようにリリーナの今使える中の最強威力遠距離魔法『エクスプロージョンインフェルノ』によるヴォルカノの城への一方的な攻撃開始。
「……やって……やったわ……」
今日も昨日同様リリーナの魔法は絶好調で、昨日の経験から学んだ俺は目隠しに耳栓、風を防ぐための初級土魔法による壁によって爆音、爆風、激しい光を回避。
リリーナは昨日同様魔力を使い切り地球大好きとばかりに地面に倒れこむ。
「よくやった。さあ、帰るぞ」
今日の任務達成。
次の日。
「案の定城は回復してるな。―――さて、今日も頼む」
「まっかせなさい!! 『エクスプロージョンインフェルノ』!!」
今日の任務達成。
そして、とうとう王都からの応援が到着するまで残り一日となった朝。
「さて、今日が本番か……。胃が持たれる……」
朝起きるなり胃のあたりにないはずの痛みを感じながら服を着替える。
そして今日は自分も戦闘確率が高いため、銃を二丁と剣をしっかりと装備し、軽装に身を包む。
「さーて、暴れるぜー」
気合を入れて部屋を出た。
「おーっす。みんな起きてるかー?」
部屋を出た俺はそのままの足取りで居間に向かってみんなの姿を確認する。
「はい。起きてます! 今日は頑張りましょうね!」
朝一番に目にすることができたのはこのパーティーの癒し系マスコットアイリス。挨拶をするだけで他人を癒せるのはアイリスのすごいところだ。
「おはよ~アイリス~。でも、少しだけ間違ってるぞ。そこは「おはようお兄ちゃん」だ」
「はい。おはようございます。ユウマさん」
最近本当に俺の扱いが上手くなり、たくましくなったアイリスだった。
「全く、朝から相変わらず気持ち悪いわね。鬼畜な上に変態でロリコンとか救いようがないわ」
朝っぱらから腹の立つことを言ってきながら丁寧に杖の手入れをしているのはリリーナ。
最近、毎日あんな特大魔法を撃たせてやっているというのに相も変わらず反抗的だ。
「うっせー、能筋魔法使い。今日はお前にかかってる部分があるから何もしないが、明日からはないからな」
「ふふんっ。やれるもんならやってみなさいよ」
ホント喋らなければ結構な美人なのに、喋る度にそれを台無しにするやつだ。
「あははーっ。みんな魔王軍幹部を討伐しようって朝なのに元気だねー……って、あーーーーーーっ!!」
朝から笑顔で自分で作ったコーヒーを持ってきて、何もないところで器用に転んで服を汚しているのは幼馴染ミカだ。
もうこの光景は毎朝恒例なので誰もツッコまないし、そこまで派手な心配もしない。
火傷をしてもアイリスがすぐに治療してくれるし、俺も安心だ。
「よーしっ! みんな揃ってるな! そんじゃあ一発ヴォルカノにかましに行くかっ!」
「「「おーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」」」
俺の掛け声に三人の女の子の手が挙がった。
―――――――――――――――――――――――――――――――
「冒険者のみんな聞いてくれっ!!」
俺たち四人は装備を整えギルドまで足を運んでいた。
ギルドではお姉さんたちがあくせくヴォルカノの情報を整理して、ギルドにいる冒険者は俺の指示通りに準備の最終確認を行っている。
一応昨日の間に俺もすべての準備を目で耳で確認しているので問題ないはずだし、避難訓練も高台で確認していたが、時間も動きも何の問題もなかった。
つまり俺の指示の準備は昨日の時点で完璧に終わっている。
そんな中俺はギルドで一番目立つところに立ち、慣れない注目を浴びようと大声を出す。俺の声にその場の全員が作業を一旦中止し、俺の方へ視線を向けてくる。
きれいなお姉さん、かわいい女の子、ムサイおっさん、むかつくイケメン。そんな多種多彩の視線に晒されながらも口を動かす。
「みんな! みんなはヴォルカノにいいように脅されているこんな生活をどう思う!」
俺はまず、みんなに言葉を投げかける。
「不満はないか! むかつかないか! 腹は立たないか! なんでこんな理不尽に立たされなきゃいけないんだと思わないか!」
みんなからの返事がないので、さらに言葉を投げかける。
「俺は非常にむかついている! 毎日ヴォルカノに怯え、恐怖し、いざとなったらの逃げる準備なんかして、王都の応援を待つだけなんてもうまっぴらだ!」
我ながらなんというピエロだろう。今の言葉の中に俺の本心など全く、これっぽっちも一ミクロンも入ってはいない。
だって別に俺ヴォルカノに怯えてないし、そんなに怖いとも思ってないし、逃げる準備だって遅すぎる、すでに逃げてるのが正しいとか思ってるくらいだ。
それなのにこんな言葉を自信満々に口にできることが我ながらヤバい。
「なあみんな! どう思う! こう思っているのは俺だけかっ!?」
俺の最後の投げかけに、今この場にいるみんながこぞって顔を見合わせる。
そして―――
「腹が立ってるに決まってらーっ!」
「自分たちの街を自分たちで守れねえなんてくそくらえってんだ!」
「そうよ! なんで私たちがおびえてなきゃならないの!」
そんな声が上がり始めた。
そりゃあ当然だ。自分たちの生活が脅かされて、好きなようにクエストも受けられず、あまつさえ自分たちの街を守るのを王都の連中に任せる。
そんなことがこの街の冒険者たちに耐えられるはずがない。
前回のオークの大群の時に思った。俺もそうだが、この街の冒険者はこの街が好きなのだ。大好きなのだ。
たとえどんなに不利な状況でも、勝てないとわかってる相手でも、戦わないうちにあきらめきれない連中なのだ。
そんなみんなの正義の怒りを利用する俺。
我ながら最低だわ。
「そうだろ! なら俺たちでヴォルカノをやっちまおうじゃねえか! 安心しろ! お前たちには俺がついてる!」
我ながらなんの信憑性もない言葉だ。俺がヴォルカノに戦いを挑んだって一分持てば頑張った方だし、五分生きてられれば奇跡だ。
この中の冒険者たちとだってまともにやったら大抵のやつに俺は負けるだろう。
「そうだ! 俺たちには鬼畜王がついてる!」
「そうよ! 魔王なんかよりよっぽどヤバいのが俺たちにはついてる!」
「そうだったわ! 鬼畜王に比べたら魔王軍幹部なんてそこらの魔物同然よ!」
うん。作戦通り。作戦通りなんだが……。
「お前ら! 一人くらい俺の名前をまともに呼べや!!」
誰一人としてまともに俺の名前を呼んでくれない冒険者たち。
そしてそれを見て笑っている俺のパーティーのリリーナとミカ。
アイツら後で絶対に泣かす。




