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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第二章
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7話

 次の日。俺とアイリスは二人でブラブラとイニティの街を散歩していた。

 本当はリリーナとミカも含めて四人で初クエストを受けようと思っていたのだが、リリーナとミカが思った以上に仲良くなり、今日は少し二人で仲を深めて来ると、朝からどこかに行ってしまった。


「まさかあの二人があそこまで意気投合するとは思わなかった……」

「そうですね。正直私もあんなにすぐに仲良しになるなんて思いませんでした。……ちょっとうらやましいです」


 アイリスは臆病で、人付き合いというか、人とのコミュニケーションが苦手だ。俺も引きニートだったし人のことを言えたもんじゃないが、アイリスは俺以上に人付き合いが苦手な節がある。

 そんなアイリスからしたら、会ってすぐに仲良くなったミカとリリーナを見たら羨ましいと思ってしまうのも無理はないだろう。


「確かにあの二人はすぐに仲良くなったけどさ、アイリスもすぐにミカと仲良くなれるよ。アイリスはアイリスのペースでミカと仲良くなればいいよ」


 別にアイリスは人とのコミュニケーションが嫌いなわけじゃない。ただ苦手なだけなのだ。だからミカと仲良くなれないなんてことは絶対にない。ミカもそんな気ないだろうしな。

 それにミカとリリーナがすぐに打ち解けたのは年の近さもあったのだと思う。どうしたって年の離れた人よりも近い人の方が話があったりしやすいものだ。

 ……ネットの情報だとな。


「ゆ、ユウマさん……」


 俺の言葉に少し目を潤ませながら、上目遣いで見つめてくるアイリス。

 ヤバイ、ただでさえ上目遣いだけでもヤバいのに、さらに涙目とかもう反則の域だ。


「それより今日は俺と二人なんだし、あの二人よりも楽しいことをしよう! アイリスは何かしたいことあるか?」


 俺の中の魔物が暴走してしまう前に強引に話題を逸らしにかかる。


「そうですねー……。私としてはユウマさんと一緒にお散歩してるだけでも楽しいのですが……」


 あ、アイリス! そんなセリフを簡単に男に言っちゃいけません! お兄ちゃんもお父さんも許しませんよ!


「んー、そうか。じゃあ俺に街の案内をしてくれよ。俺まだこの街に来てからゆっくり見て回れてないんだ。アイリスは前からここに住んでたんだろ? なんか面白いところとか、冒険者に便利な場所とか案内してくれよ」


 俺がこっちの世界に来てからもう約二週間経つが、毎日生きるのに必死で街をロクに回れていない。

 毎日朝起きてはギルドに出向き、アイリスとリリーナと一緒にクエスト三昧。たまに街に出てもなんだかんだ自分の知っている場所を回るだけで、基本的にはギルドで他の冒険者たちを見ながら、のんびりしている。

 だからお金にも多少余裕ができているし、アイリスと二人というのも久しぶりだ。今日ぐらいは手の掛かるリリーナやミカを放っておいて、手の掛からないアイリスと二人でゆったりと過ごしたい。というか、癒されたい。


「案内……ですか? んー。私もあんまり楽しいところは知らないのですがよろしいでしょうか?」


 アイリスが心配そうに俺に尋ねてきた。


「もちろん。それに俺もアイリスと二人ならどこでも楽しいよ」

「は、はい! それじゃあ私の行きつけのお店から案内しますね」


 アイリスはそう言って笑顔の花を咲かせた。


「ここが私の行きつけのお店です。杖やローブ、魔道具もたくさんあるんですよ」


 アイリスが連れてきてくれたのは、とある魔道具店だった。

 話によるとアイリスの使っている杖や羽衣も全部ここで買ったものらしい。

 早速店内に入り、なんとなしに棚に置かれている商品を見ると、様々な色の液体が入ったビンや、なにやらよくわからないものが並んでいる。おそらくどれも何かしらの効果を持った魔道具なのだろうが、素人の俺には何がなにやらさっぱりだ。

