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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第三章
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14話

 ファナの店からありったけの爆発ポーションと魔物を呼び寄せちゃう的な魔道具を買ってきた俺は、再びリリーナとの勝負場所である森まで戻ってきていた。

 ちなみにファナの店で使ったのは三十万ギル。四億もの大金を持ち合わせている俺からしたら大した額ではない。

 それにこの世界にも銀行は存在しているらしく、ちゃんと金利もあるらしい。それを考慮して遊び過ぎなければ俺は一生働かずに生きていける。

 一億ずつ渡したアイリスや、ザックたちも使い方によってはそれなりに遊んで暮らせるはずだ。

 俺はそんな将来の設計図(お金編)を考えつつ、とある作業を進めていく。

 ちなみに将来設計図の次の編はもちろん天空の花嫁アイリス編である。

 天空じゃないとか、それならお前一回奴隷になって石にされろよ? なんてツッコミはいらない。


「よしっ。これでよし!」


 誰にともわからない忠告を入れている間に作業は終了した。

 地面に『ウインド』で穴を開け落とし穴を作り、その近くにファナの店から買ってきた魔物を呼び寄せちゃう魔道具を置き、俺は木に上る。

 ちなみにファナの店で買ってきた魔物を呼び寄せちゃう的な魔道具の話だが、やっぱりコイツもポンコツだった。

 買った時にファナがあまりの嬉しさに涙を流しながら「この香水なんですが、匂いがとてもよく女性のみなさんに人気なんですが、その匂いが魔物を呼び寄せてしまうみたいで不人気だったんですよ。本当にありがとうございます!」と言っていた。

 そりゃあ、売れないわな。


 しかし今回の勝負ごとにおいてはこのポンコツ魔道具も役に立つ。

 今回の作戦は簡単に言えば落とし穴にオークを落として、爆発ポーションを使って倒しちゃおうという作戦だ。

 そのためには魔物をおびき寄せる魔道具が必要だった。

 そして見事にファナの店にはそれがあった。

 初めてファナの店が役に立ったと思った瞬間である。


「あー、暇だなー」


 あれから数十分が経過したが、オークが一向に姿を現さない。

 かと言って自分で探しに行くわけにもいかず、木の上で器用に横になりながらふて寝をしていると、ドドドドドドドッ! と大きな音が聞こえた。

 びっくりして木の上から落ちないように飛び起き、状況を確かめようと周囲を見回す。

 すると、その原因と思われしものが目に入った。

 それは大きな砂ぼこりや木の揺れ。まるで何かの大群がものすごい勢いでこちらに向かってきてるのではないかというような大きな音。


「ん? ……大きな音……何かの大群が近づいてきてるような砂埃や木の揺れ……まさかっ!?」


 俺がある推論を立てたとき、その答えはわかった。

 音の原因が俺のゲームで落ち切った視力でも見える所まで来たのだ。

 そう、その音の原因。オークの大群を。


「やばっ! あんなに一気に来られたらこんな落とし穴意味ないぞ! どんだけ効果あんだよあの香水!」


 俺が一人焦りつつもどうにかならないかと頭をひねっていると、オークたちはこちらの都合など関係ないと言いたげにこちらへと到着してしまう。


「……こっちには気づいてないのか?」


 どうやらオークたちは本当にあの香水の匂いにつられてやってきただけで、俺のことなどアウトオブ眼中らしい。

 しかし、俺のいる木の下は何十体ものオークの大群。降りるに降りられないし、俺には木の枝を伝っていくなどという忍者的なことはできない。

 あの香水の効果が切れるのなんて待ってられないし、リリーナにも期待はできない。

 この状況は非常にまずい。


「くそ! こうなりゃ自棄だ!」


 俺はこの状況に観念して、ファナの店から買ってきた爆発ポーションをありったけ詰め込んだバックをオークたちの集団のど真ん中目がけて落とす。


 瞬間、耳を劈く様な轟音と暴風。


 あまりの爆音に両手で耳を塞ぎ、爆風に吹き飛ばされないように必死に体を木に預ける。そのまましばらく耐えていると、やがて爆音と爆風が同時に止んだ。

 俺は恐る恐る閉じていた目を開け、現状を確かめる。


「……おおーーっ!!」


 木の下には大量のオークたちの死体。中にはオークとわからないくらいまで形を失ってしまっているものもいるが、これは確かにオークの死体だ。


「そうだ! 討伐数は!」


 急いでポケットにねじ込んでいる冒険者カードのオークの討伐数を確認する。

 俺が今までにオークを討伐した数はゼロ。前にミカという名の名剣を使って倒したオークたちはみんなミカの経験値となってしまった。あれで俺に経験値が入ればあの方法で経験値稼ぎをしたというのに。

 ポケットから少し強引に冒険者カードを取り出し、オークの討伐数を確認する。


「お、おーっ!!」


 そこには36のという数があった。

 つまり、今ここにはオークの死体が36体分転がっていることになる。


「キタコレっ! レベルまで上がってる! しかも三も一気に!」


 かなりの数のオークを倒したから俺のレベルは一気に三も上がっていた。

 レベル二からレベル五。この一カ月での俺の成長スピードが怖いぜ!


