22話
後日談。というか今回のオチ。
ロレンスとの一件から半日。俺とアイリス、リリーナ、ミカ、それにザックと妹のシュリちゃんはギルドの食事スペースでお疲れ様のパーティーを行っていた。
「「「「「かんぱーい!!」」」」」
みんなで一斉にジュースやお酒の入ったグラスを交わす。
ミカとアイリス、ザックとシュリちゃんはジュース。俺とリリーナはお酒だ。どうやらこの世界では十五を過ぎればお酒は飲んでもいいらしい。ただし全部自己責任で。
ということなので、俺は調子に乗ってお酒を頼んでみた。
早速味を試してみたくてグラスを口元に傾けると、炭酸に似たしゅわしゅわ感が喉を過ぎていく。そして問題の味はというと―――
……苦い。
コーヒーとはまた違う苦みが口の中を支配する。ブラックコーヒーは問題なく呑めるがコイツの苦みはどうにも好きになれそうにない。
俺がお酒の苦みに悪戦苦闘している中、みんなは楽しそうに歓談を始める。
「全くユウマ、最後には来るんだったら最初から私たちと一緒に来なさいよ」
文句を言っている割には顔は笑顔のリリーナ。どうやら朝の件をまだ少し根に持っているらしい。
「いやさ、正直最初から行ってもよかったんだけど、やりたいことがあってさ」
「やりたいこと……ですか?」
「ああ。ミカならわかるだろ? アニメや漫画の主人公がみんなのピンチに遅れてやってきて助けるってやつ。あれやってみたかった」
そう。俺はヒーローは遅れてやってくる。ってやつをやってみたかったのだ。だからわざとみんなに嫌われるような態度を取ってみんなに先にロレンスの屋敷に行ってもらい、後から俺が登場。
みんなのピンチに颯爽と現れる俺。俺はそれがやりたくてわざわざあんな面倒なことをした。
そして実際にそれができたので俺としては大満足としか言いようがない。大金が入りやりたいこともできてホクホクである。
まあ正確に言うともう一つ理由があったりもするのだが……。
「「「「「……」」」」」
「え? なんでみんな黙り込むの? だって憧れるだろ? ヒーローは遅れてやってくる! みたいなやつ。……ねえリリーナさん。その右手の『ファイヤーボール』はなに? アイリスも表情が硬いぞ? 笑って笑って、スマーイルスマーイル。……ミカさん? その拳は危ない。収めよう……」
「「「ユウマ(さーーーん)ーーーーっ!!」」」
リリーナ、アイリス、ミカの三人がすごい形相で俺にとびかかってくる。
「うおっ!? お前ら何をする!? 俺はお前たちを救ったヒーローだぞ! こんなことされる言われはないぞ!」
「……いや、ありすぎだぞユウマの兄ちゃん……」
「ふんふん」
俺が三人に襲われている中ザックが呆れた顔でそんなことを言い、シュリちゃんがコクコクと「ふんふん」言いながら首を振っている。
かわいい。お持ち帰りしたい。
それからしばらく俺は三人にもみくちゃにされた。
その時にどさくさに紛れてリリーナのたわわな果実や、アイリスのお腹やミカの尻を撫でまわしてやった。
「そういえばユウマ。どうやって十億なんて大金を一瞬で稼いだの? 朝の段階ではなかったよね?」
三人がようやく俺から離れみんなが食べ物に夢中になっている中、ミカが珍しく箸を止めてそんなことを聞いてくる。
「あ、それ私も気になります!」
「私もよ。一体どんな魔法を使ったわけ?」
「俺も気になるぜ! シュリも気になるよな?」
「ふんふん」
五人の視線が俺に集中する。
これは本当は隠しておくつもりだったが、はぐらかせそうにない。
「……はあー。仕方ない。話してやるよ」
俺は重たい溜息を一つ吐いて、ことの顛末を話してやることにする。
「まず、さっきミカも言った通り朝にみんなで集まっていた段階では金はあの一千万ギルしかなかった」
「そうよね。私たちが一週間働いて稼いだんだもの。みんな額は知ってて当然だわ」
「そうだな。だから俺があの十億ギルを稼いだのはその後、つまりリリーナたちがロレンスの屋敷に行った後だ。俺はその少ない時間で十億を稼いだ」
「どうやってあの短時間で十億も稼いだんですか? 時間からして小一時間しかなかったですよね?」
アイリスが疑問を口にする。
「それはそのー……」
俺はアイリスの質問に少し言葉を濁す。
「どうしたのユウマ? 早く教えてよ」
