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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第七章
169/192

18話

「だから、返してもらうぜ。俺のヒロインたちを!」


 考えはまとまりきらなかったが、このまま膠着状態を続けていてもしょうがないと思考を切り替え、とりあえずこういう時は強い衝撃でも与えればなんとかなるという、家電製品の間違った直し方を実践すべく、一番距離の近い、殴っても後から心が一番痛みそうにないリリーナからまずやることにした。


 実弾の銃は使えない。魔法銃は怯ませることすらできそうにない。なら両手をフリーにしておいて、いざというとき得意の姑息な魔法の使い方で窮地を脱する方がマシと考えた俺は、両手をフリーにしたままで突っ込もうとする。


 しかし、レティシアもこちらの思い通りに事を運ばせてくれるつもりはないらしく、指示を飛ばした。


「えっと、そこの赤髪のお嬢ちゃん……リリーナとか言ったかしら? 坊やを殺さない程度に痛めつけなさい」


 たったそれだけの命令で、さっきのアイリスと同じように目を虚ろにして、レティシアの操り人形と化しているリリーナが杖を構える。


「させるか! 『リスント』」


 魔法を紡がれる前に口元を塞いでやろうと、拘束魔法『リスント』を唱える。

 これでリリーナの口元を塞いでしまえば、リリーナはただの力が強い魔法使いになり下がる。

 はずだった。


「なっ! リリーナの癖に避けただと!?」


 普段のリリーナならまともに食らっていたはずの『リスント』を何事もなく回避する操りリリーナ。

 こいつ、普段より強いんじゃないか?


「ふふふ。普段はどうなのか知らないけれど、この子が私に操られている以上、そう簡単にいくとは思わないことね、坊や」


 不敵に笑うレティシアに舌打ちをしつつ、後ろへ飛んで後退する。

 しかし、それを読まれていたのか操りアイリスが着地地点めがけて『スプラッシュ』を放ってきていた。

 どうにかそれをスンのところで回避した俺は崩れてしまった態勢を整える。


「思ったより頑張るのね坊や。正直坊やみたいに手の内のわからない子が一番相手にしにくいから魅了されてほしかったわ」

「それはご生憎さまで。おかげでこっちは絶体絶命だ」


 正直なめていた。

 これまでなんだかんだ色んなことをどうにかしてきたから、今回もどうにかなると高をくくっていた。なめプなんて俺が一番嫌う行動を自分自身がした結果がこれだ。マヌケにもほどがある。


 ダンジョンから魔王幹部を引き連れてきて、リリーナの魔法で大ダメージを与え、弱ったところをタコ殴りなんて言う幼稚な作戦、そんな小学生でも考えられそうな作戦じゃどうしようもなかったか。


「それじゃあ今度は一番坊やと仲の良さそうだった格闘家のお嬢ちゃん。大好きな坊やに抱き着いてきなさい。動けなくなるほどに」


 最後の最後だけを意図的に聞き逃せば、とても喜ばしい命令を、操りミカへ飛ばすレティシア。

 一番まずいやつが来る! と、身構える俺。

 この中で一番相手にしたくないのがミカだ。長い付き合いだとか、そういうのじゃなくて、一番相手に回ると(たち)が悪い。

 魔法使いであるところのリリーナとアイリスは杖の方向を見て魔法を避けたり、詠唱時間を見計らって妨害ができる。それに操っているレティシアが知らない魔法はおそらく使ってこない。というか使えない。つまりはリリーナとアイリスのフルスペックを使いこなせない。

 しかし、格闘家であるところのミカはそんな長い予備動作がない。予備動作があってもそれを見てからの回避が間に合わない。『金剛力』なんて使われたらなおさらだ。

 シンプルな物理的強さを持っていたミカ。それゆえに相手が何も知らなくてもフルスペックで操られてしまう。最悪なんて言葉じゃ生ぬるい。悪夢だ。


 あと、仲が良いってなんかエロ……くないよね! うん! ユウマはまだ純粋!!


