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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第三章
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18話

「おっ、いたいたー」


 しばらく歩いてようやく目的のゴブリンの群れを発見した。

 ここから見る限り数は四体。少し前の俺たちなら苦労していたところだろうが、今の俺たちならなんの問題もなく倒せるはずだ。

 それに―――


「それにこいつがあるしな」


 そう言って俺は銃を手にする。

 ずっしりと重たいイメージの銃だったが、なるべく軽くなるように作ったからなのか、それとも単に俺のレベルが上がってそれに伴い筋力が上がったからそう感じるだけなのか定かではないが、もうそんなのどうでもいい。

 早くこいつの試し撃ちをしてみたい。


「まずは……っと」


 俺はポケットに入れていた銃弾をいくつか取り出し、それを銃に収めていく。

 そんな俺の行動を珍しそうにアイリスとリリーナが見る中、ミカだけは何をしているのかわかっているので瞳を光らせている。


「これでよし!」


 銃弾を入れ終わり、俺は早速ある程度ゴブリンと距離を詰める。

 前にも言ったと思うが俺に銃を撃った経験などない。中学の頃にエアガンで遊んでいたくらいだ。

 まあ、本物の銃を持ったことのあるような奴の方が少ないと思うが。

 それこそ高校生で銃をまともに撃てるのなんて、体は子供、頭脳は大人な名探偵くらいのものだろう。

 ただ、小さいころ俺はあれを見てハワイに行けばなんでもお父さんが教えてくれると思い込んで、親父に「ハワイ行こう!」と何度も言った記憶がある。我ながら純粋でかわいいやつだった。


「ユウマユウマ! 早く撃って私にも撃たせてよー!」


 銃を片手で持ってゴブリンに標準を定める中、後ろからミカの催促&迷惑な声がする。正直邪魔で仕方がない。

 そんなミカの声をどうにかシャットダウンして、俺はゴブリンに標準を定め終わり銃弾を放つ。

 そして―――


「ぴぎゃ!」


 見事に命中した。

 驚くことにゴブリンの頭に命中し、ゴブリンは何があったのかわからないまま絶命した。


「す、すごいですユウマさん! その銃? っていうのが何なのかはまだよくわかりませんけど、この距離から狙撃スキルもなしに額に命中させるなんて!」


 ゴブリンが倒れたのを確認して、アイリスが本当に驚いたようにこちらを向き俺を褒めてくれた。

 リリーナも声にこそ出していないがすごい驚いた顔をしている。ミカは「おーっ!」と、俺以上に感動していた。

 しかし俺は尊敬のまなざしを向けてくれるアイリスに本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 だって―――

 本当は額じゃなくて心臓辺りを狙ってたんだから。

 そんなことをこの純粋なまなざしを向けてくれる女の子に言えるはずもなく、俺は乾いた笑いで誤魔化すことにした。


 そして視界を再びゴブリンたちに戻すと周りのゴブリンが混乱していた。

 周囲をしきりに確認し、こちらを捕らえようと首を回す。しかしこちらは四人とも木の陰に隠れているのでなかなか見つからない。

 状況がわからずに慌てふためくゴブリンたちに俺は再び標準を定める。

 そして今度は念のために二発発砲した。

 一発目ははずれ、二発目は二体のゴブリンに命中した。一体目のゴブリンの胸のあたりを捕らえた銃弾は勢いのままにその体を突き抜け、後ろの二体目のゴブリンの肩を撃ち抜く。

