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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第四章
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17話

「食らえ! スターバーストエクストリーム!!」


 俺は目の前のジャイアントコングに二刀の剣で切りかかる。

 そして俺の使った技、スターバーストエクストリームは決してこの世界で俺が剣の熟練度を上げて手に入れた新技などではない。むしろ最近は俺の剣じゃ歯が立たない敵とばかり戦っているので、前衛をミカに任せて俺は中衛でみんなの指示だしと拳銃による牽制攻撃をするのが最近の役割となっていた。

 では、今使っているスターバーストエクストリームとは何なのか。それは俺が日本にいた頃にとあるアニメの主人公が二刀流時にのみ使えた技の一つだ。二刀の剣から繰り出される十六連撃。二刀の剣とその持ち主がまるで舞うように相手を切り刻む大技である。

 そのアニメでは主人公の必殺技として大いに活躍もしていた。


「ふっ……またつまらぬものを切ってしまった」


 そしてこの決め台詞。何度言っても飽きない。やっぱり五右衛門ってかっこいいわ。でもなんであの刀てこんにゃくは切れないんだろう。


「……ねえユウマ。カッコつけてるところ悪いけど、そのままだと……死ぬよ?」


 ミカの声を聴いてジャイアントコングの方へ向き直ると、そこには顔を真っ赤にして胸のあたりを叩いているジャイアントコング。


「ですよねっ! 俺の見様見真似の自己満足な必殺技(仮)なんて全然効きませんよね! 知ってた! ユウマ知ってました!」


 そう叫びながら次の瞬間に振るわれたジャイアントコングの剛腕を辛くも回避。冷静にそのままの動きでジャイアントコングの後方へ回り込み、再び一閃。

 最近戦いにも慣れてきたのか、それとも死んでも大丈夫かもしれないと思い込んでいるのか、ヒット&ウェイの戦法を取ることも少しずつ減ってきた。

 と言っても俺の火力なんてリリーナやミカの攻撃に比べたら雀の涙どころか、アリの涙くらいの攻撃力しかないので、本当にただの自己満足だったりする。


「ちぇっ! やっぱり俺の攻撃なんか効きやしないか……。ミカ! あとは頼んだ!」

「任されたっ!」


 俺の掛け声にわざわざ敬礼までして反応したミカはクラウチングスタートの格好を取り


「行きます!」


 と、言って弾丸のように駆け出そうとして転んだ。

 頭から地面にキスしに行った。


「……ミカ。お前、地球のことそんなに好きだったのか? 俺はてっきりお前も人間の男が好きなもんだとばかり……。……悪ぃ、好きって気持ちをバカにするのは野暮ってもんだよな……」

「違うからっ! 別に地球そんなに大好きじゃないから! ちゃんと人間の男の子が好きだから! そんなんじゃないから!!」


 俺のボケにツッコミを入れながら起き上がるミカ。


「にしてもやるね。このジャイアントコング。この私に土をつけさせるなんて結構な手練れだよ。ユウマ、気を付けていこ!」

「いや、俺にはミカが自分でただ勝手に転んだようにしか見えたんだが……」

「ユウマ……眼下に行こう……。大丈夫、きっとまだ間に合うよ……」

「ちょっと待て! この流れはおかしい! なんで俺がおかしいみたいになってんの!? 言っとくけど俺の両目の視力1.0だからな! ゲームとかネットとかで酷使してた割にはいい方だからな!?」