「ふふふ。面白くなってきたわね~」


 絶体絶命の俺を面白そうに舌なめずりしながら眺めてくるレティシア。これがこんな状況じゃなきゃ、無駄にエロティックな舌を凝視したいところだが、生憎今はそんな状況じゃない。

 こうしている間にも操りミカが動き出そうとしている。


「くそっ! 万事休すかよ。でも、ただじゃ死なねえぞ。せめて最後にミカの胸くらいは揉んで死んでやる!」


 覚悟を決めて、せめてもの抵抗として胸を揉んでやろうと手を前に構える。

 そこまでしたところでミカが動き出した。おそらく『金剛力』を発動しているであろう圧倒的な脚力で地面を蹴りつけようと肩幅ほどに足を開き、腕を振りかぶる。

 ここまではレティシアの描いた想像通りだっただろう。俺だってその想像をしていた。が、操りミカはとんでもない行動に出ていた。


「ちょ!? どういうことなの!?」


 俺ですら状況がわからずに混乱しているこの状況で、レティシアが困惑と驚きの声をあげた。

 でも、それもそうだろう。レティシアはミカに俺を攻撃するように命令したのだ。それがまるで命令を無視して、自分に攻撃を仕掛けてこれば驚きもするだろう。


「ちぇ~。外しちゃったか~」


 あっけらかんとした声を出すミカ。

 ミカはそのまま大きく後ろに飛んで俺の隣に並んでくる。訳がわからずに混乱している俺にミカは笑いながら話しかけていた。


「すぐに助けなくてごめんねユウマ。レティシアに不意打ち仕掛けようとしてて動けなかったや。あー、でも、本当に危なかったら助けるつもりだったんだよ。あと、不意打ちも失敗しちゃった」


 なんてことないように、最後に「てへっ」とかついててもおかしくない感じで言ってくるミカ。

 え? マジでどうなってんの?


「お前……レティシアに操られてたんじゃないの?」


 どうしても気になってしまったので尋ねてみると、ミカは首を傾げながら応じてくる。


「ううん。全然操られてないよ。ユウマが目を見るなって言うから目を逸らそうとしたら、レティシアの目が光って、まずいって思ったんだけど、なんか全然変化なくてさ。それなのにアイリスちゃんとリリーナの様子がおかしかったから、利用してやろうかなって思って今まで操られた振りしてた」


 なんてことないようにそう語るミカに俺は驚きを隠せない。

 どうしてレティシアの『魅了』に掛かっていないのか、とかそんなことではない。

 俺が驚いているのは―――


「ミカにそんな賢い頭があったなんて……」

「そのやり取り最近やったよ! 本当にひどいよ! 私だっていろいろ考えてるんだよ!!」


 憤慨するミカに笑いかけながら、この最悪の状況が一気にこちらに傾いたのを感じ、心に余裕が戻ってくる。

 しかもどういうわけか『魅了』が効かなかったのがミカなのも大きい。

 今までの対応を見たところレティシアは物理か魔法かで言えば魔法タイプ。しかもヴォルカノと違って物理も有効そう。さらにはミカは『魅了』効かない。

 いける! いけるぞ!!


「これで形成逆転の逆転だな、レティシア」

「そうかしら? これでも三対二で私たちの方が有利だと思うけれど。それに、こっちには坊やたちのお仲間が二人もいるのよ? 攻撃できるの?」

「はっ! なんで俺が仲間を攻撃できないと思った? アイリスはともかくリリーナにならどんな攻撃でもできるぜ!」

「そ、それは本当に仲間と呼んでいいのかしら……」


 なぜか敵に仲間の定義について確認される俺はいったい……。


「それにしても、なんでそのお嬢ちゃんには私の『魅了』が効かないのかしら? 不思議ねえ」

「さあね。でも、私はあなたになんか魅了されないよ。私が魅了されちゃうくらいの人は、私自身で決めるもん」

「あらあら、意地らしくてかわいいわね~。若いわ~」

「それはぴちぴちの十代。花の女子高生ですから!」

「花のなに? ジョシコウセイ? そんな花あったかしら?」


 こちらには学校という概念すらないので女子高生という言葉にピンと来ない様子のレティシア。大変面白い勘違いをなさっている。


「バカなことやってないで行くぞミカ! とっと終わらせて今夜もパーティーだ!」

「それは今から楽しみだね! 頑張らなくちゃだ!」

「そうはいかないわよ、坊や。私だってただでやられてあげちゃうほど優しくないもの」

「つまり、金を積めばヤらせてくれると?」

「ユウマ、怒るよ」

「ごめんなさい」


 隣から殺意を感じたので、顔を見るのが怖い俺はそのままレティシアを見据えて即座に謝った。ミカの平穏を守るためなら俺のプライドなんて安いもんさ!


