12話
目が覚めると、そこはいつもの街の中だった。
どうやら俺が意識を失ってる間に街についてしまったらしい。場所はまだ街に着いたばかりのようで、門のすぐ側だった。
周りには俺たちと同じく今日のクエストから帰ってきたと思われる冒険者たちの姿が多くみられる。みんな今日はいい感じだったとか、今度からはこういう風に戦おうとか、冒険者らしい会話をしている。
こんな状況を見ると、俺たちが今までやってたのはただの小学生の遠足だったのではないかと思えてしまう。だって俺たちこんな冒険者らしい会話したことない。
俺たちはいつも帰りはおふざけの会話をしながら帰っている。それはもう学校帰りに寄り道をして帰る高校生たちのように。したことねえけど。
そういえば誰がおぶっているのだろうと俺が視線を前に戻すと、俺をおぶっているのは―――
アイリスだった。
「ちょ!? なんでアイリスが俺背負ってるの!? てか、俺なんで気絶なんかしてたんだ!? もう何がなんだかわからないんだが。ツッコミが追いつかないんだが!」
俺の目の前では筋力アップの魔法でもかけているのだろうか、アイリスが俺を少し辛そうにおぶって歩いている。さすがに小学生くらいの女の子におぶられて喜ぶような変態では俺もない。
それに正直、記憶が少しぶっ飛んでいる。コボルトを討伐に行ったくらいまでは覚えているのだが、討伐後のことがあんまり思い出せない。
「アイリスがユウマを背負っているのはユウマに対する罰よ。なんで気絶してたのかは自分の胸にでも聞いてみなさい。少しでも早くこの羞恥から開放されてアイリスを救いたいならね」
俺の質問をリリーナが冷たくぶった切る。
俺が一体何をしたというんだ。
「おい待てリリーナ。俺が一体何をしたっていうんだ。俺は何もしていない。無実だ。弁護士を要求する。それまで何もしゃべらないぞ」
「何言ってんのよ。馬鹿なの? 死ぬの? それとも変態なの? 今日はユウマのせいで大変だったでしょうが。あんたがアイリスと一緒に弱ってるコボルトを助けようとしたり、その後もアイリスに変な言葉を教えたり。本当に今日のユウマはいつも以上におかしかったわよ」
そんな馬鹿なことを言うリリーナ。
俺がアイリスと一緒に弱ってるコボルトを助ける? 馬鹿なことを言うのはやめてほしい。あいつらは魔物だ。そして俺たちのカネヅルでもある。むしろ後半の意味合いのほうが強い。
仲間になってくれるんだったら俺はそういうゲームも好きなのでいいが、さすがに本気で命を狙ってくる相手にそんな情けをかけるほど俺もできてない。
「お前こそ何言ってんだよリリーナ。俺が相手が人間だろうが魔物だろうが容赦ないのはお前もよく知ってるだろ? そんな俺が今お前が言ったような馬鹿なことすると思うか?」
俺が至極まっとうのことを言うと、ミカとリリーナが驚いたような顔でこちらを見た。
え? ほんとさっきからなんなんの?
「ゆ、ユウマ。ユウマにとって魔物って何?」
突然少し困惑気味のミカがそんなことを言い出した。
そんなのもちろん決まっている。
「カネヅルだよ。俺らがあいつらを倒せばそれだけギルドから金が入る。あいつ等は俺に金をくれるカネヅルだ。それ以上でもそれ以下でもない。仲間になってくれるんなら大歓迎だけどな。モンスター育成ゲーム好きだし」
命を狙われているのはお互い様だし、少し言い方に問題があるとは自分でも思うが、言ってること自体は間違っていない。冒険者たちはみんな、今日を生き抜くために魔物を倒すのだ。明日を生き抜くためにお金を稼ぐのだ。全く持って間違ったことは言っていない。
「リリーナ! いつものユウマだよ! あのひねくれてるユウマだよ!」
「ええ! あの変態でロリコンなユウマだわ!」
俺の回答のなにがそんなに嬉しかったのか、なぜかミカとリリーナが手をつないで喜んでいる。
というか、今の話で変態とかロリコンは関係ないだろ!
