表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第三章
66/192

20話

 結局何もすることなくイニティに戻ってきて、なんとなくこの後みんなでギルドの飲み食いしていこうという話になり、これ以上店を開けるわけにはいかないと帰ったファナ以外のみんなでギルドにやってきたのだが。


「なんか―――騒がしいな」

「……そうね」


 なにか騒がしかった。

 それもいつもと違う騒がしさ。冒険者たちが酔っ払って暴れるのではなく、ギルドのお姉さんが夏の暑さにだらけて仕事をしない冒険者たちに叱咤激励をしているわけでもない。

 今の騒がしさは大量の書類を持ってドタドタと走り回るギルドのお姉さんと、お姉さんたちが方向転換するたびに翻るスカートの中を覗こうと、ギルドのお姉さんたちを追いかける男冒険者たちの足音からだった。


「何この状況―――」


 さすがの俺も言葉を失ってしまった。


「なにかあったんでしょうか?」

「なにかあったにしてもわかりたくない理由だってことはわかるね」


 アイリスがこんな状況を見ても冷静な反応をし、それに対して正論で返すミカ。

 今になって俺もあの男冒険者たちに混ざってスカートの中を覗きたいなんて口が裂けても言えない。


「でも、本当に変よね。こんなにギルドのお姉さんたちがドタバタしてるなんておかしいわ」

「リリーナ―――お前そんな真面目な思考回路が脳みそに入ってたんだな。俺―――ちょっと感動した」

「ちょっと表に出ましょうかユウマ。言葉では語れない話があるの」

「こんな状況じゃ飲み食いできそうにないし、うちに帰るか」

「無視するんじゃないわよ!」


 いつものようにリリーナ遊びを早々に打ち切り、ギルドのお姉さんたちが忙しそうにしてる中、仕事を増やすのは申し訳ないので家に帰る提案を出す。

 そんな俺の意見に反対の仲間はおらず、アイリス、ミカ、リリーナもいつもお世話になってるギルドのお姉さんたちに悪いと、家に帰る案を承諾した。




 そして次の日の朝。事は起きた。


 それは早朝、朝の七時ごろの出来事。

 昨日遅くまでリリーナに破壊されてしまった魔力を銃弾にする方の銃を再び制作し、夜も深まった頃に寝て、トイレに行きたくなって起き、トイレに行ってから再び二度寝という名の惰眠を貪ろうと窓のカーテンを閉じ、布団を深く被ろうとしていた朝のことだ。

 甲高いサイレンが街中に響き渡った。


「おわっ! なんだなんだ!?」


 二度寝の体制に入って、ようやく意識が夢という世界に落ちていこうとし始めていた俺も、いきなりのサイレンに意識が覚醒して飛び起きる。

 それからドタドタと音を立てながら階段を駆け下り、アイリスたちがいるであろう居間へと急ぐ。

 この世界に疎い俺にはなんのサイレンかわからないが、異世界の住人であるアイリスとリリーナならきっと何か知っているはずである。

 とにかくこの意味の分からない甲高いサイレンの原因を探る必要がある。

 そして早くこのサイレンを収めて、再び惰眠を貪るのだ!

 イッツ、エンジョイ、ニートライフ!


「アイリス! リリーナ! いるか!?」


 居間に入るなり大声で二人に呼びかける。

 そこには―――


「はい、いますよ」

「いるわようるさいわねー」


 戦闘準備万端のアイリスとリリーナがいた。

 二人ともお気に入りの杖を持ち、アイリスはいつもクエストに行くときの青と白を基調としたヒラヒラの魔法少女が着ているような衣装、リリーナはオシャレな魔女衣装みたいなものをしっかりと着ている。

