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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第四章
88/192

19話

 あれから三日が経ち、一通りの準備は終わった。

 目的の数だけ魔物は狩ったし、ヴォルカノの動きはなし、避難訓練も無事に終了し、今やれることはすべてやり切った。


「が、このままだとどうしようもない」


 正直この程度は誰にでも考えつくだろうし、いざヴォルカノが襲ってきたら避難も訓練のように上手くはいかないだろう。

 全部守るつもりなんて俺には毛頭ないが、ここまで来たらやれることはやりたい。


「やっぱりらしくないな。俺ならやっぱりすぐに逃げてる。うん。今からでも遅くは―――」

「あるよ。だから逃げちゃだーめ!」


 やっぱり逃げようかと思考をシフトしていると、俺の自室にミカが入ってくる。


「んだよ。ミカだって俺にはこういうリーダーみたいなの向いてないって知ってるだろ? 前回だってたまたま上手くいっただけで今回も上手くいくとは限らん。てか無理だ」

「諦めが早いな~」

「潔いといってくれ」

「物は言いようだね」

「それが俺の十八番だからな」


 ミカといつもの様なやり取りを交わし、笑顔も交わす。


「で、今日はどうするの?」

「とりまギルドだ。情報が欲しい」

「了解であります! 隊長!」

「誰が隊長か! 軍曹と呼べ!」

「ははぁ~!」


 というわけでミカと二人ギルドへと向かう。




「アイリスとリリーナは上手くやってるみたいだな」


 ギルドに向かう途中にアイリスの担当している避難誘導班とリリーナの担当する城の観察班の様子を確認してきたが、特に目立った変化はなく順調そうだった。


「あ、ユウマさん。ちょうどいいところに」


 ギルドに着くと、この前俺を痴漢冤罪で見事に捕まえたロリ巨乳ちゃんが話しかけてきた。


「えーと、何でしょう?」


 この世界に来て早半年が経とうとしているのに、未だに俺のコミュ障は治っていない。ある程度の時間一緒にいると普通に話せるようになるのだが、女性相手はほとんどまともに話せない。

 ギルドのお姉さんと話すとき毎回最初の一言は「今日もいい天気ですね」だ。それが例え雨の日でも、雪の日でも。


「この前言い忘れておりましたので一応言っておきますと、ヴォルカノを倒すと賞金一億ギルが支払われます」

「……」

「言いたいことはそれだけです。やる気、出してくださいね」


 それだけ言ってロリ巨乳ちゃんはその巨乳を揺らしながら走っていった。


「……ミカ」

「なんとなく言いたいことはわかったけど、なにユウマ?」

「俺は正直ヴォルカノが攻めてこなかったらそれでいいと思っていた」

「うん。私もそう思うよ」

「でも、やるぞ」

「何を?」

「ヴォルカノをやる。そして借金をなくす!」

「まあ、そうだよね。ユウマの性格ならそうなるよね」


 この短時間で俺はヴォルカノから街を救うのでなく、ヴォルカノを倒す方向へと思考をシフトした。





「おいリリーナ! アイリス! 出かけるぞ!」


 俺はあれから二人を探しにミカと街に出て、運よく二人でいたリリーナとアイリスを発見する。


「別に構わないけど、どこに行くのよ?」

「ヴォルカノのいる城だ」

「えーっと、何をしに行くんですか?」

「そりゃあヴォルカノを倒しに」

「そうですか、ヴォルカノを……って、えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 いいリアクションで驚いてくれるアイリス。そんなアイリス、グッジョブです。


「ユウマさん、もう一回言ってもらえますか? どうやら私の耳おかしくなっちゃったかもしれないので」

「おういいぞ。ヴォルカノを倒す」

「……ほ、本気ですか?」

「本気も本気超本気! 本当の本に気合の気で本気」


 様々なポーズを決めつつ、今のやる気をアイリスに全力でアピール。


「でも、ヴォルカノから街を守るだけでも頭を悩ませてたのにどうやって―――」

「大丈夫だアイリス。金が絡んだ俺は無敵だ」


 親指を立ててサムズアップ。


「リリーナは―――乗る気に決まってるよな」

「当たり前でしょ! むしろその言葉を待ってたとすら言えるわね。ようやくって感じかしら」


 リリーナがやる気満々とばかりに杖を構える。

 魔力が目に見えるものだというのなら、今のリリーナにはあり得ないほどの魔力が湧き出ていることだろう。

 それはもう野菜人がスーパー野菜人になったくらいに。


「ミカは?」

「せっかくユウマがやる気になったんだもん。私は全力で応援するよ」

「……サンキュ。幼馴染」

「あいよ。幼馴染」


 アイリス、リリーナ、ミカの了承は得た。

 作戦なんて後で考えればいい。結果は後についてくる。後は野となれ山となれ。悔やむのはあの世でいい。いや、ラティファに会えるのに悔やまれるようなことはないな。うん。

 つまり俺はここでヴォルカノを倒せれば借金がなくなってよし、死んでもラティファと会えてよし、どう転んでも結果はよし!