 自分で作っておいてなんだが、すごい威力だ。


「これなら実戦で使えるな」


 まだ肩を撃たれただけで死んでないゴブリンが残っている中、俺は自分の銃の完成度に満足していた。

 そして、それをミカが俺からかすめ取った。


「お、おい。まだ貸すとは言ってないぞ」

「いいじゃんいいじゃん! 私だって撃ってみたいんだもん。ユウマばっかりずるいよ」

「ずるいってお前なあ……」


 それは俺が作ったもんだぞ。と続けようとして、ミカが放った発砲の音でかき消された。

 ミカの放った銃弾はものの見事に的外れな方向へと飛んでいき、ゴブリンを掠めることもなくどこか彼方へと飛んで行った。


「むうー!」


 ミカは拗ねたように頬を膨らませる。

 結構可愛いじゃねえか。俺の幼馴染。


「ねえユウマ! ゲームみたいな標準ないの!? あの丸いやつ!」

「そんなん作れるか! ここは確かにゲーム染みているが異世界なだけで現実だ!」


 我ながら意味の分からないことを言いながらミカを怒鳴りつける。


「撃ってもいいけど、なるべく外すなよ? この弾だって俺が作ってるんだから」


 何を隠そうこの銃弾も俺が作っているのだ。

 これくらいならドワーフのおっちゃんに頼めば作ってくれそうだが、今回は試作段階ということで銃弾も自作した。そのため銃弾はせいぜい数十発分しか持ち合わせていない。


「わかった、それならもっと距離詰めて撃つ」


 ミカは再びやる気を取り戻したようで、今度はゴブリンにさらに詰め寄ってから銃弾を放つ。

 そして今度はゴブリンに命中。先ほど俺に肩を撃ちぬかれた奴のお腹のあたりに命中する。そしてゴブリンは力が抜けたようにその場に倒れた。絶命したのだろう。


「やったやったー! ねえねえユウマ! 私にこれちょうだい?」

「やだよ! お前には『金剛力』があるだろ! 俺には何にもないんだからこれ以上俺からなにかを奪うな!」

「ちぇー」


 とりあえず一発命中させられたことに満足したのか、ミカは俺に銃をもらえなかったことに若干拗ねた表情をしながら銃を俺へと返す。


「それじゃあアイリス。撃ってみるか?」

「え? いいんですか!?」

「もちろん。てか最初からそのつもりだ」


 アイリスはさっきから俺やミカが銃を撃つのをキラキラした瞳で見ていた。

 そんなアイリスに撃たせてあげないなどという選択肢は俺にはない。ちゃんとアイルスルートを考え、好感度の上がる選択肢をしなくてはならないのだ。

 ホント、セーブ&ロードがほしい。

 そんなことを思いながら、俺はポーチからもう一丁の銃を取り出す。


「はい、アイリス。注意しろよ? こっちも結構危ないと思うから」


 そう言って俺はアイリスにさっき俺やミカが撃っていた銃と違う銃を手渡す。


「なにそれユウマ! あれは初めての成功の物だ。とか言っておいてもう一丁持ってるんじゃん!」

「あのなあ、あれは銃弾を込めるタイプの初めての成功銃、これは魔力を込めるタイプの銃なんだよ」

「魔力を込める?」


 ミカが意味が分からないという顔で俺を見た。


「まあ見てろって。アイリス、これに魔法を撃つときみたいにゆっくり魔力を込めてくれ」

「は、はい! わかりました!」


 俺の指示に従いアイリスが銃に魔力を込める。少しして俺は魔力を込めるのをやめてもらい、アイリスにゴブリンを撃つように指示をする。


「えっと……これを引けばいいんですよね? ユウマさん?」

「ああ、それを引くだけでいいよ。俺がゴブリンに『フリーズ』掛けて足元を凍らせておいたからはずすこともない」


 さっきまでいたゴブリン三体は俺とミカに撃たれて死んでしまった。

 運よくなのか悪くなのか生き残った一体は『フリーズ』で足元を凍らせて、十分に距離を詰められるようにしてアイリスでも外さないようにしておいた。

 銃を向けられ、足が動かないため慌てふためくゴブリン。

 そんなゴブリンに向かって、アイリスは引き金を引いた。


「え、えーい!」


 アイリスの放った魔弾はゴブリンの胸のあたりを撃ち抜く、というよりは抉り取った。

