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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第七章
166/192

15話

「……はあ~。やっぱり帰りたくなってきた」

「いや、早すぎるでしょユウマ。あんなにギルドのお姉さんと冒険者のお姉さんに見栄張って任せろとか言っておいて」

「そりゃあ言ったけどさ、話を聞いた感じヤバそうな感じがぷんぷんだったじゃんか。もう十組以上の実力ある冒険者たちが挑んでで、あのお姉さんを除いて全員帰ってきてないんだぞ。まあ魔王幹部だってんなら当然ちゃ当然だけどさ」


 あの後すぐにみんなでギルドまで赴き、ギルドのお姉さんとアイリスの言っていたどうにか逃げ帰ってきたという美人なお姉さんに話を聞いてみたところ、どうにも厄介な感じが半端なかった。

 良いところがあったとしたら、アイリスの言っていたとおり冒険者のお姉さんがかなりの美人さんだったことくらいだろう。


「まったく、なに戦う前から弱気になってるのよユウマ。なんだかんだ言って今まで上手くやって来たじゃないの。私たちのおかげでね!」


 私たちのおかげ、という部分をやたらでかい胸と一緒に強調しながらリリーナが言ってくる。

 そんなリリーナに呆れつつも俺は言い返す。


「今まではただ運が良かっただけだからな。いつまでも今まで通りってわけにはいかないんだぞ。それに今回に限ってはお前、一番の役立たずだからな!」

「な、なによ! 私のせいじゃないじゃない! ダンジョンの奥になんている引きこもりの魔王幹部の方が悪いのよ! そんなに自分に自信がないならどこかの山奥とかにずっと引きこもってればいいんだわ!」

「や、やめろリリーナ! それは俺にも効く!」


 魔王幹部なんて言う厄介なのを相手にする前に、何故か味方に精神的ダメージを負わされながらもダンジョンまでの道を歩く。あと数分もすればダンジョンの入り口に着くはずだ。


「でも、ユウマさんの言うこともわかります……。今までに何組もの冒険者パーティーが挑んでいるのに、負けて帰ってくるどころか帰ってすら来ないなんて……。みなさん、無事なのでしょうか……」


 どこかしょんぼりとするアイリス。

 励ましてやりたいところだが、みんなが無事な可能性はほとんどないと言ってもいいだろう。下手な慰めは逆に傷つけるだけだ。


「まあ、良く見ても五分五分だろうな。アイリスには酷かもしれないけど、生きてりゃラッキーくらいの気持ちではいた方がいいと思うぞ」

「そ、そうですよね……。早く蘇生魔法覚えたいです……」


 心の底からそう思っているだろうことが見ているだけでもわかるほどアイリスが落ち込んでいるのがわかる。それはミカとリリーナも同じようで、なんて声を掛けたらいいのか迷っている様子だった。

 アイリスに掛ける言葉に迷っているうちにダンジョンの入り口までたどり着いてしまった。

 仕方なくアイリスを励ますのを一旦諦めた俺は、ダンジョン突入前の最後の確認ということで、今回の作戦の概要を説明する。


「まず、今回はメイン火力の一人であるリリーナが完全に使い物にならない」

「ちょっと待ちなさいユウマ! それはユウマが勝手に言っているだけで私はいつも通りやれるわ!」

「いつも通りやられたら困るんだよ! みんなでダンジョンの生き埋めとかアイリスと同じ墓に入って死ねてる気がすることくらいしかいいことがないだろうが!!」

「ユウマも落ち着こう!? 今のユウマ結構危ない発言してるからね!?」


 作戦の確認を始めて早々にバカをやる俺達。

 なんで俺たちはこう、ビシッと決められないのだろうか。


「ったく、話を戻すぞ。今回の作戦は基本的にこっちが圧倒的に不利な状況だ。わざわざダンジョンの奥なんかに住んでることからして暗いところでも相手は目が効くんだろうし、実力は魔王幹部つーことで最低でもヴォルカノと同等レベル。なのにこっちはメイン火力のリリーナがまともに戦えず、視界も悪い。物理のメイン火力であるミカが戦える相手かもわからないし、戦えたとしてもさっきも言った通り視界が最悪だ」


 自分で説明しておいてなんだが、何だこの状況。

 絶望的じゃね? 絶望しかなくね?

 相手にだけ有利な条件がたくさんあって、こっちに不利な条件もたくさんある。しかもヴォルカノの時と違って今回は討伐班が俺達のパーティーのみ。

 ……。

 これは、かの超高校級の希望さんでも「希望は後ろにも進むんだ!」とか、言っちゃうレベルなのでは?