 まるで、れから戦いに行くような格好だ。


「二人ともなんでそんな格好してるんだ?」


 二人が朝からこんな格好をしていることは今までにない。

 クエストに行くにしてもだいたいその日の朝に決めてから行くし、みんなに声をかけてから行くはずだ。

 だとすると、二人が戦闘装備を整えているわけは必然的にサイレンに関係があるように思えてくる。


「ユウマこそ何言ってんのよ。この緊急用サイレンが聞こえないわけ? 耳の中『ウインド』で掃除してあげましょうか?」

「聞こえてるに決まってんだろ―――って、お前今なんつった?」

「は? 本当に耳大丈夫なのユウマ? いい? もう一回だけこの将来伝説の魔法使いになるリリーナ様がさっきと同じことを言ってあげるからちゃんと聞くのよ?」


 リリーナの言い草に頭に拳骨か、作り直した魔弾を撃てる銃の試し撃ちの的にでもしてやろうかと一瞬思ったが、ここは我慢。


「耳の中『ウインド』で掃除してあげましょうか? って言ったのよ」

「そこじゃねえ!」

「そこじゃなかったらどこが聞きたいのよ」

「お前さっき緊急用サイレンとか言ってなかった?」

「ん? 言ったわよ。ていうかこのサイレンがそうじゃない。何言ってるのよユウマ」


 リリーナがさも知ってて当然という顔で言った。

 アイリスも特に何も言わないので本当のことなのだろう。


「それで、この緊急用サイレンとやらが鳴ってるってことはなにかしら危ないことが起きるんだよな? それに二人が戦闘準備をしてるってことは戦闘ありの危険が」

「はい。この緊急用サイレンはギルドからこの街にいるすべての冒険者たちに対する警報なんです。だから早くユウマさんも準備をしてきてください」

「わかった。……てか、ミカは?」

「ミカならまだ起きてきてないみたいね。ついでに起こしてきなさいよユウマ」

「―――あいつ、このバカでかいサイレンでも起きないとかどんな神経してんだよ……」


 幼馴染であるミカのずぶど過ぎる神経を疑いながら小走りに部屋に戻る。


「はあ~、まったく……。もう働きたくないってのに緊急呼び出しとかニートにはたまらん」


 文句をぶつくさと言いながらも、クエストを受けるときの装備一式を身に纏う。

 銃は重たいのでとりあえずおいていくことにした。最悪は『ゲート』で取り出せばいい。


「さて、ミカを起こしに行くか。ったく、普通こういうのは幼馴染の女の子の方が男の子を起こしに来る場面だろ。おとぎ話の王子様とお姫様なら逆だけど、俺たちは王子でも姫様でもないってのに」


 そうは言いながらもちゃんと起こしに行くんだから俺ってば偉い。偉くない?


「おーい、ミカー。おきろーい!」


 ミカの部屋の前で大声で呼びかける。


「反応なしか」


 ドンドンドン!

 次に全力でドアを叩いて見た。


「これも反応なし」


 しかし、ミカの反応はない。


「仕方ない」


 数分後。


「寒い寒い寒い! なに!? 夏だよね!? なんでこんなに寒いの!? もしかして私眠りすぎて夏を起しちゃったの!?」


 そんな掛け声と共にミカが自室から飛び出てくる。


「グッモーニン!」


 慌てふためいているミカに俺は片手を軽く上げて、気さくな感じに朝の挨拶をする。


「ゆ、ユウマ!! 聞いてよ! 私が寝ている間に季節が夏と秋がめぐっちゃったよ! ……っ!? ―――ねえユウマ! 一年は経ってないよね!?」


 本当に驚いた様子で俺の肩に手を置き揺さぶってくるミカ。

 激しく揺さぶられたせいか気分が悪くなってきた。


「だ、大丈夫だ。今は夏だ。秋でもなければ冬でもない」

「え!? でも部屋の中あんなに寒かったよ!」


「そりゃあ俺がフリーズで部屋中を凍らせたからな」


「……」


 俺の言葉に無言の無表情で自分の部屋の中を確認するミカ。

 そして部屋の状態を確認してこちらを振り向き、


「なにしてんのさー!!」


『金剛力』全力パンチで天に召されかけた。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――


「冒険者のみなさま、お集りでしょうか」


 現在俺とゆかいな仲間たちはギルド内の椅子に座っている。

 あの後ミカに殴られた俺は結局気絶してしまったらしく、事情をリリーナたちから聞いたらしいミカが気絶した俺をここまで運んできたらしい。そして、今に至る。

 ギルドの中は今までに見たことのない冒険者たちであふれかえっている。そしてその冒険者たちの全員が武装をしている。剣士は剣や大剣を、弓使いは弓を、魔法使いと僧侶は杖を、格闘家は動きやすい恰好を、それぞれの職業の人が全力の武装をしてきているように見える。

