18話
「それでは最初に氷魔法の『フリーズ』をお教えしますね」
アイリスはそう言うと近くから小さな小石を拾ってきた。
それを自分の手のひらに乗せ、杖は使わないのかリリーナに預けていた。
「この魔法は特に威力のようなものはありません。なので、ユウマさんにも使いどころがあると思います。それでは見せますね『フリーズ』」
アイリスが魔法を唱えた瞬間、手のひらに乗っていた小石が一瞬で氷付いた。
「このように対象の物を凍らせたりする魔法です。一応氷を作り出すこともできます。ですが、攻撃魔法ではないので相手に向かって飛んだりはしません。魔力もあんまり消費しませんし、今も言いましたけど、攻撃魔法ではないのでユウマさんなら上手く機転を利かせた使い方ができると思います」
そう言ってアイリスはニッコリと笑った。
「なるほどな、確かにこれは威力依存じゃないし、結構使い勝手がよさそうな気がする。相手の足止めとかに使えそうだな」
この前戦ったワイルドボア辺りなんかには特に有効そうだ。『フリーズ』で足を止めてしまえばあの突進もその驚異的なスピードも何の意味もなさない。今度試し打ちにクエストを受けてみよう。
「そうですね。私も一人で狩りをしている時にはそういう使い方をしてました。ユウマさんならもっと上手に使えるかもしれませんね」
なんだかアイリスがやたらと俺を持ち上げている気がする。
確かにここ最近俺はクエストを安全、尚且つ効率よくこなすためにいろいろと日本から培ってきたゲーム脳を発揮して、色々とアイリスたちに指示を出したりしたが、結局いつも倒しているのはアイリスやリリーナなのだ。俺一人じゃ、作戦は思いついても実行できない。
女神さまが俺たちにくれたというチート能力があれば話は別だったが、なんの手違いなのか俺にはなんのチートも与えられていない。
ほんとなにこの理不尽。
「ふーん。『フリーズ』ってそういう使い方なのね。『フリーズ』なんてスキルを取ってる奴いなかったから知らなかったわ」
リリーナが少し感心した様に呟いた。
俺は早速何かと便利そうな『フリーズ』を2ポイントを消費して習得して、右手を伸ばす。
「……ねえ、ユウマ。……その右手は何なのかしら? なんかさっき冒険者カードをいじってたみたいに見えたんだけど、本当にその右手は何……?」
そう言いながら、かなりの警戒心を持って俺からじりじりと距離を取るリリーナ。
そんなリリーナに向かって俺は言う。
「『フリーズ』!」
俺が魔法を唱えた瞬間、リリーナのローブが凍り付いた。
「ひゃあーっ!! ちょ、ちょっとユウマ! なにすんのよ! ていうか寒い! 冷たい! こごえちゃうーっ!」
そんなことを叫びながらリリーナが暴れまわる。
「なるほど、こうやって使うのか。サンキューなアイリス」
「ち、違います! リリーナさん大丈夫ですか!? 早く低威力の火魔法を」
この後、アイリスに助けられながらリリーナがローブの氷を完全に溶かすまで数分かかった。
「いやー。今日はすごいいい収穫だった」
リリーナとアイリスに新しい魔法を教えてもらったホクホク顔の俺はアイリスとリリーナの三人で街まで戻ってきていた。
懐も習得可能スキル覧も暖かい。
「……ゆ、ユウマ。……覚えてなさい。今度クエスト中に後ろからあんたに魔法を叩き込んでやるわ」
少し後ろを歩くリリーナがそんなことを言ってきた。
おー、こわっ! さっきの『フリーズ』が相当頭に来たようだ。
「ユウマさん。さっきのは本当にひどいですよ。リリーナさんが可哀相です。教えた魔法をそんな使い方するんだったら今度から教えませんからね」
流石に今回の件はアイリスもご立腹だった。
まあ、今回のリリーナの件は正直俺もやり過ぎたと反省している。
すぐに教えてもらった魔法が使いたかったとはいえあれはやり過ぎた。まさか、あそこまで上手くリリーナのローブが凍るとは思ってもいなかった。あんなことになるくらいなら、おとなしく背中に小さな氷を作り出してやればよかった。
……うん、今度試してみよう。
そんなくだらない悪戯を考えていると、アイリスが俺の目の前までやってきた。
え? なにこれ、告白? お兄ちゃんときめいちゃうよ?
「ちゃんと聞いてますかユウマさん? 今度そんな魔法の使い方したら私もリリーナさんもこれから何にも教えてあげませんからね。次からはこんなのとしちゃ、メッ! ですよっ!」
そう言って俺に小さな指を突きつけるアイリス。
「……そうだな、確かに俺も今回はやり過ぎたよ。反省してる。リリーナも悪かったな、今日何か奢ってやるから勘弁してくれ。アイリスも何か奢るよ」
「そ、そうね。ユウマがそこまで言うなら許してあげないこともないわ。それじゃあ今日の夕食は全部ユウマ持ちね」
「ああ、いいぞ。アイリスもそれでいいか?」
「はい。ユウマさんが反省してくれたのならそれで私は構いません」
アイリスとリリーナのお許しをもらえた俺は三人でギルド内にある食堂のような場所へと向かった。




