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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第七章
158/192

7話

「よし、やっと着いたな!」


 ギルドから正式に依頼を受け、ファナの店でダンジョン探索に必要で使えそうなものを一通り集めた次の日、俺たちは例のダンジョンの前までやってきていた。


「おぉ! これがダンジョンの入り口! いかにもダンジョンって感じの良い入り口だな!」

「だねだね! 私あんまりRPGやってなかったけど、これはワクワクするね!!」

「わかるかミカ! お前もやっぱりオタクの血が流れてるんだな!」

「流れてないと思うけど、さすがにあれだけユウマに色々とやらされれば私だって少しは憧れとか湧くよ」


 日本にいたころ、俺は色々とミカに布教をしていた。アニメ、漫画、ラノベ、自分が面白いと思ったものは、とにかくミカに教えてやらせ、俺の話がわかるようにしていた。

 元からオタク的な活動に否定的ではなかったミカは、嫌そうなことを言いながらもなんだかんだで付き合ってくれて、生粋のオタクとまではいかないが、いっぱしのオタクくらいなら名乗れる知識を持っている。

 その上、感性も俺と似通っているところがあり、俺が面白いと思ったところはミカにとっても面白いし、涙したところはミカも涙するし、今みたいにワクワクしたところは大体ワクワクしてくれる。

 これほど理想的な幼馴染女の子がいただろうか? いや、いない(反語)

 これが、オタクに理解ある彼女の育てかただ。幼馴染は絶対に負けるわけじゃない。


「ユウマはともかく、ミカまでなにはしゃいでるのよ。そんなにワクワクするようなところでもないでしょうに」


 俺とミカが同じ感覚を共有していると、ツンデレ魔法使いが腕組をしつつ、そんなことを言ってくる。


「えー、だってダンジョンだよ、ダンジョン。中にお宝がたくさん眠ってたりするんでしょ? やっぱり楽しみじゃん。もしかしたらきれいな宝石とかもあるかもよ」

「宝石なんて興味ないわね。ああいうのは自分の魅力に自信がない人間か、金持ちアピールしたい大バカ貴族しかつけないわよ。私は宝石なんてなくたって十分に魅力があるからいいの。私の方がきれいだから!」


 自信満々に腕組を続けたまま宣うリリーナ。しかし、こればっかりは俺も反論の余地がない。宝石をつけてる人間云々はともかく、後半の宝石なんてなくてもリリーナが魅力的、というところは、誠に悔しいが、本当だと俺も思う。

 性格こそあれだが、リリーナは黙ってさえいれば本当に美人で、スタイルも抜群によく、下手な飾りは逆に邪魔になってしまうほどの魅力を持っていた。

 ―――ほんと、性格さえよけりゃあな~。


「えーっ! そりゃあリリーナはそうかもしれないけどさ。私みたいな普通な子の身にもなってよ。少しでもオシャレしたいじゃん?」

「そういうものなのかしら? 今まで考えたことないからちょっとわからないわね」

「……リリーナのこと大好きだけど、そういうとこだけは嫉妬しちゃうよ」

「うーん……」

「どうかしましたか? ユウマさん?」


 幼馴染が女の子らしい発言をしている中、俺はいつもなら喜んでアイリスとの会話に勤しむところだが、今ばかりは少し違うところに思考が行っていた。


「別にミカだって素材が悪いわけじゃないんだよなー」


 前にも言ったかもしれないが、ミカはクラスや学校で一番というわけではないにしろ、可愛さランキングで上位をキープできるくらいの逸材だ。憧れてしまうほど美しくなく、誰もが嫉妬するような可愛さもない。

 でも、誰もが親しみやすく接することができる、最高位の可愛さにいるのがミカだと俺は思っている。証拠として、ミカは男女問わず人気があったし、一緒に歩いているとたまにミカへの視線を感じる。

 ―――って、あれ? これって俺ミカのことすげーかわいいって言ってね?

 そうだったとして、俺って幼馴染って立場を利用してすごい得してね?


