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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第一章
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15話

「……おおっ! これでしばらくはお金の心配がなくなる!」


 スモールゴーレムを倒した次の日。俺が異世界に来てからちょうど一週間がたった今日この日。

 俺はギルドで昨日倒したスモールゴーレムの討伐依頼達成の報告に来ていた。

 今日もギルドの中は騒がしい。これから冒険に行くのであろう冒険者たちが何やら大声で気合を入れていたり、昨日の夜から飲んでいるのかそれとも朝から飲んでいるのかは知らないが酔っ払いが騒いでいたり、そんなわけで今日もギルドは騒がしい。

 そんな中、俺とアイリスとリリーナは今まで手にしたこともないような大金に目を奪われていた。


「ゆ、ユウマさん! 私、生まれてもう十年になりますが、一万ギルの硬貨なんて持ったことありません!」


 アイリスが報酬でもらった一枚一万ギルの硬貨を眺めながら嬉しそうにはしゃいでいる。


「ゆ、ユウマ! 金貨よ! 金色の硬貨よ。すごいわ、金ぴかよ! これならまた杖に新しい装飾品を考えてもいいわね!」

  


リリーナも何やら金色だの、金貨だの、(きん)きんうるさく騒ぎながらはしゃいでいる。

 二人をこんな冷静に観察しているように見える俺もさっきから一万ギルの硬貨を光に当ててみたり、他の銅貨や銀貨と見比べて感激している。

 生まれて初めて仕事で万単位のお金をもらった。これが嬉しくないはずがない。


 今回のスモールゴーレム討伐のクエスト報酬は十万ギル。それを三人で割って三万ギルと少し。今まで地道に倒していたコットンラビットやワイルドボアを一日討伐するよりもはるかに稼ぎが良い。

