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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第二章
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3話

「ハア……ハア……ハア……」


 どうにか強面の男から逃げ切った俺は、近くの壁に身を任せてその場に座り込みあることを心に誓う。

 もう絶対にスカートめくりなんてしない。 知らない人には!

 そう固く誓っていると、付いてきていたらしいさっきの三人組がやってくる。


「お、お前らなぁ、あそこであんなこと言っちゃダメだろ。兄ちゃんションベンちびるとこだったぞ」

「そうなのか? それは悪かったぜ兄ちゃん」


 俺が呆れているのに対し、三人組は特に悪気もなく笑った。

 これが子供じゃなかったらたぶんこいつらを殴ってる。


「でもまあ、これでわかっただろ? スカートめくりには危険が伴う。お宝を目にするにはそれに応じた危険が伴うんだ。だからお前らもこんなバカなことはしないで……」

「なあ兄ちゃん! 俺も兄ちゃん見たくスカートめくりやってくるぜ!」

「俺も!」

「おいらも!」

「おいこら! 待て!」


 俺の話もロクに聞かず、制止にも耳を貸さずに三人組は近くの女の人達目掛けて各々走っていく。

 そしてそこかしこから響く女性たちの悲鳴。当然と言えば当然だが、あっという間に三人は何人かの女性の人に囲まれた。

 まあ怒られるだろうな。だがそれも人生勉強だ。しっかり怒られて来い。

 鬼になったつもりで何も言わず、何もせずに黙って事の成り行きを見守ることにした。

 すると驚くことが起こった。なんと三人組の男の子たちは「もー。こんな悪戯はダメだぞ」とか言われながら、周りの女性たちに頭を撫でられている。中にはお菓子をあげている人すらいた。


 な、なんだと……? 子供はスカートめくりすら許されるのか?

 俺はもしかしたらとんでもない卵を見つけてしまったのかもしれない。


 少しして女性たちから開放された三人組が笑顔で俺の元に戻ってくる。


「なあ兄ちゃん、スカートめくりって楽しいな!」

「スカートめくってお菓子もらえるなら俺毎日スカートめくるよ!」

「おいらもー!」


 ……これは使えるかもしれない。



「よーし! お前ら行ってこい!」

「「「おーっす!」」」


 俺の号令に従って三人組が近くのお姉さんの元へ走っていく。

 一人がお姉さんの前に出て注意を惹き、二人がお姉さんの後ろに忍び寄る。そして後ろに忍び寄った二人がタイミングを見て同時にスカートをめくる。

 スカートを捲られたお姉さんは恥ずかしそうにしながらも、三人組を大して怒ることなく、ちょっと注意をしただけで歩いていく。

 俺は三人組ほど近くで宝を拝むことはできないが、少し離れたところから安全かつ確実に宝を拝むことができる。

 ……完璧だ。完璧すぎる。……彼らの才能と、俺の頭脳があればこの世のすべての宝を見ることが出来そうだ。

 今度『遠視』スキルがあればとっておこう。これからのためにも。


「よーし。お前ら! 次はあそこの冒険者のお姉ちゃんだ!」

「「「うぇーい!!」」」


 再び俺の指示に従い三人組が近くの女性冒険者の元へ掛けていく。

 そしてさっきと同じ要領で女性冒険者のスカートをめくった。着ている物が着ている物だったので、あんまり見えなかったが、確かに宝は見ることができた。

 おー! ファンタジー!


