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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第七章
162/192

11話

「ふぃ~……。まさか一日でダンジョン探索が完全に終わるとはな。ザックとシュリちゃんのおかげだな。あの二人の代わりに二人を連れてきて正解だったな」


 あれからダンジョン探索を順調に進めていった俺たちは、ギルドのロリ巨乳ちゃんに言われていたことを全部調べ終えていた。一階の地図、出現魔物、道幅、明かりの有無、その他俺があったら便利そうだと判断した項目をすべて記した紙が腰につけたサイドポーチに入っている。


「ほんとですね。こんなに安全に冒険したのは初めてかもしれません。……あっ! でもでもっ、リリーナさんやミカさんと冒険するのが嫌なわけじゃないですよ! お二人との冒険だって楽しいですから!!」

「あははっ。二人に言ったりしないから安心しろよアイリス。それに、俺だってあの二人との冒険が嫌なわけじゃないからさ。……安定感はないけどな」


 ここにはいないからと、二人の嫌味を交えつつアイリスをフォローする。アイリスは俺のフォローに安心したのかほっと胸をなでおろし、少し前を歩いているザックとシュリちゃんに目をやった。


「それにしても、仲のいい兄妹ですよね。うらやましいです」

「そうだな。俺もあんなかわいい妹がほしかったよ。だからアイリス。俺の妹にならない?」

「あの二人を見ていたら少しなりたいかもって思いましたけど、やめておきます」


 視線を二人から逸らさずにそう言うアイリスに俺は凹む。今の雰囲気なら絶対にイケると思ったのに……。


「なぁなぁユウマの兄ちゃん。ほんとにダンジョンの中で見つけたお宝俺たちが全部もらっちゃっていいのか?」


 前を歩いていたザックが振り返り訪ねてくる。

 今回の探索において発見したお宝は俺たちが回収していいことになっている。だから目ぼしいものがあればもちろん嬉しかったのだが。


「いいぞ。俺たちにとって目ぼしいものはなかったからな。今の装備より性能が落ちるやつか、同じくらいのやつしかなかったからもらってくれ」


 さすがに始まりの街付近のダンジョンだからか高性能な装備やアイテムはなく、売っても大した値段にはならない物ばかりしかなかった。中には盗賊専用装備とかもあったしな。


「んー……そんじゃあさ、ユウマの兄ちゃん。俺たちの報酬はこれでいいよ」

「は? 何言ってんだよザック。それはあくまで俺たちがいらないからやるって言ってるだけで、ちゃんと報酬は山分けにするぞ?」


 これが知らない相手や今日初めて会う相手なら適当な理屈を捏ねてだまくらかしてもいいが、相手は弟分のザックと妹分のシュリちゃんだ。そんなことはやりたくない。


「いいんだよ。今日はシュリが少し迷惑かけたしな。いいよな、シュリ?」

「ふんふん。ぺこり」


 俺の言葉も聞かずにザックが報酬を断り、パーティーメンバーであるシュリちゃんに確認をとると、シュリちゃんも文句はないようで素直に頷き、おそらくはさっきのスケルトンの時のことを頭を下げて謝罪してきた。


「でもなー……どうするよアイリス」

「んー……二人がああ言ってるならいいんじゃないでしょうか? 私がもし二人の立場だったら同じことをしたと思います」

「そうか? まあ、アイリスがそう言うならいいか。俺たちも借金がまだまだ残ってて大助かりだしな」


 それにしても、ここにいる子たちは本当に全員いい子だな。俺が二人の立場だったらもらうもんはもらえるだけもらって、さらにはちゃんと報酬の分け方が平等か疑ってるところだぞ。


