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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第二章
39/192

15話

「はあー! かなりの爽快感だったわね! こんなに魔力を使ったのは久しぶりだわ。もう魔力切れで動けないもの」

「私もだよ! いっぱい転んだり躓いたりしたけど、気分はよかったなー!」


 オークの集落を完全に破壊しつくした、魔法と物理の破壊神二人。

 本当に俺とアイリスは集落の入り口で二人で呆けているだけでクエストが終わってしまった。

 クエストが終了した後の破壊されつくした集落は、もう元の原型など一ミリも残していない。

 元あったオークたちの家はすべて壊されるか燃やされるかで、最初はきれいに整った原っぱやきれいだった花々も今じゃただの土だ。それどころか凸凹していてちょっと歩きにくい。

 ここを住処にしていたであろうオークたちは一匹残らず倒れている。魔法でやられたオーク、物理的に殴られたオーク、焦げているオーク、顔がひしゃげているオーク。みんな様々な死に方をしている。


 この光景を見て、初めの感想は一言―――


 地獄絵図。だった。


「……楽しかったか? お前ら」


 半ば呆れながら地面に横たわり満足げな顔のリリーナとミカに話しかける。

 俺の質問に二人は清々し過ぎるほどの笑顔で言った。


「「楽しかった(わ)!!」」


 呆れるしかなかった。


「お前らなあ、さすがにこれはやりすぎだろ? アイリスどころか俺ですらひどい光景だと思ったぞ」


 ありのまま思った感想を二人にぶつける。

 しかし、リリーナとミカは特に気にしている様子もなく。


「えー!? だってオークだよ? 魔物だよ? ユウマにトラウマを植え付けた張本人だよ? ……ん? ねえリリーナ、オークって人じゃないよね? この場合はなんていうの? 張本魔物?」


 ミカが地面に身を預けたまま首だけを動かし、リリーナにそんなどうでもいい質問を投げかける。


「んー。確かに難しいわね。この問題は街に帰ってから時間をかけてゆっくり話し合うべきだわ」


 そんな馬鹿な返答を返した。

 もうヤダコイツラ。


「お前らな。毎回こんな上手くいくと思うなよ。今回はたまたま運が良かっただけで、毎回こうも上手くいくとは限らないんだからな」

「なによユウマ、急に真面目ぶっちゃって。いつもはリリーナのローブをめくったり、ふざけたことばっかりしてるくせにー」

「そうよそうよー」


 ミカが小さな子供のような駄々をこね始めたと思ったら、リリーナまで幼児化を果たしていた。

 この二人が組むと非常に面倒くさい。


「ユウマさんの言う通りですよ、お二人とも。今回はユウマさんの言う通り上手くいきましたけど、帰りのことも考えた方がいいですよ」

「うっ! 確かにもう帰りは戦いたくない……」

「私ももう魔力が……」


 アイリスの言葉に少し反省しだす二人。

 なんでアイリスの言うことはすぐに真っすぐ受け止められるのに、俺の言うことは真っすぐ受け止められないのか、小一時間ゆっくりと問いたい。


「とりあえずクエストは完了したし、少し休憩したら帰ろうぜ」

 俺はそう言って周囲を見回し、使えそうな物が残っていないか一応チェックする。

 しかし周りを見回しても地獄絵図しか見えない。なんというか、勇者の住む村を魔物達が襲った後みたいな感じだ。

 これじゃあ何も残ってないだろう。


 あと、一つ気になることがある。

 それはこのオークたちは一切の武装をしていないのだ。いくらいきなり超火力の火属性魔法を放たれたからと言って武装もしないことはあり得るだろうか? 普通何が起きたのかわからずとも、とりあえず武装をするのではないだろうか。

 オークは武器を使うタイプの魔物だ。それはこの前のトラウマの時にすでに確認済みである。あの時オークたちは確かに槍や剣をを持っていた。

 ……まあ、あの時はその槍や剣を捨てて、俺を襲いに来ていたわけだが……。


 それに俺はなにか大切なことを忘れている気がする。

 アイリスとの将来設計とかではなく、今この瞬間についての何か大切なことを忘れているような気がする。なんだろう、思い出せない。リリーナの今日のパンツの色だろうか? いや、それはちゃんとさっきリリーナがオークの集落を破壊しているときにチラチラと見えていたので確認済みだ。

 色はセクシーな黒! ほら、覚えてる!!


