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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第三章
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17話

「なあみんな。クエストに行かないか?」


 夏も中盤に差し掛かり、夏の暑さがより一層増した今日この頃。

 俺は屋敷の中でゆったりとしている三人に女の子に声を掛けた。


「いきなりですね。でも私はいいですよ。久しぶりにクエスト受けたいです」


 俺の声に一番に反応してくれたのは、このパーティー唯一の良心にして癒し系マスコット、アイリスだ。

 クエストに行くときは青を基調にした魔法少女が着るようなドレス状の服に、羽衣を巻いているアイリスだが、さすがに家の中でそんな恰好はしておらず、現在は普通の年相応の女の子の服を着ている。

 青色が好きなのか、やっぱり青を基調とした服で揃えられており、少し丈の短いスカートもまた相まってかわいい。

 とにかく何が言いたいのかというと

 アイリスたんマジ天使!

 常人なら気絶してしまうくらいにかわいい。食べてしまいたくなるくらいかわいい。とにかくかわいい。

 かわいい、かわいい、かわいい、きゃわいい、きゃわいい、きゃわいい!

 大事なことなので三回ずつ言いました!


「……今日は嵐ね」


 次に俺の言葉に反応を示したのは能筋魔法使いのリリーナ。

 魔法使いのくせに魔物の群れに魔法も使わずに突っ込んでいくお笑い担当だ。たまにお色気担当にも入る。現在ゲロインの座も狙っている様子だ。

 そんなリリーナは俺の言葉に何やら顔をしかめて、窓から空の様子を眺めている。リリーナは嵐が来るなんて言っているけど空は至って快晴。雲一つないいい天気だ。

 それでも嵐が来るというのならきっとアイドルグループかなんかだろう。異世界にもいるのかアイドル。


「……ユウマ。休もう? 今日は何もしなくても何も言わないから。大丈夫。安心して寝てていいよ」


 最後に俺の言葉に反応したのは俺と同じく日本からこっちの世界に来た幼馴染のミカ。

 女神様から「金剛力」というチートを与えられ、そのおかげでミカの天性のスキルである「ドジ」も上手く相殺されている。

 その代わりたまに力のコントロールを間違えて食事中にコップを持っただけで割ったり、箸をばきっと折ったり、ドアを開けようとしてドアノブだけ取れるという驚きなことが増えたドジな女の子。


「何言ってんだよ。俺は元気だぞ? あのファイトー! いっぱーつ! のCMに出れそうなくらいには元気だぞ」

「リリーナ。今日はリリーナの言う通り嵐だね。ううん……槍と雷と隕石が同時に降って来る勢いだよ」


 いつもの俺ならここでキレて二人に因縁をつけていたところだろう。

 しかし、今日の俺は一味違う。


「なんだよノリが悪いな。いつもは自分たちからクエストに行こうって駄々をこねる癖にこっちから誘ったらこれかよ。いいよもう、アイリスと二人でラブラブデートクエスト行ってくるから。好感度上げまくってくるから。行こうぜアイリス。いいもの見せてやるから」


 なにやらノリの悪い二人を置き去りにすることに決めた俺は、唯一クエストに行ってくれると快く了承してくれた天使アイリスとクエストに行くことにする。

 こんな二人など別にどうでもいい。(アイリス)さえいればいい。

 または(アイリス)さえいればいい。だ。


「いいものですか?」

「ああ、いいものだ。きっと驚くぞ。……ジャーン!」


 興味ありげにアイリスが聞き返してくれたので、俺はそのいいものを構えて見せる。


「KE・N・ZYU・U」


 そう、俺が今手に持っているのは拳銃だ。

 刑事ものや探偵ものなどによく出てくる拳銃だ。


「ほ、ホントだ! ね、ねえユウマ! 私にも持たせて! 持ってみたい!」

「うるさい! 俺と一緒にクエストにも行ってくれない奴なんかに銃は渡しませーん。これは俺んだ!」

「えーっ! いいじゃんいいじゃん! だって拳銃なんてドラマの中やアニメでしか見たことないんだもん! 私だって触ってみーたーいー!」

「ドラマ?」

「アニメ?」


 俺とミカのやり取りの中に聞きなれない単語が出てきてハテナをうかべているアイリスとリリーナ。

 アイリスはいつも通りかわいいが、リリーナもこういう時はかわいい。普段からいつも不思議がってればいいのに。


「ねえユウマ、そのケンジュウ? っていうのは何なの? なんかすごいもの出しましたー。みたいな顔されても私には何なのかわからないからユウマがバカ面ぶら下げているようにしか見えないんだけ……どっ!?」