「さて、お喋りはもうそろそろ中断しましょうか。行きなさい、私の忠実なお人形さんたち」


 レティシアがそう告げるだけでリリーナとアイリスが各自行動を開始する。

 さらには今回はレティシアまで動きだした。


「ミカ、レティシアの相手はお前に任せた! 俺はリリーナとアイリスの注意を引き付けつつ時間を稼ぐ!」

「オッケー! 任せて!」

「そうわさせないわよ!」


 リリーナとアイリスの方へ突貫する俺にレティシアが火の玉を飛ばしてきた。

 元から当てるつもりはなかったのか、ほとんど動かずに火の玉を避けることに成功する。

 しかしそれは、俺とミカの行動を制限、あるいは思い通りに動かすためのものだったらしい。


「リリーナ! アイリスちゃん! どいて!」

「「……」」


 気づけば俺とミカは分断されてしまった。

 俺とミカを挟んでレティシアと、操りリリーナとアイリスがいる。挟み撃ちと考えればなかなかいい状態だが、そうもお気楽な思考は生憎持ち合わせていない。


「お人形さんたち。絶対にそのお嬢ちゃんをこっちに来させちゃだめよ? 体を張ってでも止めなさい」

「っ! そんなの卑怯だよ!」

「なんとでも言いなさいお嬢ちゃん。魔王幹部にまっとうで正しい戦闘を求める方が間違ってるわ」


 基本的に正義の味方が好きなミカには理解に苦しむ言い分だろう。

 でも、レティシアの言っていることはどこまでも正しかった。


「待っててユウマ! どうにかしてそっちに行くから!」


 完全に俺とミカの立場が逆だなー。なんて思いつつも、俺はミカの助けは期待できそうにないと諦める。

 いくら操られているとはいえ、ミカにあの二人を攻撃するのは無理だ。かといって攻撃しないで突破も難しいだろうしな。

 現にミカは二人への攻撃を渋り、苦々しい顔をしながら防戦一方だ。あの状況じゃ仕方ないだろうが。


「さて、これで二人っきりね。坊や」

「そうだな。どうせならそういうセリフはどっちかの部屋とかホテルで聞きたかったわ」

「あら嬉しい。私は別に構わないわよ。坊やが私専用になってくれるならね」

「だからそういうちょっと悩んじゃう選択肢出してくるのやめろ。悩んじゃうだろ」

「悩まなくてもいいのに」


 軽口を叩きながら、手を後ろに回して『ゲート』を開き実弾用の銃と念のため魔弾用の銃を取り出す。

 あんまり美人にこういうのは使いたくないんだけど、一応な。


「それじゃあ坊や、本格的に戦う前の最後の質問なのだけど、いいかしら?」

「なんだよ? もしかして降参でもしてくれるの?」

「まさか、そうじゃなくて、私のおっぱいとか、見たくないかしら?」

「見たいに決まってるだろ!」

「素直でいい子ね。それじゃあ顔をあげてみて、あなたの期待したものがあるわよ」

「えっ!? マジで!」


 今までレティシアと目を合わせないようにレティシアの足ばかりを見ていた俺が、おっぱい見たさに顔を上げる。

 だって、男はおっぱいに逆らえない。世界の心理だよ。これ。


「おい! おっぱい出てないじゃん! ようやく生おっぱいが見れると思ったのに! 男の純情返せ! 俺のときめきを返せ!!」


 そう抗議した時にはレティシアは妖艶に嗤い、俺の顔を見ていた。正確には俺の瞳をのぞき込んでいた。

 しまった。エロス気を取られて!


「このバカエロユウマ!!」


 レティシアの奥でリリーナたちと戦っているミカが呆れたように怒鳴ってくる。

 その声が聞こえてきたときには既にレティシアの目が光っていた。

 急いで視線を逸らすも、一瞬とはいえ完全に目が合ってしまった。まずいと思いつつも、何もできないでいると、俺の体に小さな変化が―――


 現れなかった。


「あれ? なんともないぞ?」


 体は自由に動くし、変な妄想に取りつかれることもない。

 他に思い当たる『魅了』の弊害も一切見られない。


「な、なんで……もしかして坊や……」


 ミカの時と同様に驚きの顔をするレティシア。しかし次には何か思い当たる節でもあるのか、それを口にした。


「最初から私に魅了されてる? 私が魅了するまでもなく、私に『魅了』されちゃってるの?」


 どういう意図で聞いてきているのかはさっぱりだが、俺が素直な気持ちを吐露してやった。


「そりゃあそんな大人の女の体を見せつけられたら魅了されちゃうだろ。言葉遣いとか、ちょっとした仕草とか、今まで会ったどの女より大人っぽいし、声もなんかエロス入ってるし、そんな俺の理想の一つである大人のお姉さんが目の前に出てきたら魅了くらいされるだろ」


 俺は恥ずかしげもなくそう言うと、以外にもレティシアは照れたように顔を真っ赤にして俺から顔を背ける。


 今だ!!