 やっぱり諦めて、本気で帰ることを検討し出した俺に、逃げ場はないぞとばかりにミカが言葉を放ってくる。


「それでユウマ。結局どうするの? とりあえず道中はリリーナに魔力を抑えてもらって進んで、魔王幹部戦はアイリスちゃんの『ライト』で視界を確保しつつ、私メインで戦闘とか?」

「やっぱり今日は帰ろう。ミカの様子がおかしい。魔王幹部相手に万全じゃない状況で挑むなんて自殺行為だ」

「そうね。ミカ、調子が悪いなら言わなきゃダメじゃない。確かに私も早く行きましょ。って言ったけど、無理はよくないわ」

「ちょっと待ってよ二人とも!? 私全然元気だよ!? 元気いっぱいだよ!? なのになんでそんな優しい目と声で心配してくれるの!?」


 俺とリリーナの配慮に驚いた様子で反論してくるミカ。

 そんなミカを見て、俺は確固たる意志をもって今日は帰るべきだと進言することにした。


「やっぱり今日は止めにしよう。ギルドのお姉さんも話せばわかってくれるはずだ」

「そうね、仲間の体調が第一だわ」

「いや、だから待ってよ二人とも! ユウマはともかくなんでリリーナまでそんなこと言うの!? あんなに魔王幹部と戦いたがってたじゃん! それに、私のどこが変だっていうのさ!」

「え? そりゃあ」

「それは」


 ミカの質問に俺とリリーナは少しだけ顔を見合わせると、声を揃ってその理由を口にした。


「「ミカがまともな作戦を立てるなんておかしい(もの)」」


「本気で酷くない!?」


 キレのあるツッコミを見せたミカは最後の希望とでも言うようにアイリスの方を見ると、藁にでも縋るような勢いでアイリスに尋ねた。


「あ、アイリスちゃんは二人みたいなこと思ってないよね? アイリスちゃんは優しいもんね? ね?」


 もはや謎の圧力のようなものさえ感じさせる勢いでアイリスに迫るミカ。そんなミカにアイリスは素直な気持ちを口にした。


「えっと……その……すいません、ミカさん。私も少しだけ……本当に少しだけ、ユウマさんたちと同じことを思っちゃいました……」


 申し訳なさそうにアイリスが俯く中、ミカが最後の希望であった天使アイリスにまでそんな風に思われていたのかと、がくんと下を向く。

 そんなミカをフォローしようと、アイリスが必死に手をわたわたさせながら励ましの言葉を口にする。


「で、でも本当に少しだけなので! ミカさんだってたまにはちゃんと考えた普通のこと言いますし!」

「たまには……」

「そ、それにいつものドジだって、私たちの緊張や場の雰囲気をを和ませようと、ああいうことをしてくださってるんだって、私わかってますから!」

「あ、あれは割と本気でドジってるんだけど……」

「あわわわわわっ! ゆ、ユウマさーん」


 どうにかフォローを入れようとしたアイリスが結果、さらにミカを追い込むという悲しい末路を迎える。

 ミカ。わかるぞ。アイリスみたいな純粋な子に言われる言葉が一番胸に来るんだよな? 俺にも経験があるぞ。たくさん。


 先ほどより目に見えて落ち込んでいるミカになんとか声を掛けようとするも、なんて声をかけたらいいのかわからないらしいアイリスが、俺へ半分涙目になりながら助けを求めてくる。

 さすがにこのまま見て見ぬふりをするわけにもいかないので、助け舟を出すことにした。


「ま、本気はさて置いといて話を戻すぞ」

「ねえユウマ! そこは冗談をさて置こうよ! 置くもの間違ってる! 絶対間違ってる!!」


 ツッコミによりミカが元気を取り戻したのを確認した俺は、今度こそ作戦の最終確認を始める。

 確認は五分もかからずに終わり、その間に心の準備、というよりは諦めもついた。


「はあ~……。そんじゃあ気が乗らないけど、行くか」


 こうして、重たいため息とともに俺は三度目になるダンジョンへと足を踏み入れたのだった。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ね、ねえユウマ……。絶対に置いてかないでね……。ユウマに手を引いてもらわないと私、真っ暗でほんとに帰れないどころかまともに歩けないんだからね……」

「あー、はいはい。大丈夫だ。さすがにそんなことはしないから。っていうか、そんなことしても俺にメリットがない。ただでさえ死にに行くようなヤバいところに行こうってのに、頼みの綱をわざわざ捨てたりするはずないだろ」


 怯えた様子のミカが俺の腕をぎゅっと掴み、絶対に離すまいと体を寄せ付けてる。

『金剛力』のせいなのか、それとも緊張から来る地の力なのか知らないが、少しばかり腕が痛い。それに文句も言わずに受け入れる俺ってばマジ紳士。

 ただ、文句を言わないのにはちゃんと理由がある。紳士というのはもちろんだが、もう一つの理由の方が比重は大きい。その最たる理由というのが、俺の腕に当たっているものだ。


 ミカの奴、思ってたより大きいぞ! ちゃんと感触が伝わってくる! これは新発見だ!!


 ぎゅっと掴まってくるミカから感じられる柔らかな感触。その感触を楽しみたいがために俺は紳士を貫いている。

 え? それじゃあ変態紳士だって? ……同じ紳士だからいいんだよ! ちゃんと紳士って言葉が入ってるからいいの!