 とか言ってる場合じゃない。本当に思い出さないと。


「そういえばミカ、今日この集落にオークのオスっていなかったわね。珍しかったわ」

「そうだね。みんなメスだったよ。珍しいのかはわからないけど、確かに少し変だったよね」

「そうだったんですか? それは確かに変ですね」


 俺を無視した三人の会話、それを聞いて俺の中に一つの仮説が浮上する。

 それは―――


「……あの、ユウマさん。……あの、あそこに見えるのって……」

「も、もしかして……」

「冗談よね? 本気だったら笑えないわよ?」

「……冗談だと思いたいが、真実だ。真摯に受け止めろ」


 俺は一拍置き、叫ぶ。


「オスのオークのご帰還だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 オークのオスたちが集落にいないのではなく、出かけているだけなのではないかいう、最悪の仮説だった。


 ♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 昔の人は男が外で狩りをして食べ物を集めてきて、女の人が集落の周りで木の実などを集めたり、家の家事をしていたと聞く。

 きっとここのオークたちも同じことをしていたのだろう。オスのオークたちが森周辺で食べ物を集めたり、冒険者たちからいろいろなものを奪う中、メスのオークが集落周辺で生きるための家事をしていた。

 戦うオスがいなくて、メスのオークしかいなかったから俺たちがオークの集落を襲ってもオークたちは一匹も戦う意思は見せずに、逃げ回っていたのだろう。

 そういうオークがいたっておかしくはない。


 俺がそんな冷静な思考を働かせている中、オークたちは着々とこちらに向かってきている。


「どどどど、どうしましょうユウマさん! オスのオークさんたち、すごい勢いでこっちに向かってきますよ!」


 わちゃわちゃと手を動かし戸惑っているアイリス。


「ゆ、ユウマ? 本当にあれどうするの? もう私も疲れちゃってあんまり動きたくないんだけど……」


 早速動けないアピールをするミカ。


「ちょ!? ちょっとどうするのよユウマ! 私もう魔力が底を付いちゃってるんだけど! どうすんのよこの状況!!」


 慌てふためいているリリーナ。


 ……どうしよう。これめっちゃまずい。


 まず、うちのメイン火力の二人が使えない。ミカは無理をしてもらえば少しは動けるだろうが、さっきまでみたいに派手には動けまい。リリーナに至っては魔力切れで立つのすら辛そうだ。

 逃げようにも魔力切れのリリーナを背負ってオークたちから逃げられる気がしない。頼りのミカは疲れててリリーナを背負って走れそうにないし、俺がアイリスの筋力アップに『逃走』スキルを発動させても、逃げ切れるか怪しいところだ。

 それじゃあ迎え撃つか? いや、まともに戦えるのは俺とアイリスだけだ。火力が足りないし、相手の数が多すぎる。

 ここから見えるだけでも三十近くのオークはいる。それもさっきまでここにいたメスのオークたちのように何も持っていないわけではない。鎧を着ているオークもいれば、槍をや鎌、中には剣を持っているオークすらいる。

 ここにいるみんなで協力してどうにか渡り合えるくらいだろう。


 しかし、俺だって伊達に長年ニートをしていたわけではない。

 こんな危機的状況の主人公たちを見てきたし、これ以上の危険に立ち向かう主人公たちを見てきた。

 それどころか頭の中で自分だったらこうしてたよ! とか、さらなるかっこいい戦略を練っていたもんだ。


「大丈夫だ。俺に作戦がある」


 俺はみんなを安心させるために自信を持って言う。


「ほ、ほんと? ユウマ、この状況をどうにかできるの?」


 ミカが不安そうに、しかしどこか安心したような顔で俺を見た。他の二人もどことなく安心しような期待の目で俺を見ている。

 今の俺、すごい主人公っぽい!

