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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第三章
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16話

「第一回! チキチキ! ミカのダイエット作戦会議を行います!」


 結局ミカのダイエットに付き合わされることになった俺は、まずはプランを立てようと屋敷の何もないときはみんなが集まる居間にてミカと会議をしていた。


「まず最初にクエストに行くのはやめよう」


 会議が始まって早々に俺は意見を飛ばす。


「え? なんで? どうせ動かないといけないんならクエスト受けてお金ももらった方がいいじゃん」


 ミカのもっともな正論。

 しかし―――


「それは金がなかったらの話だ。既に俺はこの世界で大金を手にし、銀行に預けているお金とその金利だけで一生を暮らしていける。それだけの額があるならわざわざクエストなど受ける必要ナッシング!」


 左右に指を振りながら言葉のアピール。面倒ごとは御免だ。

 そんな俺の意見を耳にミカは―――


「……で、本音は?」

「わざわざダイエットのためなんかにクエストに行きたくない。ダイエットなら家の敷地内でどうにかなるし、外に出たくない。もっと言えば部屋を出たくない」

「うわ~……」

「おいそこ! 人をダメ人間とかゴミを見るような目で見るな!」


 あまりにも冷たい視線を向けてくるミカに注意をしながら俺は話を元に戻す。


「俺の本音はともかく、実際クエストを選ぶ時間や指定場所に行くまでの時間をダイエットの時間に割いた方がいいだろ。幸いここの敷地は広い。大抵のことはできるはずだ」

「むっ、た、たしかに……」

「わかってくれたところで早速実践だ!」


 というわけで俺たちは部屋の端の方に移動した。


「ダイエットの基本は運動! というわけで手軽にできる筋トレでもしてみようぜ!」

「食事制限以外のダイエット法なんて運動しかないよね。……うん。やってみよう!」


 少し悩むそぶりを見せたものの、ミカもどうやら反論はない様子。


「それじゃあサボらないように見ててやるからミカは腕立てでもやれよ」

「了解です!」


 ミカは敬礼をし、元気よく返事をしてから腕立ての体制に入る。

 地に両手を付いて、それを曲げては伸ばし、曲げては伸ばしの繰り返し。最初は楽なのだがずっとやっていると意外としんどい。俺なら三回でやめる自信がある。


「1、2、3、4」


 いちいち回数を数えながら腕立てをするミカ。

 ミカが巨乳だったなら地球大好き! とばかりに地面に顔面を押し付け、その弾むたわわな果実を堪能していたところだが、残念ながらミカにはそれだけの果実が実っていない。

 つまり俺からしたら幼馴染の女の子がダイエットを頑張る姿をただただ見るという退屈な時間となった。


「23、24、25」


 徐々に回数を重ね、とりあえず二十台まで到達していた。

 普通の筋トレならここで1セットということでやめたりするのだが、ミカが平気そうな顔をしているので続行させることにした。 


「51、52、53、54」


 あれから数分。ミカは休むことなく腕立てを続けている。

 回数も50台になり、ここから先はさらにきつくなってくるところである。

 俺はミカの苦痛の顔でも見ながらこの退屈な時間を楽しもうと、バレないように顔を少しニヤつかせながらその時を待った。


「105、106、107」


 おかしい。

 ミカが疲れた様子を見せていない。それどころか今にして思えば汗の一つも掻いていない。

 いくらこの異世界にはステータスというものがって、レベルが上がれば筋力や知力まで上がるというトンデモ世界だとしてもおかしい。

 確かにミカはこの世界に連れて来られた特典として物理のステータスが強くなるというものは受けている。それにしたってここまで万能的に上がるものなのだろうか?

 俺は疑いの目をミカに向けつつも、もう少し様子を見守ることにした。


「300、302、303」


 とうとう腕立ての回数も300という大台に乗ってきた。常人ならもう疲れて果てて地面に地球大好き! と倒れこんでいるはずである。

 そんな大業をミカは汗一つ掻かずに、余裕の顔をして、まるで息をするように腕立てをしている。

 ここまできて俺は―――


「いやいや待て! それは絶対におかしい! こんなの絶対おかしいよ!」


 さすがにツッコンだ。

 いやだっておかしいだろ? いくら少し筋力のステータスが上がったからって腕立て伏せを三桁台、しかも休憩なしに汗一つ掻かずにやるっておかしくないか。


「おかしいって何が?」


 ミカは俺の渾身のツッコミに一旦腕立て伏せを中断し、腕を伸ばし切った状態でこちらに顔だけを向けた。


「お前おかしいだろ! いくらレベルアップでステータスが上がるからってさすがにここまでじゃないだろ!」

「えーっ? だってなんか自分でも驚くくらいに疲れないんだもん。汗もかかないし、息も上がらないし、腕もプルプルしてこないし」

「二の腕はプルプルしてきてるのにな」

「うるさいな!」


 ミカにツッコミを入れられてから再び俺はこの状況のおかしさの理由を考える。

 さっきから考えている通り、いくらこの世界ではレベルアップでステータスが上がるといってもさすがにここまでではないだろう。レベル15でこれなら高レベルの、それも40レベルくらいの人たちはみんな地面を思いっきり踏んだら二つに割れるくらいの力を有していることになる。それはさすがにないだろう。