「……にしてもうやりすぎたな……」


 大量オークの討伐に大幅なレベルアップ。

 うれしいことずくめではあったのだが、目の前の状況はそれはひどいものだった。

 簡単に言ってしまえば、クレーター。


「まっ! いっか!」


 どこかの野菜人のような気軽さで目の前の状況を見て見ぬふりをして俺は、リリーナとの合流地点へと向かった。




「フッ! 俺の勝ちだな」


 あの後時間目いっぱいまで時間を潰した俺は、合流地点でリリーナと結果発表をしていた。

 お互いが同時に冒険者カードを出して、今日討伐したオークの数を見せ合う。

 俺はあれから一体もオークを倒していないで36体、そしてリリーナは21体だった。

 予想よりもリリーナがオークを倒していたのに若干驚きつつ、圧勝だなと勝利の余韻に浸る。


「それじゃあ約束通りなんでも言うこと聞いてもらうからな」

「……せめてその顔だけはどうにかならないかしら……」

「やめろよ……。いくら俺がイケメンだからって、俺にはアイリスという将来を約束したかわいい婚約者が……」

「いや、普通に気持ち悪いだけよ……?」

「……」

「……」

「もう一勝負だこらーっ!」


 結局喧嘩になどならず、大人な俺がすぐに冷静さを取り戻したおかげでリリーナと喧嘩にならずに済んだ。

 全く、子供の相手はこっちまで童心に戻されちゃって困るぜ。


「それじゃあ帰ろうぜ。今日は疲れた。これでしばらくクエストは受けなくていいわ」

「ユウマ……いい加減救えないわよ?」


 ニート宣言をする俺にリリーナの珍しく冷たい視線。

 ゾクゾクしないのでやっぱり俺はSのようだ。

 そんな時だった。周りの木々から音がしたのは。

 俺とリリーナは各々武器を構えながら、その何かに対して戦闘態勢を取る。


「ねえユウマ、言っておくけど私役に立たないわよ」

「そんなの知ってる。いつものことだろ?」

「そういう意味じゃないわよ! 単に魔力が枯渇してるの! 立ってるのもつらいのよ!」


 リリーナの発言に嫌な汗を掻く俺。


 マズイ。

 俺だってそんなに魔力が残っているわけではない。

 残ってるにしても俺の魔法なんてリリーナの魔法に比べれば焼け石に水だ。効果なんて大して期待できない。

 じゃあ逃げるか? いや、周り全体の木々が揺れているのを見るとおそらく俺たちは囲まれている。その状況で逃げるのは至難の業だ。

『逃走』スキルを持っている俺ならうまくスキをついて逃げられるかもしれないが、リリーナにそれはできない。アイリスがいれば敏捷アップの魔法でもかけてもらえばいいのだが、ここにアイリスはいない。


 どうしたものか。


 頭の中で必死にこの状況を打破する方法を考える中、何かは確実に俺たちに迫っており、そしてようやくその姿を見せた。


「げっ!? よりにもよってオークかよ……」


 何かの正体はオークだった。それも全員オス。戦闘に特化している性別の方だ。この状況は非常にまずい。囲まれてるから戦闘は避けられない。

 一人だったら『逃走』スキルで逃げているところだ。しかし今回はリリーナがいて、逆に言えばリリーナしかいない。

 本当にどうしよう。そんなことを考えている時だった。俺に電流が走ったのは。


 ん? 別にいいんじゃね?


 だってリリーナならいつもなんだかんだで魔物に弄ばれてるだけだし、死んでもおかしくないような状況でも遊ばれてるし、もしかしたら魔物たちにはリリーナは敵ではなく遊び道具にしか見えてないんじゃないだろうか。

 この前のオークの集落でだって、リリーナは少しの間とはいえオスのオークの集団の中で何もなしに生き延びているのだ。

 行ける!