「何がなんだかわからんが、まあいっか」
二人の喜びようから何か面倒な感じがしたので、二人をそのまま放っておくことにした。
そしてそのまま前を向き、今の自分の状況を思い出す。
「あ、あの……もうそろそろ……降りてもらっても……いいですか……ユウマさん」
自分が小学生位の女の子、アイリスにおぶられていることに……。
周りを見るとみなさまの視線が痛い。
ひそひそと聞こえる声はみんな―――
「ねえ、見て奥さん。あの男の冒険者、あんな小さな女の子に背負われてるわよ、しかも何もケガしてないみたい。屑だわ。ロリコンだわ」
二人の主婦が言った。
「ねえママ! あのお兄ちゃん僕よりずっと大きいのに、僕と同じくらいの女の子におんぶされてる! 僕知ってるよ! ああいうの鬼畜って言うんだよね!」
「見るんじゃありません!」
アイリスと同じくらいの年の男の子が言って、お母さんが男の子の目をふさいだ。
「……またあいつか。今日も相変わらずうらやましいぜ……」
俺をうらやむ誰か……って、また変な奴いたぞ!
そんな視線に耐えられなくなった俺はミカに言った。
「頼むから気絶させてください。そしてアイリスを開放してやってくれ」
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ある日。外の天気も良く冒険日和という今日この日。
俺とリリーナは二人で宿の休憩スペースでくつろいでいた。
「さてと、何するよリリーナ」
俺は机に頬杖を付きながらけだるく言う。
「そうね、ユウマを的に魔法の練習がしたいわ」
けだるげな俺に対してリリーナは自分の杖を布で拭きながら言った。
「奇遇だな、俺もリリーナ相手に魔法の練習がしたかったんだ。もうそろそろ『エアー』でのスカートめくりと、『サンド』での目つぶしにも飽きてきてな、今度は『ボルト』で痺れさせてみようかと……」
「ねえユウマ! 急に私、魔物に魔法を撃ちたくなってきたわ。今日はお互い魔物に魔法を使いましょ」
「そうか? まあリリーナがいいなら俺はそれでもいいぞ」
ということで、今日は俺とリリーナの二人でクエストも受けずに街の外までやってきていた。
ミカは日本から来た、他の連中にどうしてもと頼まれてクエストを手伝いに行ってしまった。お前らチート持ちなんだからミカに頼らないでお前らだけで行けよ。ミカは俺のパーティーの一員だぞ。とはコミュ症の俺には言えず、ただ見送ることしかできなかった。
そしてアイリスは絶賛筋肉痛である。今は部屋で体の痛みと戦っていることだろう。その原因は……言わなくてもわかってほしい……。
なんでもアイリスの使う各種能力アップの魔法は、別に魔法の力で一時的に筋力の最大値を上げたり、敏捷の最大値を上げたりしているわけではないらしい。
人間は自分の体を守るために脳が自動的にブレーキをかけているらしい。それがないと俺たち人間は脳がオーバーヒート的なものをしてしまうらししく、それを防ぐため俺たち人間は普段脳が自動的に力のリミッターをかけているらしい。
アイリスの使う各種能力アップは、そのリミッターを一時的にだが強制的に外し、本来人間の持つ力を呼び覚まさせているそうだ。魔法のおかげで身体が壊れることはないらしいが、魔法が解けるとひどい倦怠感や疲労感に襲われることがあるという。
一日に数回程度ならそこまでひどいことにはならないらしいのだが、何十回と使っていると色々と後が大変らしい。アイリス場合は普段派手に力を使うようなことをしていなかったため、今回の一件だけで体にひどい負担がかかってしまったらしい。
そのためアイリスはいま体の痛みと戦っている。
回復魔法の『ヒール』を使えばいいじゃないかと思うかもしれないが、というか俺もそう思ってアイリスに言ってみたが、回復魔法というのはケガや火傷のような実態のある症状は治せても、風邪や筋肉痛のような実態のないものは治せないらしい。
アイリスは病などもそうだと言っていた。
