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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第一章
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23話

 というわけで後日談。


 あのリア充二人との戦闘から一日が経過し、今日は昨日の戦闘で疲れている俺のための休日ということになった。

 俺とアイリスとリリーナは現在ギルド内の食事スペースでクエストを受けるでもなく、呑気に飲み物を飲んでいる。


「それにしてもあのユウマさんのことをバカにしてた人たち、他の人たちもバカにしてたみたいですね。許せません!」


 珍しく少し怒った風にアイリスが言った。

 昨日の戦闘の後で知ったことだが、なにやらアイツラはこの街であんまり評判がよくなかったらしい。

 周りの冒険者をバカにしては、喧嘩になったとたんチートを使って圧勝。商店街でもよく迷惑行為をしていたそうな。

 そりゃあ、そんなことをしていたら嫌われるってもんである。

 昨日の周りのギャラリーからの声援もそれが原因だったらしい。なんかやたら俺を褒める声が聞こえるなあ、と思ってたらそんな事情があったのだ。

 いつもやりたい放題されて困ってる周りの人達からしたら、俺にコテンパンにやられる二人を見れてさぞ満足だっただろう。

 その証拠に俺は昨日あの後で周りのギャラリーからすごい感謝をされた。俺の勝利が確定して、アイツらに罰を受けてもらおうとしたら周りを知らない人たちに囲まれて褒め殺し。


 コミュ症には辛すぎる。


 そんな経緯を経て、俺はまあアイツらの悪行を知ったわけだが……


「それにしても失礼な奴らだったわね。私のことを可愛いと言ったところはよかったけど、それ以外はダメダメだったわ。性格だってユウマといい勝負だもの」

「おいこら待て、脳筋魔法使い。さすがに俺はアイツらよりは素晴らしい性格をしてるつもりだぞ。こんな性格のいい奴は他にいないね」

「そうかしら? 私にしているセクハラ三昧とか、魔物の群れに私を放置とかいい勝負だと思うけど……」

「よーし、表出ろ。俺がどれだけ紳士的な男か見せてやる」

「いいわよ。受けて立とうじゃない」


 俺はリリーナに向かって表に出るよう言葉と共に手でジェスチャーを送る。するとリリーナは立ち上がりやる気を見せる。


「や、やめてください二人とも。今日はゆっくりしようって決めたじゃないですか」


 そんなやる気満々の俺たちをアイリスが止めに入る。


「……仕方ない。アイリスがそう言うなら今日はやめておくか、いいよなリリーナ」

「アイリスが言うんだもの、しょうがないわ」


 そう言って俺たちは元の席に座る。

 俺とリリーナの中でアイリスは心の審判となっている。アイリスが駄目と言ったら絶対にやらない。俺とリリーナの暗黙のルールだ。


「……それにしても……昨日はすごいものを見てしまいました……」


 なにやら恥ずかしそうにアイリスは顔を真っ赤にしながら俯いてしまった。


「……確かにそうね。……まさかユウマがあんなことをするなんて思わなかったわ……」


 リリーナも頬を少し赤く染めて恥ずかしそうに下を向く。


「……」


 俺はそんな二人を無言で見つめる。

 二人の言っていることがなんなのかはわかってる。

 それは昨日のリア充二人との戦闘の後、もっと言えば声援を送ってくれた人たちに散々褒め殺された後、俺が周りのギャラリーたちの観衆の中行ったアイツら二人への罰という名の個人的な仕返しである。


 それでは回想をどうぞ。




 俺はギャラリーの中から拘束魔法を使える人に頼んでリア充二人を拘束していた。


「それじゃあ罰を受けてもらうぞ。なんかこの周りの人たちにも散々迷惑をかけたみたいだし、この人たちにも罰を受けるお前たちの姿を見てもらうから」


 これから受ける罰に怯えている二人に告げた。

 ロープで簀巻きにされた二人はロクな抵抗をすることもできず、ただただ俺のやることを素直に受け入れることしかできない。


「お、俺たちが悪かった! この人たちにもちゃんと謝るからゆるしてくれー!」

「お、俺もちゃんと謝るから! 許してくれよー」


 今更になってリア充二人がそんな戯言を言う。

 さっきまでの威勢はどこに旅行に行ってしまったんだか……。

 俺はそんな今更過ぎる二人の話に耳など貸さず二人に近づいた。


「……ユウマさん。この人たちもこう言ってますし、反省しているようですから許してあげてもいいんじゃないですか?」


 二人に罰を与えようとする俺に優しいアイリスが言った。


「んー。でもな、アイリス。周りの人たちも結構被害を受けてるみたいだし、少しは罰を与えたほうがいいと思うんだ。その方がみんなの気も晴れるしな。それにさっきも言ったけどあんまりひどいことはしないから大丈夫だぞ?」