 リリーナの発言にちょっとイラッと来たのでお望み通り拳銃の使用方法を教えてやった。

 と言っても中身は試し撃ち用のゴム弾で、しかもリリーナに当てないよう足元を狙ったので誰にも被害は出ていない。こんなことで屋敷に傷などつけられるか。


「フー」


 ゴム弾を打っただけなので煙など出てないが、拳銃の先に息を吹きかける。これ一回でいいからやってみたかった!


「フー。じゃないわよバカ! 何よそれ! すっごい武器なんじゃない! そんな危険なものいきなり撃たないでよ!」

「ふん。別にあんたがどういうのか見せてって言うから見せたわけじゃないんだからね!」

「……キモイわ」


 バンバンバン

 床に向かって三発ほど発砲。


「なんなのよもー!」


 屋敷にはリリーナの叫び声が響き渡った。


 ♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


「それじゃあ早速クエスト受けようぜ!」


 結局四人でクエストを受けることにした俺たちは四人でギルドへと向かった。

 ギルドに入るなり早速クエストボードに向かってダッシュし、張り出されているクエストを端から見ていく。


「なんかオークの討伐が多いな。気のせいか? ……まあその方が俺たち駆け出し冒険者には優しいけど、トラウマが……」


 今言った通り今日のクエストボードにはオークの討伐依頼がやたらと多く見える。

 もちろんその他にもいつも通りスモールゴーレムの討伐や、コットンラビットの討伐、子供のお守りからお使いまで、本当にこれ冒険者の仕事か? とギルドのお姉さんに問いたいくらいの内容のものまでがクエストボードに張り出されている。

 その中から俺は適当に目に入ったゴブリン討伐を選び、受付の一番きれいなお姉さんの所にわざわざ並んで持っていく。

 他のおばさんの所や、そんなにタイプではない女の人がやたらと俺をにらんでいたが、そこは俺のアウトオブガンチュウの役立つどころだ。

 見たくないものは見ない。知りたくないものは知らないまま。それが一番である。


「クエスト受けてきたぞー。早速行こうぜ!」


 というわけで、我ながら珍しくやる気満々のクエストが始まった。



 クエストの依頼場所に行く道中、少し離れたところを歩いていたミカが近寄ってきた。


「ねえユウマ。それどこで買ったの? 貸してくれないなら自分で買うから教えて」


 さっき拳銃を貸さなかったことをまだ根に持っているのか、ミカは少しふくれっ面で俺を睨んできた。

 そんなミカに対して俺は


「ないぞ。たぶんどこにも売ってない」


 と、たった一言で一刀両断した。


「え? どういうこと?」

「だからこの世界のどこにも銃は売ってない。現に俺の通っている鍛冶屋のドワーフのおっちゃんに銃って知ってるか? って聞いたら「なんだそれ? なんかのおもちゃか?」って本気で言われた。そんなもん生まれてこの方聞いたことねえや、って言ってたし、王都の方にもないと思う」


