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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第三章
51/192

5話

 

「というわけだ。スライム討伐にいくぞ」


 ミカと一緒にクエストを受注してきた俺はリリーナとアイリスのところへと戻り、今日のクエスト内容を説明する。と言っても討伐する魔物の名前だけだが。


「えっ!? すすす、スライムですか!?」


 俺がスライム討伐をしに行くと説明すると、まずアイリスが口元に手を当て驚いた。


「ほ、本気で言ってるのユウマ? 相手はスライムよ?」


 リリーナまでわけのわからないことを言い出す。

 いつも無駄に魔物に突っ込んで行ったり、クエストに行きたいだの駄々をこねているリリーナですらスライム討伐に行くのをためらっている。

 本当になにをスライムごときに怯えているのだろう。


「なにをそんなに驚いているのか知らんがとにかく早く行こうぜ。俺は早く帰ってきて部屋でダラダラしたい」

「本当に日本にいた時と変わらなくなってきたねユウマ……」


 お小言のようなミカの小さなツッコミを軽く受け流しながら俺達はギルドを出た。




 そんなこんなで俺たちは街のすぐ近くの草原にてスライムを探していた。この草原は何度も歩いているしクエストでもお世話になっているが、今のところ俺はスライムを見たことがない。

 コットンラビットやワイルドボアはいくらでも見かけるが、他の魔物はあんまり見かけない。正直、本当にここにスライムがいるのか信じ難いくらいだ。

 見つかるまで暇だし、ここで俺の知っているスライムについて少しおさらいでもしておくか。


 スライム。

 某大作RPGで有名となったモンスター。もとい魔物。

 プ二プ二とした丸い体が特徴で、中には液状態のスライムというものもいる。

 基本的な攻撃方法は体当たり。しかし体がプ二プ二しているためロクな攻撃力にならず、某大作RPGでは序盤の序盤、最初の町の周辺にしか現れない。ある意味戦闘の基本を教えてくれる感じの魔物だ。

 俺の知っているスライムというのはそんな感じなのだが、なにをリリーナとアイリスはスライムごときに怯えているのだろう。


 そんな風に呑気に空を見上げようとでもしていた時だった。スライムが三体俺たちの前に現れたのは。


「おっ、スライムだ。へえー、この世界のスライムは液状態のほうなのか。……かわいくないな。鳥○先生を見習えっての」

「ユウマ……。それ以上いけない」


 唯一ネタがわかるミカの鋭いツッコミに口を閉じる俺。

 リリーナとアイリスは俺とミカが何を話しているのかわからずに頭にはてなを浮かべている。


「とりあえずさっさと狩っちまおうぜ。俺もう帰りたい……」


 目の前に三体も魔物がいるのに慌てることもなく、のんびりとショートソードを抜きながら早速のニート宣言。

 俺もうダメかもしんないね。


「それじゃあリリーナ。大丈夫だとは思うが一応魔法の詠唱を……ってなにしてんのお前……?」


 適当にショートソードを構えながら緊張感なんてものを微塵も持たずに、後ろにいるリリーナの方を向く。

 するとそこには驚くべき光景が広がっていた。

 リリーナがやたらと後ろの方にいるのだ。いつも魔物相手に一人で考えなしに突っ込むのはやめろとあれほど口酸っぱくいっても頑として耳を貸さなかったあのリリーナがだ。

 アイリスも心なしか少し怯えた表情をしている。

 本当になにをスライムごときに怯えてるんだアイリスとリリーナは。


「べべべ、別に何もしてないわよ……?」


 らしくもないリリーナにジト目を送っていると、本当になにをそんなに怯えているのかわからんが震えた返事をされた。

 そんなにスライムと戦いたくないのだろうか。自分のアイデンティティを崩壊させてまで。


「しょうがない。おい、ミカ。なんか知らないけどアイリスとリリーナはスライムを相手にしたくないらしい。俺たちで片付けよう。なに、お前のドジは全面的にフォローしてやる。行ってこい!」

「……ねえユウマ。ならせめてもう少し前に出てこない? いくらショートソードを構えててもそんなに離れてたら説得力がまるでないんだけど……」

「何を言ってるんだミカ。俺はお前が引き付けきれなかったスライムをリリーナたちの方へ向かわせないようにここに立っているんだ。決してサボっているわけじゃないぞ」

「むっ。そう言われると何も言えない……」


 フッ。それらしい言い訳をさせたら俺の右に出る者はいない!

