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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第四章
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12話

「……ユウマ」

「……やめろ、やめてくれ……お前までそんな目で俺をみないでくれぇーっ!」


 結局あの後アイリスと仲直りできたはずもなく、むしろ溝を深めるだけの結果に終わった。

 これが、その時の感情に身と心を任せ、無様に失敗した男の様である。


「……ミガァっ。どうしよう! 俺どうしたらいい!? どうしたらアイリスは俺だけの天使に戻ってくれるっ!?」

「ごめん。それは私にもわかんないよ。でも仲直りの方は絶望的だね」

「うっ……」


 ミカの言う通り、アイリスとの仲直りは最早絶望的だ。失敗に失敗を重ね、さらに失敗でコーティングしたような状況が今の俺だ。

 風邪を引いてアイリスに看病してもらってた時のセーブデータに戻りたい。そんなのないけど。


「なんでああも状況を悪くできるのかなー、ユウマは」

「俺だってリリーナの邪魔がなかったら上手くできたんだ。アイツさえ……そうだ、リリーナさえいなければ……俺は上手くやれていた」


 少し前の状況を思い出し、すべての元凶を思い出す俺。


「よし、二度と同じヘマをしないように不安分子を排除しよう。リリーナを()るしかない!」

「なに言ってんのユウマ!?」


 俺の言葉に戸惑うミカ。だが、間違ったことは言っていない。そうだ、全部リリーナが悪いんだ。俺は悪くねえ!

 人はこれを責任転嫁という。


「責任転嫁はオッケー! あとは動き出すだけだ。殺りたいと思う気持ち、それが何かをやるスタート地点だ!」

「違う! 言ってる言葉はあってるし、いい言葉だけど使う場面が違う! やるの字が違う! とにかくいろいろと違う!」


 結局この作戦はミカの『金剛力』によって無理やり止められました。


 無念。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――


「ファナー。ファナえもーん! 僕だよ、ユウタだよー」


 どこかの秒単位で寝ることのできる小学生の様なことを言いながらファナの魔道具店の扉を開いた。


「えーっと、こんにちわユウマさん。……ご改名なされたんですか?」


 俺はあの後ミカによってリリーナ暗殺計画を阻止され、しばらくうめき声を上げながらどうやってアイリスと仲直りをするのかを考えて、今に至る。


「なあファナ。最近アイリスが欲しがっていた魔道具とかってないか?」


 俺が考えたのはプレゼント大作戦だ。

 単純と言われれば単純かもしれないが、シンプル・イズ・ベストという言葉がある。そしてそれと類似した言葉に王道という言葉もある。

 つまり、有名な方法ほど成功率は高いということだ。先人は本当にいいことを言うと思う。

 ちなみにアイリスとの仲直りする方法としてプレゼント大作戦を思いつくのに一時間ほど時間を費やした。

 だって今まで喧嘩するような友達いなかったし、喧嘩するのは両親かミカとだし、それも最終的には向こうが俺に呆れて知らぬ間に喧嘩は終結してるわで、俺は今まで仲直りというものを経験したことがない。

 だからこれだけ時間がかかってもしょうがないと思う。


「アイリスちゃんの欲しがっていたものですか? ん~、最近だとー……」


 そう言ってファナが店内を歩き回る。

 そしてある物を手にして戻ってきた。


「なんだそれ? なんか宝石っぽいけど?」

「はい。これは杖に装飾する魔法石というものです。これを使いますと、その杖で使える魔法のランクが上がって、魔力の循環が良くなったり増幅量が大きくなるんです。これを使わないで自分の能力に合っていない杖を使いますと、いくらすごい魔法を覚えていてもその魔法の本来の力が使えないですし、魔力の循環や増幅量が上がることは魔法使いが魔法を使える回数にも左右されるので、魔法使いにとっては喉から手が出るほど欲しい逸品と言えますね」

「へえ、そんなもんがあるのか」


 ゲームの中なんかだと、別に最初の街の杖でも魔力が弱いだけで最上級魔法を放つことができるのだが、この世界ではどうにもそうはいかないらしい。

 今のファナの話だと、例えばファナの店で一番安く性能の悪い杖をリリーナに持たせ、中級魔法を全力で撃たせたら、増幅させた魔力を抑え込んでいられずにその時点で杖は壊れてしまうという。

 まあ俺はいくら杖を持ったところで魔力が最初から雀の涙なので意味をなさないのだが、知識として覚えておくのはいいかもしれない。

 それにこの世界は最初こそゲーム脳全開でどうとでもできると考えていたが、どうにもそうはいかないらしい。最初の勇者行為や魔法関係、実際の魔物の特徴や性質などゲーム脳と違うことが多々ある。

 そのおかげでゲームで不思議に思っていたことが納得することもあったが、困ることの方が断然多かった。

 ホント、こんなことならいっそゲームの中に入る感じの方がよかったかもしれない。


「そんでファナ、そいつはいくらなんだ? 俺、借金こさえちゃったからあんまり出せないんだけど……」

「ユウマさんは前にうちで大量の商品を買ってくれたりした常連さんですので少しお安くしますね。……こちらの魔法石は―――五十万ギルですね」

「五十万ギル!?」

「はいっ!」


 一瞬ファナの大人なのに子供っぽい純粋な笑顔というギャップに見とれて聞き逃すところだったが、どうにか聞き取ることに成功した。

 聞き耳スキル成功!