 さすがに「あっ、ちょっとイラッとして地団駄踏んだら地面真っ二つに割れちゃった。テヘペロ!」みたいなことはないはずだ。


「だとしたらなんだ? もしこれが普通なんだったらそれこそチート……」


 ここでユウマに電流奔る。


「なあミカ」

「ん? なに?」

「お前さあ」


 俺はミカの顔をしっかりと見て


「『金剛力』使ってるだろ?」


 そう投げかけた。


 『金剛力』それは物理能力が劇的に上昇するスキル。

 岩を殴れば粉砕・玉砕・大喝采。スモールゴーレムのような相手に本気で殴られても全然痛くない。それがミカが女神様より授かったチート『金剛力』である。


「え? 当たり前じゃん。使った方が楽だもん」


 ミカは本気でそう思ってるらしく、真顔でそう返してきた。

 そんなミカに俺は手を顔に当てて呆れるしか出来なかった。


 ♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


「第二回! チキチキ! ミカのダイエット大作戦会議を行います! ドンドンパフパフ!」


 ミカがダイエットで不正を働いていたので、第二回目の作戦会議が急遽執り行われた。


「今回は私ユウマのサポート役としてみんなのマスコットであるアイリスと、特別ゲストのリリーナさんをお呼びしています」


 誰にでもなく話しかける俺。

 そんな俺を少し可哀想な目で見ている二人と、苦笑いのアイリスをスルーして俺は司会進行を進める。

 初めて役立った俺の『スルー』スキル!


「それでは早速ですが、リリーナさん。何かいい方法はないですか?」


 司会役らしく早速ゲストに意見を求める。見方を変えると丸投げともいえるが。

 意見を求められたリリーナは少し考える仕草を取ってから至って真面目な顔をして。


「私、太らない体質だからよくわかんないわね」


 と言った。

 いや、言い放ったという方がこの場合は適切かもしれない。

 だってミカが見えない何かに攻撃を受けてのけぞっているからだ。


「う、うそでしょ? 嘘だといってよリリーナ……。私たち友達だよね……?」


 ミカは太らない体質だと言うリリーナに縋るように身を寄せる。

 そんなミカを見てリリーナは申し訳なさそうな顔をして「ごめんねミカ。ホントなのよ」と小さくつぶやいた。


「くはっ!」

「おーっと! ここでダイエットを始める前のミカ選手にリリーナコーチからのダイレクトアタック! ミカ選手っ、早速大ダメージを受けてしまったーーーっ!」


 なんか面白そうだったので実況っぽいことをしてみた。


「それにミカ本当に太ったの? 私から見れば出会ったころとあんまり変わらないように見えるのよね。なにかの勘違いなんじゃない?」

「私もそう思います。ミカさんが太ったようには思えません」


 女性陣二人からのミカへの優しい言葉。

 かくいう俺も二人の言う通り特別ミカが太ったようには見えない。


「それに少しくらい太ったところで変わらないわよ。そんなこと気にしておいしいものを食べられない方が私的には損してると思うわ。ということだからユウマ、今日はこの前のパスタ? とか言ってたやつの別の味付けのが食べたいわ」


 リリーナのやつ。ミカのことを慰めようとしていたように見せかけて実は自分が食べたいものを夕食にするよう催促してきやがった。

 リリーナのくせに生意気に賢いことしやがって!


「リリーナさんの言う通りですよミカさん。それにもし本当に太ってしまったとしても私はミカさんを嫌いにはなりません。ミカさんはミカさんです」

「あ、アイリスちゃん……」


 アイリスの優しい天使のような一言に涙を浮かべながらアイリスの手を取るミカ。

 アイリスの手を取っているミカを見て、少しうらやましいと嫉妬した俺は―――


「そうだぞミカ。もし太ったとしても正月に少し外で頭にミカンを乗せて座っててもらったり、春にお腹に顔を書かせてもらったり、三食ちゃんこ鍋になるだけだから気にするな」

「うわーーんっ!」

「ユウマさん!!」


 少しだけミカに嫉妬とという名の攻撃を仕掛けたつもりがアイリスに怒られてしまった。これで少しアイリスの好感度が下がってしまった。

 くそっ! これだから隠しパラメーターは嫌いなんだ! せめて好感度を調査する友人の一人を用意しろ! あと選択肢も! ついでにセーブ&ロードもおなしゃす!!

