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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第四章
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6話

『ファイヤーバード』

 火山地帯に生息する炎を纏った鳥。といってもフェニックス、不死鳥の様なものではないらしく、ただの少し大きめの鳥らしい。

 火山地帯にのみ生息するファイヤーバードは春から夏にかけてのみ生息する魔物で、秋から冬にかけては火山は雪山に変わるので冬眠をするらしい。

 攻撃方法は単純に体に纏った炎を飛ばしてくるか、その身を使った体当たりのみ、ただその体に纏った炎はかなりの高温らしく、下手な安物の鉄製鎧を溶かしてしまうほどの高温らしい。

 つまり、俺たちの様な初心者冒険者装備では当たった時点で装備はパーと言っても過言ではない。

 なので安物の鎧で挑んだ場合、下手をしたら死ぬ危険もあるらしい。

 これが俺たちがクエストを受ける前にギルドのお姉さんから得たファイヤーバードの事前情報だ。

 正直、挑まなくていいなら全力で挑みたくない相手である。

 が、俺たち四人はそのファイヤーバード二体と対峙していた。


「くっそ! 当たんねえ!」

「キイィィィィィィィィィ! 止まりなさいよ! 当たんないでしょ!!」


 そして俺とリリーナはファイヤーバード相手に苦戦をしていた。


「こうも飛び回られちゃ当たるもんも当たりやしねえ。せめて降りて来いよっ。ビビってんのか、おい。俺みたいな凄腕の冒険者にビビッて降りても来れないんですかコノヤロー!」


 このくらいの野次でも飛ばさないとやっていられないくらい俺たちはこいつと対峙している。

 時間にしてかれこれ十分くらいは戦っているだろうか。

 ファイヤーバードを見つけること自体は簡単だった。初めて見る火山を眺めながら歩いていたら火山地帯に着いて、そこからものの数分で見つかった。

 が、奴らときたらちっとも地上に降りても来ない。それどころか少しも高度を下げもしない。俺たちが山を登って行っても、距離は全然縮まらず、結局今の場所で頑張ろうという話になったのだが、それが今の現状である。


「こうなったら広範囲の魔法をぶち込んでやるわ! ユウマ! それまで私を全力で守りなさいよ!」

「わかった。絶対に守らない!」

「よし、これなら安心して詠唱を……っておかしいでしょ今の返し!」


 リリーナが広範囲の大魔法を詠唱し始めようとする中、俺は未だにファイヤーバードに向かって魔弾を撃ちまくっている。

 いつもの俺ならリリーナに任せてしまって自分は楽をしようと考えるのだが、今日はもうあいつらに時間を取られすぎてイライラしている。

 その怒りくらいはぶつけなくてはクエストを終わるに終われない。


「もういいわ! ユウマになんか頼まない! アイリス、ミカ、私の援護をお願い!」


 俺が護衛をしてくれないことを理解したリリーナは他の仲間であるアイリスとミカに護衛を頼んだようだ。これで俺も集中してあいつらを狙える。


「くそ! ホントに当たんねえ。本当にもうそろそろ『狙撃』みたいな命中率を上げるスキルを取らないとダメだな」


 今までも何度か取ろうと考えた『狙撃』スキル。が、他のスキルにポイントを使っていたため結局取っていなかったスキル。

 今日帰ったらギルドで誰かに教えてもらおうと今度こそ決意。


「アイリスちゃん。二人とも頑張ってるねー」

「そうですね。なんか何もしてないのが申し訳ないくらいに」

「いいんだよアイリスちゃん。リリーナはああいう性格だし、ユウマに至っては心配してあげる必要なんてこれっぽっちも、微塵も、それこそミジンコ並みにもないよー」

「こっちが真面目に戦闘してんのになにアイリスに変なこと吹き込んでんだミカ!」


 危うくアイリスに変なことを吹き込まれるのを阻止。どうやら俺の敵はファイヤーバードだけでなく、後ろにいる仲間も含まれているらしい。俺の仲間はここにいないのだろうか。


「できたわ! みんな巻き込まれたくなかったら私から離れなさい!」


 どうやらリリーナが広範囲魔法を詠唱し終えたようだ。

 正直自分の手でファイヤーバードを倒したかったが、ここでまた無理をしてあの生と死の間なる場所に行きたくはな―――くもないな。

 ラティファに会えるのならそれもまたいい案かもしれない。


「食らいなさい! 『フリーズドライ』!!」


 リリーナが初めて聞く魔法を放った瞬間、まるで世界の熱という熱がなくなったかのような感覚が一瞬体を襲い、すぐに火山の熱で再び世界に熱が戻る。

 リリーナの魔法は青白い光を帯びながらファイヤーバードの方へ放物線を描きながら飛んでいき、それなりの高さまで登ったところで静止した。そしてすぐに粉々に砕け散った。そこから冷気が高速で広がっていき、二体のファイヤーバードを捕らえる。

 見た感じだと、爆弾は熱風などで体を壊す兵器なのに対し、リリーナの魔法は冷気で体を壊す類の魔法らしい。簡単に言ってしまえば爆弾の冷気バージョンだ。


 そしてリリーナの放った『フリーズドライ』なる魔法は見事にファイヤーバードを凍らせ、その体を地面へと落下させる。かなりの高度から落ちた凍ったファイヤーバードは地面に接触するとともに見事に砕け散った。