「とててて」


 言ったら絶対に変な目で見られること確定なことを頭の中で考えていると、シュリちゃんがこちらに向かって可愛らしい擬音を口にしながら走ってくる。

 子供らしい走り方に愛らしさを感じるが、少し前のめりなのが転びそうで怖い。世のお父さんたちは毎日こんな不安に頭を悩ませているのか。最高だな。


「……また……さそってくれう?」


 目の前で、上目遣いで、シュリちゃんが言った。

 いつも擬音しか口にしないシュリちゃんがちゃんとした言葉を話した。そのことに俺とアイリスは顔を見合わせ一瞬フリーズする。


「……だめ?」


 俺たちが困惑していると、追い打ちをかけるようにシュリちゃんが上目遣いで言ってくる。このままでは泣き出しそうな気配すらしたのですぐに返事をした。


「そんなことないぞ。また一緒に冒険しような。でも、たまにはそっちから誘ってくれな。手伝えそうなら手伝うからさ」

「そうだよ。私も楽しかった。だからまた一緒に冒険しようね」

「うん!」


 俺とアイリスの言葉に満足したのか、シュリちゃんがとびっきりの笑顔を見せる。あまりの笑顔に心臓を撃ち抜かれたような感覚に落ちいった俺は思わず胸の辺りを抑える。大丈夫、血は出ていない。

 俺がそれを確認していると、用は済んだとばかりにシュリちゃんは大好きなお兄ちゃんのところに戻っていく。ザックは俺たちに親指を立ててくれていた。


「私、ユウマさんがなにかと私を妹にしたがったり、娘扱いしたくなる気持ちが少しだけわかった気がします……」

「だろ? だからアイリス。俺の妹に―――」

「いえ、それとこれとは話が別です」

「そですか……」


 少しばかりアイリスと心を通わせた俺は、最後の最後に裏切られてしまったものの、結果的には満足な一日を終えることができた。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「はあ~っ!? じゃあなに! ユウマとアイリスとザックたちでダンジョン探索を終えちゃったってわけ!? ちょっと! どういうことよ!!」


 あの後ザックたちと別れ、アイリスと二人でギルドにダンジョン探索終了の報告をして、報酬を受け取り、ホクホクな俺が屋敷でミカとリリーナにダンジョン探索を終えたと報告すると、案の定リリーナが突っかかってきた。


「どういうことも、そういうこともないだろ。またお前とダンジョン探索行って殺されそうになっても困るんだよ。だから俺選抜によるダンジョン探索の最高メンバーで挑んできたってだけだ」

「それがおかしいって言ってるんじゃない! 私たちはパーティーでしょ! それなのに他の奴らとパーティー組んでクエストってどういうことって言ってるのよ! あの時のことだってユウマが私の存在意義を奪ったのが悪いんじゃない!!」

「あのなぁ。俺だって最初から杖を取るつもりなんてなかったぞ。俺は確かに言ったよな? ダンジョン内では魔法を撃つなよって。あれでわかったって素直に言ってりゃあ俺だって無理には杖を奪う気はなかったんだぞ。自業自得だ」

「それにしたっておかしいでしょ!!」

「おかしくねぇよ!」


 臨戦態勢のリリーナにこちらも臨戦態勢で迎え撃つ。そんな光景にいつも通りアイリスがあわあわとしつつ、どうにか喧嘩を止められないものかと手をわたわたさせている。

 何度もリリーナとの言い争いを経験していれば、言い争っている最中にアイリスの様子を見るのなんて簡単だ。それで最後の理性を保ってるまである。


「ねぇユウマ。リリーナはともかくとして私は? ダンジョン探索の時、私特に何もしてなかったよね? むしろユウマをアイリスちゃんと一緒に追いかけようとまでしたんだけど」