蘇生魔法があれば何度でも生き返れるというのは大きな間違いらしく、寿命による死には蘇生魔法は意味を成さないらしい。あと体がない場合も同様のようだ。帰るべき身体がないのだから当然と言えば当然だが。
それによく考えてみれば寿命での死を蘇生できたりしたら、この世界での死者はダンジョンの中で死んで発見されなかった人や、魔物に体を食べられて原型をなくしてしまった人だけということになる。さすがにそこまで蘇生魔法を便利ではないらしい。
ちなみにアイリスは蘇生魔法を覚えられる段階まであと少しらしい。覚えるためのスキルポイントがかなり多いらしく、覚えられるようになってもすぐには無理です。とも言っていた。
「そういえばリリーナは上級魔法とかは覚えられないのか? 実力だけならいけるんじゃねえの?」
街の外でモンスターを『敵感知』もしっかりと発動させながら探している途中、俺はふと気になってリリーナにそんな質問を投げかけた。
なんとなくな世間話程度の俺の質問にリリーナは特に何も気にした様子もなくこう言った。
「ユウマ、私ほどの大魔法使いになると、中級魔法だけでも上級魔法使いと渡り合えるのよ。というか、圧勝よね。だからしばらくは中級魔法まででいいかなと思ってるのよ。もちろん、世界最強の魔法使いを目指しているからあとでちゃんと覚えるつもりなんだけどね。まずは中級魔法を極めるのみよ」
と言った。
なるほど。
「つまり、今はまだ上級魔法を覚えられるほどお前はすごくないんだな。……なるほど、そうだったのか。それは悪いことを聞いちゃったな。悪気はなかったんだ、許してくれリリーナ」
本当に悪気なんてない。
だって俺はリリーナをからかいたいという気持ちが強すぎて、悪いとなんて本当に思ってない。
「……ユウマ、そんなに私を怒らせたいようね。……いいわ、私がいかにすごい魔法使いかどうか見せてあげようじゃない。……ちょうどいいところに魔物がいるわね。あれはコットンラビットかしら。わたしにとっては雑魚当然だけど、他に魔物はいないし、仕方ないわね」
リリーナはそう言って一人でコットンラビットに近づいていく。
相手はコットンラビット三体。とはいえ、コットンラビットはこの世界でのスライムのような最弱モンスターだ。なんせ俺が初めて受けたクエストがコットンラビット討伐だし、その時も初めて持った剣を適当に振っているだけで討伐できた。不意打ちで後ろから飛びつかれたこともあるが、大きなダメージなんてものはなく、小さな子供が飛びついてくるようなものだった。
リリーナがいつものようになってもさすがに大丈夫だろう。ワイルドボアのように攻撃力はないし、コボルトやオークのように武器も持っていない。そんな相手に負けるほどリリーナも馬鹿ではないはずだ。
俺はそんなことを思いながら、一人コットンラビットに向かっていくリリーナを見送る。リリーナは後ろを振り返ることなく、自信満々にコットンラビットたちへと近づいていく。もうそろそろ魔法の射程範囲内のはずだ。その辺で止まって適当な魔法を放てば、リリーナの魔法ならコットンラビットなどイチコロだろう。
でも、リリーナのことだからもっと突っ込むんだろうなー。それでいつもみたいに魔物に宣戦布告とか、馬鹿なことしちゃうんだろうなー。
もう毎度の恒例行事となったリリーナの魔物に対する宣戦布告 (一方的)。リリーナはなぜか魔法使いのくせにやたらと魔物に向かっていきたがる。そして意味がわからないことに魔物相手に宣戦布告をする。今では俺の楽しみの一つだ。
ちなみに他の楽しみはリリーナ関係でいうのなら、『エアー』によるスカートめくりでのリリーナの下着の確認だろうか。これだけは毎日欠かさずに行っている。
「……なにっ!?」
馬鹿なことを考えながらリリーナを見守っていると、驚くことにリリーナはいつもの宣戦布告をしないで、魔物と少し距離のある位置で止まった。
そして、杖をかざしだす。
「見てなさいユウマ! 今日の私はいつもの私とは違うわ! 私は頭のいい魔法使い。日々経験し、成長し、学ぶのよ! もう意味もなく魔物に突っ込んでいったりしないわ!」
