6話
「というわけで、俺の幼馴染のミカだ。今日からパーティーに入ってもらう。アイリス、リリーナ仲良くしてやってくれ」
少しすれ違いはあったものの、なんとかパーティーを組むことになった俺とミカは、俺がお世話になっている宿まで足を運んでいた。理由はもちろんアイリスとリリーナにミカの紹介をするためだ。
宿に戻ってみると、リリーナはまだ少しこの前のことを怒っていたので、今日ミカと達成したクエストの報酬で、リリーナが欲しそうにしていた杖に付けると少し魔力が上がるという装飾品を買ってプレゼントすると、現金なことに一瞬で元気になって「ね、ねえユウマ! これ本当にもらっていいのね! 後で返せとか金をよこせとか言わないわよね!」とか、何度も俺を疑いながらも許してくれた。
お前はそこまで俺を外道な奴だと思っていたのかと問いたい。
アイリスも俺とリリーナが仲直りをしたからかどことなく嬉しそうだ。
そしてそんな良さげな雰囲気の中、ミカの紹介を始めたのだ。
「ユウマさんの幼馴染さんですか。えーっと、わ、私はゆゆゆ、ユウマさんとパーティーを組ませてもらっている。あ、アイリシュ……」
噛んだ。かわいい。
「アイリスと言います」
あ、言い直した。
「しょ、職業はヒーラーです。よ、よろしくお願いしまっ」
ガタン!
アイリスがミカに向かって頭を下げたら、勢いが良すぎて目の前のテーブルに頭をぶつけた。少し赤くなったおでこをアイリスが少し涙目になりながら痛そうに撫でている。
「だ、大丈夫アイリスちゃん!」
俺とリリーナはもう見慣れた光景だが、ミカからしたら始めてみる光景だからさぞ心配だろう。席から立ってアイリスのおでこの様子を見てやっている。
でもミカ。お前もよくドジしてそれやるからな……。
「あはは、大丈夫です。いつものことですから……。それより次はリリーナさんですね」
そう言ってアイリスが自己紹介の順番をリリーナに回す。
アイリスに順番を回されたリリーナはいつの間にか身に着けていたマントを翻し、格好つけながら立ち上がる。
くそっ! 本当にちょっとカッコいいじゃねえか!
「私はリリーナ。やがてこの世界最強の魔法使いになる者よ。職業は今言った通り魔法使い。いえ、大魔法使いと言った方がいいかもしれないわね。まあ、よろしく頼むわ」
そんな自己紹介を胸を張りながらするリリーナ。
だからその大きな果実を協調するのはやめなさい。思わず凝視しちゃうでしょ。
「最狂の間違いじゃないか? お前かなり狂ってるし」
俺は呆れたようにテーブルに肘を付きながら言ってやった。
「あら、ちょうどいいところに的があるわ。見ててミカ、私の偉大なる魔法を見せてあげるわ」
そう言って俺に向かって杖を構えるミカ。
ふーむ。またいつもみたいに『エアー』でローブをめくるのもそろそろマンネリだな。少し趣向を変えてみるか。
俺はミカが杖を構えたのに怯えることもなく、肘を付いたままのんびりと思考する。
「食らいなさいユウマ! 私の偉大なる魔法の標的になれることを光栄に思うのね! 『ファイヤーボー』」
「……くらえ、『サンド』」
『サンド』とは自分の手のひらに小石や砂を作り出す、初級土魔法を覚えることによって自動的に覚える魔法だ。ちなみに初級土魔法は『サンドショット』。岩の塊を飛ばす魔法だ。
というわけで俺は『サンド』で自分の手のひらに少量の砂を作り出した。思った以上にさらさらとしている。俺はそれを軽くリリーナの方に放った。
「っ!? な、何!? 目、目に砂が!」
リリーナが魔法の詠唱を止め自分の目を抑える。
まあ目に少量とはいえ砂が入ればこうもなるだろう。
俺がやったことは単なる目つぶしだ。確か前に何かのアニメかマンガで読んだんだが、ここまで上手くいくとは思わなかった。こんなに上手く使えるなら魔物相手にも使えるかもしれない。