 ……止めよう。これ以上考えるのはまずい。なにがとは言わないが、なにかがまずい。


 俺の中の本能がそう囁いているので思考を中断する。

 最近ミカと桃色なことが多すぎて俺の頭の中まで桃色のお花畑になっているのかもしれない。そうだとしたら早くその花を採取して街で売ろう。


「ねぇねぇ、ユウマ! 早く行こうよ! ユウマだって我慢できないでしょ!!」


 こっちの心情も知らず、ミカが腕を取って俺を引っ張っていこうとする。


「ま、まてっ! 慌てるな! これはフラ―――エルメス!」

「ほわぁっ!!」


 ミカにこれは転ぶフラグだと教えようとした瞬間、まるで神さまがそうはさせないとばかりにミカをこけさせる。当然腕を掴まれていた俺も例外なく一緒に転び、二人揃って大地に抱擁する。


「だ、だから言ったじゃねえか……」

「い、いや、言う前に転んだからノーカンだよ……」


 大地と抱き合ったまま文句を垂れると、ミカが反論をしてくる。少しの間そのままでいると、ケガでもしたのかとアイリスが心配した面持ちでこっちにかけて来る。

 もう少しこのままでいよう。


「だ、大丈夫ですかお二人とも! もしかして大怪我でもしたんじゃ……!」

「あはは、大丈夫だよアイリスちゃん。いつもの私のドジだって。ほら、『金剛力』のおかげもあって、ちょっと擦りむいただけだよ。ほら、ユウマもいつまでも寝てないで起きなよ」

「……」


 まだだ。

 まだ起きるわけにはいかない。もう少しアイリスに心配してもらって癒されるまで、俺は意地でも地面から離れないぞ!!


「ゆ、ユウマさん!? やっぱりユウマさんは大けがでもされたんじゃ!?」

「あー、大丈夫だよアイリスちゃん。これはアイリスちゃんに構ってほしいだけの哀れな男のポーズだから」

「ふざけんなミカ!! あとちょっとでアイリスに優しく介護されるところだったのになんで邪魔しやがる! どうして幼馴染の恋の応援ができないんだ!」

「犯罪の応援なんてできるはずないでしょ! それにユウマだってエイト様とのこと応援してくんなかったじゃん」

「そりゃあ幼馴染としてなんか腹が立ったからだよ!」

「それは私も同じだよ!!」


 額と額をくっつけてにらみ合う俺とミカ。それをあわあわと見守るアイリスと、別に気にしてなさそうなリリーナ。邪魔が入らないならとことんやって―――


「それじゃあ中に入るか」

「そだねー」


 やらないで、とっととダンジョンに入ることにする。


「えぇ!? 今まで喧嘩してたのにそんなにあっさりと終わるんですか!?」


 喧嘩に発展しそうだった俺とミカを見ていたアイリスが、なんてことなかったかのようにダンジョンの中に入ろうとするのを見て驚いた顔をする。

 確かに、当人である俺達からすればいつも通りのことでも、そのいつもを知らないアイリスからしたらマンガでいきなりコマが飛んだような感じなのだろう。


「アイリス、俺達幼馴染にとっちゃこんなの当たり前なんだ」

「そうだよアイリスちゃん。こんなことで本気になってたらお互いこんなに長くやってらんないよ」


 言いたいことを言った俺とミカが腕を組みながら頷いてみせると、まだ少し納得がいっていないような顔でアイリスが「そういうものなんですか……」と、自分を無理矢理納得させていた。

 でも、これ以上の言い方を俺たちは知らない。大抵のことは幼馴染だから、で済ませてきていたので、それ以外の言い方など知らないのだ。


「とにかく早く行こうぜ。あんまりのんびりしてると日が暮れちまう」


 色々とあったが、ようやくダンジョン内の探索に入るのだった。





「うっわ……。思った以上に暗いな。アイリス、明かり頼む」

「わ、わかりました。『ライト』!」


 ダンジョンの中に入って進むと、すぐに辺りが闇に包まれた。入り口からの光でかろうじて視界が確保できているが、もう少し進んだら目隠して進んでるのと変わらなくなるだろう。

 そして、大抵の場合、もう少し後でいいか。は、時すでに遅しのフラグであるところを知っている俺は、何事も少し早いくらいでちょうどいい精神でアイリスに呼びかける。

 呼びかけに答えてくれたいアイリスは、すぐに明かりをつける魔法を唱えてくれると、アイリスの杖先が光を放ち、周囲が一瞬で明るくなった。


「おぉ! 思ったより明るいな!」

「そうだね。正直もっと範囲が狭いと思ってたよ」


 アイリスの明かりをつける魔法の範囲は想像より広かった。正直自分たちの周りと、その少し先くらいまでしか明かりを確保できないと思っていたのに、実際には数メートル先まではっきりと視界が確保できている。


