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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第四章
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14話

 あれから二回戦三回戦と試合は続き、次は四試合目。


「それでは四試合目! アイリスVSジョン! 小さい女の子であるアイリスちゃん。頑張ってほしいものです」


 おうおう司会の兄ちゃん。ちょっと後で屋上来いや! と視線を送る。


「にしても……アイリスまで出場してるとは……。それに、あのジョンってやつも見覚えが……あっ! あのオーク戦の時にいきなり結婚宣言をして死亡フラグを音速でおっ立てた兄ちゃんだ!」


 この前のオークの集団から街を守ったとき、リリーナの担当する弓、魔法の遠距離班にいたやつである。

 まさかあれだけの死亡フラグを立てておいて生きてるとは……。


「ユウマさんの為にも頑張らないと……。勝ってユウマさんにいつものお礼の気持ちも込めて賞金をプレゼントするって決めたんだもん。頑張らないと」


 そんなアイリスの小さなつぶやきが俺のアイリスイヤーに入ってくる。

 説明しよう! アイリスイヤーとは周りがどんなにうるさくてもアイリスの言葉だけは聞き逃さないためのユウマ専用の耳である。

 ちなみに都合の悪いことはシャットアウトするユウマイヤーの付属品である。


「勝ってマリアに王都の有名な指輪職人特性の指輪をプレゼントするんだ!」


 アイリスと目的は似ているようだが、残念ながらリア充は爆発すべき存在だ。今すぐここで死すべきである。


「それじゃあ! 試合開始!」


 司会のお兄さんの合図によって試合が開始される。


「も、申し訳ないですけど、勝たせてもらいます! 『スプラッシュ』!」


 試合開始早々アイリスが『スプラッシュ』を放つ。

 だが、


「なんかいつもより威力が弱くないか?」


 なんだかアイリスの魔法の威力がいつもに比べてかなり弱い気がする。牽制目的の攻撃にも見えないし、試合開始早々に牽制の攻撃をする必要なんてない。ふいうちだけで十分だ。

 だとしたら―――


「……もしかして、人間相手だから全力が出せないのか!!」


 アイリスの性格ならばあり得る。

 魔物を傷つけるのにも抵抗を見せるアイリスだ。人間相手なら魔法を撃つだけでもつらいだろう。それなのにアイリスは俺の借金を減らすためにそれを我慢して―――


「くうぅぅぅぅぅぅぅ! アイリスたんマジ天使! エンジェル! 俺の嫁!」


 戦闘場に視界を戻すと、俺が妄想の世界にトリップしている間に試合は進行していたようで、現在アイリスが圧倒的に不利な状態になっている。

 ジョンと呼ばれる弓使いの男がアイリスが集中して魔法を詠唱できないように的確に矢を放ち、どんどんとその距離を詰める。

 マズイ。 魔法使いでまだ小さいアイリスじゃ大人の男に距離を詰められたらその時点で終わりだ。

 アイリスはどうにか距離を詰め切られないように詠唱なしの制御の甘い魔法をいくらか放つが、制御の甘い魔法は上手く飛んではいかず、ジョンにあたることがない。

 そうしているうちにとうとうアイリスはジョンに後ろを取られ、脇に手を入れられ、持ち上げられてしまった。


「あっ……」


 アイリスの小さな悲鳴。


「こんな小さな女の子に乱暴なんてできないから場外に下してあげよう」

「くそっ!! あの野郎! 俺ですらアイリスの脇に手を通したことがないのに! あんにゃろーっ! あとで屋上で乱闘だ! 乱闘パーティーだ! 大乱闘フルボッコユウマーズだ!! ただアイリスを傷つけないようにするその心意気はよし!!」


 単体なのに複数形だとか、今はどうでもいい。だからツッコミも禁止します。それでも文句あるなら事務所を通して!


「どうする、どうするユウマ。ここからアイリスを手助けする方法は……。考えろ! なにか方法があるはずだ!」


 今までにしたことのないくらいに高速で頭を回転させる。

 もしかしたら実際に頭も回転させたら中の頭の回転も速くなるかもという意味のわからない理屈を信じて実際に頭も回す。

 ……目が回ってきた。

 そうしている間にもアイリスは抱きかかえられたまま、場外の方へと運んで行かれる。


「このままじゃ……このままじゃ負けちゃう。ユウマさんにいつものお礼をしたいのに……」


 俺は見逃さなかったアイリスの小さな涙という宝石を。


「このままじゃ……。そうだ!!」


 ようやくいい考えの浮かんだ俺は大きく息を吸う。

 そして―――


「おいおいあんちゃん! そんな小さな女の子に乱暴すんのかよ! 男が廃るぜ」

「それにもっと抱え方だってあるだろうに脇に手を入れるって……アイツロリコンなんじゃねえの!」

「おい! 誰か憲兵さん呼んで来い! いい年した兄ちゃんが小さな女の子に乱暴しようとしてるって! あと、あいつの奥さんも!!」

「おくさーん。夫のジョンさんが小さな女の子に手を出していまーす! 不倫でーす! あれは不倫でーす! 現場を押さえました! あれはきっと夜の街も出歩いてまーす!!」