 他にもアイリスの言っていたとおり杖やローブなども置かれているが、俺は魔法使い職になるつもりはないし、なったとしても大した役に立たない。装備したところでステータスは微々たる差しか生まないだろうからな。

 今日の俺は正直言ってタダの冷やかしだ。


「わーっ! これは一時的に魔力を上げるポーション! こっちは杖に付けると魔力の上がる宝石! 久しぶりに来ましたが欲しいものいっぱいです!」


 珍しくアイリスが年相応にはしゃいでいる。こんなアイリスは珍しいな。

 しっかり目に焼き付けておかないと。


「見てくださいユウマさん! これは使用者の魔力を肩代わりしてくれるジュエルって言うんですけど、とってもレアなものなんですよ!」


 アイリスが近くの棚から小さな宝石を一つ取ってきて俺に見せる。

 本当に今日のアイリスはハイテンションだ。


「それはすごいな。でもそういう便利アイテムって高いんじゃないのか?」


 俺の言葉にアイリスの表情が少し落ち込む。

 やっちまった~ぁ! せっかくアイリスが楽しんでたのに変なことを聞いてしまった。


「そうなんですよね……。もともと高額なものなんですが、初心者冒険者が集まるこの街ではかなり珍しいものでして、値段もこんな小さなジュエルなのに数万ギルはします」

「す、数万ギル……」


 アイリスが持っているのはそこら辺に落ちている小石ぐらいの大きさのジュエルという宝石だ。ジュエルと宝石って同じじゃん。とか、この異世界でツッコんではいけないんだろう。

 それにしたってこの大きさで数万ギル。いや、もしかして何回か肩代わりしてくれるのか? または回復量がこう見えてすごいとか。それなら納得だが。


「アイリス。これってどれくらいの魔力を肩代わりしてくれるんだ? その量によってはこの値段も納得なんだが」

「えーっと。この大きさですとたぶん私の全力『スプラッシュ』一回分くらいでしょうか。よくてその後に一回『ヒール』が使えるくらいです」

「え? そんなもんなの? それでこの値段? アイリスの魔力半分も肩代わりできないの?」

「はい。それでこの値段です。もっと大きなジュエルならもっと魔力を肩代わりしてくれますが、私の魔力半分を肩代わりするくらいとなれば、こーーーんなっ! 大きなジュエルか純度の高いジュエルじゃないと無理ですね」


 そう言ってアイリスが体全体を使って表現している。なにこれすごいかわいい。

 それにしれっと純度の高いジュエルって単語が出てきたぞ。まあ今の説明だと、たぶん純度が高ければ小さくても込められた魔力はすごいってことなんだろう。


「そうなのか。まあそんな良いものがこんな始まりの街に売ってるわけないか。誰も買えないだろ」

「そうですね。王都の方ですら私の魔力半分を肩代わりできるようなジュエルはそう置いてないと思います」


 そういえばアイリスの魔力はかなり高かったな。

 それを考慮すれば納得かもしれない。もしかしたらイニティの普通の魔法使いにしたら、このジュエルの回復量はかなり大きいのかもしれない。それこそ魔法数発分くらいには。

 そんなことを考えていると、店の奥から人が出てきた。


「あ。アイリスさんいらっしゃい。……あれ? そちらの方は?」

「あ。ファナさんこんにちわ。こちらの方は今私とパーティーを組んでくれているユウマさんです。すごいいい人なんですよ」

「こここ、こんにちわ! あああ、アイリスの冒険者仲間のユウマと申します!」


 あまりにも美人さんが出てきたので咄嗟の挨拶に手こずる俺。

 店の奥から出てきたファナと呼ばれる人は、長くて光り輝いている金色の髪に、俺よりも高い身長、スタイルも抜群で、なんというか憧れのお姉さんを絵に描いたような人だ。

 性格は見た感じはおっとりしている感じで、厳しいお姉さんというよりは、弟とかをこれでもかと甘やかしてしまうタイプの天然系お姉さんのようだ。

 そして俺が一番最初に目を奪われたのは、大きすぎる天然物の果実。すなわちおっぱいだ。

 あまりにも大きすぎて目を逸らそうにも目が離せない。必死に顔を動かそうとしたり瞼を閉じようとすると本能が否定する。な、なんて魅力的なおっぱいなんだ!