 この銃口の大きさよりも大きな穴がゴブリンに空いている。

 どうやら魔弾は銃口から放たれた後、多少肥大可するらしい。


「す、すごいです! ユウマさん! これすごいですよ!」

「そうだな。俺もまさかここまでとは思わなかった……」


 今言った通り、俺はここまで威力のあるものになるとは思わなかった。魔力の高いアイリスが撃っているというのもあるのだろうが、想像以上どころか想定外の威力だ。


「なあ、リリーナ。お前の魔力を全力で込めてこれを撃ってみてくれ」

「別にいいわよ。けどなんで私?」

「いや、今日の俺気分がいいからさっきから撃ちたそうに見てるお前にも撃たせてやろうかと」

「ゆ、ユウマ……」


 少し嬉しそうにするリリーナ。


「というのは建前で、本当はこの銃がどれくらいの魔力を込められるのかを見て見たかった。アイリスだと暴発した時に可哀想だからここはボケ担当のリリーナに任せようかと」

「そんなことだと思ってたわよ!!」


 そんなことを言いながらも俺から銃をひったくるリリーナ。


「見てなさい! こんなもの壊してやるんだから!」


 そう言ってリリーナが銃に魔力を込め始める。

 少しして銃が光を放ち始める。おそらく銃に込められた魔力のせいだろう。そしてその光がどんどんと大きくなっていく。


「お、おいリリーナ……。壊すなよ? さっきのはいつもの冗談だろ? 半分以上本気だったけど、半分は冗談だったぞ? なあ、なんか銃がありえないくらい光ってるからやめろ! 止めろください!」


 もはや何を言っているのかわからない言葉を発しながらリリーナを止めに入ろうと一歩踏み出した瞬間、 何かが崩れるような音と共に辺り一面が光に包まれた。

 咄嗟に瞼を閉じる。いつもなら暗くなるはずの視界が真っ白い。

 しばらくして光が徐々に収まっていき、俺はゆっくりと目を開ける。

 そこには―――


「ああ……」


 粉々に砕け散ったさっきの銃と思われる鉄の残骸が転がっていた。


「ああああああああああああ!!」


 急いでその鉄の残骸に近づき、もとに戻るはずもないのに必死にパーツとも呼べない残骸をくっ付けようとする。

 もちろんそんなことで元に戻るはずもなく、俺は涙を流すことになった。


「……やってやったわ」


 そんな中、ただ一人リリーナだけが目的を達成したとばかりに不敵に笑っていた。


 ♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


「ようファナ」

「こんにちわファナさん」


 俺とアイリスはファナの魔道具店まで来ていた。


「はい。こんにちわですユウマさん。アイリスちゃん」


 店に入った俺とアイリスに柔らかい笑顔で応対するファナ。

 本当に商人としての才能は感じないが、弟をダメにするお姉さん、または弟に心配されちゃうお姉さんの才能ならあふれ出ている。

 なんならその弟ポジションに俺は立候補したい!

 いや、します!!


「そういえばこの前はたくさんのお買い物ありがとうございますねユウマさん。おかげで今月は本当にこのお店を開いて初めての黒字になりそうです」

「そ、そうか。……それはよかったな」


 本当にこの店の将来が心配になりつつも、俺はいつも通りなんとなく店の商品を見回す。


「相変わらずよくわからん商品ばっかりだな」


 何度かこの店に通っているが、未だに何がどんな効果を持った魔道具なのかわからない。


「ん?」


 そんな中、俺はとあるものを発見した。


「……なあ、ファナ。……これって……」


 俺はそのとあるものを手に持ち、ファナに尋ねる。


「ああ、それはですね。私にもよくわからないものなんですが、真っ黒い手鏡のようなものだと思います。少し小さいのが欠点と言えば欠点ですね。それに本来の使用方法としてあってるのかも正直わからないんです……」


 困ったように笑いながら首を傾げるファナ。

 いつもの俺ならそんなファナを見て癒されたり、本人が動くたびに連動して一緒に動くメロンちゃんをばれないように見たりするのだが、今の俺はそんなことよりもこの魔道具の方が気になっていた。