 というわけで現在、ダンジョンの入り口で最後の作戦会議を終えた俺は、ミカと一緒にダンジョンに潜っていた。

 残りの二人はダンジョンの入り口で待機させてある。


「あ、あのさ、やっぱり明かりつけない? 暗いし、怖いし、歩きにくいしさ」


 さらに俺の腕に体を密着させながらミカが震えた声で言ってくる。腕から伝わってくる感触もさらに強まり変な声をあげそうになるの必死にこらえつつ、俺は至って冷静を装って返事をする。


「だ、ダメだって言ったろ。一応アイリスに教えてもらって俺も『ライト』は使えるけど、明るさの範囲はせいぜい二、三メートル。しかも光量もアイリスの半分くらい。さすがにそれじゃあまともに戦えないだろ。『潜伏』スキルでも魔法の効果までは消せないしな。敵に発見される確率を上げてるだけだ。効率的じゃない」

「で、でもさ~! 私はユウマと違って何も見えてないんだよ? 正真正銘の真っ暗だよ? 目を瞑ってるのか開いてるのか自分でもわかんないんだよ? それよりは多少の明かりがあった方がマシだよ~」


 少し泣きそうな声でミカが抗議してくる。

 しかしそれも仕方ないっちゃ仕方ないことだった。

 俺たちは暗闇のダンジョンの中を明かりなしで『潜伏』スキルのみを使用した状態で歩いている。俺は『暗視』スキルのおかげでこの真っ暗闇でも周囲の物の形だけははっきり見えている。だから割と安全に歩けているわけだが、ミカの場合は俺と違って『暗視』スキルがないため、本人の言う通り正真正銘の真っ暗。

 その中を俺に手を引かれてどうにか歩いている状態だ。ダンジョンの中もそれなりに足場が悪く、ひどいというほどではないにしろ、街中を歩くよりははるかに歩きにくい。

 そんな状況の中だ。文句や泣き言の一つも出てくるものだろう。


「とにかくダメなものはダメだ。ミカを連れてきたのだって、魔王幹部との戦闘の止めに連れてきてるんだからな。あとは道中の回避不可能な理不尽エンカウントの対処も。それ以外の回避できる戦闘は全部回避する」

「だったら途中の魔物も全部私がちゃんと倒すから明かりつけてよ~」

「あーもうしつこいぞ! このまま行くったら行くの!」

「え~っ! そんなぁ~」


 ミカには悪いが危険性を上げる様な行為はあまりしたくない。

 それに明かりを確保したらこの腕の幸せが逃げてしまうからな!!


 そうこうしているうちにダンジョンの一階層の中盤に差し掛かった。


「ユウマ、そういやここって何階まであるの? 私たちはこの前二階に降りてすぐのところで引き返したんだけど」

「俺も依頼で一階を徹底的に探索しただけだからそれ以上のことは知らないけど、ギルドのお姉さんの話だと五階までは確認されてるって言ってたな。あの美人のお姉さんも行ったのはそこまでって言ってたから。たぶん五階が一番下なんじゃないか? 魔王幹部が見つかったのがダンジョンの一番奥って話だったし」

「あ~、そっか。それじゃああと四階分もこの暗闇の中を歩かなきゃなのか」

「まあそうなるな。大人しく諦めろ」

「諦めたらそこで試合終了だってユウマが言ってた」

「いや、言ったの俺じゃねえし、安○先生だし。しかも俺は諦めも肝心の方が個人的に好きだ。あと逃げるが勝ちも好きだぞ」

「確かにユウマが好きそうなラインナップたちだね……。でも、諦めないことも大事だと私は思うよ」

「そりゃあ時と場合によってわな。でも、仮に諦めたらそこで試合終了だったとしても、これは試合じゃないから適応されない」


 俺の屁理屈にミカが「た、確かに!」なんてアホみたいに納得する中、ようやく地下二階へ続く階段が見えてきた。


 あと、時と場合によるって便利すぎない?

 なにかあったら時と場合によるって言っとけば、あとで何か言われてもタイミングが悪かったですね。って逃げられるんだぜ? 最強かよ。


「ミカ、ここから階段だから気をつけろよ」

「うっわあ~。真っ暗闇の階段て本当に怖いな~」


 本当に嫌そうな声を上げるミカに俺は告げる。


「それじゃあ階段は一人で降りてくれ。腕組みながらじゃ危ないし、手を壁につけて歩けば問題ないだろ? その方が安全そうだし、なにかあったら俺が後ろからどうにかするからさ」

「……ねえユウマ。一つ聞いていい?」

「ん? なんだ?」

「あのさぁ。勘違いだったらごめんなさいなんだけど、もしかしてユウマ、私が暗闇の中、ドジって転んで転がって巻き込まれるのが嫌だから先に行かせようとしてない?」

「……」

「もっと言うならさ。あわよくば私がうっかり軽いケガなんてしてくれたら、それを理由に帰れるとか考えてない?」

「……勘の良いミカは嫌いだよ」

「私も小賢しいユウマが嫌いだよ!! ていうかひどい!! かわいい幼馴染にすることじゃない~っ!!」


 結局、ミカが駄々をこねて「手をつないでくれなきゃここから動かない!」なんて言い出し、仕方なくそれに俺が折れて、割と狭い階段を二人手を繋ぎながら降りた。



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