 紳士な俺の視線をここまで釘付けにするなんて、このおっぱいは化け物か!


「うふふ。こんにちわ、ユウマさん。私はこのファナ魔道具店の店長のファナです。よろしくおねがいしますね。あと、ファナ魔道具店もよろしくお願いします。……なんせ貧乏店なので……」


 そう言って少しぎこちない顔で笑うファナ魔道具店の店長ファナ。


「そうなんですか? 見た感じそんな変なものは置いてないと思うんだけど……」


 俺はファナにフォローを入れてから、改めて店の中を見回す。

 改めて見ても特別変なものは置いていない。まあ俺がロクに魔道具を知らないからかもしれないが。


「私としては皆様に安く便利なものを仕入れてほしいので頑張っているのですが、これがどうにも売れなくて……お恥ずかしい話、お客さんというお客さんはアイリスさんくらいなんですよ」

「マジかよ。俺は魔道具とかよくわからないけど、そんなおかしな感じはしないけどな」


 そう思って近くのポーション的な何かが入ったビンを手に持つ。


「これはなんなんだ?」

「あー。それは衝撃を与えると爆発するポーションです」

「なんつーもん置いてんだよ!?」


 いきなりトンデモナイ商品を持ってしまい慌てる俺。

 だってこの異世界にニトロみたいなもんがあるって誰が思うよ!


「ひいー! すいません、すいません! ……でも、これも街の皆さんのことを思って……」


 いきなり怒鳴ったからか、ファナが驚いてしゃがんでしまった。


「……いや、俺も悪かったよ。ここのみんなの事を思って売ってるんだもんな。ファナに悪いところなんて一つもない。……それじゃあこっちの商品はなんなんだ?」


 今度は緑色の健康飲料みたいなものが入ったビンを手に持つ。

 それを見てファナは「あー、それはですね」と説明を始めてくれた。


「それは毒々ポーションです」

「……は?」


 思わず聞き返してしまった。


「ですから、毒々ポーションです。それを呑むと猛毒に侵されます。下手をしたら死ぬこともあるんですよ」


 そんなことを笑顔で説明するファナ。

 とんでもないことをニコニコと説明するファナに俺は。


「なんでこんな危険なのばっか置いてんだよ!?」


 ツッコまざる終えなかった。

 だって衝撃を与えると爆発するポーションに、飲むと毒に侵されて下手をしたら死ぬポーションだよ。売ってるものおかしいだろ!


「ひいー! すいませんすいません!」


 また涙目になりながら俺に何度も頭を下げるファナ。


「ゆ、ユウマさん。あんまりファナさんを虐めないであげてください。私はファナさんにお世話になってるんです。……ほら、私の装備だってここで買ったものなんですよ。確かにちょっと危険な物も置いてありますが、ファナさんはいい人なんです」


 アイリスに窘められ、少し落ち着きを取り戻す俺。

 確かに全部が全部こんな危険な商品なわけないか。それにもしかしたらこの毒々ポーションとやらも何かしら使い道があるのかもしれない。魔物に投げて使うとか、そんな感じの。


「たびたび悪いファナ。言い過ぎた。それでこの商品を買う人はいるのか?」


 そう言って俺は毒々ポーションを眺める。


「いえ、……正直言いますと、今まで売れたことはありません」


 ですよね。知ってました。


「でも! この商品にも需要はあるんです!」


 さっきまでの大人しい感じとは一転して力説を始めるファナ。

 もしかしたらコイツにはトンデモナイ隠し効果があるのか! そんなことを考えさせるほどの迫力だ。

 ……主におっぱいが。


「ほう。どんな需要があるんだ?」


 俺はそんな下心を表に出すような変態ではない。至って冷静にファナに質問を投げ返す。


「はい! この商品は解毒魔法を覚えられたばかりのヒーラーさんが仲間に使って、解毒魔法を練習するためのポーションなんです! いつかはきっと、皆さんもこのポーションの良さがわかってくれると思うんです!」