 みんなの期待の目に俺はそんな優越感に浸っていた。


「それでユウマさん。その作戦て言うのはどういう作戦なんですか? 私は何をしたらいいでしょうか?」


 この中で俺の他に唯一まだ戦える力を残しているアイリスがやる気を見せてくれている。これは頼もしい。


「ありがとうアイリス。この作戦にはアイリスの力が絶対不可欠だ。頼んだぞ」

「はい! まかせてください! がんばっちゃいますよ!」


 俺の期待の言葉がうれしかったのか、アイリスが涙ぐみながら喜んでいる。よっぽど頼られるのが嬉しいのだろう。

 そんなアイリスに俺は早速指示を出す。


「まずは俺とアイリス自身に敏捷アップの魔法をかけてくれ」

「わかりました! 『スピーディオ』!」


 アイリスが魔法を唱えた瞬間、俺とアイリスの体がキラキラと光りだす。

 これで俺とアイリスの敏捷が上がった。、


「よし、アイリス! ここは俺とアイリスで離脱しよう!」

「はい! ……って、えーっ!?」


 俺の言葉に驚きを隠せない様子のアイリス。

 何を驚くことがあったのだろうか?


「ちょっと待ちなさいよユウマ! いや、ユウマ様!」

「止まってくださいユウマ様!」


 リリーナとミカも俺の脚にしがみ付いて来た。

 こんな時だけ調子のいい奴らだな。


「ゆ、ユウマさん。さすがにそれじゃあリリーナさんとミカさんがかわいそうです。助けてあげましょう?」


 アイリスの慈悲深いお言葉で俺は考えを改めなおす。


「……仕方ない。アイリス神がそう仰るのなら仕方がない」

「アイリス神!? ユウマさん、私は神様じゃありませんよ!?」

「そうだな、アイリスは女の子だから女神様だったな」

「女神でもありませんよ!?」


 アイリスが再び驚き戸惑っている中、改めて俺はアイリスに指示を出す。


「それじゃあ改めてアイリス。まずはリリーナとミカに防御力アップの魔法を頼む。あと、幸運アップの魔法があったらそれも頼む。少しは変わるはずだ」

「は、はい! わかりました! 『ディフェンシオ』! 『フォルトゥーナ』!」


 俺の指示に少し疑問を持ったようだが、アイリスはそれでも何も聞かずに俺を信じてリリーナとミカに防御力アップの魔法と、『フォルトゥーナ』という、おそらく幸運アップの魔法を唱える。

 アイリスの魔法がかかり終えた二人はキラキラとした光を身に纏った。ステータスアップの証拠である。


「ねえ、ユウマ? 私たちにこんな魔法かけてどうするの? ……ま、まさか、リリーナと私であいつらをどうにかしろ! とか、無茶ぶりしないよね? 信じていいよね!?」


 ミカがとても不安そうに俺を見る。今にも泣きそうだ。

 全く、こいつは俺を鬼かなんかと勘違いしてるんじゃないだろうか。


「心配するなよミカ。俺だって鬼じゃないさ。ちゃんとあのオークの大軍を相手するのは俺とアイリスだ」

「……ゆ、ユウマ……」


 ミカが珍しく俺を称えるような視線を飛ばす。

 いつもこんな感じならもう少し優しくしてやるんだけどな。


「お言葉ですがユウマさん。私たちでは火力が足りないと思うのですが……」


 今の話を聞いていたアイリスがもっとなことを言う。

 まあ、それに関してもちゃんと作戦は立ててある。


「なに、心配するなよアイリス。火力なら俺がどうとでもするから。……正確には少し違うが……」

「ユウマが? ユウマは攻撃力も魔力もそんなに高くないじゃない。全てのステータスが平均以下よ? 魔力なんて普通の魔法使いに比べたら下の下よ? 物理だってこの前オークたちの方が上だったじゃない」