「戦闘ではあまり活躍できないですけど、サポートは任せてください!!」


 後ろ向きに自信満々なアイリスに、そんなことないぞ。とフォローと感謝の言葉を告げてから、俺たちは四人で慎重にダンジョン内を進んでいく。


「そういえばリリーナ。お前、このダンジョン内で魔法禁止な」

「はあっ!? ちょっと! どういうことよユウマ! そんな話聞いてないわよ!!」

「そりゃあ、今したからな。でも、そんなの当り前だろうが。お前だってこんな狭いところで自分の魔法を使ったらどうなるかくらい想像できるだろ?」


 ダンジョン内は思ったよりも横に広かったが、それでも俺たちが四人で少し余裕をもって歩ける程度。普通に歩くだけなら十分な広さでも、ここで戦闘があった場合には少しばかり戦闘がし辛い。槍持ちのような長い獲物を使う冒険者には苦でしかないだろう。

 そんな場所でリリーナがド派手な魔法の一つでも使えば。


「もれなく俺たち全員ダンジョンの下敷きだぞ。そんなんで無事でいられるのは『金剛力』持ちのミカだけだ。『金剛力』あったってどうなるかわからないしな。だから魔法禁止」

「ふんっ。そんなこと知ったことじゃないわね。私は私が撃ちたいと思ったときに魔法を撃つの。誰の指図も受けたりなんてしないわ。それにね! この杖が私の手の中にあるんだからユウマにどうすることもできないのよ! わかったかしら?」


 魔法使いの生命線ともいえる自慢の杖を大切そうに抱えながら、俺に勝ったという高揚感からかリリーナがいつにも増してしたり顔を浮かべている。

 いつもならここで言い争いに発展するものだが、今日の俺は至って冷静で、口答えをするリリーナに対して腹も立てていなかった。

 そのことを不思議に思ったのか、ミカとアイリスは俺の方を見て、「あれ? おかしいな?」みたいな目をしているが、したり顔を浮かべて勝利の余韻に浸っているらしいリリーナにはそれがわからなかったようだ。

 それをチャンスとばかりに俺は前に一回使ったっきりのスキルを使う。


「『スティール』!!」


『スティール』

 盗賊の職業が取得することができる相手の持ち物をランダムで一つ奪い取るスキルだ。奪い取れるものは相手の所持しているものならすべてが対象で、自分の幸運の値によって取れるもののレア度が上がる。

 俺はお世辞にも幸運の値が高い方ではないが……


「おっ? 一発か」


 どうやら今回は女神さまが味方してくれたようで一発で目的のものを奪い取ることができた。


「ちょっ!? 何するのよユウマ! 早く私の杖返しなさいよ!!」

「誰が返すか。このまま素直に返したらお前は魔法を撃つって自分で言ったんだろうが。これはダンジョン出るまで俺が預かる」

「なっ! 横暴よ! 魔法使いから杖を奪うなんて死ねって言ってるようなものよ!」

「あー、はいはい。とりあえずこれは俺が預かる。いいな?」


 リリーナの反論などにロクな返事もせず、俺は前を向き直る。


「あと、お前のことだから暗闇に乗じて取り返そうとか思ってんだろ?」


 前に向き直るなり、リリーナがゆっくりと後ろから忍び寄ってきてるだろうことが『敵感知』もなくわかる。こんなことなんて、俺には想定内だ。その対策だって昨日ちゃんとしてある。


「『ゲート』」


 俺は開いている方の手を前に出し、スキルで自室とつないでいる穴を作り出す。『ゲート』は基本的に商人がいつでもどこでも物を出し入れできるように取得するスキルだが、俺は冒険の際も持ち物をいつでも入れ替えられるように取得してある。


「ノーポイっ」


 どこかのアニメの2期のOPのようなタイトルを口にしながらリリーナの杖を、『ゲート』に放り込む。そして、すぐにその穴を閉じた。


「お前の考えてることなんてお見通しなんだよ」


 さっきまでうざかったリリーナのしたり顔を今度はこちらがしてやるとする。


「キィィィィィィィィィっ!! ユウマ! 後で覚えときなさいよ!!」


 悔しさのあまり地団駄を踏み出すリリーナ。

 俺はその顔に満足すると、事の成り行きを見守ってくれていたミカとアイリスに行こうぜ、と声をかけて本格的なダンジョン探索に乗り出した。

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