 ……ないな。そんな未来はない。

 だってそんなことのために下手したら死ぬようなポーションを仲間に使うやつなんていない。いたら怖い。

 使う目的があるとしたら殺人目的のやつくらいだ。むしろそっちの方がしっくりくる。


「そんな未来ないよ。むしろ人殺しに使われそうじゃん。料理にこっそり混ぜて、みたいな」

「そ、そんな!? ひ、ひどい!」

「ゆ、ユウマさん!」


 えっ!? 俺が悪いの!? 正論言っただけだよ!?


 仕方なくファナを慰めてから、俺はまた近くから適当な商品を手に取る。

 手に取ったのはメガネのようで、見た感じ変な所は見受けられない。遠くまで見えるようになるとかそんなところだろうか?

 俺がそのメガネみたいな魔道具を眺めていると、落ち込んでいたファナが目に光を宿らせ、再び意気揚々と話しかけてくる。


「あー! その商品はですね、初心者冒険者にはおすすめ品ですよ!」


 ファナが元気になったようで、笑顔で手を合わせながらこのメガネの効果を説明してくれる。


「この商品は『アナライズ』と似たような効果でして、『アナライズ』は相手のことを自分で調べて、それが次からわかるようになる効果なんですが、これはなんと! 魔物限定ですが最初からすべての魔物の弱点や耐性、効果的な戦い方などが記録されているんです! それを付けて魔物を見るだけで効果を発揮するんですよ!」


『アナライズ』ってそんな効果だったのか。最初から取得可能スキル覧に入ってたけど、効果がわからないから取らなかったが、取らなくて正解だったな。

 でもこっちのメガネは最初から『アナライズ』以上の効果を発揮してくれるのか。それは便利だな。

 今までで一番まともな商品だ。


「すごい便利な魔道具ですねファナさん。確かにイニティは始まりの街と呼ばれるくらいですから、初心者冒険者が多いですし、人気が出そうですよね。手に入れるの大変だったんじゃないですか?」

「ええ、それはもう! 探すのも大変でしたが、ここに売ってもらうのも大変だったんですよ」


 ……。

 こんな嬉しそうに力説してくれているファナには悪いが、俺は猛烈に嫌な予感がした。

 さっきまでの商品があんなんなのだ。これにもきっと裏がある。

 だってこんな便利な魔道具が始まりの街にポンポン置かれているだろうか? ゲームで例えれば、最初の村に五百円相当で後半まで使えるような便利アイテムを置いているようなもんだ。

 普通そんなことはありえない。

 ならそこには裏があると考えるべきだ。

 それにファナは最初に貧乏店だと言っていた。それが本当だとしたら、そこには矛盾がある。こんな便利商品があるのに売れない。つまりこの便利商品には確かな裏があるのだ。

 例えば使用すると何かしらの副作用があるとか、使用方法があまりにも限定的だとか、そんな裏があるに違いない。

 俺はそんな裏を読みながら、ファナの話に耳を傾ける。


「これはですね。この前お店にやってきて格安でいろいろなものを売って行ってくれた人がいるんですが、その人が売ってくれたものの中でも、一番のいい買い物でした!」


 あれ? 俺トンデモナイ勘違いをしてたかも……。

 俺は自分のさっきよりある意味嫌な予感に震えながら、恐る恐るファナに質問する。


「……なあ、ファナ。……この便利魔道具とやら……本当にちゃんと効果があるのか……?」

「何を言ってるんですかユウマさん? あんないい人がそんなウソをつくはずがありません! これは絶対に、相手の魔物のあらゆる情報を瞬時に教えてくれる便利魔道具です!」

「なら試してみようぜ。ちょっと外に行ってみよう。この魔道具の効果が本物ならいい宣伝にもなるし、一石二鳥だろ」

「はい! それは取ってもいい案ですね! ぜひ行きましょう!」

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