 リリーナが俺を疑うような発言をした。

 まあ、それも仕方ないことだろう。事実、俺のステータスは決して高くない。むしろリリーナの言う通り下の下だ。


「信じられない気持ちはわかるが、それは後でのお楽しみってことにしておいてくれ」

「……ユウマがそう言うなら信じてあげないこともないけど……。またいつもの悪知恵でどうにかしてくれるんでしょうし」

「そうそう! 悪知恵と卑怯な戦法に関してユウマの右に出るものはいないよ!」


 リリーナとミカがこれまた失礼なことを言い出す。


「アイリス。やっぱり俺にはあのオークの大軍は倒せない。ミカとリリーナのことは悲しいが……諦めよう。……くそ! 絶対に助けを呼んで来るかな! それまで絶対に死ぬんじゃないぞ!」

「……え? え? え? えーっ!?」


 俺は流れてもいない涙を拭うフリをしながら、戸惑うアイリスのやわらかい手を掴んでこちらに向かってくるオークたちとは逆方向に全力で駆け出す。


「ま、待ってユウマーっ! ユウマ様ーっ! 私が悪かったから置いてくのだけはやめて! お願いだから! 後生だからーっ!」

「そ、そうよユウマ! それにほら、なんだかんだでユウマって仲間思いじゃない? 前にあの出鱈目な力を持った奴ら相手に私たちを守ってくれたわよね? あの時うれしかったわよ! これだけは本当よ!」

「ユウマ! オークって言えば性欲魔人だよ! このままユウマが私たちを置いていったら、私とリリーナがオークたちに好き放題されちゃうよー!! ユウマそういうの好きじゃないって言ってたよね!? あれは二次元でそういうものだったらいいけど違うなら嫌いだって言ってたよね!? これリアルだよ! 私たち現実だよ!!」


 全力でオークたちから距離を取る俺をアイリスを全力で止めるリリーナとミカ。

 なんだかんだあいつらがオークに好き放題されるのは気に食わないので仕方なく戻ることにする。

 しかし、俺はオークたちをどうにかする前に聞いておかないといけないことがある。


「なあリリーナ。お前さっき俺を仲間思いだと言ったよな?」

「ええ、言ったわよ」

「それ、俺の目を見ながら言えるか?」


 俺はそういってリリーナに顔を近づける。

 綺麗に整ったリリーナの顔がすぐ側にある。そんな距離まで近づいた。

「……い、言えるわよ……」

「……」


 コイツ、早速目を逸らしやがった。

 いっそこのまま顔近づけてゼロ距離にしたろうかと本気で思ったが、今は状況が状況なので後回しにする。


「はあ~……。俺もオークたちにお前らが好き放題されるのは嫌だからな。ちゃんと残ってやるよ」

「「ゆ、ユウマ……」」


 リリーナとミカが頼もしそうに俺を見る。

 こんな時だけ俺を頼りやがって、とか思っていたのに、この顔と目は反則である。


「俺のおもちゃ……仲間を他のやつらに好き勝手にさせるのは嫌だからな」

「ねえユウマ! 今私とリリーナのことおもちゃって言わなかった!? 言ったよね!?」

「そうよ! 今ユウマは私たちをおもちゃって言ったわ! この男私たちをおもちゃだと思ってたわ!」

「言ってないし、思ってない」


 言ってるし、思ってます。


「そんなことよりあのオークの群れをどうにかすんぞ」

「そんなことって何!? 私たちは今それ以上に大切な話をしなきゃいけないはずだよ!」

「そうよ! 私たちがユウマのおもちゃだって言ったこと訂正なさい!」

「わかったわかった。俺が悪かったよ。全く、俺の奴隷たちはこんな危機的状況なのににぎやかだなー」

「「わかってない(じゃない)!! 」」


 リリーナとミカのダブルツッコミを背中に受けつつ、俺はアイリスに気になることを質問した。


「アイリス。もう少しでここまで来そうなオークたちの群れなんだが、あの先頭のやたら大きいオークは何だ? なんか周りのオークたちよりいい装備をしてるし、強そうなんだが」


 こちらに向かってくるオーク達の群れの中、先頭にやたらと大きなオークが走っている。他のオークたちはみんな普通の洋服に安そうな武器を持っているだけなのに、そのオークだけは鎧を身に纏い、大きく丈夫そうな槍を携えている。

 まるでこのオークたちのボスのような……


 ボス?