 ……ってあれ? アイツ……


「……ミカ……か?」


 三人組がスカートをめくった相手、それは―――

 俺と同じく日本からこっちの世界に来た俺の幼馴染、ミカだった。


 ♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 三人組がスカートめくりをした相手が幼馴染のミカだったことを知り、呆然とその場に立ち尽くしていると、三人組がニコニコしながらこっちの方に逃げてきた。

 どうやらさっきまでと同様、簡単な注意だけで済んだらしい。

 ……ホント子供って羨ましい。

 とか思ってる場合じゃなかった。こんなところでミカなんかに会う訳には行かない。

 俺は日本に居たやつと、もっと言えばクラスメイトと会いたくないのだ。それにはもちろんミカも含まれている。

 ミカのことが嫌いなわけじゃない。むしろ日本で散々こんな俺の面倒を見てくれていたのだから、今となっては感謝している。だからこそ会いにくい。


 だって……異世界に来て早々置いてっちゃったもん。


「おい! 早くしろ! ずらかるぞ!」


 俺が三人組に盗賊のお頭のような言い方で指示を飛ばす。三人組は不思議そうにしながらも頷いた。

 よし、早くここから離れないと!

 と、思ったときには遅かった。三人組の行方が気になったのかミカはこっちを振り向いた。

 振り向いてしまった。

 俺とミカの目がばっちり合う。それはもう、少女マンガのような恋愛物だったら恋にでも落ちそうなくらいにばっちりと。


 ミカが珍しいものでも見るような目で俺を見る。何度も瞼を閉じては開き、パチクリさせている。

 そこまで来てようやく意識が戻ったのか、ミカは口を開いた。


「ユ、ユウマ! ユウマだよね!? おーい! ユウマーっ!」


 ミカがその場でぴょんぴょん飛び跳ねながら、俺に会えたことの何がそんなに嬉しいのか笑顔で手を振っている。

 そんなミカに対して俺は―――


「……ダッシュ!!」


 回れ右をして全力で逃走を図った。

 三人組ことすら置いて、それはもう全力で。

 本当なら『逃走』スキルすら発動させたいところだ。もっと言えばアイリスの支援魔法もほしい。それぐらい俺は今ここを離れたい。

 やっぱり外なんて出るんじゃなかった。ニートは外に出ちゃいけないんだ! ……ってこっちに来てからは俺そんなニートしてなかった。


「え!? なんで逃げるの!? ユウマ!? 私っ、私だよユウマ! 幼馴染のミカ! ユウマの最愛の幼馴染のミカだよ!」


 誰が最愛の幼馴染だよ! と、心の中でツッコミをちゃんと入れつつ、俺は振り返りもせずにダッシュを継続する。


「もーう怒った! ユウマ逃げるんならこっちから行く!」


 そう言ってミカが軽くその場で屈伸やら肩回しやら準備体操のようなことをする。

 ものの数秒で準備体操を済ませたミカがこっちに向かってきた。


 ―――たった一歩で。


「うおっ!?」


 俺はいきなり目の前に現れた幼馴染に驚愕の声をあげ、情けないことに尻餅をつく。

 だっておかしいのだ。俺は確かにミカから完全には逃げ切れていなかった。慌てていて直進的にしか逃げていなかった。しかしそれにしたっておかしい。少なくとも俺とミカの距離は数十メートルはあったはずだ。

 それをミカの奴は一瞬で、たった一歩で俺の目の前までやってきた。その速さは瞬間移動を疑ってしまったくらいに速かった。


「ユウマつーかまーえた!」


 ミカは驚いて尻餅をついている俺の肩を掴み笑顔で言った。


「もうユウマ。なんで私から逃げるの? って言うか、こっちに来た最初も今みたいに私のこと勝手に置いてったよね。ひどいなー、もう。……まあこうして会えたからいいけどね」


 そう言ってミカは俺の肩から手を放し、改めて手を差し出してくる。

 俺もこうなってしまったものは仕方がないと内心諦めミカの手を取った。

 ミカの手を借りて立ち上がった俺は、尻餅をついた際に付いてしまった砂を叩いて落とす。

 それからミカに向き直り、とりあえずの謝罪を口にした。


「……まあその……最初のことを含めて悪かったよ。異世界に来れたから舞い上がってた」

「もういいよそれは。それよりユウマ私とパーティー組も! どうせ日本で引きニートやってたユウマはこっちでも「ソロプレイだ! 俺はこっちでも一人強く生きてやる!」とか言って、女神さまからもらったチートをいいことに一人で頑張ってるんでしょ? それならさ、せめて私とはパーティー組もうよ。私なら気を遣わなくて済むでしょ?」