「見て! あの危ない目! あれは変態の目よ! きっとあの子の育ち盛りの果実を堪能する気だわ! きゃあーっ! いやらしい!」


 試合会場のギャラリーの中からそんな声が上がる。

 ちなみに全部俺である。

 会場を走り回りながら、声音を変えて今の言葉のすべてを発する。

 普通の男の声、ちょっと高めの女の子の様な声、おっさんの声、おじいさんの声、おばあさんの声、そんな様々な声で、だ。

 そんな俺の声を聞いてか、周りのギャラリーも俺が言ったように見えてきたのか、俺と似たような声が上がる。


「そうだそうだ! 兄ちゃん! もっと正々堂々戦ってやれや!」

「同士よ! あとで一緒に酒を飲みかわそうぞ!」

「おい! 憲兵と奥さん連れてきたぜ! 見てくれよ! めっちゃ美人さんだ!」

「夜の街で見たような……」

「確かに、なんか危ない目をしていますわね。……怪しいですわ」


 周りのギャラリーがどんどんと騒がしくなる。

 そして当の本人はというと―――


「えっ!? そ、そんな!? ご、誤解です! 僕はこの子に乱暴なんかしないし、夜の街なんて出てないし、危ない目なんかしてないです!それに、それに僕にはマリアっていう最高のお嫁さんが!」


 必死に取り繕うジョン。だが、それは逆効果だ。


「おうおうおう! こんなところでのろけ話たぁいい度胸だ! おい! 野郎ども! モテない男の力あの兄ちゃんに見せてやろうぜ!」

「オッケーだ! アイツ、この前のオーク戦から調子乗りすぎなんだよ! ちょっと別嬪さん捕まえたくらいで調子に乗りやがって!」

「あの子を保護しましょ! あの男、なんだか危ないわ!」

「あれは野獣の目よ! 野獣から女の子を救い出しましょ!!」

「ちょ!? ちょっと待って! 僕は無実だぁぁぁぁぁぁぁあ!!」


 男性冒険者も、女性冒険者も総出になって試合に乱入しようと動き出す。

 この大会の主催者も俺の口車に乗ったようで、止めようともしない。

 結果、試合は男が小さな女の子に試合という名目をいいことに乱暴をしようとした。ということでアイリスの不戦勝ということになり、ジョンという青年は憲兵さんに連れていかれた。

 少しやりすぎたかな? という感覚もあったが、リア充なのが悪い。

 リア充死すべき、リア充爆発。


「フッフッフッ……」


 ……作戦通り!


 ―――――――――――――――――――――――――――――――


「……なんかいろいろとありましたが、第五回戦! リリーナVSリッカ! ここに来て魔法使い同士の勝負ですね! これはどう戦っていくのか楽しみです!」

「……まさかリリーナまで出てるとか……。でもあいつの場合、アイリスみたいな天使な理由じゃないんだろうな」


 アイリスと違ってリリーナは悪魔だ。魔王だ。第六天魔王だ。

 そんなリリーナが俺のためーとか言ってくれるはずがない。言ったらそれは世界が終わるのに等しい。

 今回の試合は司会のお兄さんの言う通り魔法使い同士の戦闘だ。二人とも杖を持ち、いかにも魔法使いという装備。

 年も同じくらいみたいだし、結構いいマッチングだと思う。


「……まあ、魔法勝負じゃリリーナには勝てないだろうなあの子。……可哀想に。相手が魔王じゃ……」

「それでは、試合開始!!」


 司会者の合図で試合が開始される。


「魔法使いらしく魔法で勝負! ……って。えぇ!!」

「遅いわよ!」


 相手のリッカが驚くのもわかる。というか、驚いていないのはたぶんリリーナ本人と俺ぐらいだろう。他のギャラリーも呆然としている。

 でもそりゃあそうだろう。だって魔法使いがいきなり杖を放りだして敵に突っ込んでいったら誰だって驚く。俺だって驚く。驚いてないけど。

 魔法使いでありながら魔法使いの生命線である杖を手放し、魔法使いらしくもなく敵に突っ込んでいったリリーナは相手が驚いているのをいいことに勢いのまま突進し、そのまま相手を押し出す。