 まったく予想していた展開ではないが、レティシアが隙を見せたのならそこを利用しない手はない。

 俺は全速力でレティシアに突っ込んでいき、それに気づいたレティシアが何かの魔法を使うよりも先にレティシアに体当たりをかました。

 勢いのままレティシアと共に地面に倒れこむ。

 しかし、痛みは全くと言っていいほどない。おっぱいがクッションになってくれたから!!


「動くな! 動くと撃つぞ!」


 レティシアの眉間に白い拳銃を突き付けながら、人生で一度は言ってみたいことランキングに入っている言葉を言い放つ。


「あらら~。馬乗りにされちゃった……。お姉さんどうなっちゃうんだろ?」

「おい、やめろ! そんな反応されると息子が起きちゃうでしょうが! 今起きられると大変だから黙って!」

「それで~坊やはそのおもちゃでどうするつもりなのかな? もしかして、それで私を倒せるとでも?」


 おちゃらけてきたかと思えば、やや挑発気味な言葉を放ってくるレティシア。こういうこちらに会話の所有権を握らせてくれなかったりするところが、男を手玉に取るサキュバスらしいと言えばらしい。


「あまりこれをバカにしない方がいいぞ。こいつは金属でできた弓みたいなもんでな。威力だって弓以上にある。見てろ」


 そう言うと俺はレティシアに態勢を入れ替えられないように注意しつつ、もう片方の手で黒い銃を取り出す。実弾の銃だ。

 俺はそれを近くの大木目がけて二発ほど発砲する。銃を撃った時特有の音を響かせて放たれた弾丸は、大木に見事な穴をあけた。


「どうだ。今お前の額に当ててるのも少し色や形が違うけど、同じものだぜ」


 ここぞとばかりにハッタリをかます。

 やはり男ユウマ、美人を殺すなんて相手がサキュバスでもできるはずがなかった。

 だから降参を促すために、わざわざ白い方の、魔弾を撃つ方の拳銃をレティシアの眉間に押し付けている。

 そう。俺の拳銃をレティシアに……ミカがなんかこっちを冷たい目で見てるからこれ以上は止めよう。

 とにかく、俺はハッタリではあるものの、レティシアを追い詰めた。


「これでわかっただろ? もうお前の負けだ。こっちはお前が魔法を使うより早くこいつを使える。頼みの『魅了』も俺には効かない。お前が操ってるリリーナとアイリスもミカの相手で精一杯だ」


 一つ一つ、お前に勝ち目はないとレティシアに説明をしていく。

 そんな中でもレティシアは色っぽく笑うだけで、表情を強張らせたり、悔しがったり、ましてや命乞いなんてしなかった。

 そこはさすがは魔王幹部と言ったところか。


「チェックメイトだ。意味、わかるか? お前の負けだって意味だ」


 伝わるかわからない言語をあえて使い、その意味もしっかりと教えてやる。

 今日だけで一度でいいから言ってみたい言葉ランキングを二つも制覇してしまった。


 俺の言葉を受けて、少しの間何かを考えるように黙り込んでいたレティシアだったが、すぐにさっきまでの色っぽい表情を止めて諦めたように緊張を解いた。


「は~あ。降参よ、降参。お姉さんの負け~。もう煮るなり焼くなり好きにしていいわよ」

「それじゃあとりあえずあの二人の『魅了』を解いてくれ」

「はいはーい」


 軽い感じでレティシアが言うと、指を軽く弾いた。

 こ気味の良い音が耳に届いたと思ったらいきなりリリーナとアイリスがその場に支えが無くなったように倒れこむ。

 二人を牽制していたミカが二人を抱きとめようと足を延ばすも、今まで大人しくしていたドジが暴れ出し見事にズッコケる。

 見事に女の子が地面に三人倒れていた。

 なあ、あれ、俺の守ろうとしたヒロインたちなんだぜ? ちょっと悲しくなってきたんだけど。


「しばらくしたら目を覚ますと思うわ。それで、他には何かないのかしら?」

「そうさな……」


 色々と思考を巡らせてみる。

 言葉自体は少し違ったが、レティシアは俺に負けたから私に何でもしていいよ。という旨の言葉を告げてきた。

 俗に言う、何でもしますから! という奴だ。

 そうなればやっぱり最初にエロイことを想像するのが男という生き物だが、それを今やったら一瞬でミカにやられる。

 というわけで泣く泣くエロ方面の頼み事は却下。となるともう―――


「いや、ないな」

「え? いいの? これでも私、魔王軍の情報とか結構いっぱい持ってるわよ?」

「いらねーよ、んなもん。そんなの聞いたら逆に狙われそうで怖い」

「でも、他の魔王幹部の弱点とか、聞いておいて損のないこともあると思うけど。それに聞いた後に私を殺しちゃえばいいわけだし」

「バカ言え! なんで俺がお前みたいな美人を殺さないといけないんだよ。俺は魔物だろうが天使だろうが、話が通じて自分に害がないなら別にいいんだよ。むしろ仲良くなりたいまであるね。萌えるし」