「リリーナ! じゃあな! 検討を祈る! 『逃そ』……こらっ! なにする離せ!」


 俺が片手をあげ、リリーナに別れの挨拶を華麗に済ませてから『逃走』スキルを発動しようとしたらリリーナが全身を使って俺の腰に抱き着いてきた。

 とても柔らかくて気持ちのいいものが腰に当たっているが、今はそんな場合ではない。


「何一人で逃げようとしてるのよ! 私を置いていく気!? このオスのオークたちに囲まれている状態で自分だけ『逃走』スキルなんて便利なスキル使って逃げようっていうわけ!? 許さないわよ……。そんなの絶対に許さないわ! この状況なら男のユウマのほうが相性いいんだからいつもの悪知恵でどうにかしていきなさいよ」

「何言ってんだ! 確かにオスしかいないみたいだけど、この数は無理だ。ムリゲーだ! 俺は命を無駄にしない男なんだよ。セーブもロードもコンティニューもこの世界にはないんだよ!」


 腰に抱き着いているリリーナを必死に振りほどこうと腰を振る。

 しかし力ではリリーナの方が勝っているためなかなか振りほどけない。

 くそ! この脳筋魔法使いめ!!


「ムリゲーってなによ! セーブってなによ! ロードってなによ! コンティニューってなによ! そんなの全然知らないわよー!」


 俺の腰にしがみ付いて意地でも離れる気がなさそうなリリーナ。

 その間にもオークたちはこっちに迫ってきている。ここは作戦を変えるしかない。


「……わかった。どうにかする。だから離せ、そして手伝え」

「ホントに? ホントに逃げない? 私だけおいて逃げたりしない?」

「しないしないしない竹刀」

「なんか最後だけイントネーション違くなかったかしら?」

「気のせいだ」

「それで私はどうしたらいいの?」


 簡単なボケを終え、リリーナがじりじりとこちらによって来るオークたちから視線を外さないまま、話しかけてくる。


「いいか、一度しか言わないぞ。まずお前が前方のオークに突っ込んでいく」

「ええ、それで?」

「そしてお前がオークたちをひきつけている間に俺はそのスキをついて逃げる。リリーナは俺が安全圏に逃げるまで一先ず囮をしてもらう。そして俺が安全圏に逃げたらリリーナを応援する。後はリリーナが頑張れ! 俺も応援頑張るから」

「ええ、わかったわ……ってなによその作戦! 私逃げられないじゃない!」

「大丈夫だ。後でちゃんとオークたちがいなくなってから助けに来る! だから「時間を稼ぐ? 別に倒してしまっても構わんのだろう?」くらい言ってくれ! または「私に構わず先に行って!」って言ってくれ! そしたら俺は何の後悔もしがらみもなくお前をおいていける。明日を生きていける!」

「誰が言うものですかそんなセリフ! そんなこと言ったら私が明日を生きていけないじゃないの!」


 クソ、いつもは騙されやすいくせになんで今回に限ってこんなに冷静で頭が回るんだ!

 まあ、さっき言ったセリフは確かに二つとも死亡フラグではあったが。


「本当になんとかしなさいぎゃああああーっ」

「リリーナ!」


 リリーナがいつの間にか後ろから接近してきていたオークに足を掴まれ、前方のオークたちの集団の元へ投げ込まれる。

 そしてそれと同時に後ろにいたオークたちが一斉に飛び出して来て俺を囲んだ。


「ゆ、ユウマーっ! 助けなさい! 私死んじゃうわよ! このままだと未来の大魔法使いリリーナ様の命が永久に失われちゃうわよ!」


 リリーナがオークの集団に囲まれ、魔力も底を付き、まさしくピンチになっている。

 ここにいるのはリリーナを除けば俺だけ。あとはオスのオークの大群だけだ。

 どうにかリリーナを助け出せないか、または俺だけでも逃げ出せないかとオークたちの様子を見るが、俺の周りにもオークたちが何体もいて身動きが取れない。唯一の救いは、俺を囲むオークたちは血走った眼で俺を見るだけで何もしてこない。

 しかし、それと同時にスキを見せてくれない。


「ユウマ! なんかオークたちが私で遊び始めたわよ!? 早くどうにかしなさーーーーーーーいいいいいいいいっ!!」


 どうしたものかと冷や汗を流していると、リリーナがオークに弄ばれ始めた。

 ぐるぐる回されて、強制的にバレリーナにされている。

 あれではリリーナの三半規管が危ない。ヒロインからゲロインに格下げになってしまう。


 こんな状況なのにそんなことを思っていると、いつの間にか近くにやってきたオークが俺を拘束し、動きを封じられた。それを確認したオークは俺にじりじりと血走った眼をしながら近寄ってくる。