「ああ。ミカに関しては本当にすまん。リリーナに俺たちだけでダンジョン行くのを悟られないためにわざと置いてった」

「えぇ……。そんな悪びもなく謝られても……」

「いや、ほんとマジで悪かったって。最初はミカだって連れてく予定だったし、なんなら一緒に来てほしかったけどさ、リリーナが変に頭がキレるから仕方なかったんだって」


 リリーナはいつもは魔法使いのくせに魔物に突っ込んでいき、魔法も使わせてもらえずに退場。とかやっている大バカ脳筋魔法使いのくせに、こういう変なところで頭が回る。

 今回だってアイリスとミカを連れて行ってたら、待ち合わせ場所を門の前にしていても何かしら感づいていただろう。


「ふふんっ! ユウマも少しはわかってるじゃない。そうね、私くらいになれば、ちょっとした情報材料で簡単にユウマの考えくらい読めちゃうわね!」

「いや、まったく褒めてないんだが……」


 褒めてもないのになぜか胸を強調しながら両手を腰に当てて自慢げにしているリリーナ。

 まあ、胸をガン見させてもらえるいい機会だからいいけどさ。


「むう~。それじゃあ私ただの役割損じゃん」

「いや、確かにミカからしたらそうかもしれないけど、俺たち的には大助かりなわけでだな」

「そんなの関係ないです~っ!」


 リリーナが突っ張ってくるのは重々承知していたことだが、ミカがここまで駄々を捏ねてくるとは思ってもなかったな。

 どうしよう……。


「えっと……どうしたら許してもらえますか幼馴染様?」


 なんか知らないがさっきの頭いい発言ですべてのことを忘れたらしいリリーナは放っておいて、俺は想定外に拗ねてしまっている幼馴染の機嫌を取りに行く。


「うーん、そうだなー……」


 無駄に可愛らしく小首を何度も傾げながら、ミカが居間をあーでもない、こーでもないと歩き回る。

 その光景をかれこれ五分ほど見たところで俺はあることを思い出した。


「そういやさ、今日の朝、俺が外出るって言ったら付いてきたがってたよな? なんか用があったんじゃないのか? それに付き合うってのはどうよ?」


 あの時はすぱっと断ってしまったし、あの後ちょっとしたデートの誘いを断ってしまったんじゃないかと、もやもやしたものだが、冷静になった今となれば、ミカが俺をデートに誘うなどあり得るはずもなく、なんなら日本にいたころも何かと俺を外に連れ出すためにとか言って日曜日に買い物に付き合わされたものだ。

 その度に日朝を録画で見ることになり涙したものである。何度プリ○ュアをあきらめたことか。


「んー……。あれは別にそういう意図じゃなかったんだけど……。うん。でもいいかも。一日ユウマを好きに付き合わせられる券」

「いや、ちょっと待て! 誰も一日とは言ってないぞ! あくまでお前の用事が済むまでの話でだな」

「じゃあ何かしら一日予定を立てておくよ。それならいいんでしょ?」

「うぐっ……何も言い返せねえ」

「ふふん。ユウマの言い訳を何度聞いてきたと思ってんのさ。私が誰よりもユウマを上手く扱えるんだよ」

「なにお前、ニュータイプなの? 親父に殴られたこともないの?」

「ないね。私、自分で言うのもなんだけどいい子だったし」


 俺を言いくるめたからか妙にしたり顔をしているミカを眺めつつ、まあ仕方ないか。これ以上無駄な抵抗はよそう。と、ため息を一つ零す。


「あっ、あとユウマ。明日はなしね。私の都合に合わせてよ」

「はあ!? なんで!? 面倒ごとは早めに済ませたいんだが」

「幼馴染とはいえ仮にも女の子と二人で出かけることを面倒だとか……。そんなんだからユウマはモテないんだよ……」

「それとこれとは関係ないだろ!」

「大ありだよ。まあ私的にはオールオッケーだけどね」

「なにもオッケーじゃねえ!!」


 なんなんだこの幼馴染は! ほんと、何度も言う通り、最近ちょっと桃色展開が多かったから勘違いしそうになったが、踏みとどまってよかった。

 まさかここまで本気で幼馴染の恋愛事情に無頓着どころか、モテなくてオッケー、むしろ邪魔までしてきそうな勢いだとは思わなかった。

 もう絶対にエイトとの仲持ったりしねえ! 元からするつもりなかったけど絶対にしねえ!


