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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第七章
155/192

4話

 

「ふぃぃぃぃぃ~。ようやく日常に帰って来た」

「日常って、ただイニティのお屋敷に帰って来ただけじゃん。しかも昨日ぶりだし」

「そりゃあ、そうだが。ミカ、俺の気持ちがわからないお前じゃないだろ。豪華な旅館やホテルより、自宅の方がなんだかんだ居心地がいいって気持ちはお前にだってわかるはずだ。たった一日でも離れたら愛おしく感じるのもわかるはずだろ?」

「そりゃあ……まあ、わかるけどさ」

「だろ?」


 なんだかんだありつつも、最後まで寂しそうなのじゃロリとルーシアに別れを告げ、エイトとセツコさんとも、これからもたまにはやり取りをしようと約束をしてから、俺たちは何事もなくイニティまで戻ってきていた。

 戻ってくるなりそうそう屋敷まで一直線で帰ってきた俺は、昨日ぶりの屋敷に妙な懐かしさというか、愛おしさを感じてあんな言葉を漏らすと、ミカがそれにツッコミを入れてきた。

 こんなやり取りは少し前、王都の城でもしていたが、やっぱり自分のホームグラウンドの方が落ち着くものである。


「ユウマさんのおっしゃること、私も少しわかります。王都のお城は確かにすごいんですけど、妙に緊張してしまって……。お部屋も広すぎて少し落ち着かなかったです。ミカさんやリリーナさんと一緒じゃなかったら絶対に寂しい思いをしてました」


 照れくさそうにしながらアイリスが可愛らしいことを言う。見た目がかわいくて中身もかわいいとかマジ最強かよ。


「私はそうでもなかったわね。別にこのお屋敷にいるのとそう変わらなかったわね」


 俺とミカとアイリスが三人で思いを共有している中、空気を読まず、というかただ本心を言っているだけのリリーナが一人だけ違う意見を口にする。


「そりゃあリリーナ様にとってはそうでしょうけどよ。俺たち庶民にとってはあの城は規格外なんですよ。住んでみたいって憧れはあっても、毎日あそこで寝泊りは正直ちょっとですね」

「ユウマ、その敬語はなんなのかしら? 私に対する嫌がらせなのかしら?」

「その通りでございます。リリーナ・ラブ・フルハート様」

「いいわ……その口、永遠に開かないようにしてあげる」


 額に怒りのマークを浮かべながら杖を取り出すリリーナ。そんなリリーナをアイリスがなだめ、ミカが俺に「人の嫌がるようなことは止めなよ。いくらユウマの趣味だからってやりすぎだよ」なんて酷すぎるツッコミを入れてきたが、それを適当に流して屋敷の玄関に手をかける。


「それより早く屋敷の中に入ろうぜ。俺もう疲れた。もう三日は動きたくねぇ」

「ユウマさん、さっきお城でこっちじゃ借金返せないしなって言ってませんでしたっけ……?」

「アイリス。俺たち人間には週に二日は休みが必要なんだよ。それなのに俺たちはここ一週間働きづめだったろ? 少しくらい休んだって誰も文句は言わないさ」


 そこまで口にしたとき、まるでその時を計ったかのようなタイミングで、この街の放送音が鳴る。

 この街には大まかに分けて二種類の放送がある。一つは緊急事態時に冒険者を集め、街の人たちに危険を知らせる緊急放送。もう一つはギルドへの特定の冒険者の呼び出しや、この街付近での知らせ事、その他にも様々用途で使われる、いわゆる一般的な放送。

