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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第八章
172/192

1話

「……おい。なんでこんな面倒なクエストを選んだ?」

「いや~いろいろとあってさ」

「その色々を聞いてるんだけどなっ!」


 現在、俺達パーティーは街のとある一角を歩いている。それもいつも歩くような大通りではなく、この街でも隅っこの方に位置する場所を。そんな場所のせいかこの道は街灯が少なくて薄暗い。

 今の説明でわかってもらえたとは思うが、今の時間は昼ではなく夜だ。それも深夜。

 日本にいた頃ならいざ知らず、異世界に来てからは寝ていることの方が多い真夜中に俺たちはクエスト場所に向かって歩いている。

 ほんと、なんでこんな時間に働かなきゃならんのか。


「ユウマ、男ならネチネチ言ってないでおとなしくあきらめなさいよ」

「うっせーぞ元凶その2! なんならお前でもいいからちゃんと説明しろ」

「だから言ってるじゃない。私とミカでクエストを選んでたらギルドの受付が来て「リリーナさんにしか頼めないクエストがあるんです」って言われたのよ。こう言われちゃったら私が動かないわけにはいかないじゃない」

「……お前、絶対にそれいいように使われただけだぞ」

「そんなわけないでしょ。ユウマと違ってギルドの受付はまともな人間よ」

「どうしたリリーナ? 眠いのか? こんな時間だもんな。そんなに眠りたいなら俺が泡吹かせて眠らせてやるよ」

「ゆ、ユウマさん! 落ち着いてください! リリーナさんだって本心じゃないですよ!」


 ふざけたことを抜かすリリーナの口に『スプラッシュ』してやろうかと思ったのをアイリスが近くにいるのでグッと堪え、拳を握りしめるに留める。


「あらアイリス。勘違いしてもらっちゃ困るわね。私はいつだって本気よ?」

「そうかそうか! ならこのクエストはギルドのお姉さんからじ・き・じ・き・に! 頼まれたリリーナさんだけでやってもらいましょうか! 帰るぞ! ミカ、アイリス!」


 人がせっかく堪えてやったというのに、わざわざ火に油を注ぐような真似をしてくださりやがったリリーナにブチ切れる。これでキレない方がどうかしてる。


「まあまあユウマ。少し落ち着きなよ。リリーナもさすがに言い過ぎだよ。ユウマだって少しはまともなところがあるんだよ?」

「お前は俺とリリーナを取り持とうとしてるのか? それとも第三勢力として敵になりたいのか?」


 幼馴染の何とも言えないフォローに毒気を抜かれた俺は大きく脱力する。

 これ以上の言い争いは無意味だ。ただ俺の体力を持っていかれて、この後のクエストに支障が出るだけだ。

 それにリリーナを痛い目に合わせて学ばせるのは不可能だということを失念していた。

 そんなことでリリーナが何かを学ぶのだとしたら、魔法使いのくせに魔法も使わず、むやみやたらと魔物に突っ込んでいったりするはずがない。

 ということは、リリーナには学ぶという概念がない。そのための頭がない。つまり脳がない。

 はい。三段論法によりQED。

 俺ってばマジ賢い。


「それにリリーナ。さっきの説明は少し間違ってるよ」

「は? なに? やっぱりさっきのはリリーナの妄想なの?」

「妄想なんかじゃないわよ!!」


 怒鳴ってくるリリーナを無視してミカに話の先を促す。


「ギルドのお姉さんは―――」

「ギルドのお姉さんは?」

「「リリーナさんやミカさんたちにしか頼めないクエストなんです」って言ったんだよ!」

「シャラーーーーーーーップ!!」

「いったぁーーいっ!!」


 俺は『ゲート』により取り出した、ギルドのお姉さんからもらった、すでに終了したクエスト依頼用紙で暇つぶしに作ったハリセンでミカの頭を引っぱたいた。


「なにすんのさユウマ」

「お前がくだらない上に必要のない訂正を入れてきたからだろうが!」