「そ、そうですか? ……まあユウマさんがそうおっしゃるのなら……」


 念のための説得を聞いてもアイリスはまだ少し不安そうだが、おずおずと納得してくれた。

 アイリスの気持ちも多少わからないでもないが、こいつらは色々とやり過ぎた。だから然るべき罰は受けるべきなのだ。決して俺が仕返しをしたいだけじゃない。これはこの場にいるみんなの総意だ。

 そう言って、もしもの時も言い逃れることができる。完璧だな。


「えー! コイツらはこんなにも周りに迷惑を掛けてるのよ。少しキツメにひどいことした方がいいんじゃないの?」


 アイリスはどうにか納得させることができたが、リリーナは俺の言葉に納得してくれなかったようだ。

 全く、これだから脳筋は困るんだよなー。


「あのなー。コイツらもアイリスの言うとおり反省してるし、ちょっとした感じでいいんだよ。確かにリリーナもコイツらに苛立ってるんだろうけどここは我慢しろ」

「わかったわよ、もー」


 なんだかんだ言いながらもリリーナも納得したようだ。

 二人の説得を終えた俺は二人の前まで行くとこう宣言した。


「それじゃあ罰を受けてもらうぞ」


 俺の言葉にさぞこの二人に怒りを覚えていたであろう周りのギャラリーが騒ぎだす。

 まあ、俺も内心これからやることが楽しみで仕方がないのだが……。

 俺が楽しくて、俺のやることでみんなの気が晴れるんだったらなおいい。

 それに今からやることはギャラリーの数が多ければ多いほど罰としての効力が増すので、もっと人に増えてほしいくらいである。


「それじゃあまず『ボルト』」

「うがっ」

「あがっ」


 俺は二人の肩に手を置いて、初級雷魔法を覚えた際に取得した魔力を電気に変える魔法で二人を痺れさせる。

『ボルト』は普通に使うだけなら強い静電気ぐらいの力しか発揮しないのだが、魔力を込めればスタンガンくらいの威力は出せるらしい。それはさっき使ったとき確認済みだ。

 拘束魔法で逃げられないとは思うが、一応二人が逃げない様痺れてもらうためと、これからやることを効率よく進めるために使用した。


 『ボルト』を食らった二人は軽く体を震わせた。ちゃんと痺れたのか動けなくなったようで、さっきまで芋虫みたいな動きをしていたのに今では大人しくしている。

 俺はそんな二人を見つめ合うように向きを整える。

 これで今、この二人は横になって痺れている状態で見つめ合っている。それも結構近い距離で。

 すでにこれだけでも罰ゲームみたいなもんだが、ここで終わってしまってはつまらない。

 二人はこれから何が起こるのか不安で仕方ないのだろう。俺を目だけで見てビクビクしている。


「安心しろ。痛いこととかはしないから」


 そんな俺の一言に二人は少し安心したような顔をする。

 ……甘いな。世の中痛みが一番つらいんじゃないってことを教えてやるよ。


「これから二人にやってもらうことなんだけど。俺ってさ、お前らが言ってた通り引きニートだから、キスとかってアニメやゲームでしか見たことないんだわ」


 俺の言葉に二人が同時に嫌な汗を掻き始める。

 ここまで言えばもう察しのいい奴なら気が付くだろう。


「それで、もしこの先俺が誰か女の子とキスするときに、キスの仕方知らないと恥ずかしいじゃん? だから今までいろんな女の子たちとキスをしてきたであろうリア充のお二人にキスの仕方の伝授を頼みたいんだわ」

「……お、おい。……冗談だよな? 冗談なんだよなっ!?」

「……あ、あれだろ? みんなを笑わすための冗談なんだよな? これで俺たちの慌てる姿を見て笑うのが目的なんだよな?」


 リア充二人の汗の量が尋常じゃなくなってきた。

 そんな二人に俺は心配するなよと伝えるため笑顔で言う。


「……この笑顔が冗談に見えるか?」


「……お、おい! 本当にやめてくれ! 冗談だろ! そうだと言ってくれよ!」

「そうだぜ! 悪い冗談はここまでに……」

「……」


 俺は無言の笑顔を二人に向ける。


 そんな俺の笑顔に、二人は慌てて暴れようとしているみたいだが、まだ身体が痺れているようで地面の上でピチピチ跳ねている魚みたいな動きをしている。

 その間に一旦二人から目を背け、周りのギャラリーたちの方へ向き直る。


「なあ! みんなもこの二人のキスを見たいよなーっ?」


 俺がそう叫ぶと、周りからたくさんの声が返ってくる。


「おう! たりめえよ!」

「俺もキスしたことないから手本が見てみたいぜ!」

「わ、私もみてみたい!」

「男と男のキス……ふぁーーーっ!! 燃えてきたわーーーっ!!」


 様々な人たちから送られて来る声援。

 中にはその線の方もいたみたいだ。

 気分が乗ってきた俺がアイリスとリリーナの方を見ると、なぜか二人は俺を少し冷たい目で見ていた。

 なんでっ!? 俺何かしたっ!?