 今回の放送はその後者に当たる。

 まぁ、そんなにしょっちゅう緊急の呼び出しなど御免だが。


「なんの放送だろ?」

「気にしなくて大丈夫だろ。それより早く入ろうぜ。それでまったりしようぜ」


 三人が放送に耳を傾ける中、俺はどうせ自分には関係ないとばかりに放送を無視しながら屋敷の中に入ろうとする。


「ギルドからの呼び出しです。ユウマさん、およびにそのパーティーのメンバーのみなさんはギルドに来てください。繰り返します。ユウマさん―――」


「どうやらお休みはできそうにないですね」

「そうね。でも、これでユウマも外に出ざるえないし、これもありなんじゃないかしら?」

「リリーナの言う通りだね。正直私も今日くらいは休みたかったけど、いつもお世話になってるギルドからの呼び出しじゃ顔出さないわけにもいかないよね」


 ギルドからの呼び出しになぜかやる気を出す二人と、特に嫌がっている様子のないアイリス。

 えっ? この中でギルドに行きたくないの俺だけなの?


「ゆ、ユウマさん……? なんで耳を塞いでるんですか? あと、なんでお屋敷の中に入ろうとしてるんですか? 今の放送聞こえてましたよね?」


 こっそりと屋敷の中に入ろうとする俺をアイリスが無邪気な顔で引き留める。アイリスの声にビクッとしながら反応した俺は、最後の抵抗を見せる。


「なんだお前ら。どうしてまだ突っ立てるんだ? 早く屋敷に入ろうって俺さっきから言って―――」

「はいはい。聞こえてないふりとか、気づかなかったふりとかいいから早くギルドに行こうねー」

「お、おい! 止めろミカ! 『金剛力』使ってまで俺を引っ張るな! そんなことされたら力でお前に敵わないんだよ!」

「何言ってるのさユウマ。『金剛力』なしでも私に敵わないじゃん」

「そうでしたね! そうですけど、とにかく離せ! 休ませろ! ブラック企業反対!!」


 世間の、働かせるだけ働かせて、ちょっとした残業代しか払わないすべてのブラック企業に物申しながら、俺は最後まで諦めずに足と手をバタつかせながら、ミカの手から逃げられないかと試みる。

 しかし、さすがは『金剛力』。いくらチートがそんなに万能ではないとわかっても、あくまで"そんなに"である。それにミカの場合は『金剛力』を頻繁に使っているし、能力を向上させるだけという技術に一切関係のないスキルのおかげで、ミカが使いこなせないということもない。

 つまりは、高校生の俺の抵抗など今のミカにとっては赤子も当然で。


「ミカ、さっさとそのバカ連れて行きましょ。どうせ行かなきゃいけないんだから早い方がいいわ」

「リリーナさんの言う通りですね。ギルドの人も困ってるかもしれませんし、早く事情を聴きに行きましょう」

「うんうん。二人の言う通りだね。だからほら、ユウマも自分で歩く」

「いやだ! 俺は絶対に歩かないぞ! 今日は休むって決めたんだ! 昨日ヤマタニオロチなんて化け物と戦ったばかりで、その上二日酔いもまだ少し残ってるのにクエストなんてやってられっか!」

「ヤマタニオロチの方はわからなくもないけど、二日酔いはユウマの責任でしょ。ほら、子供じゃないんだから自分で立ってよ。私はユウマのお姉ちゃんでもお母さんでもないんだよ?」

「ばぶー」

「……」

「自分でやっておいてなんだけど、その本当に可哀そうなものを見る目止めろ! マジで傷つくんだぞ! その目で俺が何度心を折られかけてるかわかってんのか!!」


 逆切れだとはわかっていても、ついつい言い返してしまう。

 でも、仕方ないだろう。俺たちはこっちではいざ知らず、日本でならまだ子供判定だ。それに子供なら許されるというなら俺は赤ちゃんにだってなりきって見せる。そうすれば多少エッチなことしても許されるしな。―――許されるよね?