「ぼ、坊や、本当に変わってるわね~。それじゃあ坊やは、あの子たちの『魅了』からの解放と、私の胸を揉みし抱くためだけに戦ったの?」

「そうだよ。別に俺は正義の味方とかそういうのじゃないからな。元はギルドのお姉さんに頼まれてってところからのスタートだけど、最終的にはこいつらのお守りだ、お守り。……って、え?」


 レティシアの質問に適当に答え、なんかさっきの質問おかしくないか? と気づく。

 確かレティシア、こう言ったよな? 「あの子たちの『魅了』からの解放と」―――


「私の胸を揉みし抱くためだけに戦ったのって……」


 そこまで言って自分が手を着いている場所に目を向ける。

 俺が手を着いていた場所。はっきりと言ってしまえば、そこは固い地面なんかじゃなかった。逆にもっと柔らかく、ふよふよというか、ぽよぽよしている場所だった。じゃあお腹だ! いつもの流れ的にお腹でしょ! と思ったそこのあなた。ちょっと待ってほしい。レティシアはミカと違って体が引き締まっている。

 いわゆるボッ・キュッ・ボンという奴だ。

 そのレティシアのお腹が柔らかと思うか?


 結局のところ、俺がどこに手を着いていたか。だが、答えはさっきレティシアが言った通りだ。


「おっ……おおおおおおおおおおっ!!!」


 俺が今まで手を着いていた場所。

 そこは―――


 レティシアの豊満なバストだった。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおっしゃあああああああああああああ!!」


 思わず大声をあげてしまう俺。

 でも、仕方ないだろ! 人生初の生おっぱいよ! しかもこんな美人なお姉さんのよ! 興奮するな、叫ぶなって方が無理でしょ! むしろそれ以外の行動は相手に対する侮辱ですらあるね!

 心の中どころか現実ですら大興奮の俺に、レティシアがエロスを感じさせる悪戯な笑みで言う。


「もう……えっちな坊やね……」


 俺の股間のマグナムが支度を始める中、この状況で動き始めている者がいた。

 リリーナとアイリスはまだ気を失っている。レティシアは俺に馬乗りになられている。ということは、行動を起こしているのは一人しかいない。

 ミカだ。


「ユウマ~。これは一体どういうことなのかな~。納得のいく説明を要求するよ」

「い、いや……これは……これは違うんですのことよミカさん。これはそう……事故! 事故なんだよ! たまたま手を付いた場所がおっぱいだっただけで決してわざとじゃ」

「へえ~。事故じゃしょうがないよね」

「そ、そうだよ! 俺、痴漢冤罪とかそういうの、マジでだめだと思う! その点ミカはちゃんと話を聞いてくれるし、好感が持てるな~!!」


 全身冷や汗で汗だくになりながらどうにか慎重に言葉を選び、絞り出す俺。

 なにこれ、ちょっとした裁判の気分なんですけど。学級裁判の後半戦の気分なんですけど!!


「そうだねー。私も痴漢冤罪とかの話を聞くと、なんでそんなことするかなー。ひどいなーって思うよ」

「だろだろ! いやー、さすがは俺の幼馴染! 話が早くて助かるわ!」

「そうでしょ。伊達に長年ユウマの幼馴染やってないからね。……でもさ、ユウマ」

「は、はい。なんでしょうか……」

「痴漢でも盗撮でもなんでもさ、現場そのものを確保されちゃったらどうしようもないよね。だって、悪いことしてるところを見られちゃってるんだもん」

「そ、そうですね……」

「それでさユウマ。ユウマの左手は今どこにあるのかな?」

「えっと……左足の膝の上にございます」

「それじゃあ右手は?」

「そ、それは―――」


 ミカに責められ、俺は自分の右手に目をやる。

 未だにレティシアのパイオツを掴んで離さない右手に。


「……。…………。……………。てへっ!」

「かわいくない。即刑罰!」

「ガザC!!」


 こうして俺は、魔王幹部にではなく、味方であるはずのミカの一撃によって気を失った。


「まったく……さっきは俺のヒロインとかいろいろかっこよかったのに、なんで最後はエッチになっちゃうかな」

「あなたも大変ね~お嬢さん」

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