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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第八章
175/192

4話

 あれからなんとなく意気投合した俺とレイカは談笑を続けていた。

 紅茶を美味いと称賛したからかおかわりが出てきて、お茶請けにと手作りケーキまで出してもらった。

 紅茶は何杯目になっても変わらずおいしく、ケーキも紅茶の味に合わせて味を調整してあるのがわかる。

 ミカからのお情けくらいでしか手作りケーキを食べたことのない俺にとってはごちそうそのものだった。しかもミカのケーキはホットケーキだったし。


「悪いな。なんかうまいケーキまでもらっちゃって」

「いいの、いいの。それよりユウマの方こそいいの? さっきの女の子たちのこと放って置いて」

「ああ、大丈夫だ。つーかたぶん俺を置いて屋敷に帰った。入り口にいねーし」

「ほんとだ。見捨てられてる」


 俺の言葉に窓から屋敷の外を覗くレイカ。

 そこには時間の都合ももちろんあるのだろうが誰の姿もなく、人っ子一人通ってない。

 屋敷の中から人の気配も感じないし、これは間違いなく恐怖に飲まれて三人一緒に屋敷に帰った。

 脳筋コンビはともかくアイリスにまで見捨てられるのは少しばかり心が痛い。


「にしても本当に美味いな。今度作り方教えてくれよ」

「いいよー。それくらいおやすいごようだよ」


 意図せずなんてことはなく、女の子とお菓子作りをしてみたいという欲望に満ち満ちた願望が通った。嬉しさのあまりテーブルの下で小さくガッツポーズ。

 ちなみにクッキーが一般的に知られていないこの世界だが、ケーキはなぜか存在する。

 本当にどういう基準で日本と同じものが存在しているのかわからない。


「そういえばレイカっていつからここにいるんだ? ここの噂は結構前からあるみたいなんだけど」

「うーん……。具体的には覚えてないけど、二、三十年はここに住んでるかなー」

「てーと最低でも年は三十超えてるんだな」

「……キミ、女性の年齢を詮索するなって教わらなかった?」


 冷たく鋭い視線が突き刺さってくる。言葉にも大いに棘が含まれていた。

 やっぱり女性に歳のことを聞くのは地雷でしかないらしい。


「そうは言うけどさ、やっぱり気になるじゃん? 大丈夫だって、俺は見た目美少女なら年なんて関係ない派だから。ロリババア全然ありだから。五歳とかでもいけるから」

「ロリババアって……。さすがに私もそこまでじゃないよ。……あと後半のは聞かなかったことにしてあげる」

「じゃあいいじゃん。いくつなん?」

「……百二十」

「ババアじゃん!」


 当然のツッコミをしたらフォークが飛んできて、耳を掠めて後ろの壁まで飛んで行った。

 あ、あぶねえ……。


「キミ、さっきと言ってること違うよね? おかしいよね?」

「は、はい……。すいませんお姉さま……」

「よろしい」


 どうにか機嫌を納めてくれたらしいレイカ。

 ババアが大人の女性に対する禁句だったり、女性に年齢を訪ねるのはタブーだという話を知ってはいたが、初めてその意味を理解した。

 やっぱり頭で知っているのと実際に知っているのとはわけが違う。


「話変えるけどさ、ここって元々レイカの家なの? その姿って死んだときの姿?」

「質問多いね。まあいいけど。ここは私の家じゃないよ。ただ居心地がいいからここに住んでるだけ。姿の方はキミが言った通りだよ」

「へえ。若いうちに死んじゃったんだな。もったいない」


 レイカはさっきも言ったが、見た目は俺たちと同じくらいだ。せいぜい二つ三つ上下に代わるくらいだろう。

 大学生のお姉さんでも、中学生のお嬢ちゃんでも、俺は受け入れられる。向こうが受け入れてくれるかは別として……。


「そんなこというならキミがもらってよ。私独身だよ?」


 自分で勝手に沈んだ気持ちになっていると、すごく魅力的な提案がレイカの口から飛び出してくる。

 乗るしかない。このビックウェーブに!


