2話
「ここがギルド……。……くうー、燃えてきたーっ!」
目の前に聳え立つギルドの入口を前に、俺はテンションが抑えきれない。というか、さっきから興奮が収まらない。
なんなんだ異世界。俺を楽しみ殺す気なのか?
そんなテンションの高い俺は意気揚々とギルドの入口をくぐる。
瞬間、いくつもの冒険者たちの鋭い視線に晒された。
「……おいおい、なんなのこの視線。めっちゃ怖いんですけど……。視線がチクチク痛いんですけどー……」
周りの冒険者たちから異様な目で見られている俺はそんな弱気な発言をし、ビビりながらも、どうにか受付までやってきた。受付なら初心者冒険者にもいろいろ教えてくれるはず、というゲーム脳全開で受付嬢の中から一番きれいな人を選び、話しかける。
「……こここ、こんにちわ。きょ、今日もイイテンキデスネ……」
せっかく一番きれいな受付のお姉さんに話しかけたのに噛み噛みな俺、最後の方に至っては棒読みだ。
受付のお姉さんはそんな挙動不審な俺を笑わずに親切に話しかけてきてくれた。
「ふふふ。そうですね、今日はいい天気です。こんな日は冒険日和ですね」
そう言って受付のお姉さんは笑った。
何このお姉さん! こんな引きニートの俺にも優しい。
「そのことなんですが、俺冒険者になりたいんですけど……、なんか手続きっているんですか?」
初心者丸出しの俺。でも、この世界のことを何にも知らないんだからどうしようもない。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥って言うしな。
「はい、簡単な手続きがあります。手数料はかかりませんし、早速手続きをしますか?」
「は、はいっ。おねがいしますっ!」
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「……あのー。これはなんですか?」
冒険者の手続きということで、受付のお姉さんが用意したのはカードだった。
現実世界で言うところの、ポイントカードくらいの大きさの、何にも書かれていないカードを受付のお姉さんはテーブルの上に置く。
「このカードにしばらく手を置いてください。そうすれば自然にカードにあなたのレベル、ステ―タス、スキルなどが書き込まれます。それが完了し次第、あなたも冒険者です」
「……え? そんな簡単に冒険者になれるの?」
正直、こんなに簡単に冒険者になれるとは思っていなかった。手数料がかかるとか、冒険者になるための試験とか、てっきりそう言うお約束があるものだとばかり思っていたが、この世界ではそんなお約束はないらしい。
「それじゃあ失礼して……」
そう言ってカードの上に手を置く。その瞬間、俺が手を触れていたカードが光を放った。
「うおっ!?」
我ながら素っ頓狂な声をあげながらもカードから手を離すことはしなかった。
そして少しすると、激しく光っていたカードが徐々に光を抑えていき、やがて完全に光は収まった。
「……えっと、ユウマさん、ですね。これであなたも晴れて冒険者の仲間入りです。これからのご活躍を心より願っております」
「おおー! これが冒険者カード! 俺のステ―タス! ……ん?」
俺は自分の冒険者カードを見ていくつかの疑問が浮かぶ。
「……あのー」
恐る恐る受付のお姉さんに話しかける。
「この職業のところの冒険者ってなんです? 普通こういうのって剣士とか、魔法使いとかじゃ?」
「えーっとですね……。……」
受付のお姉さんが俺の冒険者カードを見た瞬間、顔を少し引きつらせた。
え? なに? 俺のステ―タスってそんなにヤバいの? すげえの?
そんな期待をしながら俺は受付のお姉さんの言葉を待つ。
「……あの、非常に申しあげにくいんですが……。この職業の冒険者というのは今のユウマさんにとって一番向いている職業となります。最初はみんな職業を決めることができず、今の状態で一番向いている職業に付きます。そして、その数ある職業の中でも冒険者は……最弱職です……」
「……え?」
受付のお姉さんの言葉に耳を疑った。
だって俺、選ばれし者の一人だよ? 女神さまに選ばれた一人だよ? その女神さまより特別なチート能力を貰った一人だよ。
最弱職とかそんなわけ……。
そう言って俺はもう一度、自分の冒険者カードの職業の覧を見る。そこには確かに『冒険者』の文字が……。
「……。マジかよーっ! せっかく冒険者になれたのに最弱職ーっ!? 冒険者っ!? なんなんだよ女神さまーっ! 上げて落とすとかないだろーっ!」
叫びながらその場に膝を着く俺、そんな俺を見かねてか、受付のお姉さんは励ますように話しかけてきた。
「で、でもですね、冒険者にもいいところがあるんですよ、自分で覚えられるスキルは少ないですが、他の冒険者の方からスキルを教われば、スキルポイントを通常の1.5倍消費して覚えることができます」
「えっ!? それってマジですか?」
「はい、マジです」
少し冒険者も良いかなって思い始める俺、我ながら単純だ。
でも、受付のお姉さんが言っていることが本当なら、そこら辺の冒険者に片っ端から声を掛けて、いろいろなスキルを教えてもらえば、俺も色々なスキルが使えるということだ。
魔法はもちろん、格好いいソードスキルや、格闘スキルがこんな俺にも使える。そう思うと、冒険者も悪くはないのかもしれない。そう思い始めた矢先。
「……まあ、本職には及ばないんですけど……」
「……」
受付のお姉さんの言葉に再び消沈する俺。
でも、俺にもまだ希望がある。
「あ、あの俺のスキルってどうなってます?」
そう、スキルだ。ステータスは確かに褒められたものではなかったが、スキルはちゃんと女神さまがくれたはずである。
確かに俺は現実世界ではクソニートだったかもしれないが、そこは女神様、どんな者にも平等でいてくれるはず。
「えーっとスキルですか? ……何もないですね。覚えられるのも冒険者が最初に覚えられるスキル、『アナライズ』だけです」
「う、うそだろ……」
まさか、ここまで女神さまに嫌われているとは思わなかった俺は、今度こそ死にたくなってきた。
カードを一旦受け取りスキルの覧を確認すると、確かに受付のお姉さんの言うとおり何にも書かれておらず、取得可能スキルの欄には『アナライズ』しかない。
「……」
「……」
受付のお姉さんと黙って少しの間見つめ合った。そして受付のお姉さんは少しぎこちなく笑って。
「……頑張ってくださいね」
それだけ言った。