 ミカが俺のことはちゃんとわかっていますよ的な顔で言う。

 だいたいはあってる。引きニートだったこととか、こっちに来て早々は女神さまのチートがあればどうとでもなると思って、一人で生きていこうと考えていたこととか。

 実際ところは俺だけチートを貰うことができず、その上ステータスも平均以下、職業も冒険者という最低辺。もうこれ以上俺から奪うものはなかろうというくらいこっちの世界でも落ちこぼれていた。

 そんな最低の状況でこの世界に送り込まれた俺だが、ただ一つだけよかったこともあった。


「……悪い。俺……ちゃんとパーティーいるわ……」

「……え?」


 それはアイリスとリリーナと出会えたことである。


 俺にパーティーがいることに驚いているミカ。

 日本での俺を知っているやつからしたらこの反応も頷ける。特にミカは幼馴染ということもあって、俺と一番関わり合いが深かった。生まれた時から家が隣同士だった俺らは幼稚園、小学校、中学校、高校と同じ学校に通い、そしてそのすべてで同じクラス。もう、運命すら感じてしまった。


「……え? ユウマにパーティー? う、嘘だよね? いつも「一人がいいんだよ。一人が一番落ち着くんだよ」って、たまに学校に来たときに私の誘いを断って、教室の隅で一人で昼食を取ってたユウマにパーティー……」

「……ああ、俺にパーティー」

「あの「パーティー? もう組んでるよ。俺にはちゃんと一緒に戦う仲間がいる」って、いつも一人で一人四人パーティーをして強がってたユウマにパーティー……」

「……」

「あの、ネットゲームで頑張って女の子三人組のパーティーに入れてもらったら、実は中身全員男だったユウマにパーティー……」

「おいこら! お前どんだけ俺の黒歴史を漁る気だよ! それに最後のはボッチとか関係ないだろ! って言うかなんで知ってる!?」


 流石に我慢の限界でした。

 だって黒歴史をあんなに暴露されたら誰だって怒ると思います。


「そ、そんな……あのユウマにパーティーがいるなんて……」


 なにがそんなに悲しいのか、ミカはその場で泣き崩れた。


「……ユウマもちゃんと人とコミュニケーションが取れたんだね」


 なんか泣いているので幼馴染のよしみで慰めてやろうとしたら、このオチだよ。


「よーし、お前が俺をどう見ていたのかわかった。ちょっとそこで小一時間ほど話しあおうじゃないか!」


 そんな懐かしいやる取りをミカとしていると、トレジャーハンターの卵の三人組みがいつの間にか俺の隣に並んでいた。


「なあ兄ちゃん。話ばっかしてないでまた次に行こうぜ! 俺次はあのお姉ちゃんのスカートめくりたい!」

「お、おいバカ!」


 とんでもない発言をしてくれやがった男の子からゆっくりとミカの方を見ると、ミカは少し冷たい目で俺を見ている。

 あー、俺終わったわ。


「そうだねユウマ。ちょっとそこで小一時間話そうか。ううん、小一時間とは言わず二時間でも三時間でも」

「い、いや。……俺はちょっとこの後用事が……」

「ごめんね僕達。このお兄ちゃんこの後私と一緒に行くところがあるんだ。だからお兄ちゃん貰ってくね」


 俺の言葉になど聞く耳持たず、三人組を体よく帰すミカ。三人組も三人組で「はーい!」とか素直にどこかに行ってしまった。

 待って! 置いてかないで! 俺も連れてって!


「それじゃあユウマ……行こうか」

「……は、はい」

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