 いや、正確に言えば、これが俺の知っているものだとすればこれは魔道具ではない。


「……携帯だ」


 そう。携帯だった。しかもスマホ。

 画面が少し大きめのスマホは電源はついていないようで真っ黒。充電があるのかすら怪しい。

 確かに何にも知らないやつがこの状態のスマホを見たら、少しおかしな手鏡に見えてしまうのも頷ける。

 もしかしたら充電が残ってるかも、という淡い期待をしながら。電源の切られている、もしくは切れてしまっているスマホの電源をボタンを押した。

 真黒な画面、その画面が光を帯びる。やがて画面には光が広がり、電源が入った。

 どうやら充電は残っていたらしい。


「……おー、充電残ってんじゃん」


 なんとなく慣れた手つきでスマホをいじくってみる。

 が、中には何のデータも入っていなかった。電波はもちろん届いておらず、ネットにもつながらない。

 もしかしたら俺と同じでこの世界に転生した誰かが、最初のお金稼ぎにこの世界では使い道のない携帯を売ったのかもしれない。


「ゆ、ユウマさん……」

「……」


 スマホを弄っている俺を驚いた様子でアイリスとファナが見つめている。なぜだ? と思ったのは一瞬、俺はすぐに二人が驚いている理由に達した。


「その魔道具の使い方を知っていらっしゃるんですか!?」


 俺が悠長にスマホを弄っていたのが原因なのだ。

 使い方を知らない物を悠然と弄っている人がいれば誰だって驚くだろう。


「ん、まあな。つってもこの世界じゃロクに使えそうにないが……」

「そうなんですか? ……ん? 今ユウマさん、この世界ではって言いました?」

「いや、言ってない。気のせいだと思うぞ」


 ものクソ言っていたが、今はまだみんなに俺が異世界からきたことは言うべきではない気がしたので、適当にごまかすことにした。

 なんかこういう異世界ものの主人公ってなんでか自分の元いた世界のことについて話さない傾向にあるし、話すにしても遠い場所とか言って異世界だって話はしないから俺もそれに乗っかっていこう。


「それでユウマさん! それは一体どういったものなのでしょうか!?」

「近い近い近い! いい匂いいい匂いいい匂い! たわわに実ったお胸がまぶしー!!」


 いきなりファナに眼前まで迫られて少し得意になってきた軽口という名のセクハラで距離を取ろうとする。

 が、ファナはそんなことどうでもいいのか、いつもの弟に激甘なお姉さん要素をすべて放り出して俺に迫って来ていた。

 なにこれ、何なのこの状況! あまりに急すぎて童貞の俺には刺激が強すぎるんだけど。勘違いして告白しちゃいそうなんだけど! 一歩飛び越してキスしちゃいそうなんだけど!!

 いや待て落ち着け俺! ユウマ! お前にはアイリスという名の天空の花嫁がいるだろ! ここは天空じゃないとか、花嫁ではないとかいうツッコミは事務所を通してどうぞ!


「それでユウマさん。本当にこれは何なんですか? 私もこんな魔道具見たことないんですけど……」


 いつにも増して押し押しなファナとは対照的にアイリスがいつも通り癒しオーラ全開で質問してきた。

 そんな天使のようなアイリスに対して(アイリスたん)(マジ)(てんし)! と叫びそうになったのをグッと我慢して呑み込み、いかにもそんなこと思ってないですよー的な感じで返事する。


(アイリスたん)(マジ)(てんし)!」


 呑み込んだつもりだったのだが、どうやら呑み込み切れずにリバースしたらしい。


「悪い……取り乱した」


 どうにかすぐに冷静さを取り戻し、いつも通りに紳士で真摯な対応に戻る。


「これはスマートフォンって言って、そうだな……いろいろとできるんだが、今できることと言ったらやっぱり写真を撮ることかな」


 日本にいた頃ならネットに繋がっているのでネットサーフィンをしたり、動画を見たり、アプリなどを楽しんだものだが、こっちの世界ではネットに繋がっていないのでできることと言ったら、時間の確認、ライトの代わり、写真撮影、メモ帳替わり、といったところだろう。

 電波もないので電話もできなければ、メールもできない。

 ちなみに日本にいた頃は俺もしっかりとスマホを持っていた。理由はもちろんスマホのアプリゲームをたしなむため、それ以外に使用用途などない。

 え? 電話とかメール?何それおいしいの?