 勝負あり! だ。


「全く、これだからその辺の弱小魔法使いは困るわ。もっと魔法なんて使わないで正々堂々戦いなさいよ! ふんっ!」


 魔法使いのくせに魔法使いらしからぬセリフをツンデレ口調で言いながらリリーナは勝負の終わった戦闘場から立ち去る。


「……魔法使いなのに、それってどうなのよ……」


 リリーナの突進で頭を打ったリッカという魔法使いの女の子は気絶する直前に、それだけを言って意識を落とした。


「リッカさん……全くその通りです」


 リッカさんに同情せざる負えない俺だった。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――


「第六回戦! ミカVSレドモンド! 格闘家同士の対決! どんな力のぶつけ合いがみられるのか、楽しみですね!」

「やっぱりミカも出てたか……」


 アイリス、リリーナと出場していた時点でなんとなくミカの出場も予想できていた。

 ホント、ここまで会わなかったのが奇跡に近い。


「お二人とも準備はいいですか? それでは試合開始!」


 司会のお兄さんの合図で試合が始まる。


「この勝負はミカの圧勝だろうな。『金剛力』なんてチート持ってるんだし、ドジさえ踏まなきゃ楽にいけるだろう。……あとは相手のレドモンドが死なないのを祈るだけだな」


 ミカの今回の試合での唯一の欠点と言えば、相手を殺してしまいかねないというところだろう。

『金剛力』、それは人並み外れた力と防御力を手にするスキル。

 そしてそれを持つドジっ子女ミカ。

 持ち主自体はよくドジして転んでケガをするからいいスキルだと言っているが、戦う側からすればドジで殺されてはたまらない。

「えへっ。うっかり殺しちゃった。てへぺろ」では済まされないのだ。


「同じ格闘家同士、正々堂々戦おう! いざ、参る!」


 そう宣言をして、試合が始まって最初に動いたのはレドモンド。

 すごい脚力で地面を蹴り飛ばし、弾丸の様な速さでミカとの距離を詰める。


「そいやっ!」


 迷いのない正拳付きが放たれる。

 相手が女であろうと全力を尽くす。格闘家同士でなら当たり前のことなのだろう。誰も全力で殴ったレドモンドを咎める者などいない。

 圧倒的な力で空気をも断裂させそうな拳を受けたミカは―――


「ちょっとー。女の子に暴力はいけないと思うなー」


 ケロッとしていた。

 どこかのガマ星雲第五十八番惑星宇宙侵攻軍特殊先行工作部隊隊長くらいケロッとしている。


「な、なに!? わ、私の拳を受けて無傷……だと」


 レドモンドが心底驚いた顔をしている。

 当然だ、自分の信用する全力の攻撃を放って、相手がケロッとしていたら誰だってああなるだろう。


「な、ならばっ!!」


 レドモンドが今度は強烈な蹴りを放つ。ミカは防御するつもりもないのか、それともただ反応できなかっただけか一切動かない。

 レドモンドの足がミカの顔面を捕らえる。ミカは勢いのまま吹っ飛ばされ、場外に出るまでは行かなかったものの、端の方までは吹っ飛ばされた。

 俺なら今の一撃で三回は死ねる自信がある。

 が、ミカはもちろん。


「いったーいっ! もうっ、怒っちゃったもんねー!」


 何事もなかったかのようにミカは起き上がる。


「いっくよー!」


 ドンッ!

 無理やり擬音で表すとすればまさにそれ。すごい音を立てながらミカは先ほどのレドモンドのように猛烈な脚力を持ってして、一瞬のうちにレドモンドに突っ込んで行く。

 が、しかし。


「あわわわわっ! このままじゃあ勢い殺しきれなくて場外に落ちるーーーーーー!!」


 ミカはドジだ。天然性のドジだ。レドモンドのようにカッコよく決まるはずがない。

 自分でスタートしたくせにその勢いを殺しきれなくなったミカは落ちるくらいならば、と思ったのか、地面を思いっきり蹴って上に向かって飛んだ。

 ジャンプ。なんて生易しいものではない。まさに跳んだのだ。

 軽く数十メートルは跳んだだろう。

 そしてそのままミカは―――


「天空バツ字拳!!」

「やめろおおおーい! お前、いくらこれが天下一武道会に似てるからってそれはダメだろ! 俺が言っても説得力薄いかもしれないけどそれはダメだろ! ちょっとひねってるけどモロバレだから! モロバレルだからぁぁぁ!!」


 ミカは上空から手をバツの字に組んでレドモンド目がけて落ちる。

 そして、それは見事に捕らえた。


 ギャラリーのおっちゃんを。


 つまり場外に落ちた。

 上空でどうやって軌道を変更したんだとか、戦闘場でジャンプしておいてなんで場外に落ちるんだとか、色々言いたいことはあるが、それはミカのドジで説明がついてしまうから怖い。

 アイツのドジはエロ漫画で真正面からぶつかったはずなのに、女の子のお尻に顔を埋める主人公くらいのものだ。

 もしくは、上から落ちて下にいた女の子を巻き込んでしまったはずなのに、なぜか結果的に自分が下敷きになって胸に顔を埋めている主人公のようなものだ。

 つまり、この世界の理論が通用しない出来事なのだと割り切るしかない。


「しょ、勝者、レドモンド!!」


 レドモンドは呆然としながらも、なぜか納得のいかない顔をしていた。


 ちなみにミカの攻撃を食らった不幸なおっちゃんは急いで憲兵さんに運ばれていった。

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