「そんなに高いのか!? そういう魔法使いの必須アイテムって一万とかなんじゃないのか。そうじゃなきゃ買えないだろ」

「えーっとですね。確かに性能が低く安いものもあるにはあります。ですが私がこの店を始まりの街イニティで開いたのは、王都なんかでしか手に入らない物をここでも売って、冒険者の皆さんの助けになりたいという思いからです。だからなるべく効果の高い物をなるべく安くお売りしているんです」

「それでこの値段? てか、これって王都とかじゃないと買えないの?」

「はい。ここにおいてある商品のほとんどが王都の様な大きなところでないと買えないものばかりです。……そのせいで若干お金が高くはなってしまうんですけどね」


 ここがどうして毎月赤字続きなのかわかった気がする。

 そりゃあ王都でしか買えないような高額の商品をここで並べたって、この街の冒険者は生きることに精一杯の冒険者がいるくらいにクエストでの儲けが貧しいところなのだ。一回のクエストを楽に終わるために使い切りの高価格商品を買うようなバカはいないだろう。むしろ赤字になってしまう。


「むー……。高い……高すぎる。少し前までならそんくらいなら百個持ってこーい! とか言ってるところだが、今は高い」


 少し前までの俺なら本当に言っていそうな言葉、本当に少し前の俺に天狗でいられるのは今のうちだぞコノヤローと言ってやりたい。

 そして是が非でも自分の性格に合っていないことはするなと怒鳴りつけたい。


「もう少しまけたりとかは……できないよな……うん」


 もう少し安くしてもらえないか交渉しようとして、すでにファナが少し安くしてくれていること、そしてファナの店が赤字続きなことを思い出す。

 さすがに鬼畜外道と呼ばれた俺でもファナの様な純粋な人を口でうまく丸め込んで騙すような真似はしたくない。


「よし、買おう! 買っちゃおう! ある人は言いました。迷ったら飛べ! なんか俺が飛ぶのは清水の舞台どころか地獄への穴の様な気がするけど男を見せろユウマ!」


 そう言って俺はファナに商品と一緒に財布を渡す。


「……すいませんユウマさん。……足りません……」


「ですよねーっ!!」




「な、なあアイリス」


 お金が足りずに魔法石を買えなかった俺は、少しばかり街をうろうろとしてから屋敷に戻ってきた。そして速攻でアイリスの部屋の前まで行ってアイリスを呼ぶ。

 少ししてアイリスが少しだけドアを開けて、ひょっこりと顔だけ隙間から覗かせた。

 そんな姿に「可愛い! きゃわいい! きゃわわいい!」と言いたかったが、そんなことをしてまたアイリスの好感度を下げてしまっては意味がないのでグッと堪える。


「アイリス。その……悪かった。本当にあの時は悪かったと思ってる。……でも、俺の言い分も少しはわかってほしい。俺たちは冒険者、あいつらは魔物。どうしたって戦わなきゃいけないんだ」


 それが冒険者と魔物の定め。見つけたら、見つかったら戦闘が始まる。討伐されるか、討伐するかの二択。それが俺たち冒険者という生き物だ。


「もちろんあの時はアイリスを騙すような真似をした俺が悪い。全部悪い。顔も悪い、性格も悪い、意地も悪い、頭も悪い……」


 何だろう。自分で言ってて情けなくなってきた。

 俺ってどこかいいとこあんのかなー? って本気で心配になってきた。


「今度からはアイリスを騙すような真似はしない。絶対にだ。だから許してくれないか?」

「……」


 俺の言葉にアイリスは無言で返答。

 ……やっぱり許してはくれないようだ。


「……うん。アイリス、悪かった。もう許してくれなんて都合のいいことは言わない。だからせめてこれをもらってくれ」


 俺はそう言うと、ある物をアイリスの部屋の前に置く。


「それじゃあ俺行くから、嫌な思いさせて悪かったな」


 最後に簡単な謝罪の言葉を残して、俺はその場を立ち去った。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――