 そんな自慢にもならないことで内心胸を張りながら、スライムに立ち向かっていくミカを見守る。


「スライムくらい楽勝だよ。いくら三体いても、チートがなくても……ねっ!」


 ミカが一人、勢いよく飛び出す。

 ミカは素早くスライムたちに接近すると、『金剛力』を使った拳を振るう。そしてその拳はスライムに見事に直撃した。今回は転ぶこともなくしっかりとスライムの中心をミカの拳を捕らえた。

 捕らえたのだが……。


「うそっ!?」


 スライムはミカの拳が当たったところに穴を開ける。普通ならそれで即死のはずだ。はずだったのだが……


「……おいおい。これでスライムかよ……」


 スライムは体の一部に穴を開けられたにも関わらず、飛び散ったスライムが何事もなかったようにまた一つの体に戻る。

 それはまるで逆再生でも見ているように。


「……さて、帰るか」


 クエストを早々にあきらめた俺は抜いていたショートソードを納め、戦闘することを放棄して帰ることにした。

 うん。無理は良くない。無理なくこなせるくらいがちょうどいいんだ。


「ちょっとユウマ!? まだあきらめるの早いよ!」

「いや、だって勝てそうにないし。スライムに負けたなんて人生の恥を作りたくない」

「逃げるのだって十分な恥でしょ!?」


 うむ、確かに。ミカにしてはまともなことを言っている。

 これは一本取られた。


「それに一回でダメならもう一回行けばいいんだよ。見ててユウマ! 今度こそスライムをやっつけちゃうから!」

「あっ! おいミカ! 前、前!」


 俺たちのいる後ろを見たままのミカに俺は必死に前を向けと、声と指さしで示す。


「ん? 何ユウマ? え? 前?」


 ようやくミカが俺の指示に従い前に向き直ると、それとほぼ同時に一匹のスライムがミカに飛びかかった。


「うわっ!!」


 スライムに飛びかかられ、不意打ちだったこともあり体勢を崩しミカが転んだ。

 スライムが予想以上に重いのか、パニくって暴れているようにしか見えないのかわからんが、ミカはスライムにのしかかられたまま手足を一生懸命ばたつかせていた。


 突然だが、今日のミカの恰好は普段クエストに出かけるときと同じ格好だ。よくある格闘家の服を動きやすさを削ることなく少し可愛い感じにアレンジした格闘着である。

 そのアレンジ中でも格闘着として不釣り合いな場所がある。それはミカの下半身。

 ミカもやっぱり女の子ということで異世界でもオシャレというものを気にしている。その中でもミカはパーカーとスカートがお気に入りなのだそうだ。

 なにを言いたいのかというと、動きやすさを重視する格闘着なのにミカの下は驚くことにスカートだ。それも派手に飛んだり跳ねたりしたら中が余裕で見えちゃう感じの。さすがに格闘家として動きに制限のかかるロングスカートを履くことはできなかったようだが、それでもスカートは珍しいと思う。


 さあ、ここでみなさんに考えていただきたい。

 それでは質問! 目の前にはスライムにのしかかられて足をバタつかせている女の子。それも結構の美少女。

 そこであなたの取る行動は?


 1、困っている女の子は見過ごせない! というのは建前で、助けた後にあわよくばいい関係になれないかなー?

 2、魔物はやっぱり怖い。ここは女の子には悪いけど見て見ぬふりをしよう。家に帰って忘れるんだ。という臆病ニート宣言。


 多少の違いはあるかもしれないが、基本的にどちらかを選ぶ人が多いだろう。

 そして俺は―――


「大丈夫かミカっ!! 今助けるぞ!」

 

 『逃走』スキルを行使してミカとその上にのしかかるスライム目がけて突っ走る。


「ユウマ! うう……いつもめんどくさいとか楽したいとか言って何もしてくれないけど、いざって時はやっぱり頼りになるね。ユウマ……」


 ミカが感動したように半分涙声で言った。

 俺はそんなミカの言葉を聞きながら―――


「華麗にスライディング!」


 ミカの上にのしかかっているスライムをどうにかすることなく、ミカの足元のほうへ華麗なスライディングを決めていた。

 そう、俺が選んだのは第三の選択肢。ここぞとばかりに女の子のパンツを覗く、だ。

 男たるもの決められたレールの上に乗っているだけではつまらない。常に己の欲望の赴くままに生きねば。


「……ユウマ? 一応聞いてあげる。何してるの?」


 ミカがスライムにのしかかられているにも関わらず、至って冷静な冷たい言葉を投げかけてくる。

 そんなミカに俺は言ってやった。


「こんなおいしい状況を放っておけるほど俺はバカじゃない! 俺は女の子が大変よろしくない格好になってるのを見過ごすほど馬鹿じゃない! テレビなんかでは光で遮られちゃうような場面でも決して目を逸らさず、手で目を隠すこともなく見続けてやる! 俺はあの主人公たちみたいにラッキースケベを無駄にはしない!」