少し離れたところからこちらを振り向いたリリーナが大きめな声で言った。せっかく魔物から少し離れたところで止まったのにそんなところで大声出したら意味ないだろとか、ツッコミを入れたかったが、今はそんなことどうでもいい。
だって……
「お、お前に学ぶなんてことできたのか!?」
リリーナが急に自分は学ぶことのできる人間とか言い出したからだ。
「できるわよ! 言っとくけどねえユウマ! 私は魔法使いとしては本当に優秀なんだからね! 見てなさい、こんな雑魚には普段使わないような強力な魔法を使ってあげるわ!」
強気なこと言いながらリリーナが強力な魔法とやらの詠唱を始める。しばらくして魔力が溜まり始めたのか、杖の先が激しく光り始める。リリーナの杖があそこまで光るのを初めて見た。
それにしても今日の詠唱は本当に長い。
おそらく威力を上げるためにわざわざ長くしているのだろうが、おとなしいコットンラビットといえども、攻撃態勢をずっと取られていたらさすがに行動は起こす。
三体のコットンラビットはリリーナに向かって走り出した。
リリーナもそれに気が付いたのだろう。コットンラビットが自分に迫って来るのを見て、リリーナがこちらを振り向いた。
「ユウマ! もう少しで魔法の詠唱が終わるからそれまでコットンラビットを足止めしておいて!」
本当にいつものリリーナらしからぬまともな行動。
魔法の詠唱中に前衛職に自分を守ってもらうという魔法使いとしての正しい行動。
本当に今日のリリーナはどうしたんだ! 今日は嵐か豪雪か!? もしかしたら今日で地球も終わりかもしれない。
って、ここが地球って保証もないんだった。むしろ魔法とか精霊とか日本ではありえない話が多いし、ここは地球ではないのかもしれない。
「早くしてユウマ! コットンラビットがかなり近くに迫って来てるわ!」
俺はそんなあまりにも魔法使いとしてまとも過ぎるリリーナに対して。
「お前……リリーナの偽物だな! 最初からおかしいとは思ってたんだ! 魔物に突っ込んでいかないし、ちゃんと魔法は使ってるし、俺にまともな魔法使いとしての指示を出すなんておかしい!]
疑いを持っていた。
「何言ってるのよユウマ! ふざけたこと言ってないで早くこっち来なさいよ! 私は本物よ! むしろ私の偽物なんていたら私がぶっ飛ばしてるわよ!」
「うるさい! 騙されないぞ偽物め! ……そうか、あの時だな! 俺がいつものようにリリーナに頼まれて胸のマッサージをした後、俺がトイレに行っている時に入れ替わったんだな!」
「ちょっと待ちなさいユウマ! 誰がいつそんなこと頼んだのよ! 私がユウマにそんなこと頼むはずないでしょ! 誰がユウマなんかに胸をもませるもんですか!」
正直リリーナが偽物だなんて全く思っていないが、ちょっとリリーナの反応が面白いのでこのまま続けようと思う。
「やっぱり偽物だ! 本物のリリーナならその実り過ぎた大きなおっぱいをマッサージさせてくれるはずだ! むしろ自分からマッサージを頼んでくるはずだ! そう、たとえ今みたいな状況でも!」
俺は自分の持てる演技力をすべて駆使して思うがままに行動し、リリーナに自分の思いを伝える。
「っな! ……確かに私の胸は大きいほうなのかもしれないけど、そこまで大きくは……。ってそうじゃないでしょ! それにそんなこと頼まないわよ! それならいっそ死んだほうがマシよ!」
最初のほうこそ珍しく頬を赤く染めて照れていたリリーナだったが、途中からはいつものリリーナだった。
「そ・れ・よ・り! 早くあいつらをどうにかしないさいよユウマ! このままだと少し魔法の詠唱が間に合わないのよ! せっかくだから最大火力で撃ちたいの!」
少し焦ったようなリリーナが俺を急かし始める。
ただ焦るのもしかたのないことだ。コットンラビットが俺たちの漫才中も確実にこっちに迫っていていたからな。距離からしたらもう十メートルもないだろう。俺とリリーナの距離もそれぐらいだ。
『逃走』スキルを使えば今からでも十分リリーナを助けることは可能だが、もう少しリリーナの慌てる様子が見たい!