 これで見事にクエスト達成である。

 あとは一分の間剥ぎ取り作業や採取の作業をして帰るのみである。


「ん?」


 体に異変を感じた。


「んーっ!?」


 体が動かない。足が動かない、腰が動かない。動くのは腰から上だけだ。


「ゆ、ユウマさん!?」

「ユウマ!?」


 俺の異変に気が付いたらしいアイリスとミカが驚きの表情で俺を見ている。俺はそんな二人の視線の先に首だけを動かして懸命に見ようとする。

 そしてどうにか自分の体の状況を理解することができた。

 そしてその原因も理解できた。


「おいこらリリーナ! これお前だろ! お前の『フリーズドライ』とかいう広範囲の氷属性魔法のせいだろ! 俺の体まで凍ってんぞ! 少しは範囲を考えろよ!」


 どうやら俺の体はさっきのリリーナの魔法の効果範囲に入っていたらしい。変なことを考えていたら逃げ遅れた。


「おいリリーナ! 早くどうにかしろ。マジでヤバい。どれくらいヤバいかっていうととにかくヤバい。ヤバいったらヤバい。バイヤーだから、マジでバイヤーだからーっ!!」


 後半は自分でも何を言っているのかわからなかった俺。しかし、慌てている俺を見てもリリーナは特に行動を起こそうともしない。

 呑気にアイリスとミカに「さっきの私の魔法見た!? すごかったでしょ! 最近中級魔法は制覇したから上級魔法もいくつか覚えてみたの!」などと自慢げに語っている。

 リリーナのやつ後で覚えてろよ。自慢げに張っているその胸を思う存分からかってやる!

 そんなふしだらな決意を固めている最中も、俺の体の浸食は進んでいく。

 さっきは腰ぐらいまでだったのに今はもう首元まで来ている。さっきまで動いていた腕も動かなくなり、今俺が自由に動かせるのは首から上だけだ。


「り、リリーナさーん。美人で素敵でかわいくて、頭がよくて魔法の天才で将来大魔法使い候補の筆頭であるリリーナさーんっ!」


 ここまで来たら背に腹は代えられない。今はどれだけ苦痛でも嘘を言ってでも自分の命を優先しよう。

 っていうか俺、最近生と死の狭間に立ちすぎでしょ!

 主人公補正ってやつはどこに旅行してんだよ! 帰って来いよコン畜生!


「ん? 何ユウマ? ユウマが素直に私を褒めると気持ち悪くてしょうがないんだけど」

「ぐぎぎっ……」


 あまりのリリーナの返答にイラ立ちを感じる俺だったが、自分の今の現状をしっかりと把握し、歯を食いしばって根性で我慢。

 今だけ、今だけなんだユウマ。我慢しろ。お前は我慢のできる子だ。


「で、なんなのよ。この優雅で可憐で街の人からは容姿端麗、才色兼備のリリーナで有名な私に何の用なのかしら?」


 全くそんなことは言っていないのだが、まあ、いい。

 我慢だ。今は我慢の時だユウマ。


「もうそろそろ本当に危ないので、この氷をどうにかしていただけないでしょうか?」


 頑張った。俺頑張った。よく言ったよ俺。全俺が泣いたよ。

 そんな俺の尊厳という尊厳をすべて投げ打った一言にリリーナは―――


「は? なに言ってんのよユウマ。そんなことできるはずないでしょ?」


 と。


「……は?」


 一瞬、何を言われたのかわからなかった。

 この氷をどうにもできない? できないっつったか?

 てーと、俺はこのまま何もできずに氷漬けになるのか?

 それってある意味生き地獄なんじゃないのか? 意識がなくなったり、死んでしまった方がまだマシかもしれないような。もし、もしも植物状態の様な状態が続いたら、続いたら――――


「おいーっ! なにしてくれてんのお前! 返せ! 俺の我慢に我慢を重ねた我慢を返せ! そしてこの氷をどうにかしろーっ! この能筋魔法使い!」

「何ですって! そんなんだからユウマはいつも私の魔法に巻き込まれるのよ! いつもの行いが悪いユウマがいけないんだわ! そうよ、私は悪くない!」

「絶対お前が悪いから! いくらお前が赤髪ロングで、今この場で髪を切ってショートヘアにしたって俺はお前を認めねえよ!」


 そんなことをしている間に氷は俺の口元まで達してきていた。

 もう話せるのは一言二言だろう。


「おいリリーナ。マジでどうにかしろ。どうにかしてくれたら許すから。なんでも許すから!」

「無理なものは無理よ。諦めなさい」

「諦められるかボケ!」


 そうこうしている間にとうとう氷は俺の口元を覆い隠した。もう何も話せない。動かせるのは頭と目だけ。もう何もできない。

 まずい、まずい、マズイ!

 ヤバい、やばい、やばい!

 それだけが、俺の頭を支配していく。

 そんな時―――


「大丈夫だよユウマ」


 幼馴染のミカが言った。


「凍り付いた後で私が『金剛力』で氷破壊してあげるから安心して」


 そう言ってにっこり笑った。

 なんだかんだ言ってやさしい幼馴染の言葉に安心をした俺。

 安心をし――――――しちゃダメだろ!

 だって凍った後にミカが『金剛力』で氷だけ破壊を試してみろ。絶対に失敗する。どうやったって失敗する。下手したら俺ごと持ってかれる!!

 それにミカには元から常時発動型のスキルで『天然ドジっこ』がある。絶対に何かやらかす。


「ンンンッぅーーーーーーーー!!」


 声にならない俺の声が火山中に響き渡った。



 このあとミカの考えていた俺の助け方は、天使アイリスがその危険性に気づき中断させられ、アイリスの状態異常回復魔法によって救出された。


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