 ちなみにさっき言った三つのことは鏡餅、太っている人が花見でよくやる腹踊り、お相撲さんをそれぞれ暗示させている。

 アイリスやリリーナには伝わらないはずだが、ミカの反応を見て俺が何かひどいことを言ったのだと判断したらしい。

 アイリス。本当に賢い子。どこかの能筋魔法使いとは大違いだわ。


「何ユウマ? 私の顔に何かついてるかしら?」


 どうやらアイリスと比較しているうちに無意識にリリーナのことを凝視していたらしい。


「いや、アイリスは賢いなって」

「それはわかるけど、絶対に私の悪口も一緒に考えてたわよね? そうね……例えば、アイリスの方がどこかの能筋魔法使いより賢いとか」

「お前エスパーか!?」

「違うわよ! っていうか本当にそうだったわけ!?」

「お、お二人とも喧嘩は……」


 アイリスが俺とリリーナがいつものように喧嘩に発展すると見て、すぐに止めに入った。

 あと発展するって、なんかエロくね?

 俺とリリーナがお互いにつかみ合わないようアイリスが間に立ったところでミカが大きな声を出して


「もういいもん! 私一人でがんばるもん!」


 と、言って屋敷を飛び出した。



 ミカが居間を飛び出しから二時間。俺とリリーナとアイリスは屋敷の二階からミカが庭で一生懸命運動しているのを見ている。

 ミカはあれから一人で筋トレなり、何かのフットワークなりをして一生懸命にダイエットをしている。


「がんばってんなー、ミカのやつ」

「私は全然太ったように見えないんだけどね。なんであそこまで必死になるのかしら」

「まあ、女の子だから、だろ? リリーナと違って大抵の女の子は胸に全部の栄養が行くなんてことはないんだよ。察してやれ」

「ユウマもこの後の自分の未来を少し察した方がいいわよ」


 額にイライラのマークを浮かべながらリリーナが額をぴくぴくさせる。


「悪いことをしてしまいました……」


 そんな中アイリスだけは真面目にミカの心配をしていた。


「そんなことないだろ。結果的にあいつは一人でダイエットに本気で取り組めるんだ。俺たちはその頑張りを無駄にしないように少し考えて食事を作ってやろう。なっ? アイリス」

「そ、そうですね! よーし! ユウマさん! 今日の夕食作りは私にも手伝わせてください!」

「それは助かるよ。ありがと」


 そう言ってアイリスの頭を撫でる。

 これでさっき下がったアイリスの好感度が戻ったはずだ。むしろ逆に上がってるまである。

 今の俺、超カッコいい理想のお兄ちゃん! のはず……。




「……で、こうなるわけか……」


 あれから数時間。

 一人外でダイエットに奮闘していたミカが見切りをつけ屋敷に戻ってきて、お風呂で汗を流し終え、現在はみんなで食事中だ。

 それだけなら普通なのだが……


「ユウマ! おかわり! 大盛ね!」


 指示に従い、ミカの茶碗に少量のご飯をよそってくる。そしてそれを手渡すと、ミカはなにやら不満そうな顔をした。


「ユウマ、私、大盛って言ったよね?」

「そうだな」

「私にはこれは小盛にしか見えないんだけど」

「そりゃあダイエット中の女子に大盛のご飯を持ってくるような命知らずじゃないからな。『金剛力』なんか使われたら本気でひとたまりもない」


 俺がミカによそってきたごはんの量はおそらく四口くらい。茶碗の三分の一が満たされているかいないかくらいの量だ。


「足りない……」

「ダイエット中だろ。我慢しろ」

「こんなんじゃ明日頑張れない! ごはんもっとー!」


 茶碗を高らかに掲げながら喚くミカ。


「俺は別に構わないけど、いいんだな? 俺は知らないぞ?」

「いいの! 私がいいって言ってるんだから万事オッケー、オールオッケー、なんでもオッケーなの!」


 ここまで駄々をこねられると面倒になってきたので、俺は仕方なしに言われた通りご飯を大盛でよそいなおしてきた。

 それをおいしそうに頬張るミカ。

 リリーナとアイリスは何か言いたげな顔をしながらも、俺が首を振ったことにより沈黙。


 そして一週間後。


「きゃあああああああ!! なんでまた増えてるの!? あんなに頑張ってダイエットしてるのにーっ!」


 お風呂場からミカの悲痛な叫びが屋敷中に響き渡った。


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