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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第四章
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18話

「ゆ、ユウマさん! 大変です!!」

「ユウマ! 大ニュースよ!!」


 一足先に屋敷へと戻っていた俺の元にギルドへ今日のクエスト報告に行っていたアイリスとリリーナが帰ってきてそうそう飛び込んでくる。

 が、二人の表情の差は大きい。アイリスはひどく驚いた表情で、リリーナはなぜか瞳を輝かせ喜々とした表情で、本当になにがなんなのやら。


「どうした? リリーナは頭がおかしくなっ……元からか。リリーナは元からおかしいってので説明がつくが、アイリスはどうしたんだ? なんかすごい驚いてるみたいだけど」


 軽い挑発のような言葉を交えて二人に説明を要求すると、いつもなら怒りを露わにしてくるリリーナが瞳を輝かせたまま口を開いた。


「聞きなさいユウマ! さっきクエスト帰りに見かけた城があるじゃない? あれが」

「あれが?」

「魔王の幹部が越してきた城らしいの!!」

「……は?」


 魔王の幹部?

 幹部ってーと、あの魔王の専属の部下とか、そういう感じの? そこらの魔物とは桁の違う感じの?

 それって―――ヤバくない?


「おいっ!? それってかなりヤバいだろ!? てか、なんで魔王の幹部とか大御所がこんな始まりの街付近まで来てんの!?」


 普通は魔王の幹部っていうのは後半に戦う敵であり、少なくとも中盤までは戦うことのない大ボスである。

 そんな大ボスが何でこんな始まりの街なんかの近くに越してきたんだ!?


「もしかして魔王のやつ、今後成長して立派な冒険者になるかもしれない冒険者を弱いうちに殺しに来たのか!? だとすれば納得も行く。むしろそれ以外に考えられない」


 みんなは勇者もののRPGで、なんで魔王はレベル1とか弱いうちに勇者を殺しちゃわないんだろうとか考えたことはないだろうか?

 目立った戦果がないうちはそりゃあ勇者の卵の存在を知らなくても納得がいくが、最初のボスとかの段階で普通気が付くだろ。

 そんなんだからいつも勇者にやられちゃうんだよ!


「いえ。それが違うみたいでして、詳しくはこの後ギルドで作戦会議があるみたいです。早く行きましょう!!」

「そうだな! 早くこの街を出てほかの街に行こう! そうしよう!」

「え~~~~!!!」


 そりゃあ逃げるでしょ。

 この街にはもうチート持ちはミカぐらいしか残ってないし、チートレベルの能力を持っているのはリリーナとファナのみ。そこにミカを加えたところでどうしようもない。

 ならばどうするか、逃げるのみである。

 逃げるが勝ち。いい言葉だとユウマは思います。


「とりあえずミカを起こして、アイリスとリリーナも最低限のものだけバックに詰めて来い。俺もミカを起こしてからすぐにやる。いいか? 思い立ったらすぐ行動! 今はこれ大事! 絶対にこの街から生きて出て次の街にたどり着くぞ!!」

「いやいやいや! 待ってくださいユウマさん! この街を見捨てていくんですか!?」

「人聞きが悪いぞアイリス。あくまでいったん逃げるだけだ。ちゃんと強い仲間を集めて戻ってくるぞ? 俺がそんな鬼畜野郎に見えるか?」

「……」

「なんで!? なんで答えてくれないのアイリス!? お兄ちゃんなんかした!? 何も言ってもらえないのってすごいつらいんだけど!?」


 アイリスが俺の質問に無言で目をそらし、俺がそれに絶望して膝をつく。


「と、とにかくギルドに行きましょう!」

「そうよユウマ! バカ言ってないでさっさとミカを起こしてギルドに行くわよ! はあ~、燃えてきたわ! これで魔王の幹部を私が倒したら私の大魔法使いへの道も一気に進む! 進むのよ!」


 そんなこんなで俺はリリーナとアイリスによって起こされたミカの手によって、意識が朦朧としている間に無理やりギルドへと運ばれたのであった。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――


「よくお集まりいただきました! もうすでに冒険者のみなさんはご存知だと思いますが、イニティ近くの城に魔王軍の幹部、灼熱のヴォルカノが移動してきました。中にいる魔物の数は不明、いつまで滞在するのかも不明、何の目的であそこに越してきたのかも不明、とにかくまだ何もわかっておりません。ですがもしもの時に備えて対策会議を開いておこうと思います」


 無理やりギルドに連れてこられて近くの適当な席に座った俺たちは、ギルドのお姉さんの説明を黙って聞く。


「なあ、今言ってた灼熱のヴォルカノってそんなにすごいやつなのか? 灼熱ってからには火属性な感じなんだろうけど、そんなにヤバいの?」

「はい。灼熱のヴォルカノ―――体に灼熱の炎を纏った魔物です。私も本物を見たことがあるわけではないのであくまで聞いた話ですが、武器は特に持っていない、冒険者で言うところの武闘家のようないで立ちで、纏っている炎は百度を超えるとも言われています。前に王都を襲った時もかなりの痛手を負わせたと聞いたことがあります」

