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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第四章
82/192

13話

 

「『サンド』! からのー『エア』!」


 俺は魔法によって形成したサラサラの砂を魔法によって生み出した風で吹き飛ばす。


「いつもいつも小賢しいのよ! 『ウインドブレス』!」


 それをリリーナが中級魔法で何事もなかったかのように吹き飛ばす。


「今度はこっちから行くわよ! 『ブラストバーン』」


 リリーナはさっきの中級魔法に続いてさらに中級魔法をほとんど詠唱なしに唱える。リリーナの杖の先から大きな炎が飛び出し、俺を目がけてすごい勢いで向かってきた。

 それに対し俺は冷静に回避行動を取る。『逃走』スキルで敏捷を限界まで引き上げ、回避に足りなそうな分は『スプラッシュ』による加速をつけて回避。


 なぜ俺とリリーナがこんな全力な戦いをしているのか、それには理由がある。

 それは少し前にさかのぼる。




「なあ、今日は久しぶりにクエスト行かないでダラダラしないか?」


 いつも通りの朝、俺は居間にいるアイリス、リリーナ、ミカに向かってそう言った。


「なによ急に、ユウマは仮にも借金持ちでしょ。働かないと借金返せないわよ。私たちが手伝ってあげてるのに本人がこれじゃあどうしようもないわね」

「おうこらリリーナ。てめー何借金が全部俺のもんみたいに言ってんだよ。あの時ギルドのお姉さんが言ってただろうが「ユウマさん御一行」って、あれにはしっかりとお前も含まれてるからな」


 さらっと自分は借金なんて知りませんよアピールをしようとしたリリーナに若干喧嘩腰でお前も当事者だアピール。

 この借金、誰が一人で負担などしてやるものか、するとしたら押し付けるくらいだ。もちろんリリーナに。


「それでユウマさん。どうして急にそんなことを?」


 俺とリリーナが喧嘩にならないようにちょうどいいところで口を挟んできてくれたのは、俺たちのパーティーのマスコット兼癒しの天使アイリスだ。

 ついこの間まで喧嘩、というよりは俺がアイリスに一方的に嫌われていた件だが、一昨日、ほかの冒険者たちのおごりで酒を飲みまくって酒に飲まれて眠ってしまい、ふと夜中に目を覚ますとそこにはアイリスがいた。

 なぜかいつものように天使の笑顔で「大丈夫ですかユウマさん。あんまりお酒を飲んだりしちゃだめですよ? 慣れてないんですから」と言ってくれて、いつの間にか今まで通りのアイリスに戻っていた。

 アイリスの中でなんの心境の変化があったのかは今なってもわからない。けど、仲直りはできたみたいだ。

 ちなみに昨日は初めての二日酔いというものを体験し、一日中頭痛に苛まれていた。


「ん、まあ、その、なんだ……」

「ようするに理由はない。サボりたいだけってことだよね、ユウマー」


 俺がどうそれっぽい言葉を並べ立てようか悩んでいるところにミカの核心を付いた一言。


「な、なにを言っているのかねミカ君。ぼぼぼ、僕は最近みんな高難易度クエストばかりで疲れてるだろうし、毎日クエストばかりで少しは遊んだりしたいだろうなー、というこのパーティーのリーダーらしいことを考えたりしたりしたわけで、決して自分がだらけたいとか、ニートしたいとか、中二病でも恋がしたいとか思ってるわけじゃないんだよ」

「でも顔にはだらけたい、ニートしたい、って書いてあるよ」

「おいミカ、書いてあるよ。って言いながら俺の額にマジックペンで書こうとするな。事実のねつ造は止めろ。……しかもそれ油性じゃねえか! 書いたら消えないだろ!」


 俺の額に本気でその言葉を書こうとするミカからどうにか逃げ通す俺。ミカに本気で迫られたら『金剛力』で一発だが、さすがにこんなことに『金剛力』を使うほど馬鹿ではないらしい。


「とにかく! 今日はお休み! 休日! だらけていい日! ローマのお姫様だがお嬢様だって一日だけその身分を捨てた日があったんだ、俺たちだって今日ぐらい借金のことを忘れてもいいはずだ!」


 我ながらなんの脈絡もない、意味どころか考えすらない薄っぺらい言葉だったが、言いたいことは言い切った。


「まあ、たまには借金のことを忘れるのはいいかもねー。ここの所借金、借金ってそればっかりだったし、たまには息抜きもいいかも」


 以外にも俺の案に最初に賛成してくれたのは、さっきまで半ば今日はお休み、という俺の案の反対派だったミカだ。


「どういう心境の変化か知らんが、ミカはいいんだな? アイリスは?」

「私もたまにはお休みもいいと思います。最近ずっと大変でしたから今日ぐらいお休みでもいいと思います。……私もちょっと買い物とかしたいですし」


 小学生くらいの年齢と言えどアイリスも女の子。やっぱりショッピングというものは好きなのだろう。ファナの話だと少なくとも週に一回はファナの店に行っているみたいだしな。