 今言った通り、俺の視力は両目とも1.0だ。

 毎日ニート生活を送っていた俺だが、意外なことに視力はあんまり下がらなかった。


「ユウマ、もう魔法撃ちたいんだけど撃ってもいいわよね? いいのよね? それじゃあ『サンダーボルト』!!」

「ちょっと待てーっ!! おわっ!?」


 リリーナのやつが確認とも呼べない確認を取ってから魔法を放つ。

 俺とミカとジャイアントコングのちょうど真ん中くらいに落ちた雷撃が地面を焦がす。

 そして―――


「あががががががが……」

「あややややややや……」


 俺とミカが感電する。

 地面に足を付いていたからどうにか体に上ってきた電流が逃げて行ってくれたが、下手をしたら確実に死んでいた。

 現に俺はリリーナの魔法を食らってその場に倒れこむ。ミカも俺に続いて地面に倒れこんだ。

 俺たちと同じく雷撃の餌食になったはずのジャイアントコングを首だけを動かしてみてみると、俺たちと同じように地面に倒れこんでいる。

 これでジャイアントコングが平気な顔をしていたら『金剛力』持ちのミカはどうにかなったかもしれないが、なんのチートも持っていない俺ならば即死だった。

 ラティファと再会を果たしてしまうところだった。


「て……てめぇ……リリーナ……後で覚えとけよ」


 リリーナに痺れていて呂律の回らない舌を懸命に動かして恨みを込めた視線を送る。


「あ……アイリス……回復たの……むっ!?」


 回復を頼もうと再び首を動かしアイリスの方を向くと、そこにはジャイアントコングの治療をしているアイリスの姿があった。


「ちょっと待っててね。いま治してあげるから。すぐに痛いの飛んでいっちゃうからね。大丈夫だよー。あと少しだからね」


 子供をあやすように絶え間なく言葉を紡ぎながら回復を継続するアイリス。

 これはマズイ! 非常にまずい! この状態でジャイアントコングの意識が回復して暴れだしたらやばい。俺がやばい。ヤバいったらヤバい。


「お、おい、リリーナ! アイリスを止めろ! 至急、今すぐ、刹那のうちに!!」


 今現状動けるリリーナにジャイアントコングの治療をしているアイリスを止めるように指示を出す。

 が、しかし―――


「いやよ。アイリスがあいつを治療してくれたらまたあいつに魔法を撃ってもいいんでしょ? それなら私にアイリスを止める理由はないわ。アイリスも回復できてよし、私も魔法を撃ててよし、一石二鳥じゃない。やっぱり私って天才だわ」

「うっせーこの天災魔法使い! くそっ、ミカ、動けないか! このままだとマジでやばい。俺がやばい……ミカ?」


 声をかけても返事が返ってこない。再び首を動かしてミカの方へ向き直るとそこでは。


「寝てるーっ!? この状況でこの子寝ちゃってるよ!? なんつー肝してんの!? ユウマさんでも驚きですよ!?」


 寝ているミカの姿があった。

 幸せそうに頬を緩め、口元から少しよだれをたらし、状況が状況なら少しほほえましい光景でミカが寝ていた。


「ホントこのパーティー何なんだよ!? 魔物を回復しちゃうヒーラーに、魔法が撃ちたいだけの魔物に愛され体質を持つ能筋魔法使いと、せっかくのチートをドジという天然スキルで全部打ち消しちゃう格闘家ってなんなん!? このメンバーで魔王討伐とか無理だろ!? ムリゲーだろーっ!」


 改めて自分のパーティーメンバーの異常さを再確認した俺は、少し強引な手ではあったがアイリスを拘束魔法『リスント』拘束し、ジャイアントコングが回復してしまうという最悪の展開を防ぎ、事なきを得た。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――


「ふうー……。今日も何とか生き延びた……」


 ジャイアントコング討伐の帰り道。あのまま寝てしまって起きないミカを背負った俺と、リリーナ、それと俺に一定時間ごとに筋力増強魔法『アグレッシオ』掛けるアイリスで始まりの街、イニティへの帰路を歩いていた。

 ジャイアントコングの生息地は街を出てすぐの草原を抜けた先の森の中だったので、帰りには大体一時間くらいかかる。

 周りは相も変わらず紅葉が茂っており、赤や黄色の色が鮮やかだ。

 そんな中をただ静かに歩くのも悪くないかな。なんて想像、もとい妄想しながら歩く。


「にしてもミカのやつ重いな……。また太ったんじゃねえのか?」


 少しずり下がってきたミカを上手く動かし体制を整える。

 その際に背中に当たる少し柔らかい感触に心を躍らせているのはここだけの秘密だ。

 さっきからその感触を味わいたくて、意味もないのに体制を整えているのもここだけの秘密だ。


「ユウマさん。女の子にそんなこといっちゃメッ! ですよ!」

「あ、アイリスたんマジ女神!」


 俺に人差し指を向け、可愛らしく「メッ!」と言ってくれたアイリスに対し、新たな言葉が生まれた。

 アイリスたんマジ女神。

 この言葉はマジ天使の一個上の存在にあたり、この言葉の最上級の言葉である。

 天使の上は女神だろうという俺の浅はかな知能によって生まれた割と低能な言葉だ。


「……ねえユウマ。あそこに魔法撃ちたいんだけどいいかしら?」

「はっ? ダメに決まってんだろ。その音聞いて魔物がやってきて、囲まれて、リリーナが弄ばれて、アイリスが魔物の回復に夢中になって、筋力増強魔法の切れた俺がミカを落とすまでのビジョンが見えてる」