 連絡先を交換したい? 無理無理、だって俺のアドレス帳は生憎ミカと両親二人でいっぱいだもん。

 悪いな、このアドレス帳は三人用なんだ。


「すまーとふぉん?」

「しゃしん?」


 俺の言葉にファナとアイリスの二人が英語のわからない日本人が外人に英語で話しかけられた時のような顔をしている。

この世界じゃスマホなんて、どこかの耳のないくせに猫型ロボットを名乗ってるやつが出してくれる未来道具みたいなものだしな。


「ユウマさん! ぜひ私にそれの使い方を教えてください!」

「まあ、いいけど。それよりこれ売ってくれたりしない?」

「売ります! 買ってくださるのでしたら売ります! ユウマさんは家の店の救世主ですからご贔屓にさせていただきます! ですからそれの使い方を教えてください!」

「あ、ああ……」


 ということで、俺は本来の半分くらいの力しか発揮できないスマホを手に入れ、ファナに使用用途を教えることになった。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――


「というわけで湖に行こう!」


「どういうわけよ!」


 ファナの店でスマホを買った俺は、一緒についてきてくれたアイリスと、スマホの使用用途を教えてほしいというファナと一緒に屋敷まで帰ってきていた。

 そして最初に見つけた屋敷でグータラしていたリリーナに声をかけたのだが―――


「そうか……。今日はいつにも増して暑いしみんなで湖に行って水遊びでもしようかと思っていたんだが、リリーナは行かないのか……残念だ」

「待ちなさい! そんな話してないでしょ! ユウマがしたのは帰ってくるなり何も事情を説明しないで「というわけで湖に行こう!」って言っただけじゃない!」

「しょうがない。ちゃんと事情を説明してやるか。一回しか言わないからちゃんと聞けよ」

「色々言いたいことがあるけどいいわ。大人の私が我慢してあげる」


 俺の方がずっと大人だろ。と、ツッコミを入れたいところだったが、子供のリリーナにいうのは酷な話だったので大人の俺は何も言わずに話を切り出した。


「じつはな。かくかくしかじかで」

「え? なに? 何言ってんのよユウマ?」


 せっかく説明してやったのにリリーナのやつが事情を理解できてないようだ。


「仕方ない奴だな。一回しか言わないって言ったろ? 今度はちゃんと聞けよ」

「だからな。かくかくしかじかで」

「だからなに言ってんのよ!」

「お前こそ説明してやってんだから理解しろよ!」


 おでことおでこがくっつきそうなくらいに接近してにらみ合う俺とリリーナ。

 そんな俺たちをアイリスとファナが心配そうに見守る中、誰かが階段を落ちてくる音が聞こえ、その音が止んだと思うと、今度は足音が近づいてくる。


「おっ? 何してんのユウマとリリーナ。あ、ファナさんいらっしゃーい」


 ミカだ。

 短パンとTシャツという非常にラフな格好のミカが部屋に入ってきた。

 幼馴染として短パンから除く太ももや手を上げたときに見えそうな脇など、非常にアイリスの教育上悪いので注意をしようと思うのだが、それらのことが俺を誘惑し注意することをためらわせる。

 まったく、非常にけしからん。

 おっとマズイ、鼻の頭のあたりが熱くゲフンゲフン。


「それで何やってんの? いつもの痴話げんか?」

「聞いてよミカ! ユウマのやつが事情をちゃんと説明してくれないの!」

「落ち着いてリリーナ。リリーナも私に説明が足りてないから」


 もっともなツッコミをリリーナに入れてから、ミカが俺に説明を求める。

 そんなミカに仕方なく俺が説明をしてやることにした。


「じつはな。かくかくしかじかで、ちでちで地デジ化なんだ」

「うん。ユウマ。後半のはともかく最初の「かくかくしかじか」で説明ができるのはゲームやアニメだけだから。この世界でもそれは同じだから」

「なんだと!?」


 ミカから明かされる衝撃の事実!

 俺は驚いて尻もちを―――


「まあそうだよな」

「うん。だからちゃんと説明しな」


 着くことはなく、いつものリリーナ弄りという名の冗談はやめにして今度こそ真面目な説明に入る。


「……というわけなんだ。……ふう、一から説明するのはやっぱりつかれるぜ」


 説明を終えた俺は、一仕事終わったとばかりに掻いてもいない汗をぬぐう。


「……」

「どうしたリリーナ? もしかしてこれだけ言ってもまだわからないのか?」

「……」

「だんまりじゃわからないぞ。ほら、怒らないから先生に話してみなさい」

「……ない」

「ん?」


「だから結局説明してないじゃない! いかにも説明しましたみたいな雰囲気出してただけで説明してないじゃないのよーーー!!」


 やっぱりリリーナ遊びは楽しい。

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