「なにその暑苦しそうな奴。正直相手にしたくないんだけど。―――なあやっぱりとんずらここうぜ」


 話を聞くだけでもう相手にしたくない

 身体に纏った炎が百度を超えてて、王都とかの冒険者の中の冒険者が集まるようなところに痛手を負わせられる奴相手に始まりの街の冒険者がまともに戦えるとは思えない。

 正直、俺なんか一分も持たせられる気がしない。


「ヴォルカノは今のところなんの行動も起こしておりませんが、いつ何をするかもわかりません。一刻も早い対応が必要となります。まずは質問をお受けいたします。なにかある方は挙手を願います」

「王都からの応援は?」

「連絡は取っています。ですが王都からの応援が来るのに最低でも一週間、それまでは全く応援が来ません」

「相手はどんくらい強いんだ?」

「ヴォルカノは王都に大打撃を与えたこともある魔物です。最近の報告ですと魔王軍幹部の一人と喧嘩して王都近くの草原を一瞬で焼け野原に変えたとの報告も入っています」

「喧嘩で草原を焼け野原ってぱねえな」

「弱点とかは?」

「今のところそう言った報告はありません。炎を身にまとっているため一見水属性が弱点のように思われますが、王都の魔法使いたちが水魔法をいくら撃ったところで当たる前に消えてしまったとの報告を受けております」

「応援は絶望的、強さは折り紙付きの保証付き、弱点なしとかなに? チート? こっちもチート持ってるからって相手もチートじゃ意味ないじゃんラティファ」


 いま話を聞いたところによると、話を聞く前以上にどうにかできる気がしない。

 周りを見渡すと俺と同じく状況が絶望的すぎてみんな深刻そうな顔をしている。

 中には状況が酷すぎて逆に笑っているやつもいた。


「質問は以上でよろしいでしょうか? ―――ないようですので次に進ませてもらいます。まずこの前のオークの大群を相手にした時のように冒険者のリーダーを決めたいと思います。といってもすでに決まってはおりますが―――ユウマさん。前へお願いします」

「すたこらサッサ!」


 俺の名前が出そうな気がしたので、前で話しているお姉さんが話し終える前に全力疾走で入口へとダッシュ。

 みんなが見ていることから『潜伏』スキルは使用できず、敵がいないため『逃走』スキルも使うこともできず、本当にただの全力疾走。

 ―――が


「なにっ!?」

「「「ふふふっ」」」


 入り口には俺の行動を読んでいたかのようにギルドのお姉さんが三人ほど笑顔で立っている。


「だが、そんなんで俺は止まらないぜ! 俺は男女平等主義者! 相手が女の人であろうと容赦はしねえ!」


 言葉とともに入り口に向かって全力疾走!

 俺を捕まえに前に出たお姉さんを泣く泣く回避し、そのまま入り口を塞ぐ二人を突破しようと一人に向かって拘束魔法『リスント』を唱える。

 そしてこれまたなぜかエロい感じにお姉さんを拘束し、突破するべきお姉さんはあと一人。いつも俺が好んでクエスト用紙を出しに行き、クエスト終了報告をするロリ巨乳のお姉さんだ。


「悪いが通らせてもらう! 本気を出した俺にかかれば人一人くらい抜くのは朝飯前! 伊達に毎日逃げてねえぜ!」


 魔物討伐最中の逃げのおかげで俺の回避スキルはかなり上がっていた。もとから人込みをスルスルと抜いていくのは得意な方だったが、この世界に来てさらに磨きがかった。

 俺を捕まえようと両腕を前に出したお姉さんの脇をきれいに抜ける。

 決まった!

 そう思った瞬間。


「きゃああああああああ!!!」

「!?」


 ロリ巨乳ちゃんが悲鳴を上げる。

 その悲鳴に思わず立ち止まってしまった。


「こ、この人―――私の胸触りました!!」

「―――えーーーーーっ!?」


 心と神に誓って言うが、俺は決して今、この瞬間にあのたわわな果実を触っていない。

 痴漢冤罪とはこのことだろう。


「ひっく……うぅ~」


 が、女の子に泣かれるとどうしようもなくなるのが男というものだ。


「あの……ごめ―――」


 冤罪だとしてもさすがに罪悪感のようなものがあって謝ろうとしたその瞬間。


「えへっ。ユウマさん。確保です」


 目の前で泣いていたロリ巨乳のお姉さんに腕をからめとられていた。

 完全に腕に抱き着かれてしまっているので逃げようがない。

 ユウマ、一生の不覚。でも、一片の悔いなし!