俺がしり込みしているとミカが説明の催促をしてくる。
どうやら覚悟を決めるほかない様だ。
「……簡単に言うと、ものを売った」
「もの? 私たちの手持ちにそんな高価なものあったっけ?」
ミカが口元に指を当て不思議そうにしている。他のメンバーも似たような反応だ。
そりゃあ物を売っただけで何億も稼げるなんて普通は思わないような~。俺だって思わねぇもん。普通なら。
そう、普通なら。つまりはこの話には裏があるのだ。その種というのが―――
「……いや、俺らのじゃない」
「え? じゃあ誰のなのよ?」
リリーナがテーブルに乗り出しそうな勢いで俺の顔を覗き込む。
「……ロレンス?」
「「「「……え?」」」」
俺以外の全員が聞き間違いでもしたのではないかと、自分の耳を疑っている。
「どういうことなのユウマ?」
あっけらかんとしているみんなを代表してミカが口を開いた。
「ここまで来たらもういいか。あのな、俺は昨日の夜みんなが寝てから一人でロレンスの屋敷に忍び込んでたんだ」
「そうだったんですか!? ……でも何でです?」
「正直な話、金が稼ぎきれないのは最初からわかってた。だから俺は最初からクエストではとりあえず稼げるだけ稼いで、足りない分はロレンスの屋敷の宝物庫的な場所から物を盗んで売ろうと考えた」
「「「「……」」」」
俺の作戦にみんながすごい冷ややかな視線を俺に送る。
こんなに見つめられるとユウマ照れちゃう。
「それで俺は『潜伏』スキルを使ってロレンスの屋敷に忍び込み、宝物庫の金目の物をありったけ盗んだ。そしてそれを朝みんなと別れてから売った。それがこの十億」
「……ユウマ」
「……ユウマさん」
「……ユウマ」
「……兄ちゃん」
「……」
みんながもうなんて表現していいのかわからない表情で見ている。
ただわかるのは決して尊敬の視線ではないということだけだ。だから言いたくなかったんだよ。
「いいだろ! 結局は俺がちゃんとこの件を収めたんだから! それに売ったものだって不当な借金を払わされた人たちの汗と涙の結晶だぞ! それを俺がみんなに売って、今まで払ったものの対価をみんなの元に返したんだからむしろいいことだろ!」
「「「「……」」」」
俺の言葉を聞いてもみんなが俺を悲しそうな目で見る。
「だから俺をそんな可哀想なものを見る目で見るなーーーーーーっ!!」
みんなの視線に耐え切れず俺は周りの視線も気にせずに大声で叫んだ。
そのかいあってかみんなの視線から解放され、再びみんなで和気あいあいと騒いでいるとザックが話しかけてきた。
「そういえばユウマの兄ちゃん。さっきロレンスのところの宝物庫からありったけの物を盗んだって言ってたけど、手に持てる数なんてたかが知れてるのにどうやって十億ギル分も盗んだんだ?」
「あー。それはこれだよ」
至極当然のザックの質問に俺はあるスキルを発動させる。
すると俺の目の前に黒く丸い影が出現した。俺はその中にもの怖気なく手を突っ込む。そしてその中から自室に置いてきていた俺のショートソードを取り出した。
「これ、商人の人たちが必須としている『ゲート』っていうスキル。場所を登録して、登録した場所からその場で物を出し入れすることができるスキルなんだが、俺はこれで自分の部屋を登録してロレンスの屋敷から盗んだものを全部その場で送った」
「いつに間にそんなスキル取ってたのユウマ。戦闘に役に立ちそうにないのに……」
ミカとみんなの呆れたような視線。
もうこれだけやられるともう慣れました。というか快感にすらなってきたような? ……気のせいか。俺はMじゃない……はずだ。
そんなこんなで俺はロレンスのおかげで大金を手に入れ、ザックの妹どころか今まで攫われていた女の人たちを救い出し、なおかつロレンスに不当な借金を背負わされていた人たちを救ったのだった。
完
これにて『最弱ニートの異世界転生』第二章完結となります。
どうだったでしょか? 感想とか、レビューとかくれちゃってもいいですよ(チラチラッ
第三章の更新ですが、少し期間を空けてから更新を再開しようと思います。
みなさんの応援次第で早まったりするかも……
そんなに期間を空けるつもりはありませんので気長にお待ちください
それではここまでのご愛読ありがとうございました。
第三章でまた会いましょう!