「ん!? あっちの方にも魔物の反応が!?」
適当なことを言って、明後日の方向を向く。
「嘘つきなさい! そっち崖しかないでしょ! さっき見たんだからね!」
おっと。リリーナの言う通り俺の向いた方には崖しかなかった。
この辺りには空を飛ぶ魔物はいないと聞くし、これはしくじった。
「ユウマドジちゃった。てへっ!」
我ながら自分がやると気持ちの悪いポーズと裏声で軽く自分の頭をたたく。
「……気持ち悪いからやめてくれる?」
そんな俺にリリーナは蔑んだ視線を浴びせた。
やめろよ! 俺だって自分で気持ち悪いんだぞ!
「それより早くこっちに来なさいよ!」
再びリリーナが俺を呼び、急かす。
コットンラビットたちとのリリーナの距離は……まだ数メートルはある。
まだいける!
「うわーっ!! くそ! こんな時に!」
俺は突然自分の右腕を左手で抑え込み、苦しそうにしながらその場にしゃがみ込む。
「ど、どうしたのよユウマ! 大丈夫!?」
俺が苦しそうにしていたからだろうか、リリーナが自分の今の状態を忘れて俺の心配をしだした。
なんだかんだ言ってリリーナのやつ仲間思いなんだな。
とか、思いながら演技を続行する。
「だ、大丈夫だリリーナ! ……うっ! くそ、収まれ! 俺の右腕に封じられた正体不明の悪魔! こうなったら暗黒魔法を使ってこの疼きをどうにかしないと!」
我ながら、ザ・中二病である。
しかし中二病なんて知らないリリーナは本気で俺を心配しだした。
「ゆ、ユウマ! あんたまさか悪魔に取り憑かれたの!? こんなところで!? ありえない! 普通の悪魔がこんな光あふれる場所に出てくるはずが……!」
すごい真面目なことを言い出すリリーナ。
勝手に勘違いして思い込んでくれたのは助かるのだが、後で本当のことを言うのが怖い。
「……でも暗黒魔法なんて聞いたことないわね。世界最強の魔法使いになるのに知らない魔法、使えない魔法があるのはダメよね。……ユウマ! 暗黒魔法だけ見せてくれる? 見たらすぐに助けるわ!」
リリーナのやつ、俺と知らない魔法を天秤にかけて魔法を取りやがった。
しかしまだ演技をやめるのは早い。
「鎮まれーっ! 俺の右腕ーっ!!」
俺が右腕を上げて、叫ぶ。
そんな俺をリリーナが心配そうに見ている。
「ユウ……きゃーっ!!」
リリーナが俺に気を取られている間に後ろからコットンラビットにとびかかられた。
「よしっ!!」
予想通りの展開に思わずガッツポーズ。
「ちょっとユウマ! 今、よしって言ったでしょ! 言ったわよね!? しかもなによそのガッツポーズは!!」
「いやー、いつにもましてリリーナがまともな魔法使いしてるから邪魔したくなっちゃってさ」
「このバカユウマーっ!!」
いつもの魔物に集られるリリーナを見れて、俺はすごく安心した。