 ユウマ、もう何も怖くない。

 あれ? これって死亡フラグ?


「よし! そうと決まれば作戦開始だ!」

「え? もう作戦できてるんですか!?」

「アイリス。さっきも言ったろ。金が絡んだ俺は無敵だぜ! スター状態だ!」


 こうしてユウマパーティーによるヴォルカノ討伐が決定した。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――


「距離……よし。敵の姿……なし。―――よし、リリーナ。……やれ」


 俺たちは現在ヴォルカノの城がどうにか目視できる場所に集まっている。


「任せなさい! ……ねえユウマ。一応聞きたいんだけど、あの城を攻撃するだけじゃなくて、ヴォルカノをやっちゃっても構わないのよね?」

「別に構わないけど、というかできたら万々歳だが、お前それ死亡フラグだからな?」


 リリーナのやつは知らないうちに、時間稼ぎ? 別に倒してしまっても構わんのだろう? を立てやがった。

 しかも自然に。


「それじゃあ一発でかいのをかますわ! 食らいなさい! 『エクスプロージョンインフェルノ』!!」

「インフェルノ!? お前『エクスプロージョン』よりすごい魔法覚えてたの!? てか上あったの!? てかあんだけヤバい『エクスプロージョン』より上の攻撃魔法って逆になんなの!?」

「うるさいわよユウマ! 私『エクスプロージョン』が好きになっちゃったからその上も覚えたのよ! 見ててみなさい!!」


 いつもは魔法に詠唱いらずにリリーナが時間を掛けてゆっくりと魔法を詠唱する。

 おそらく魔力と思われる赤い光がリリーナの周りを飛び交い、杖を光らせる。リリーナ自身も幻想的に光っており、珍しくリリーナのことを美しいと思ってしまった。

 幻想的な光に見とれていると、やがてその光がリリーナに持つ杖の先端に集中していく。


「いくわよ!!」


 リリーナが掛け声とともに杖を振るう。


「食らうがいいわ! 『エクスプロージョンインフェルノ』!!!」


 リリーナの杖の先端に集まった赤い光がヴォルカノがいると言われている城に向かって飛翔していく。

 赤く幻想的な光は不規則な軌道を描きながら確実に城の方角へと向かっていき、そして―――城に直撃する。

 瞬間、世界から音という音が消えた。次に世界から一瞬だけ闇が消える。そして次の瞬間に今までため込んだ音と光を出し切るかのような爆音と光、そして暴風が俺たちを襲う。

 耳を劈くような爆音が耳を震わせ、目を潰されるんじゃないかと思うくらいの光が目に飛び込んできて、熱を含んだ暴風が全身を撫でる。

 爆音から少しでも耳を守るために耳を塞げば暴風に飛ばされそうになり、暴風に耐えようと近くのものを掴めば耳が痛くて、目が痛い。それじゃあ目を塞ごうかと思えば今度は耳が痛くて、風に飛ばされそうだ。

 今だけでいいから俺は腕が六本欲しいと本気で願った。

 そんな何を守っても地獄行き決定の様な、文字通りの地獄を体で体験していると、何分か経った頃からようやく音が静まり、光が収束していき、風が止み始める。

 目を開けても平気そうになったので、ゆっくりと目を開く。


「……マジで城が吹っ飛んでやがる」


 ヴォルカノがいると言われていた城が、もっと言えばその周辺が焼野原に変わっていた。


「天然チート恐るべし」


 ―――――――――――――――――――――――――――――――


 ヴォルカノの城にリリーナの魔法をぶち込んでから数時間。

 俺たちは一旦ギルドへと戻ってきていた。


「さ、さすがに疲れたわ……」


 現在リリーナはアイリスによって筋力増強されている俺の背中でへばっている。

 どうやらあの魔法、『エクスプロージョンインフェルノ』はリリーナの様な魔力タンクが使ってもかなりの魔力を持っていかれるらしい。

 リリーナが魔法を撃ち終わった後、俺が最初に目にしたのはヴォルカノがいたはずの城が跡かたもなく消えていたことで、次に見たのが目の前で無様に倒れこんでいるリリーナだ。


「おう。お疲れさん。正直よくやった。マジでさっきのでヴォルカノがやれたかもしれん」


 正直俺の作戦とは全く違う展開になったが、結果オーライどころか予想以上の成果をリリーナのやつは叩き出してくれた。

 ちなみに俺の作戦はリリーナの長距離魔法で相手から特定されにくい場所から魔法を一方的にぶち込み、中の魔物の数を減らした上であわよくばヴォルカノに打撃を与えられればなあ~。くらいに考えていたのだが、まさかあそこまで決定的な打撃を与えられるとは思ってもいなかった。