 どこかで見るなり聞くなりしなかったかこの言葉?


 俺がそれをどこで見たのかを思い出そうと悪戦苦闘していると、アイリスがすぐに答えを教えてくれた。


「あれはオークたちのボスだと思います。こういう集落を作ったりするオークさんたちは一匹の頭のいいオークさんがよくボスをしています。ユウマさんが言った先頭のオークさんがたぶんこの集落のボスです。気を付けていきましょう」


 なるほど、先生と生徒とか、社長と社畜とか、そんなところか。

 それにどこかで見るなり聞くなりした原因もわかった。

 それはクエスト用紙。クエスト用紙にはこう書いてあった。


『オークの集落破壊願い。最近この始まりの街、イニティの近くの森の中にオークが集落を作りました。森で木こりをしている人たちや、木の実などを採取する人たちがそのオークたちのせいで何もできません。どうか、オークの集落を破壊して、オークたちを追い出してもらえませんでしょうか? ※オークのボスを見たとの報告もあり。報酬、五十万ギル』


 ※オークのボスを見たとの報告もあり。

 コイツだーっ!!


 俺は出かかっていたものが取れて気分がすっきりとしたところで、現状を適当にまとめる。


「とりあえずあいつが頭なんだな。それに強い、と。そしてその家来のオークたちが数十体。装備も持っている。逃げるにもリリーナとミカが魔力切れと疲労のため動けないので無理。……うわー、何この絶望」


 自分でどうにかなるような作戦を立ててはいるものの、やっぱりこの状況はひどく絶望的だ。

 すべてを投げ出して逃げ出したい。でも、それこそダメなんだよなー。


「それでユウマ。結局どうするのよ!? もうオークたち集落の中に入ってきてるわよ!?」


 リリーナが俺とオークたちの大軍を交互に見ながら、慌てたように騒ぎ出す。


「そうだよユウマ! 結局私とリリーナが防御力と幸運がアイリスちゃんの魔法で上がってて、ユウマとアイリスちゃんの敏捷が少し上がってるだけだよね? これでどうにかなるの?」