 確かに命の危険はあったが、あれは俺が勝ちを確信して油断していたのが悪いのだ。そんな俺の不注意がなければ、あんなに満身創痍で街に帰ってくることはなかった。

 つまり、俺たちは低レベルながら頭さえ使えばそれなりに高レベルの奴と渡り合えるのだ。

 幸い俺にはこの数年日本で培ったゲームの知識、ゲーム脳がある。この世界ではその知識と若干異なるところはあるみたいだが、今までそんな大きな違いはない。

 ワイルドボアの特性、スモールゴーレムの弱点属性、どれも俺のゲーム脳と一致している。

 ちゃんと準備さえしていれば俺はこの世界でもやっていける。

 いや、この世界だからこそ、ちゃんとやっていける。


 それに俺には優秀な仲間がいる。回復魔法、補助魔法を得意とするアイリス、攻撃タイプの中級魔法を全部習得しているリリーナ。そこに俺のゲーム脳が加われば最強に見える。

 まあ、欲を言わせてもらえば前衛で壁になれて、物理攻撃のダメージソースとなる仲間がもう一人欲しいところだが、俺的にはこれ以上仲間は増やしたくない。

 この世界ではやたらいろいろな人と会話をしている俺だが、俺は元々コミュ症のニートなのだ。人付き合いは大の苦手である。

 臆病で大人しい性格の子供なアイリスや、俺と似た年齢だが少しアホな魔法使いのリリーナ辺りは話しやすいが、次に入ってくる奴が話しやすい人間とは限らない。

 それに男なんてまっぴらごめんだ。小さくてかわいい癒し系のアイリスと、少し問題のある性格だがスタイルはいいリリーナ。

 こんな少し変わってるとはいえ、俺のハーレムに男なんて必要ない。

 まあ、二人にはそんな気全くないんだろうが……。


「そうだアイリス、リリーナ。少し聞きたいんだが、二人の知り合いに盗賊とか拘束魔法みたいな補助魔法を覚えている知り合いはいないか?」

「盗賊か、拘束魔法ですか……。すいませんユウマさん私の知り合いにはいないです」


 アイリスが申し訳なさそうに頭を下げた。


「いやいや、いないならいいんだ。それでリリーナの方はどうだ? 盗賊か拘束魔法とか覚えてる知り合いはいないか?」

「私の知り合いにそんな奴はいないわ。だって必要ないもの。盗賊のスキルなんて大したことないし、拘束魔法なんてなくても魔法を当てればいいのよ、あ・て・れ・ば」


 リリーナの方もそう言う知り合いがいないらしい。


「二人ともいないか……。困ったな……」


「ユウマさん。よろしければなんで盗賊の方や拘束魔法を覚えている人を探しているのですか?」


 アイリスが不思議そうに首を傾げる。

 そんな姿もまたかわいい。


「ああ、俺の物理攻撃はたかが知れてるだろ? だから今度からは補助を優先的にやっていこうと思ってさ」


 そう、俺はこの前のスモールゴーレム戦で学んだ。俺が少し頑張ったところで、前衛職を全うできるとは思えない。

 この一週間こんなに頑張ってきても俺の片手剣の熟練度は大して上がっていない。そのためソード系のスキルを一つも覚えていない。

 魔法も一応アイリスに教わった『スプラッシュ』とこの前から散々見てきたリリーナの『ファイヤーボール』が取得可能スキル覧に入っているが、俺にはアイリスやリリーナ程の魔力はないので、有力なダメージソースにはならない。

 それに、アイリスとリリーナがいれば魔法の火力は十分だ。

 物理攻撃はダメ、魔法攻撃もダメ、それなら俺は何をするべきなのか?

 そこでたどり着いたのがサポートだ。

 アイリスのやっている各種ステータス上昇の補助魔法や回復魔法ではなく、相手の動きを止めたりする魔法や、相手の道具をランダムで奪うようなスキルや、逃走スキルのようなパッシブスキルなど、多彩なスキルを持って相手を翻弄する戦い方がベストだと考えた。

 もちろん、その多彩なスキルの中には攻撃魔法も含まれているし、一応片手剣による物理攻撃も含まれている。

 一つ一つが弱くても、色々考えて使えばどうにかなるはずだ。

 一つ問題があるとすれば、こんな戦い方は俺の憧れていた冒険者像ではないということだけだ。


「なるほどねえー。まあ、確かにユウマはいろいろと機転がきくし、この世界のこと何も知らないのかと思えば変なこと知ってるし、ある意味お似合いかしらね」


 リリーナが少しイラットするようなことを言ってくれてはいるが、的を射た発言をした。


「確かにユウマさんは初めて会った敵の行動パターンや特性なんかを知っていることが多いですね。ワイルドボアの時もスモールゴーレムの時もそうでした」


 アイリスもリリーナの発言に納得している。

 まあ、二人の言う変な知識って言うのは全部、日本で母親を泣かせて培ったゲームの知識なんだが……。


「まあ、俺もいろいろあるんだよ……。それより今日は久しぶりにクエストに行かないで休みにしよう。ここのところ大変だったからな。たまにはゆっくりしたい」


 大変切実な願いを俺は口にした。


「そうですね。たまには街でゆっくりしたいです」


 アイリスは賛成のようだ。


「リリーナはどうだ? さっき杖の装飾品がどうとか言ってたが」

「そうね、私も賛成よ。早くこのお金で杖に装飾品を付けて魔力アップしたいわ」


 リリーナも賛成のようだ。


「よし、なら今日はクエストなし。各自自由行動だっ!」

「はい!」

「ええ!」


 こうしてこっちの世界に来て一週間、俺に初めての休日が訪れた。


 ♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


「さてと……」


 あのままギルドでアイリスとリリーナと別れた俺は、この広い街の中を一人練り歩いていた。

 完璧にこの街を把握できたとは全然言えないが、大通りのようなよく使う道くらいなら迷わずに移動することができるくらいはこの街を把握している。


「この辺りにはいないか……」


 周囲を見回して、この辺りに目的の人物がいないのを確認する。

 たった一週間しか経っていないにすっかりなじみ始めた剣士や魔法使いの姿の中から俺の探している人物。それは盗賊職の人だ。それ以外は何も考えていない。男だろうが女だろうが、子供だろうが大人だろうが、そんなのどうでもいい。