「えーっとまあ、嫌々ながらまたしても冒険者代表なんざになってしまったユウマです。とりまよろ」


 堅苦しい挨拶などガラでもないし、他のみんなももう顔見知りの方が多いので砕けた感じの挨拶をする。


「おうユウマ! 今回も頼むぜ!」

「よっ! 鬼畜王!」

「魔王なんかよりよっぽど鬼畜だぜ! 魔王も鬼畜度ならユウマから逃げ出しちまうぜ!」

「よーしっ! お前らの言いたいことはわかった! 一人ずつ表に出ろやコラ! いいか? 一人ずつだからな! 一人ずつでも怪しいんだから! 絶対だぞ! 嘘ついたら針千本な!」


 野次を飛ばす冒険者たちに全力のツッコミをしてから、気分を変えるためにそれっぽく咳き込む。


「とりあえず、今回は相手が悪すぎる。相手の数も不明。目的も不明、何から何まで不明だ。わかっていることは俺たちがどうあがこうと勝てるはずがないということだけだ」


 これだけは俺たちが何をしようとどうしようもない。

 この街にはすでに俺と同じタイミングで来たチート連中はいないし、戦力で言えば雀の涙。


「というわけで、この街を捨てて逃げよう!」


 人差し指を立て、天に向けて突き刺しながら高らかに宣言した。


「……ダメ?」

「「「「「ダメ!!」」」」」


 この場にいる全員から否定の言葉をもらってしまったので仕方なくない頭を回す。

 まず具体的な問題点はヴォルカノ。これしかない。あいつがなんの目的でこっちに来たのかがわかれば一番いいが、わからないのがヤバい。

 この街を襲う気がないなら放っておけばいいだけの話だが、さっきのギルドのお姉さんの話からすると来てもおかしくはないという。


 次の問題点は相手の数だ。今回は前回のオークの時の様な数はいないはずだが、その分オークの何倍も強い魔物がたくさんいる可能性が高い。

 一匹でオーク何十体分みたいな化け物がいるのは確実だろう。


 次の問題点はこっちの戦力の弱さ。

 いくら作戦を立てても実行できなければ意味がない。

 一対一の勝負は確実無理なので、一体相手に複数人で戦闘を挑む必要がある。が、こっちの戦力はこの街の冒険者のみ、百人いるかいないかだろう。

 相手一体に対して五人の冒険者で対処した場合、ニ十体までしか相手にできない。ファナやリリーナ、ミカなんかが一人で相手しても二十五体が関の山である。それ以上いた場合はもうどうしようもない。

 それに忘れてはいけないヴォルカノ、あいつを倒す戦力の確保となると、さっき名前の挙がったファナ、リリーナ、ミカの三人のうち、少なくとも二人は万全の状態で確保しておきたい。


 ―――あれ? もう無理じゃね? ムリゲーじゃね?


「勝てる気がしねえ―――」


 俺の絶望感漂う言葉にみんなの顔が一瞬暗くなる。


「―――やれるだけのことはしよう。まず交代で幹部の城の監視だ。奴らが動いたら即行動ができるようにギルドに報告するための魔道具を持って待機」


 相手に先手を打たれるのはマズイ。状況をさらに不利にするのだけは何が何でも避けなければならないのでこれは絶対にはずせない役目だ。


「次にここら付近の魔物の討伐。ヴォルカノが自分で連れてきた魔物以外にここら一帯の魔物を連れてこないとは限らない。だから少しでも数を減らす。ただしヴォルカノの機嫌を損ねてすぐの攻められたら意味がない。定期的に数と標的を絞って撃破する」


 いざ戦闘になった場合、相手の数は一体でも少ないほうがいいに決まっている。そのための処置だ。

 が、今言った通り、バンバン魔物を討伐したことが原因でヴォルカノが怒り狂ってこの街を襲ったらその時点でジ・エンド、ガメオベラ、ゲームオーバーである。

 その辺は上手くやっていく必要がある。


「最後に住民の避難経路の確保と呼びかけだ」


 もし俺たちがヴォルカノを対処しきれなくなった場合、状況によってはこの街を捨てる必要がある。

 そのための一番効率よい経路の確保と誘導方法、そのため最低限の準備が必要だ。


「呼びかけをすると言ったが、住民にはヴォルカノが来てることは話さない。……そうだな。この前のオークの大群の時のようなことが今後も起こらないとは限らない。だからまたその時のようになった時にすぐに避難できるようにしておいてほしいと放送しよう。それで明日には一回その避難訓練を開く」


 一番怖いのは住民がヴォルカノの存在を知って慌てふためいて冷静さを失うことだ。

 こっちが下手な行動を起こせばヴォルカノが動く可能性が上がる。が、何もしないわけにもいかないのでそれらしい説明をして住民には対策を取ってもらう。

 避難訓練は住民たちの非難の速度を上げるのと、こっちの誘導練習だ。やっておいて損はない。


「とりあえず今やることはこの三つだ。みんな全力であたってくれ!」


「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」


 再びこの街の冒険者の心が一つになった。


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