 ミカもリリーナと同じようにあたふたしている。

 アイリスも声にこそ出していないがとても不安そうだ。


「大丈夫……たぶん……」

「たぶんって言った!? ユウマのやつたぶんって言ったよ!」

「あーもううっさいなー。アイリス。悪いが俺に筋力アップの魔法も頼む」

「は、はい。『アグレッシオ』!」


 アイリスの魔法が終わると同時に再び俺の体に光が纏う。体の中から力が湧いてくるのを感じるし、筋力が上がったはずだ。


「よーし。これで準備完了!」


 俺が準備が終わって一息ついていると、リリーナが再び騒ぎ出した。


「ねえ! ユウマ! もうオークたち目の前まで来てるわよ!? どうすんのよこれ!?」

「まあまあ、慌てない慌てない。一休み一休み」

「休んでる暇なんてないわよ!!」


 俺がどこかの頭のいいお坊さんみたいなことを言うと、リリーナはよっぽど切羽詰まっているのか怒鳴ってきた。

 おー、こわ! ちびっちゃうとこだったぜ。


「それじゃあ始めますか。とりあえずリリーナ」


 俺はリリーナに声を掛けながら、リリーナの体をお姫様抱っこの状態で持ち上げる。普通なら結構きついんだろうが、筋力アップしている俺からしたら全然重くない。

「ねえ、ユウマ? 何してるのかしら? いくら私がお姫様みたいに可愛いからってこんなことしてる暇はないと思うんだけど」


 リリーナが状況を全く理解できないようで、疑問符を深べている。

 俺はそんなリリーナを―――


「それじゃあ、行ってこーい!!」


 思いっきりブン投げた。


「ぎゃーーっ!! ちょ、ちょっとユウマーっ! 何すんのよーっ!!」


 宙に浮きながらリリーナがそんな叫び声をあげる。

 そしてリリーナは少ししてから地面に落ちた。普通なら痛いだろうが、アイリスの防御力アップの魔法のおかげでそこまで痛くはないはずだ。


「ね、ねえ、ユウマ? ……これ、どういうこと?」


 リリーナが落ちた地点でさっきまで騒いでいたのに、消え入りそうなほど小さな声で言う。


「なんで私をオークたちの集団のド真ん中に投げ込んだのよーっ!? 殺す気!? 私を見殺しにしてその隙に逃げるつもりなのね! この鬼畜外道!!」


 なんだろう。ちゃんと助ける算段も立ててあるのだが、今のリリーナの言葉ですごいやる気が失せてきた。

 でもここで帰ったらリリーナがオークたちに好き放題されてしまう。日本の薄い本のような目にあってしまう。それだけは許せない。


「ユウマさん! 何やってるんですか!? あれじゃリリーナさんが!」

「そうだよユウマ! ユウマが鬼畜で変態なのは知ってるけど、さすがにひどいよ!」

 

アイリスとミカにも非難の声を浴びる。

 しかし俺はそんな言葉にロクに返事もしないでミカに近よる。

 そして、何も言わずにミカの足首を両手で持った。


「ま、まさかユウマ、本気で私とリリーナを囮にするつもりじゃないよね? さすがにユウマでもそんなことしないよね? ていうかさっきは鬼畜とか変態とか言ってごめん。だから……助けてーっ!!」


 俺に足首を掴まれて怖がってはいるものの、ロクに体力が残っていないため大した抵抗もできないミカが泣き喚く。


「あのなー、さっき俺は作戦があるって言っただろ? あそこにリリーナを投げ込んだのだって作戦のうちだ。アイリスの防御力アップと、念のために幸運まで上げてるんだからそう簡単に死なないはずだ。それにリリーナが囮っていうのはあってるが、お前は違う……」


 俺はアイリスをその場に待機させて、ミカは引きずりながらリリーナに群がうオークの集団のもとへと走っていく。


「ちょ!? ユウマ、さすがにそれは無謀だよ! 私をあそこまで連れてったってロクに戦えないよ」


 走って最中、俺に引きずられているミカはそんなことを口にした。


「大丈夫だミカ。お前は戦わないくていい。ただ……」

「ただ……?」

「俺に使われてろーーーーーーっ!!」


 俺はリリーナに群がっているオークたちの元までやってくると、両足首を掴んだままのミカをそのまま思いっきり振るった。


「おわーーーっ!! ユウマーーーっ!! 何すんのおぉぉぉぉぉぉぉぉあぁぁぁぁぁっ!!」


 俺の振るったミカがオークたちを一気に三体も屠る。


 今更だが俺の作戦はこうだ。

 まず防御力を上げたリリーナを囮にオークたちをひきつける。そしてリリーナに夢中になっているオークたちを俺が『金剛力』を持つ(ミカ)でたたきつける。

 ミカは『金剛力』のスキルを持っているので、俺の火力不足はミカに全部補ってもらう。俺が普通に剣を振るったらステータスは俺のが反映されるが、俺がミカを使って攻撃すればあくまで攻撃しているのはミカという事になり、ステータスやスキルはミカのが反映される。

 ちなみにミカの防御力をアップしてもらったのは、もしもオークたちに攻撃されたときにミカでガードするからだ。

 そんなことを考えていると、予想通り一体のオークが俺に剣を振るってきた。


「ふんっ!」


 俺はそれを(ミカ)で難なく受け止める。


「ふんっ! じゃないよユウマ! 大して痛くはないけどこれ怖い! 怖いし怖い! 怖い怖い怖い!」


 ミカが壊れたラジオみたいになってきたが、俺はそんなことは気にしない。

 今の俺は夢にまで見た異世界での俺TUEEEを実現させてテンションが上がっている。俗言うスーパーハイテンションだ!!

 これで頭が逆立ったりしたら完璧だった。


「いいぞミカ! お前は俺の最強の剣になれる!」

「なりたくないなりたくない! それにさっきから振り回されて気持ち悪い!」


 ミカはそんな弱音を吐きながらも俺に振るわれ続け、三分もしない間に三十はいたはずのオークたちは全部俺とミカの手で倒された。


 やってやったぜ!!


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