「でも、あれでやれたと思うのはマズイ」

「マズいって何が? あれでヴォルカノが倒せたんならいいことじゃん」

「ああ、でもな、こういうのはお約束ってのがあって―――」


 俺がミカにこういう時のアニメや漫画でのお約束展開を教えてやろうと口を開いたその瞬間、


「魔力は使い切っちゃったけどかなりの達成感があったわね。毎日とは言わないから週一くらいでやりたいわ。あとユウマ、私のおかげでヴォルカノを倒せたんだから感謝なさい。そうね、ヴォルカノ討伐報酬の半分でいいわ。よこしなさい」


 リリーナのやつが一瞬でフラグをおっ立てやがった。


「ユウマさん!! さっきユウマさんたちが攻撃を仕掛けたと言っていたヴォルカノの城ですが、理由はわかりませんが復活しております。ヴォルカノも健在のようです!!」


 ギルドのお姉さんからの偵察班からの報告を聞く。


「お前ってやつは! お前ってやつは! お前ってやつは~!!」

「にゃ、にゃにすんにょよにゅうみゃ~!!」


 リリーナの怒りを込めたほっぺムニムニをしてバツを与える。

 本当にこいつはロクなことをしない。


「ユウマ……さっき言おうとしてたのって―――」

「ああ、アニメや漫画では「……やった! 倒したぞ!」はまだ倒していないときのフラグの言葉だ。そしてたいがい次の瞬間には主要人物が一人やられてる」


 これがさっき言おうとしていたこういう時のお約束ってやつだ。

 倒したと思っていた相手が実はまだ倒しきれていなくて、パワーアップして帰ってくるという最悪の事態である。

 だから俺も飛んで喜びたい気持ちをグッと堪えてフラグを回収しないように努めていたというのに


「お前ってやつは~!!」

「いたいふぁよ!」

「バーザム!!」


 ほっぺほっぺムニムニの刑はリリーナの平手によって解除された。


「とにかく毎日一回リリーナにはあの城に魔法をぶち込んでもらう。今見た感じだと一日一発って感じだからな。明日と明後日と明々後日は頑張ってくれ」

「―――あれ? ユウマさん、それだと王都から応援が来る前日じゃありませんか? たぶんですけど、ユウマさんは王都からの応援も戦力に考えてるんですよね?」


 アイリスが首をやや傾げながら訪ねてきた。


「うん。アイリスは賢いな~。でも、考えは間違ってる。ヴォルカノを倒す戦力はミカとリリーナ。サポートに俺とアイリス。この四人だけだ」


 名前を呼びながら一人一人に指を差しつつ、今回のヴォルカノ討伐メンバーを全員指名する。


「―――え? 私たち四人だけですか?」

「ああ。四人だけ。ヴォルカノを倒すのは俺たち四人だけだ」


 俺の作戦ではヴォルカノを倒すのは俺たち四人だけである。戦力になること確定のファナすら抜いて考えている。


「あの、ユウマさん。私たちだけで倒せるのでしょうか?」

「倒せるか倒せないかじゃないんだアイリス。倒すんだよ。俺たちが負ければ街の人たちの命が危ない! 俺にはそれが許せない!」


 街のにいる関係もない、戦闘力もない人たちが命を散らすことは絶対に許せない。俺の正義の魂ってやつが燃え上がる。


「―――で、本音は?」

「そりゃあ俺たち以外の人間が絡めば、それだけヴォルカノ討伐の報酬が持ってかれるだろ? そしたら借金返せないじゃん」


「「「……」」」


「ミカ! 誘導尋問なんて卑怯だぞ!!」

「いや、そんな高等テクニック使ってないけど!?」


 ミカのやつのせいで俺の黒い部分が露見されてしまった。

 くそ! だから幼馴染ってやつは!!


「やっぱりユウマね。黒くて根暗で陰湿で卑怯で鬼畜だわ」

「おうリリーナ! 今ならお前の大好きな格闘戦で勝負してやんよ。表出ろ!」

「こんな動けない状況の私相手に勝負を挑んでる時点で鬼畜よ!!」


 最近、というかこの前の天下一武道会のあたりからまた俺が鬼畜外道のみたいな噂がこの街に広まっている気がする。

 しばらくは落ち着いていたのに、ギルドまでの道のりだけで子供たちから「あっ! 鬼畜の兄ちゃんだ!」。「なあなあ! またトレジャーハントしようぜ!」。「あの時のパンツの姉ちゃんも一緒だ!」などと指さされる始末。


「まあ、あくまでヴォルカノを倒すのは俺たちってだけだ。それ以外の雑魚は他に任す」

「やっぱり外道じゃない! 良いとこ取りのおいしいとこもってくだけじゃない!」

「言いたきゃ言ってろ。俺は自分が幸せならそれでいい」

「うわ~……。わが幼馴染ながらクズだ」

「うっせー! とにかく明日もあの城に一発かましに行くぞ!!」


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