 そんな二人の視線に少し落ち込んだ気分になるが、この悲しい気持ちもこの二人に背負ってもらうことにした俺は、二人の方へ再び向き直る。


「まあそういうわけだ。手本を頼むよ」

「い、いやだーっ! マサトとキスとか絶対に嫌だーっ!」

「お、俺だってハルキとキスなんかしたかねえよ! あー、くそ! 助けてくれー!」


 未だに現実を受け入れられず、暴れる二人。

 そんな二人に周りのギャラリーから多くの声が響く。


「「「「「キース! キース! キース!」」」」」


 多くの人たちから送られるキスコール。

 場は既に盛大な盛り上がりを見せていて、今更止めるなんて雰囲気ではない。

 元から止めるつもりなんて微塵もないけどな。


「それじゃあお二人さん。どうぞ!」


 そう言って俺はマサトとかいう奴を軽く持ち上げ、ゆっくりとハルキとかいう俺を散々ボコボコにしてくれた奴へと近づけていく。

 徐々に近づいていく二人。元からそんなに距離のなかった二人の顔はどんどんと近づいていき、やがて二人の唇は―――


 ―――重なった―――


 唇を重ねた二人の男。周りからはたくさんの人の「おおーっ!」という歓声。自分でやっておいてなんだがなんだこの状況。

 罰という名の仕返しの済んだ俺は、周りのギャラリーから再び多くの感謝の言葉を受け、アイリスとリリーナのもとへと戻り、アイリスに『ヒール』の魔法をかけてもらいながら宿へと帰った。


 ちなみにこの後、二人は放心した様にその場でしばらく寝ていたという。




 これが昨日あった戦闘後の顛末である。

 確かに最後は少し空しさを感じたが、我ながらいい仕事をしたと思う。


「……まあ、昨日のことはもう忘れましょ。……ね? アイリス?」

「……は、はい。……そうですね。リリーナさん」


 二人の中で何か心の整理的なものが着いたようだ。

 そして二人が同時にこちらを向く。


「えっと、なに? なんで二人して俺を見てるの?」


 もしかして二人とも俺の戦闘シーンを見て惚れちゃった感じか!? 俺は知らないうちに二人のルートを確定させてしまったのか!?


「いえ、その、あのですね……」


 アイリスが顔を真っ赤にしながら言葉を選ぶように、探るように言う。


「まあ、だから、そのね……」


 リリーナもなにやら恥ずかしそうにしている

 えっ!? マジで俺告白されちゃう? 人生初の告白異世界で受けちゃう?

 やっぱり異世界って最高だーっ!!

 って、俺はどっちの告白を受ければいいんだ? この世界って重婚は可能なのか? 俺的には二人とも受け入れたいんだが。


「ユウマさん。私、これからもいっぱいユウマさんに迷惑をかけると思います。……また魔物に回復魔法をかけると思います。それでも私とパーティーを組んだままでいてくれますか?」


 少し不安そうにアイリスが言った。


 ……まあそうだよね。告白なんかあり得ないよね。

 ……知ってました。


「はあ……。……何言ってるんだよアイリス。当たり前だろ? アイリスが嫌だって言ってもパーティを組んでやる」

「それって犯罪……」


 リリーナがなにやら小声でぶつぶつ言っていたが、華麗に無視をしてアイリスに微笑みかける。その笑顔に答えるようにアイリスは今まで見たこともないような顔で笑ってくれた。


「はいっ! 私これからもがんばりますね! これからも魔物に回復魔法をかけると思いますが、よろしくお願いしますね! ユウマさん!」


 ……かけるのか。


「私もこれまで通りで行くわ。フォローは全部任せたわよユウマ」

「お前は少しアイリスを見習って反省をしろ」

「私は過去を振り返らないの。だから反省なんてしないわ。それに何があってもユウマが最後は何とかするもの」

「なんつー他力本願……」


 はあー……。俺、この二人とパーティー組んで本当によかったのか?

 一人は弱っている魔物に回復魔法をかけるヒーラー。

 一人は魔法使いなのに、魔物の群れに一人で向かっていく脳筋魔法使い。


「これからもよろしくお願いしますねユウマさん」

「これからも私を頼りにしてくれて構わないわよユウマ」


 この二人の笑顔を見ればその答えは一発でわかる。


「……いや、リリーナはいいや。……面倒みきれない」

「なんでよ! だいたいユウマはロリコンだからってアイリスに甘いのよ! 私にも同じように優しくしなさいよ!」

「うおっ!? こら! 何するんだこの脳筋魔法使い!」

「なんですってー! 誰が脳筋魔法使いよ!」

「ですから、お二人とも喧嘩はやめてくださいよー!」


 良かったに決まってる。



これにて第一章終了とさせてもらいます。

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