 ただその冒険者たちはみんな見知った顔で、会話こそしたことのない奴が多いが、みんなこの街の冒険者だと思われる。

 少し離れてはいるがザックとシュリちゃん。ファナもこの場にいるのも確認できた。


「そりゃあ始まりの街に戻ってくるような冒険者はいないか」


 ここは始まりの街だ。

 つまり冒険者たちにとっての最初の基盤と言っても過言ではない。

 そして、ここである程度レベルを上げた冒険者たちはここから旅立ち、次の街に向かう。

 だけど、その逆はないのだろう。そりゃあわざわざレベルの上げにくい田舎町になんか帰ってくる冒険者もそうはいまい。王都の方が生活も安定するし、いろいろと便利なはずだ。


「それではみなさんこちらの映像をご覧ください」


 そんなことを考えていると、ギルドのお姉さんが声を張り上げた。それと同時に目の前に魔道具によって映像が映し出される。

 それは俺たちがこの前行った湖の少し先の森の中の映像だった。

 そして、三人の冒険者たちの姿が映る。


「―――こいつら」


 映っていた冒険者はこの前湖に遊びに行った帰りに見た冒険者だった。

 そのうちの三人がそれぞれ映し出され、カメラを持っているやつが移動を始める。

 視点が切り替わり高いところからの撮影に変わった。おそらく木にでも登ったのだろう。そしてカメラが少し動き、次の瞬間。


「お―――おい」


 文字通り、絶句した。

 だってそこに映っていたのは―――


 何百、いや、何千体はいるであろうオークたちの姿だったからだ。

 そしてそのオークの集団が確実にこのイニティの街の方に向かって進軍してきている。


「ごらんのとおりです。今この街はオークの大群に狙われています」

「原因はわかっているのか?」


 名も知らぬ一人の冒険者が手を上げ質問をした。


「いえ、正確には。ただ最近この近くにあったと報告のあるオークの集落がとてつもなくひどい方法で壊滅させられ、なおかつ大量のオークが目も当てられないような倒され方で倒されているのが原因ではないかと私たちはにらんでいます」


「「「「っ!?」」」」


 お姉さんの言葉を聞いて一斉に汗を拭きだす俺たち一同。


「お、おい。今の俺たちが原因じゃないよな? だってあれは依頼だったし」

「そ、そうよね! 私たちは冒険者として当然のことをしただけで―――」

「は、はい。私たちは何もしてません」

「そ、そうそう! アイリスちゃんの言う通り!」


 周りの冒険者たちに聞こえないように小声で会話をして、少しでも心の平安を求める俺たち。

 そんな俺たちの内心も知らず、会議は進行していく。


「応援は来ないんですか?」


 またギルドのお姉さんに質問が投げかけられた。

 今度は女性の冒険者のようだ。


「はい。応援を要請しようにも、今からでは到底どこからの応援でも間に合いません。一応近隣のギルドに報告は入れていますが、私たちが相当な時間を稼ぐ必要があります」

「具体的にはどのくらい?」

「約一日です。応援に来るための遠征の準備などで最低でもあと一日はかかります。ちなみにオークたちはこのままの進行速度でこちらに向かって来れば今日のお昼頃には街に到着します」


 つまり応援は期待できない。ということだ。


「そうだ! いきなり現れたレベルのわりに強い集団は? あいつ等なら楽勝なんじゃねえの?」


 今度手を上げては発言したのは、金髪でチャラチャラした奴だ。

 たぶんあいつの言っているいきなり現れたレベルのわりに強い集団というのは、俺たち日本から来た女神様よりチートを授かったチート集団のことだろう。

 でも確かにこのチャラ男の言う通りだ。あんなとんでも能力の持ち主がたくさんいればオークの千や二千楽に倒してくれるだろう。


「はい。彼らはここ最近でみんなここから旅立ちました。みなさんもうレベルが二十近い人が多く、ここよりもっといいところに行ってお金を稼ぐつもりだったのでしょう。もう街を出て行ってしまいましたので、ここにはもう彼らはいません。つまりあてにもできないということです」


 くそ! チート集団め。なんでこんな時にいないんだよ。

 こういうのをどうにかしてほしいって女神様に言われたのに、その役目を力だけもらって放棄とか何事だし!!