「アイリスもオッケーと。あとは……どうでもいいな」

「なんで私にはちゃんと聞かないのかしら!」

「だって本当にどうでもいいし」

「今日こそは本当にユウマと拳と拳で話し合うべきだと私は思うわ」

「いやだよ。ぜってー勝てねえし。俺は勝てない戦はしない主義なんだ」


 俺とリリーナのステータスはレベルを抜きにしても結構な差がある。

 俺の現在のレベルが六。我ながら貧相でちっぽけなレベルである。これがこっちの世界に来てから数日だといえばまあまあといった感じだが、俺がこっちの世界に来てからもう三か月以上が経過している。

 しかもほんの一カ月くらい前まではレベル一だったという事実。目も当てられない。

 それに対しアイリスのレベルは十六、最初にあった頃から比べて十レベルも上がっている。基本的に魔法によるサポート要員であるアイリスですらレベルが十も上がっているのに、前衛で戦っている俺の方が上がったレベルの少ない事実。しかも俺は『冒険者』という一番最低の職業なので一番レベルが上がり安いはずなのに、だ。


 そして次にリリーナ。リリーナはすでにレベル二十三という二十代にまで達している。

 うちのパーティーの基本戦力というのもあるが、ミカは単体撃破に向いているのに対し、リリーナは魔法による集団撃破に向いているため一番経験値が稼ぎやすい。

 例えばコットンラビットを討伐した分だけ報酬がもらえる、みたいなクエストだと、七割がたはリリーナの手によるものである。

 それにリリーナには魔法使いのくせに、初期スキルでデコイ系のなぜか魔物に好かれる『魔物チャーム』を所持している。これのおかげで集団撃破に向いていて、敵も自分から寄ってくるというのだから便利なのものだ。


 そして最後にミカ。ミカの現在のレベルは二十。リリーナほどではないにしろ、うちの物理方面でのアタッカーということもあってリリーナの次にレベルが高い。

『金剛力』というチート能力のおかげで低レベルでも高難易度の魔物を一撃で葬り去る火力を持つ。相手が単体の場合にのみすごい力を発揮して、物理的な攻撃によるダメージもかなり軽減されるらしいので盾としても最適だ。


 話がずれてしまったので戻すと、俺とリリーナのレベルの差は数字にして十七。そしてSTRという力の値を比べると、俺、四十二。リリーナ八十八といった具合だ。

 レベルの差というのもあるが、リリーナが能筋ということもあってたぶんレベルが並んでもリリーナより少し上回れるかどうかだろう。下手したら下回る可能性すらある。

 これだから能筋魔法使いは。


「とにかく今日は休みだ休み。誰が何と言おうと、たとえ緊急クエストが入ろうと、天変地異が起ころうと休みだ!」


 というわけで今日は一日休みということになった。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――


「あまりにも暇でニートな俺でも外に出てみたわけだが……なんにもすることない。これがニートの弊害か……」


 自分が久しぶりにだらけたい。ニートしたい。中二病でも恋がしたいなどとのたまって今日を強制的に休みにしたのまではいいが、本当にやることがない。

 少し前までなら金があるのをいいことに、その辺の店をいろいろと練り歩いていたものだが、今の俺がそれをやっても何も買えないのだから悲しくなるだけだ。


「マジで日本に帰りてぇ……。異世界ってこんなんなの? 普通の異世界物って美少女に囲まれて、自然と友人も増えて、剣と魔法と夢で満ち溢れてるんじゃないの? 両手に花のファンタジーなんじゃないの?」


 半泣きになりながらも、しょぼしょぼと街の中を歩く。


「今となってみると、この街ももう普通に見えてきちまったなー」


 この異世界に来てしばらくはザ・ファンタジーなこの街にいちいち大げさに感動していたものだが、今となっては普通に見えてきてしまっている。


「文字が読めるようになっただけでも少しは違って見えるけど……」


 金があって暇なときに俺は異世界の文字を勉強した。

 どこかの世界の異世界に呼ばれたゲームの天才兄妹と頭の出来が違う俺は覚えるのに結構な時間を費やした。

 日本でアニメとかの異世界文字の解読をやったりする人のすごさが今になってわかった。


「勝手に異世界文字を頭が変換して読めないはずの文字を読めるのはわかるんだが、こういうのって文字も書けるにしてくれないのかな。……はっ! もしかしてラティファって天然ドジっこ属性!? だから文字を書けるようにするのを忘れちゃったとか! マジ萌える!」


 我ながらポジティブな妄想を始めながら、街の真ん中の方へ行ってみる。


「腕に自信のある冒険者のみなさん! その自慢の腕をここで証明してみては! 剣、ハンマー、弓、魔法、なんでもオッケー! 優勝者にはなんと……一千万ギル! 一千万ギルの賞金が!! さあさあ! 腕に覚えのある冒険者たち! 集まれ!」