 私―――アイリスはユウマさんがいなくなってから数分時間をおいてから部屋のドアを開け、ユウマさんが置いて行った物を手に取り、部屋に戻ります。


「……ユウマさん」


 今はいないユウマさんの名前を呼んでみます。

 本当はわかっていました。しょうがないことだって、わたしたちは冒険者、相手は魔物。覚悟はできていたはずでした。

 でもどうしても傷ついている魔物が近くにいると治したくなってしまうんです。ケガを治療して、痛くないようにしてあげたくなってしまうんです。

 それが間違っていることだとはわかっていても、どうしてもできないのです。


「これ……なんでしょう?」


 ユウマさんの持ってきてくれた物。中身はわからないですけど、小さい箱にプレゼント用の可愛らしいリボンがついています。

 軽く振ってみてもちょっとした音がするだけで、結局何なのかはわかりません。

 私はそれは意を決して開けてみます。

 そこには―――


 小さな魔法石が入っていました。


「ユウマさん……お金がないのに―――」


 これだけ小さい魔法石でも結構な値段がします。今のユウマさんにはすごい痛い出費のはずです。

 この辺りじゃ自分で見つけ出すのも困難でしょうし、きっと買ってきたものでしょう。だぶんファナさんのお店で。


「謝りに行こう」


 私はそう決めました。私自身もう限界だったんです。

 もう何日もユウマさんとまともに会話をしていません。まともに顔も合わせていません。ユウマさんは何度も仲直りに来てくれました。でも私はそれを拒否し続けてしまいました。本当は早く仲直りしたかったのに。

 全部を許してあげられるのかと言われれば自信はありません。魔物さんのことはやっぱり少し思うところがあります。でも、仲直りしたいです。今までみたいに仲良くしたいです。

 少しでも早くユウマさんと仲直りしたかった私は勢いよく部屋のドアを開け、ユウマさんがいるはずのユウマさんの部屋の前まで行きます。

 ノックをしてみますが、返事がありません。ユウマさんが寝るにしては早いですし、居間にいるのでしょうか?

 私はそのままの足で居間に向かいます。


「ユウマさん……は、いないみたいですね」


 居間にいたのはミカさんだけでした。パジャマ姿でホットミルクを飲んでいます。


「ん? どうしたのアイリスちゃん?」

「あのー、ユウマさんは……」

「ユウマなら少し前に暗い顔してふらっとどこかに行っちゃった」

「!? な、なんで止めなかったんですか!?」

「ん? いや、ユウマだっていい歳だし、心配する必要ないかなって」


 なんでミカさんはユウマさんがお屋敷を出て行ったのにこんなに落ち着いているのでしょう。私にはわかりません。

 ユウマさんとミカさんは昔からお付き合いで、わたしなんかより付き合いが長いはずなのに。


「わ、私っ! ユウマさんを探してきます!」


 私は一人でユウマさんを探すことにしました。

 居間を飛び出し、屋敷を飛び出しました。


「……なんかアイリスちゃん勘違いしてたっぽいけど―――まあ、いいかなぁ。仲直りのチャンスっぽいし、頑張んなよユウマー」



 私はとにかく走りました。目的地もわからずに走り続けました。


「とにかくユウマさんが行きそうな場所っ!」


 そう考えた瞬間に浮かんだのはまずギルドでした。ギルドなら夜遅くまで食事スペースも開いてますし、ユウマさんの知り合いも多いのでそう思ったのです。

 私はギルドへ全力で走ります。今は足の遅い自分が少し恨めしいです。

 そして私は数分でギルドへと到着することができました。そこにユウマさんは―――


「ユウマさんっ!! ……へ?」


 そこには―――


「お姉さーん! キンキンに冷えたピール持ってきてーっ!」

「おう、ユウマ! 今日はやたらと飲むな! 酒は飲んでも飲まれんなよ!」

「うっせー! おごりとなりゃあそいつの財布が空になるまでおごらせるのが俺のモットーでい! お姉さん! ついでにコットンラビットのから揚げ一丁!」

「おうおうおう! 本当に今日は乗る気だなユウマ。それじゃあ恒例のあれいっとくか! せーの! ユウマくんのー、ちょっといいとこ見てみたーい!」

「よっしゃあ! みせてやらあ! ……おろおろおろ」


 そこには冒険者仲間と一緒にお酒を飲んでいるユウマさんがいました。

 そこには慣れていないお酒を飲んで、お酒に飲まれて吐いているユウマさんがいました。


「ゆ……ユウマさん……」


 その姿を見て私はなんだがほっとしました。

 もうユウマさんのことを許してあげてもいいかもしれません。

 ううん。許そうと思います。

 わたしと仲直りするためにいろいろと行動して、全部自分が悪いと言ってくれて、素敵なプレゼントまで用意してくれた。その気持ちがすごくうれしいです。

 なんだかんだ言ってユウマさんは―――


「優しいんですもん」


 許すほかありません。


「お、おらー……もう一杯もってこいやー……おろおろおろ」

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