「そんなことよりリリーナ」

「そんなこと! そんなことだとミカ! さすがに今の言葉は俺でも聞き逃せねえぞ」

「明日さあ、私と一緒にダンジョン探索行かない?」


 俺の言葉を華麗に無視したミカはリリーナにとんでもない発言をした。

 さっきから調子に乗っていたリリーナもミカの言葉に少し驚いた顔をしている。ただ、ミカが明日ダンジョンに行こうという前からそうだった気がするんだけど、それはどういうことだ?

 俺がそんなことを思っていると、その間にいつものリリーナが戻ってきた。


「そ、そうね! 確かに私とミカだけダンジョン探索できてないのは納得がいかないものね! そうよ、これで平等ってものよね!」

「ああいや、さすがに私たち二人だけじゃ明かりもないしアイリスちゃんにもお願いしたいんだけど……」


 そう言いながらミカがおずおずとアイリスの方へ視線をやる。

 視線を向けられたアイリスは、まさか今日俺と一緒にダンジョン探索に行ってしまった自分にまで声がかかると思ってなかったのか、慌てた様子で手をパタパタさせながらなんとか応答する。


「えとえと、いいんですか? 私、今日ユウマさんたちと一緒に行っちゃいましたけど……」

「いいのいいの。さっきも言ったけどアイリスちゃんいないと明かりに困っちゃうからね。リリーナもいいよね?」

「そうね。ミカの言う通り明かりは必要だわ。それにアイリスはユウマに言われて断れなかっただけで、悪気があったわけじゃないもの」


 偉そうにこちらを見てくるリリーナに軽く威嚇を入れながら、右手をグーにしてなんとか怒りを堪える。

 せっかくミカが上手くまとめようとしてくれているのだ。それをミスミス無駄にするのはバカを通り越して救いようがない。


「はあ~……仕方ねぇな。しょうがないから俺も明日一緒に行ってやるよ」


 大きなため息を零しつつ、本当にめんどくさいということをアピールしながら、ミカとリリーナにアイリスを任せるのが不安だというのと、リリーナはともかくミカに対しては本当に悪いことをしたと思っているので、一緒に行ってやることにする。

 決して明日一人になるのが寂しいとかではない。


「え? ユウマはいいよ。てか、それじゃあ意味ないじゃん。ユウマが勝手にダンジョンに行った帳尻合わせしようとしてるのにさ」


 ちょっとした思いやりを見せてやったらまさかの返事が返ってきた。

 ミカの言葉にリリーナはさも当然とばかりに頷き、アイリスは言葉を選んでいるようだ。


「とにかく、明日は私たち女の子だけで行くから。付いて来たりしたら、わかるよね?」


 ミカの笑っているようで全く笑ってない笑顔が向けられる。

 前に日本でミカに忠告されていたことを破ったことがあるのだが、その時は俺が半ば鬱になるまでミカは一切口を聞いてくれなかった。

 しかも、そのくせちゃんとプリントは持ってきてくれるし、学校の勉強は教えてくるし、言えばゲームにだって付き合ってくれるしで、ちゃんとした会話をしてくれないことを除けばいつも通りなのが逆に胸を抉ったのを覚えている。

 ちなみに俺が半ば鬱になるのに三日もかからなかった。


「わ、わかった。絶対に付いて行ったりしねえよ。でも、無理はするなよ。アイリスもいるんだからな」

「はいはい。ユウマはいつもツンツンしてるのにこういうときだけは素直にデレるんだねー。ツンデレさんだねー」

「うぐっ……」


 言い返したところで勝ち目のないことがわかっていたので、大人しく呻くだけにしておく。

 にしても―――


「明日どうすっかな……」

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