「くそっ! どうしてこうなった!」


 オークに腕を、足を、腰を掴まれながら、俺は必死に頭を回転させる。

 しかし無情にもオークは俺に考える暇も与えてくれないようで、一匹のオークが俺に向かってその大きな毛深い手を向けてくる。

 相手はオス。つまるところ性的な意味で俺には興味がない。対象になるとすればリリーナ。俺が死んだらきっとリリーナは薄い本的な目にあうことだろう。

 ……ちょっと見てみたい。実際には嫌だけど本でなら……


「って、そうじゃねえだろ俺!」


 自分で自分にツッコミを入れるという高等技術をやってのけ、近づいてくるオークの手をどうにかしようと必死に暴れる。

 が、俺の筋力で何体ものオークの力に勝てるはずもなく、オークの大きく毛深い手が俺に触れる。

 しんだ……。今度こそ俺死んだわ。


『死』。

 それだけが俺の頭を支配する。

 リリーナは動けない。ミカとアイリスはこの場にいない。誰もどうしようもできない。

 文字通り終わった。


「せめて童貞くらいはどうにかしたかった……。彼女いない歴=年齢をどうにかしたかった……。せめて甘酸っぱい青春の一つでもしてみたかった……。もっと言えばアイリスと結婚したかった……ってあれ?」


 死んだと思って完全に死ぬまでやっておきたいことを並べ立てたのだが、俺の体に痛みはない。というか、何かくすぐったいような……

 そう思って俺は違和感を覚えるお腹のあたりに視線を下す。

 そこには―――

 俺の腹を愛おしそうに撫で、頬をこすりつけ、見とれているオークたちがいた。


 何この状況―――


「ユウマ! きっとそいつらは男色科なのよ! さっきから私には特に変なことしてこないのに、ユウマにはそれっぽいことしてるもの!」

「なんだよそれ、聞いてねえぞ!」

「そりゃそうでしょうね。言ってないもの!」

「こんちくしょーっ! 今回は大丈夫だと踏んでたのにまた俺の貞操がピンチなのかよ! なんで俺はこの世界でオークにしかモテないんだよ! モテ期が来たならせめてかわいい人間の女の子にしろよ! ケモ耳付でも可!」


 この世界の神様に罵倒を飛ばしながら、腹がくすぐったいのを我慢してどうにかしようと足掻く。


「確かに死ぬまでに童貞をどうにかしたいって言ったけど、男、それも魔物でなんていやだーっ! かわいい人間の女の子とがいいーっ! 魔物にしたってもっと可愛い魔物がいい! 俺はケモっ子だっていけるから! 後生だから!」


 騒ぎながら暴れる俺。それを何とも思うことなく俺の腹をまさぐるオーク。

 マジでやめてくれ!


 それから数分が経過した。

 俺は散々、代わる代わる来るオスのオークに好き勝手に体をまさぐられ、貞操こそ失わなかったものの男の子として何か大切なものを失ってしまった。


 ―――失ってしまった―――


 オークたちは何を思ったのか、そのまま俺たちを殺すことなく満足そうな顔で立ち去り、今この場にはオークたちにまさぐられまくった俺と、単に少し弄ばれたリリーナのみが残った。

 リリーナは俺が立ち上がることもできず落ち込んでいると、無言でこちらによって来た。


「……俺、汚されちゃった……」

「……何も言わなくていいわ。……忘れなさい」


 そう言ってリリーナは俺の肩に手をおいて慰めてくれた。


「なあリリーナ。もし……もし俺がお婿に行けなかったら……そん時はもらってくれるか?」


 本当に落ち込んでいた俺はそんな弱気をリリーナに見せた。

 俺のそんな弱気な発言にリリーナは―――


「嫌よ。だってユウマ私にひどいことばかりするんだもの」


「……」

「……」


 お互い少しの間無言で見つめ合う。


「お前ここは嘘でも「いいわ。ユウマがもしお婿に行けなくなったらその時は私がユウマをお婿にもらってあげる」っていうところだろ! それがヒロインってもんだろ! お前だって一応俺のハーレムパーティーの一員なんだぞ! 少しはヒロインとしての自覚をもって俺に接しろよ!」

「誰がそんなこと言うもんですか! そんなこと言うくらいなら私は舌を噛んで死ぬわ!」

「そこまで嫌なの!?」


 あんなことがあったというのに、俺とリリーナはこの後少し喧嘩をしてから屋敷へと帰った。


 そして俺ことユウマに、新しいトラウマがまたもオークによって植え付けられた。


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