「なにかっこつけて言ってんのさ! ただのエロ願望じゃん!」

「ぶべらっ!!」


 もう少し、もう少しと位置調整をしているとミカに顔面をけられた。それも『金剛力』もちゃんと使われていたと思われる。

 鼻の骨折れてないかな? 折れてたらアイリスに『ヒール』かけてもらえるのに……。


「なにバカなことやってるのよユウマ! あのままじゃ……あのままじゃミカが……!


 俺とミカがこんな状況にもかかわらずにアホなことをしていると、なにやら突然慌てだすリリーナ。いや、慌てるというか絶望している。という表現の方が合うかもしれない。


「ユウマさん! リリーナさんの言う通りです! 早くミカさんを助けてあげてください! わ、私も頑張りますから!」


 アイリスもなにやら相当慌てている様子。

 本当に何をそんなに怯えているのだろうか。いい加減教えてほしい。


「ねえユウマ。 私の今の状況ってそんなに危ないの?」


 本人ですらあんなにのんきだというのに。


「なあ、さっきからなんでそんなにスライムに怯えてるんだ? 正直スライムなんて雑魚中の雑魚だろ? 経験値もお金もマズイ、初心者冒険者の戦い方の先生なんじゃないの?」


 俺はとうとうその素朴な疑問を口にする。


「何言ってるのよユウマ! スライムが最弱? 初心者冒険者の戦い方の先生? そんな馬鹿な事誰に聞いたのよ! もしかしてユウマ特有のヘンテコ知識? そうなんだったら教えてあげるわ、スライムってのわね……」


 どうやら俺のゲーム脳は間違っていたようで、その知識の訂正をリリーナがしてくれようとしたときアイリスが叫んだ。


「たたた、大変です! ミカさんが! ミカさんが……!」


 アイリスの半分泣きの入った声。ミカの身にいったい何が起こったというのか。


「なんですって!? もう始まったっていうの!?」


 リリーナもアイリスの言葉に慌てだす。

 そしてミカの叫び声が響いた。


「きゃあーーーーーーーーっ!!」


 絹を裂くような女の悲鳴というのは今のような叫び声のことをいうのだろう。ミカが今まで聞いたことのないような悲鳴を上げていた。


「どうしたよミカ。なんかあったのか……って」


 俺はリリーナたちに向けていた視線をミカに移すとそこには―――


「パラダイス!!」


 パラダイスが広がっていた。


「助けてユウマ! なんかだんだん服が溶けていってるの! さっきまではなんともなかったのに、いきなり服が溶けだして……」


 ミカが自分の今の状況を説明しだした。

 しかしそんな説明が要らないくらいには状況は進行していた。ミカの服がスライムが乗っかっている部分だけ溶けだしたのだ。

 そんな状況のミカを見てリリーナがいつにも増して真剣な顔で説明し始めた。


「いい、ユウマ? 時間がないから手短に説明するわね。スライムっていうのはユウマが言ってたみたいな雑魚魔物じゃないの。ううん。攻撃だけだったらユウマの言うとおりだわ。でもアイツらにもう一つ特性があるの。それは、あいつらは服の繊維を好む魔物だってこと……」

「というと?」

「簡単に言うとあいつらに取りつかれると服だけが溶けて最終的に素っ裸にされるわ」

「なにその俺得な魔物! 超ほしい! アイツ一匹連れて帰ろうぜ!」


 リリーナの説明を聞き終わると、リリーナとアイリスは俺のバカ発言などに耳を貸さずにミカの方を見ていた。

 俺の二人に倣ってミカのほうを見る。ミカはすでにスカートはやられてしまったようで、下はもうパンツだ。意外とかわいいパンツだった。

 ミカ! 今日のお前、最高だ!