「ひ、卑怯よユウマ! 目つぶしなんて卑怯だわ!」
リリーナが目を擦りながら文句を言ってきた。
それ、止めた方がいいぞ? 逆に目が悪くなるから。
「何言ってるんだよリリーナ。俺はちゃんとリリーナの全力に全力で答えたんだぞ? お前は手を抜いた俺に勝って嬉しいのか?」
「……くっ! た、確かにそうね。……その通りだわ」
咄嗟に出たでまかせもいいところだったが、我ながら上手くリリーナを丸め込むことに成功した。
バカでよかったわホント。
「というわけで自称世界最強の魔法使いを目指しているリリーナだ。バカだが実力はある。仲良くしてやってくれミカ」
未だに目に入った砂を取り出そうと必死に目を擦っているリリーナの代わりに俺がリリーナの自己紹介のまとめをしてやることにした。
「……まあ、ユウマにいろいろ言いたいことはあるけどあとでいいや。えーと、私はさっきユウマから説明があった通り、ユウマの幼馴染のミカです。職業は格闘家だよ。ユウマともどもよろしくね」
これまでで一番まともな自己紹介をするミカ。
といっても……。
「……ミカ。……それは壁だ。俺たちじゃない」
壁に向かってだけど……。
「あっ! 間違った! えーと、よろしくね。アイリスちゃん! リリーナちゃん!」
俺に指摘を受けアイリスとリリーナの方を向き、改めて自己紹介をするミカ。
ダメだ。コイツのドジというか、抜けているというか、天然というか、とにかくそれら全部をまとめちゃいましたみたいなところは全然治っていない。
まあ、スモールゴーレム戦で悟ってはいたが……。
「こちらこそよろしくお願いしますねミカさん」
「よろしく頼むわねミカ」
アイリスと、ようやく目から砂を取りだせたリリーナが快くミカを歓迎した。
この二人がミカを拒む理由も否定する理由もないし、俺は最初からこうなるって思ってたが、すんなり言ったことにはやっぱり安心する。
「それじゃあ一応俺の自己紹介も。名前は「お母さんのおっぱいが小学生まで大好きで、今は幼馴染のミカが最愛の」ユウマです。っておいミカ! お前俺が喋ってんのに変なこと喋んな!」
「あはは。はーい」
こっちの気も知らないで楽しそうに笑うミカ。
笑い事じゃないっつーの! 見てみろ! アイリスとリリーナのあのなんとも言えない表情を!
ったく、ここは改めて真面目で真摯な自己紹介を……。
「……じゃあ改めて。名前はユウマ、職業は「リリーナさまの従順な僕」です。っておいリリーナ! 俺の自己紹介の途中に変なこと言うなや!」
「フフッ。いい気味だわ」
リリーナがミカの真似をして、してやったりと言う顔をしている。
くそ! あとで覚えてろよ脳筋魔法使いめ!
俺は怒りを収めるために深呼吸をしてから改めて自己紹介をする。
「職業はアイリスのお兄ちゃんです!」
俺はここまで邪魔されたんならボケてやろうと自分の願望を言ってやった。
すると―――
「えっ!? た、確かにユウマさんは年上ですし、お兄ちゃんみたいですけど。ふぁ、ふぁう~……」
顔を真っ赤にしながら照れるアイリス。
うん、さすがうちのパーティー唯一の癒し系マスコット。かわいい。可愛過ぎて辛い。
照れるアイリスを楽しく眺めていると、近くから変な視線を感じた。ミカとリリーナだ。
俺のことをすごい蔑んだ目で見ている。
くそ! 俺がなにしたってんだ!
「リリーナさん。憲兵に連絡しましょう」
「そうねミカ。私は近くの憲兵探してくるから、ミカはアイリスがあのヘンタイロリコン誘拐犯に何かされない様に見張ってて」
「任せて!」
なんでアイツら初めて会ったのにもうあんなに結託してるの?
前世からの仲間なの? 真の中で俺だけ除け者なの?
「じゃあミカ、行ってくるわ」
「おいこら待て!」
この後『フリーズ』でリリーナの足を止め、どうにか憲兵召喚を阻止した俺だった。