 ……。

 欲を言えば大人っぽくてエロかっこいい盗賊職のお姉さんが良い……。


 そんなわけで俺はまだ少し慣れない街並みを一人練り歩く。


「はあー。都合よく盗賊職のお姉さんはいないもんかねえー」


 そんなことを呟いている時だった。目の前の小さな男の子が、結構高そうな鎧を着た冒険者の兄ちゃんにぶつかった。

 子供は軽く頭を下げて謝り、冒険者の兄ちゃんの方は気さくな感じに「悪かったな」と詫びを入れている。

 そして何事もなかったように二人はすれ違った。


「……あれは……」


 俺は目の前で鎧の兄ちゃんとぶつかっていた男の子の後を付ける。

 少し気になることがあるのだ。

 そしてその男の子が人気のない場所までやってきたところで、男の子は周囲をやたら慎重に確認してから懐に手を入れた。

 その瞬間を見計らい、俺は男の子に話しかけた。


「なあ、君……」


 俺が話しかけたその瞬間、男の子は驚いたような顔をして逃亡を図った。

 その対応を最初からわかっていたので、すぐに男の子の首根っこを掴む。


「こら! 逃げるな!くっ……暴れんじゃない!」


 俺に首根っこを掴まれた男の子は必死に暴れる。

 しかし、俺は男の子を離さなかった。そして暴れる男の子を無視して話しかける。


「お前さっき……あのぶつかった兄ちゃんの財布取ったろ?」


 俺の言葉に男の子は暴れるのを止めた。どうやら図星だったらしい。

 さっき、この男の子が冒険者の兄ちゃんとぶつかった時、俺は見てしまった。男の子が小さく口を開き、何かを唱えたその瞬間に、男の子の手にあの冒険者の兄ちゃんのらしき財布が握られていたのを。

 おそらくあれは俺の予想が間違っていなければ、盗賊系のスキル『スティール』だ。相手の持っている道具をランダムで一つ奪う盗賊の初期から覚えられる、盗賊の王道スキル。

 あの時ぶつかったのは偶然ではなく、『スティール』を使うための準備的なものだろう。触れている相手にしか使えないとか、触れていれば確率アップとか、そんなところだろう。


 大人しくなった男の子の手を見ると、そこには確かにさっき取った財布が握られている。やっぱりだ。


「……なんだよ。俺を憲兵にでも突き出すのか?」


 俺に捕まったままの盗賊の男の子は、俺を睨みつけながらそんなことを言った。

 その問いに俺は……。


「はあ~っ!? そんなわけないだろ、そんなことして俺に何の得がある? ないだろ? むしろ時間の無駄だ」


 と言った。

 その俺の答えがよっぽど不思議だったのか、盗賊の男の子は呆けた顔をしている。


「じゃあ、なんで俺を捕まえるんだよ。憲兵に突き出すんじゃなかったら俺に何の用がある」


 盗賊の男の子の当然の質問に俺は……。


「お前盗賊職だよな? 俺に盗賊系のスキルを教えてくれ。それだけでいい。さっきのことは絶対に誰にも言わない」


 そう言った。

 だってあんなの、この冒険者世界では少なからずあるだろうと思ってたし、油断している方も悪いのだ。それに財布を取られたのぐらいすぐに気づけと、俺はあの兄ちゃんに声を大にして言いたい。

 俺の世界にはこんな格言もある。


 バレなきゃ犯罪じゃない。


 それにコイツを憲兵に突き出して時間を取られるのも気に食わない。俺の休日をこんなことに使ってなるものか。

 そんなことに使うぐらいなら俺は一日アイリスを遠くから見守ることに一日を使う。

 え? それってストーカーだって? 何言ってるんだよ。これはまだ小さいアイリスが心配だから、俺が陰ながら見守ってあげようと思っているだけで、犯罪なんかじゃけしてない。


「……そ、そんなことでいいのか?」

「ああ、それだけでいいよ」


 盗賊の男の子は俺の提案に少し考えるような仕草を取ってから、やがて意を決して様に顔をあげ。


「……いいぜ、俺の知ってるのでいいなら、兄ちゃんにスキルを教える」

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