 俺はその意を込めてミカにグッと親指を立てる。


「親指なんて立ててないで助けて! 全然グッ! じゃないから! 私今、女の子として最大のピンチだから!」

「助けてもいいけど……いいの? パンツ丸見えだけど……」

「見ないで助けて!」

「んな無茶な……」


 俺がどうしたものかと困っていると、さっきまで後ろでスライムに怯えていたリリーナが一歩前に出た。


「任せてミカ! 今助けるわ! そいつらは女の敵よ! さっきまでは後ろに下がっちゃったりして私らしくなかったわ。でも、もう大丈夫よ。そいつらに私の実力を見せてあげるわ! 成長した私の姿をね!」


 ミカのピンチにリリーナはいつもの調子を取り戻したようで、ミカにのしかかっているスライムに突っ込んでいく。

 それにさっきの言葉からして過去にリリーナもスライムの被害にあっていたようだ。その時の復讐でもしたいのかもしれない。

 空気を読まずに言ってしまえば、そこにいるスライムはその時のスライムと別個体だろ。というツッコミがあるのだが、ここは黙っておくことにする。


 そんな俺の内心を知らずにリリーナは果敢にミカの元へと駆け寄っていく。正直その姿は少しかっこよかった。仲間のために自らの恐怖を振り払って仲間を助けに行く。かっこいいな、このシチュエーション。

 俺もやってみたい。


 だがしかし―――


「……お前、回り見ろよ。どこも成長してないぞー」


 次の瞬間にはリリーナはミカにのしかかってるのとは別個体のスライムにのしかかられていた。

 リリーナがのしかかられたのは胸のあたり。このままではきっと胸のあたりの服が溶けだしてしまうだろう。そして最後にはリリーナのたわわに実った果実が姿をのぞかせてしまう。

 頑張れスライム! 俺はお前の味方だ!


「なあリリーナ。きっとそのスライムたちきっとこう思ってるぞー。グヘヘっ、成長したのはそのおっぱいだけなんじゃないのか? とか、ゲヘヘっ、全くエロい体の姉ちゃんだ。俺たちを誘ってやがるぜ。じゅるり……」

「それはユウマでしょ! それに最後のじゅるりってなに!? なにしたの!? ユウマの頭の中で私ユウマに何されたの!? 内容によっては死にたいんだけど!」


 スライムの心の中をアテレコしただけなのにひどいことを言われた。


「全く、これだからツンデレをわかってないツンデレは……。ちゃんとデレもくれないと困るんだよなー」

「バカなこと言ってないで助けて(なさい)!!」


 二人に怒られてしまったので仕方なくゲーム脳の中の『こんな時の場合マニュアル』を検索する。


「くそっ! 目の前でリリーナとミカが魔物にやられているのに見ているだけしかできないなんて、俺はなんて無力なんだ!」


 ロクな考えが出てこず、情けなく叫ぶ俺。


「ねえユウマ! そういうセリフはもっと悔しそうに言わないと意味ないから! そんな必死にスライムに服を溶かされてる私とリリーナのことを鼻の下伸ばしながら言っても意味ないから!」


 ミカの鋭いツッコミ。さすがミカだ。切れが違う。

 俺じゃなきゃ一刀両断だね。


「……ミカ……リリーナ、俺にはこんなことしかできない。頑張れ! 頑張って耐えてくれ……」

「ユウマ……。なによ、なんだかんだ言って私たちの心配を……」

「頑張ってくれスライム!!」

「この男とうとう自分の欲望に素直になったわ! 私たちを応援してくれてるのかと思ったらスライムのこと応援してたわコイツ!!」


 文句を言い出すリリーナ。

 だってこの状況でスライムとミカたちのどっちを応援するかなんて即答でスライムに決まってる。


「って、ちょっと! もう私パンツすらやばいんですけど!」

「私もローブが!」


 ミカとリリーナが顔を真っ赤に染めながら恥ずかしがり出す。

 どうにかスライムを振りほどこうにも、ヌルヌルしているのかまるでローションのように手をすり抜けていく。


「なあ二人とも。助けてほしいか?」

「ほしい(わよ)!!」


 二人同時に同じ答えが返ってくる。


「なら、そうだな……街に帰ったらミカは俺にマッサージ、リリーナには一日俺専属のメイドでもやってもらおうか!」

「この男クズだわ! 予想以上のクズだったわ!」

「そうだねリリーナ! ユウマはもうダメだよ! 最初からダメだったけど、最近ほかの追随を許さないくらいダメになった!」


 もう言いたい放題だなこいつ等。俺だって傷つくんだぞ?