 我ながらすごい先まで読んだ想像である。

 ただこのパーティーの怖いところはその想像を実現させるところにある。言葉だけ聞けばかっこいいし便利そうにも聞こえるのに、状況が残念なのが残念で仕方ない。

 リリーナの頭も残念で仕方ない。


「……って。あれなんだ?」


 一応リリーナが魔法を撃っていいか聞いてきたところへと視線を向けると、そこにはボロイ城が建っていた。

 距離が結構あるのでしっかりとは確認できないが、ここから見て確認できるのはところどころの窓が割れている。城に大量の茨が巻き付いている。そしていくら城だからと言ってあんな所には住みたくないということだけだ。


「あんなの建ってたっけか?」


 最近借金返済の日々でしょっちゅうここにも来ている俺たちだが、あんな城を見た記憶がない。

 この道を何度も通っていて、この森の中で俺たちの知らない場所は多くはない。迷う余地もない。というくらいこの森に来ている俺達でも、だ。

 だとすると最近建ったと推測できるわけだが。


「あんなオンボロ城誰が建てたのかしらね。建てたやつのセンスが知れないわ」


 リリーナの言うとおりである。わざわざ立てる城をあんな風に建てる奴がどこにいるだろうか? どうせならいい感じに作ろうとするはずである。

 金がないけど城に住みたい。って人でも、小さくしてきれいな城を建てるはずだし、なんであんなオンボロ城になったのかが理解できない。


「もしかして……オンボロフェチみたいなやつがいるのか……さすが異世界。俺の知ってるフェチを軽く超えてやがる」


 合ってもいないだろう結論を出し、俺たちはそのまま帰路に就いた。

 その間何度も城に向かって魔法を撃とうとしたリリーナを黙らせたのは言うまでもない。





「さて、街に無事帰ってこれたわけだし、ここからは二手に分かれるか。俺はミカを連れて先に屋敷に帰る。アイリスとリリーナはクエストの報告をギルドにしてきてくれ」

「わかりました」

「わかったわ」


 街の入り口でリリーナとアイリスと別れる。

 俺の買った屋敷はギルドから歩いて十分という場所ではあるのだが、街の入り口から帰るとなると右と左の二つに分かれた方が各々早い。

 なんだかんだ言ってアイリスとリリーナも疲れているだろうし、少しとはいえ遠回りさせるのも悪い。主にアイリスに。

 そんなことを考えながら背中にミカの微かに柔らかい感触を味わいつつ、俺はアイリスにかけてもらった筋力増強魔法『アグレッシオ』が切れる前に屋敷へと歩を進める。

 普段ならば気を張っていないと落としてしまいそうなミカの重さでも、『アグレッシオ』で筋力の増強をしている俺にとってはちょっと重いものを背負っているのと大して変わらない。

 今俺が感じている重さをあえてたとえるならば、たぶんお米十キロ分くらい。まあ、おつかいもしたことないのでお米十キロの重さもわからないのではあるが。


「……あれ? 今までお使いを一度もしたことないってことは、今からでもはじめてのおつかいでれるんじゃね?」


 我ながらくだらないことを考えながら、この年でおつかいも行ったことのない自分を恥ずかしさを紛らわす。

 そうこうしているうちに屋敷へとたどり着いた俺はとっととミカをミカの自室へと運びこんだ。


「……こうしておとなしく寝てるとミカも幼馴染補正も相まって多少はかわいんだけどな。俺みたいなバカほっといてクラスのやつと仲良くしてりゃあ楽で楽しいリア充生活を送れたものを。まあ、俺はなんだかんだ言ってミカを必要としてるからいいっちゃいいけどさ。……さて、そろそろ部屋に戻って銃の整備でもしておくか。壊れちまったらまた最初から作り直しだからな」


 それだけ言ってミカの部屋を退出する。

 ただ気のせいだろうか、途中から妙に首に回っていたミカの手に力がこもったような気がして、ベットに下ろそうとしたときに一瞬だが、離れまいと力を入れられたような気がしたのは。


「まあ、気のせいだよな。俺ってばそんなことで勘違いして女の子に告白するような超おめでたい頭をしたやつじゃねえし」




「……ユウマ……ふふっ」


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