「なに!? 一千万ギル!?」


 街の中央にある広場へと足を運ぶと、今の俺にとっては殺し文句となる言葉を発している人がいた。

 一千万ギル。

 それは今借金に塗れてしまっている俺にはこれとない大金。クエストで集めるには一週間以上は確定の金額。借金を全額返済はできないものの、結構な額は返済できる。

 これは―――


「これは出るっきゃない! お兄さーん! 俺出ます!」


 俺は早速冒険者腕自慢大会へと出場を決めた。



 しばらくして、ついに冒険者腕自慢大会が始まった。開催場所である広場の中央にはたくさんの冒険者たちが集まっている。中には見慣れた顔もちらほらいる。まあ、この街の冒険者なのだからほとんどが顔なじみなのだが。

 大きな剣を背負っている冒険者、ハンマーを携える冒険者、弓を持つ冒険者、杖を手にする冒険者、みんながみんな思い思いの武器を持って集まっている。

 かくいう俺も今日は戦闘中に魔法を使うことを考えて、『ゲート』を使わないようにしっかりと剣と銃を装備している。久しぶりのフル装備だ。フルアーマーユウマだ。


「さあ、待ちに待った冒険者腕自慢大会! みんなーっ、自分の腕前を証明したいかーっ!!」

「……」

「自分がこの街で一番強いと証明したいかーっ!!」

「……」

「一千万ギルがほしいかーっ!!」

「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」」」


 ……何とも汚れた連中である。


「それでは後が詰まっているので巻きで行きましょう! 早速第一回戦! ザックVSロン! 大柄のロン選手に小さなザック選手がどう戦っていくのか見ものですね!」

「ザック出てたのか。気が付かなかった」


 名前を呼ばれて前に出てきた二人のうちの一人を見て少し驚く。俺に盗賊スキルを教えてくれたザックが出場していた。

 司会のお兄さんの言う通り、ザックと対戦相手であるロンという男の体格には大きな差がある。

 まず子供と大人というだけで大きな差があるのに対し、ロンという男は筋肉隆々のまさに能筋やろうといった感じだ。生半可な攻撃は意味をなさないだろう。


「ああいう見た目が強そうな奴ほど大したことないんだよなー。ドラゴン〇ールのウー〇ンも見かけだけだったし、人は見かけによらないって先人はいいこと言うわ」


 失礼なことを考えながら二人の試合が始まるのを見守る。


「試合を開始する前に念のためもう一度ルールを説明しておきますね。まず、勝敗は相手が気絶するか降参する。またはこの対戦場から落ちたら負けとなります。武器はなんでもオッケー。剣でも弓でも、魔法でもどんとこいです。相手を殺さなきゃほとんど何でもオッケーってことです」


 なるほど天下一武道会か。

 よく見ると司会のお兄さんもあの人に似ている気がする。


「それでは早速初めていただきましょう! 試合開始!!」


試合の開始のゴングがならされた。


「おう! 坊主っ。降参するなら今のうちだぜ。ひっひっひっ……」

「うっわー……今時あんな三下のセリフを吐くやつがいるとか……引くわー。マジ引くわー」


 ザックの対戦相手に対し俺の抱いた第一印象はどうやらそう間違ったものでもないらしい。あれは確実に三下だ。オールドタイプだ。


「なめんなよ! 俺だってやれるんだ!」


 ロンの言葉にもの怖気することなく威勢を張るザック。


「そうか……それじゃあ痛いだろうが我慢しろよ。あと死んでもくれるなよ。俺が失格になっちまうからな」

「上等だ!」

「ふんっ!!」


 ザックの応答と共にロンという能筋野郎は手に持ったハンマーを思いっきり振り下ろした。一振り一振りが重そうな一撃をザックは何事もないかのように避ける。身のこなしだけならザックが圧倒的に有利だ。


「ちょこまかとうっとうしいな! とっとと当たれってんだ!」

「よっ、ほっ、はっ。へへん。ちょろいちょろい」


 ザックの機敏な動きにロンが弄ばれている。

 この勝負、もう見えたものだ。エンディングが見えたぞ!


「そろそろこっちからも行かせてもらうぜ! ユウマの兄ちゃん直伝……!」

「おっ!?」


 俺直伝というザックの言葉に少し心が躍る。

 だってなんかカッコイイじゃん! 直伝とか響きだけでカッコイイじゃん!


「『サンド』!!」

「ザックのやつ、いつの間に魔法も覚えたのか!!」


 前に会った時、ザックは盗賊系スキルしか覚えていなかった。が、今は確かに魔法を使っている。どうやら初級魔法を覚えたようだ。

 そしてザックがした行いとは―――


「くらえっ!!」!!

「うあっ! 目が! 目がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」

「……」


 全俺が凍り付いた。

 だって、だって俺直伝の技が目つぶしって……。悲しすぎやしないですか?


「それからたしか……そうだ! バルス!!」


 目に砂が入って視界を奪われて、試合場の端をうろうろしていたロンの背中をザックが思いっきり蹴とばす。

 ちなみにあのセリフを教えたのも俺だ。

 何やってんだよ過去の俺……。確かにラピュタは名作だけどさ!


 なにわともあれ、ザックVSロンはザックの勝利で幕を閉じた。


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