「あのー、ユウマさん……? もうそろそろ本当に助けてあげてください。でないと本当にお二人が裸にされちゃいます。お願いですユウマさん」


 ここに来て天使アイリスの降臨。

 まぶしい、ニートの俺にはまぶしすぎる!


「わかったよアイリス。俺だって鬼じゃない。もうそろそろ助けようと思ってたさ」


 嘘である。本当は服が溶けきってから助けようと思ってました。


「そうだったんですね! でも、どうやってお二人を助けるんですか? 私はああなったら服を諦めてほかの人に変わりの服を持ってきてもらうくらいしか方法が思いつかないんですけど」

「なーに、俺に考えがあるよ……ってアイリス! 危ない!」

「えっ? きゃあーーっ!」


 迂闊だった。まさかさっきの三匹のうちのもう一体がアイリスの後ろに回り込んでいるなんて。


「待ってろアイリス! 『フリーズ』!!」


 俺はアイリスがスライムに取りつかれたのを見て咄嗟に『フリーズ』の魔法を唱える。対象はスライムのみ。

 見事に考え通りアイリスの服に取りついたスライムのみを凍らせることができた。


「よし! これであとは『アース』!!」


『アース』

 それは土属性魔法の属性変換魔法だ。効果はある程度の大きさの石の生成と砂の生成。

 俺は『アース』を使って手ごろな大きさの石を作り出し、アイリスの服に取りついたまま『フリーズ』で固まっているスライムをたたき割る。


「わっ! すごい! さすがユウマさんです! 私じゃ思いつきませんでした! 本当にありがとうございます!」

「いいんだよお礼なんて。仲間だろ? それより俺の方こそ悪かったな……少し服溶けちゃっただろ?」


 アイリスの服を見ると、スカートのようになっている部分と胸の部分が少し溶けてしまっている。下着こそ見えていないもののかわいい服が台無しだ。


「いいんです。助けてくださったユウマさんの気持ちのほうが私はうれしいです」


 そう言ってアイリスがほほ笑む。

 かわいい。お持ち帰りしたい。お持ち帰り~! したい。

 まあ、お持ち帰りしなくても一緒の屋敷に帰るんですけどね!


 と思っていたところで、俺は何かを忘れていることに思い出す。

 ん~、なんだっただろう。


 その答えはすぐにわかった。


「ユウマーっ! もうメイドでもなんでもするから助けて~!!」

「あっ。リリーナとミカのこと忘れてた……」


 この後リリーナとミカも同じ方法で救出した。




「ううー……スカート……」

「私もローブが……」


 俺がアイリスの時と同じ方法でリリーナとミカを助けた後、ミカとリリーナは大変すばらしいことになっていた。

 まずミカは下半身が完全に持ってかれた。履いていたはずのスカートは完全になくなり、パンツは落ちこそしないもののその役目のほとんどを放棄している……らしい。というのも、その説明はミカの自己申告だからだ。

 今は必死に上着を下に引っ張って下半身を一生懸命隠している。隠れ切れてはいないが。

 リリーナの方は胸のあたりが少し溶かされ、一部ブラジャーが姿をのぞかせている。全部姿を見せるのではなく一部を覗かせるあたりがまた扇情的だ。

 そんな二人をじっくり観察して、顎に手を当て考えるような仕草を取りながら感想を口にする。


「なるほど、これがパンモロにブラチラか。やっぱり俺はパンチラ派の濡れ透け派だな。こっちももちろん好きだけど」

「よくもまあ、そんなこと言えるよねユウマ……」

「わかってたけど、やっぱりユウマはユウマだったわ……」


 なにやら俺に呆れている様子の二人。


「それよりアイリス。ほら、俺の上着かしてやるよ。それじゃあなんかみっともないだろ?」


 そんな二人の視線を無視して俺はアイリスに自分の上着をかけてやる。

 アイリスも少しとはいえ服が溶かされてしまっているので、ここはお兄ちゃんとして放っておけない。


「ありがとうございますユウマさん! ……でも、リリーナさんかミカさんに貸してあげた方がいいかと……」


 そう言ってアイリスが二人のほうを見る。

 二人は俺のことをなにやら恨みがましい目で見つめていた。なんで自分にはなにもしてくれないのか、といった表情だ。

 俺はそんな二人にあの名言を言い放つ。


「悪いなミカ、リリーナ。この服はアイリスの一人用なんだ」


 この後ミカとリリーナにボコボコにされた後、優しい俺は『ゲート』を使って自室から俺の服を取り出し、二人に貸してやった。


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