 このファンタジー世界に銃が存在してるだなんて最初から思ってなかったけど本当になかった。この世界の人は弓があるから遠距離は魔法と弓で十分なのだろう。


「それじゃあその銃はどうやって手に入れたの?」


 ミカの新しい質問。まあ、この質問が来るのは読めていた。

 隠す必要もないし、言っちまうか。


「俺が作った」


「は?」


 ミカの本気の「は?」を初めて見たかもしれない。

 そしてその反応は俺からしたら結構面白い。


「作ったってどういうこと? ユウマ銃なんて作れなかったよね?」

「そりゃあな。エアガンくらいしか作ったことねえよ」


 今思えば、あれが俺が本格的に中二病をこじらせた原因かもしれない。

 当時ハマっていたアニメの主人公が銃使いで、あんまりにもカッコいいものだからマネしたくなった中学二年の俺は、必死にためたお小遣いでゲームも買わずに生まれて初めてエアガンというものを買った。

 それからは楽しかった。近所のカラスに向かって「この邪悪な闇の力に染められし闇の鳥め! くらえ! セイントブラスト!」とか叫びながらカラスを追っ払っているうちに、近所の奥さま方から朝のごみ回収が来るまでの間だけカラスを追っ払うという依頼をクスクス笑われながら頼まれ、それを実行したり。

 銃の引き金の部分に指を入れて銃を回るやつをやってみたくて試してみたら、暴発して自分の額に当たったり、本当に楽しかった。

 あれ? 今思い返すとこれって結構な黒歴史じゃね?


「俺ってロクなことしてねえ……」

「なに今更そんなこと言ってんの? それより作ったってどういうこと?」

「……あの優しかった幼馴染はどこに行ってしまったんだ。コイツは俺の知っているミカじゃない。毎日朝一緒に学校行こ? って呼びに来てくれた幼馴染じゃない。毎日学校に行かないニートのために放課後にプリントを持ってきてくれた幼馴染じゃない。幼稚園の時「私、将来ユウマのお嫁さんになる!」って言ってたかわいらしい幼馴染じゃない!」

「さっきから何言ってんのユウマ!? ていうかなんで幼稚園の時のそんな会話覚えてるの!? 普通そういうのは女の子だけが覚えてて男の子は忘れてるもんじゃない!?」

「俺はラッキースケベを自ら無駄にしたり、過去に手にした栄光を忘れるようなド天然主人公みたくバカじゃない! もしミカが俺以外のやつと結婚した時には式場で今の話を新郎に聞かせてやるんだ!」

「想像以上のクズだ!!」


 俺にとっては楽しい会話を終え、話を本題に戻す。


「ぶっちゃけると鍛冶スキルを取って想像しながら作った。何度も失敗したけどな。それでこれが初の成功もの」


 これ見よがしに銃を見せつける俺。


「ユウマまた戦闘系以外のスキル取ったの? ユウマはどこに向かってるの? 料理スキルを取って、商人には必須だって言ってたゲートのスキルを取って、今度は鍛冶スキル? もう料理人なのか、商人なのか、鍛冶屋なのかわかんないね」

「冒険者だ!」

「あ、そっか」


 本気で冒険者という選択肢がなかった様子のミカ。

 けど自分でもどこに向かっているのかわからないから不思議だ。


「今回はこいつの実戦での実験みたいだし、後でミカにも撃たせてやるよ」

「ホント? やったー!」


 その場で飛び跳ねながら両手を上げて喜ぶミカ。

 そしてその勢いのままスキップをしながらルンルンと俺の前を歩いて行った。


「やっぱり優しいんですね、ユウマさんは」

「なんだアイリス。聞いてたのか?」

「途中からですけど、ちょっと聞いちゃいました」


 小さく笑ってかわいらしく舌を出すアイリス。

 可愛い。お持ち帰りした! お持ち帰り~!


「なんだかんだ言いながらも俺はあいつに大分救われてる部分があるからな。それくらいはしないとってやつだ」

「ユウマさんのたまに素直になるところ私は好きですよ」

「グフ!」


 アイリスの思わぬ強襲により、ガルマ散る。

 って! 別にさっきのはアイリスのかわいさに心打たれただけでジオンのモビルスーツの名前を言ったわけでも、ジオンのお坊ちゃんの名前を言ったわけでもない!

 俺はユウマだ!


 そんな最近取得したばかりのセルフボケツッコミを実行しながら、アイリスに削られた分のMPを回復しつつ、道中を歩いた。

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