「わかった。式はどうする?」

「あはははは。冗談だよ冗談。本気にしちゃった?」

「ひどい! 男の純情を弄ぶなんて! 俺の三分の一の純情な感情を返せ! でなけりゃ結婚しろ!」

「えー、どうしよっかなー」


 意地悪な笑顔で俺をからかったレイカが、今は本当に楽しそうな顔で笑っている。

 からかわれたのには正直少し言いたいことがあるが、美少女が楽しそうなのであれば俺の気持ちなどどうでもよかった。

 いや、結婚できるんだったらしたいけど。今すぐに。


「いやー、キミは面白いね。お姉さんキミのこと気にいっちゃったよ」

「それはよかったな。ところでそんなに気にいってくれたんなら交際を前提に結婚してくれないか?」

「普通前提が逆じゃない?」

「結果が同じなら一緒だろ」

「いうねー」


 にししししと悪戯っぽい笑みで答えてくるレイカが空になったカップにおかわりの紅茶を注いでくれる。

 小さく湯気をたたせている紅茶を早速口に含んで喉を潤した。


「さーて、名残惜しいけど楽しいだけの会話はいったん終わりにしようか」


 そう言うとレイカはさっきまでの楽しそうな笑顔を潜めて真面目な顔つきになる。


「凛々しい顔も素敵ですね、お姉さま」

「ちゃかさないの。真面目な話するってわかってるでしょ」


 俺としてはさっきみたいな楽しいだけの会話だけをしていたいのだが、ここまで言われてしまえば仕方ない。こちらも真面目に対応することにする。

 からかってもらうのはまた今度だ。


「一応ちゃんと聞いておきたいんだけど、キミはここのことをどうやってギルドに報告するき?」

「ん? どうやってとは?」


 ケーキの最後の一口を名残惜しく思いながら口に含み、そのおいしさを噛みしめながら質問を質問で返す。


「だから、私のことをどうやってギルドに報告するの? それともここで私のことをどうにかしていくの?」

「どうにかって?」

「わかってるくせに意地が悪いなキミは……。私を祓うのかって聞いてるんだよ」


 まあ正直レイカの言う通りわかっていた。

 俺は察しが悪い方じゃないし、言葉の裏が読めないほど鈍感じゃない。レイカの聞きたいことくらい容易に想像できていた。


「祓うわけがない。美少女を祓うなんて世界の損失だ。そんなことする奴がいるなら俺が邪魔する」


 生きていようが死んでいようが美少女なら関係ない。

 しっかりと自我を持ち、意思疎通ができて、敵意がない時点で敵じゃないし、悪い奴じゃない。それだけわかれば俺にとっては十分だ。


「それはうれしい言葉だね。だけどどうするの?」

「ギルドには適当に報告する。レイカを祓うなんてことはしない。ケーキの作りかた教えてもらえなくなっちまうしな。それ以前に幽霊の祓い方なんて知らないし」

「……キミは本当に変わってるね。私のことをすんなり受け入れてるし、嘘を言ってる様子もない。それどころか私のことまで考えてくれてる」

「美少女だからな。助けるのは当然だ」


 何度だって言おう。

 美少女は世界の宝で、俺の癒しだ。

 それを助けるのに理由なんていらない。


「はあ~……。恥ずかしげもなくキミは……」


 大きなため息をレイカが零す。さっきから何度も美少女美少女言っているせいか、レイカの反応が淡泊になってきた。

 ちょっと物足りない。これが倦怠期ってやつか。


「話し戻すけどさ、ギルドには適当に報告するって言ってたけど、具体的にはどうするつもりなの? 適当に報告するだけじゃまた他の人がここに来るんじゃないの?」

「そうかもな。だからレイカにひとつお願いというか提案がある」

「お願い? 提案?」

「ああ、お願いであり提案。これ以上ここに変な理由で来る奴をなくして、ギルドにもちゃんと報告出来て、レイカとあるやつが納得してくれればみんながハッピーで終われる方法だ」

「……とりあえず聞かせてくれる?」

「もちろん」


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