 ……って、チート能力はもらってないけど、この世界で好き勝手にグータラしてる俺に言う資格はないか。


「話を戻します。見ていただいた通り、オークたちの数は千を超えています。しかも普段このあたり一帯にいるオークたちより良い装備を整えこちらに進軍してきております。もう皆さんもわかっていただけていると思いますが、今回の緊急の呼び出しはこのオークたちの討伐です」


 ギルドのお姉さんたちの言葉に周りの冒険者たちがひそひそと話し始める。


「それでオークたちの討伐にあたり、冒険者の皆さんの中で指揮を取るリーダーを一人決めていただきたいのです」


 その言葉に周りの冒険者たちが「俺には無理だ」、「私にもできない」と、否定の言葉を上げ連ねていく。

 その言葉はどんどんと周りに感染していき、最終的にはこの場が静寂に包まれた。


「はい!」


 そんな中、誰か一人の勇者が手を上げた。

 俺は内心自分にその役目が回ってこなくてよかったと安堵し、そっと胸を撫で下す。

 だってコミュ症の俺にたくさんの冒険者の指示とか無理すぎる。

 そりゃあ確かにオークたちの進軍には少なからず俺たちが原因なところがあるっぽいけど、というかあふれ出ちゃっているけれど、言わなければバレない。

 そう。バレなきゃ犯罪じゃない! 罪にはならない!


「ユウマの兄ちゃんがいいと思います!!」


 そうそう。そのユウマの兄ちゃんとやらに頑張ってもらおう。


 ―――ん? ユウマの兄ちゃん? それにこの声どこかで聞いたような―――


 そう思って声の方向に目を向ける。

 ザックとシュリちゃんだ。そこには金髪ツンツン頭のザックと、金髪ショートヘアのシュリちゃんがいた。


「ユウマの兄ちゃんは前に街で悪さばかりをしていた冒険者たちを懲らしめ、ロレンスの悪行を暴き、俺の妹のシュリを救い出してくれました」

「コクコク」


 ザックの言葉にシュリちゃんが思いっきり首を縦に振る。


「そんなすごい冒険者がこの街に! ぜ、ぜひその方にお願いしたいです」


 お、おい。マジかよ!? なんでここで俺なの!? 俺が何したっての!? 悪さなんてして―――るわ。


「なあ! いるんだろユウマの兄ちゃん!」


 や、やめてー! これ以上俺を目立たせないで! ニートはコミュ症なの!

 しかしここまで言われて立たないわけにもいかず、俺は仕方なくゆっくりとゾンビのように立ち上がる。


「お、おい。あいつは―――」

「あ、ああ! 鬼畜のユウマだ!」

「なに!? あの鬼畜外道で有名なユウマ!」

「魔道具店の店長のファナさんを泣かせたうえで土下座までさせたというあのユウマ!」

「あの公衆の面前で女の子のスカートをめくると有名なあの!」


 おい! 俺には悪評しかないのか!

 と、ツッコミかけてコミュ症が発症し口ごもる。


「そういえばユウマさんは少し前にこの街では難しいクエストを一日で何個もこなしていたような……」

「はい。確か一日で百万ギル以上稼いだこともあったはずです」

「それにユウマさんのパーティーは確か個性て……凄腕の方が多かったような……」


 俺の姿をみて、今度はギルドのお姉さんたちが俺の話を始めた。

 しかも最後のお姉さん少し本音が漏れてた。

 たぶん話している内容はこの前のロレンスの一件での金稼ぎの時のだ。確かにあの時は一日で百万以上を平気で稼いでいた記憶がある。


「あ、あのユウマさん。よろしければ冒険者たちの指揮を取ってもらえないでしょうか?」


 そうお願いしてくるのはいつも俺がクエストを受けるときにクエスト用紙を持っていく、このギルドで一番俺好みのお姉さん。

 もちろん俺はこの話を断るつもりだ。

 さっきから言っている通り俺はコミュ症だ。大勢の指揮なんて取れるはずもない。それにニートにそんなことができるはずもない。

 俺はこの件は誰かの指示を受けて、その指示通りに行動するのみだ。


「ダメ……でしょうか?」


「よろこんでお受けいたします! おら! てめーら全員俺についてこーい!! 俺たちの住むこの街を俺たちの手で守ったろーぜ!!」


「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」


 やっちまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

 可愛い女の子の頼みごとを断れない俺の男の性分がこんな時にでたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