「だからって乙女の頭を叩くことないじゃん! バカになったらどうすんのさ!」

「大丈夫だ。お前はすでに結構なバカだ。そしてバカは死んでも治らないらしいから治ったりすることもない。安心しろ」

「今の説明のどこに安心できる要素があったのか教えてほしいな!?」


 こんな時間だというのに漫才みたいなことをしながら歩くこと数十分。

 もうそろそろクエスト用紙の地図に書かれた目的地に着くはずだ。


「そういえばアイリス。眠くないか? いつもならもうとっくに寝てる時間だろ? もしあれなら俺と一緒に帰るか?」

「おっと、ユウマ! そんなことはさせないよ! 自分だけ楽しておいしい汁を吸おうたってそうはいかないからね!」

「お前なぁ、確かに半分くらいはそういう魂胆だけど、アイリスが心配なのだって本気に決まってるだろ。お前らじゃあるまいし」

「今の言葉聞いてなおさら返したくなくなったよ!!」


 なぜか憤慨する幼馴染を無視して俺は改めて天使アイリスに声をかける。


「で、アイリス。どうなんだ? 無理はする必要ないぞ?」

「大丈夫ですよユウマさん。眠くなっちゃうことは予想できたので、今日はお昼にたっぷりお昼寝しておきましたから。元気いっぱいです!」


 笑顔で元気アピールをするアイリスに癒された俺は無意識のうちにアイリスの頭に手をやっていた。


「ゆ、ユウマさん!? その……この手はいったい……?」

「ごめん、アイリス。本当に無意識のうちに手が動いてたんだ。あまりの尊さに俺のゲージが飽和してな」

「え、えっと……」

「アイリスちゃん。簡単に言うとね、アイリスちゃんがかわいすぎるからセクハラしたくなったって言ってるんだよ」

「ざっけんなミカ! 俺がアイリスにそんな不純なこと思うわけないだろうが! イエス・ロリータ・ノータッチを一度も破ったことのない俺に何を言う!」

「いや、思いっきり今アイリスちゃんの頭撫でてるけど」

「……」


 おかしなことに、本当におかしなことにバカなはずの幼馴染に論破されてしまった俺は口を結んで黙秘権を行使した。その際もアイリスの頭を撫でることは忘れない。

 あと、俺は弁護士が来るまで何も話すつもりはないぞ!


「にしても、マジで厄介なクエストを押し付けられたもんだ……」


 手に持ったクエスト用紙を眺めながら何度目になるかわからないため息をこぼす。


「ユウマさんでもやっぱり難しそうですか?」

「どうとも言えないな~。なにしろ今まで相手にしてきたどの相手にも似てないし、正攻法すら教えてもらえなかったし、正直今日は様子見ってところだと思ってるくらいだ。……正直クエスト内容が嘘くさいし」


 そう。俺がここまで渋りに渋っているのはなにもこんな時間にクエストに行かされるからだけじゃない。

 むしろこっちの方が本命だといっても過言じゃない。


「でも私、やっぱり放っては置けません。この辺りに住んでる人も困ってるみたいですし、ギルドのお姉さんもすごく困ってました。私たちでどうにかできるならどうにかしたいです。だからユウマさん、もう少しだけでも頑張ってみようって思ってもらえませんか?」

「よしっ! いっちょ気合い入れて頑張ってみますか! おい! 早くしろリリーナ、ミカ! 俺とアイリスの睡眠時間のためにも気合を入れろよ」

「こうまで見事に手のひら返されると何も言えなくなるわね……。呆れたという意味で」

「リリーナ。ユウマは元からああいう人間だよ。むしろあんなの日常茶飯事だから。ユウマの手はドリルでできてると思った方がいいよ」

「俺のドリルの回転率をなめんなよ!」

「しかも調子の乗り方が天元突破してるから性質が悪い……」

「そうね、もう疲れちゃったわよ。何もしてないのにね……」


 さっきとは逆に俺はやる気満々、ミカとリリーナはやる気を失ったところで目的地に着いた。


「とはいえ、やっぱりめんどくさそうだよな~」


「ユウマ、やる気出すならしっかり出し切ってよ……」

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