「ユウマさん。大変かもしれないですけど、頑張りましょう? 私も頑張りますから!」


 昨日の疲れが完全には抜けきっていないだろうアイリスが笑顔で両手をグーにしながら励ましてくれる。

 昨日一番の頑張りを見せたアイリス。年下の女の子にそこまで言われると、年上で昨日もアイリス以上には活躍をしていない俺は立つ瀬がないわけで―――


「はぁ~……仕方ない。とりあえず話を聞きに行こう。まだクエストの話とは限らないし、明日に回せるなら明日に回そう」


 頑張りの様子を見せる天使に負けた俺は、ミカから手を放してもらい自力で立ち上がると、尻に着いた砂埃を払いながら言う。その言葉に満足が行ったのかアイリスは非常に可愛らしい笑顔を見せている。

 他の二人も、ミカはなにやら嬉しそうだし、リリーナもやる気に満ち溢れている。


 はぁ~、なんで俺のパーティーはポンコツのくせにやる気だけはあるんですかね~。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「あっ! ユウマさん。お待ちしてましたよ!」


 あれから仕方なくギルドまで足を運ぶと、俺たちがギルドに姿を見せるなり、ギルドのお姉さんが一人手を振りながらこっちに走ってくる。このギルドで俺が一番に気にいっているロリ巨乳ちゃんだ。

 ロリ巨乳ちゃんは俺のお気に入りというだけでなく、男性冒険者たちに大いに人気のあるギルド職員だ。動くたびに大きく揺れるお胸様に目を引き付けられているのは俺だけではない。

 今だってその例外に漏れず大きなお胸様を揺らしてくださっているし、周りの男性冒険者の何人かがちらちらと盗み見してるけど、俺はそんなこと知りませんよー。という顔をしている。

 こんなことバレたらミカとリリーナにまた何やら言われてしまうからだ。

 まったく……なんで俺のこと好きでもない女の子にそんなことまで言われなきゃならんのか。と、悪態の一つでも垂れたいものである。


 そんなことを内心で思っていると、ロリ巨乳ちゃんが俺たちの前まできていた。少し肩を息をしながら、それでも笑顔を忘れずに俺たちをギルドの中、それもギルドの職員が個人的に冒険者にお願いをするときや、個人的な相談事について話すために用意されている個室へと案内してくれた。


「個室があるってのは聞いてたけど、こんなだったんだな」

「はい、私も初めて見ました」

「私もね」

「なんか応接室みたーい」


 案内された個室を物珍しく眺め、各々感想を漏らす俺達。

 個室の中は別におかしなことのない普通の部屋だ。例えるならミカが言った通り応接室に近い。部屋の真ん中に長机が一つと、それを挟むようにソファーが二つ置かれていて、壁には何かの絵が張ったあり、入り口付近には観葉植物があったりした。


「立ち話もあれですので、どうぞみなさん座ってくださいね」


 失礼なことに部屋を見回していた俺たちに特に何か言うでもなく笑顔のままだったロリ巨乳ちゃんが、座るように促してくれる。その言葉に俺たちは頷きみんなでソファーに腰掛けた。


「ちょっと狭いわよ! もっとそっちに詰めてちょうだい!」

「も、もうこっちも限界ですぅ~」

「そうだぞリリーナ。これ以上アイリスを押しつぶして小さくなったらどうす―――ありか? ありだな」

「ありじゃないですよ!? なしですよ!?」

「う~……せまい~……」

「ユウマ! あんた今私の胸肘でつついたでしょ!」

「ナ、ナンオンコトカナー」

「ユウマ、わかりやすすぎ……」


「あはは。みなさんやっぱり仲良しですね」


 俺たちが四人で座るには少々小さすぎるソファーに悪戦苦闘していると、目の前でゆったりと座ったロリ巨乳ちゃんが楽しそうにそう言った。相手が美少女じゃなきゃ文句の一つでも言ったが、ロリ巨乳ちゃんは美少女なので黙っておく。

 それに、今のこの状況、俺にとってもそう悪い状況じゃない。

 今俺たちはソファーに左からリリーナ、俺、ミカ、アイリスの順番で座っている。その状態で窮屈。つまりは密着度が高いわけである。両隣に性格はともかく美少女を侍らせている俺からしたら満足以外の何物でもない。


「ちょっと憲兵を呼んでちょうだい」

「えーっと、なんででしょうか? リリーナさん」

「この男が犯罪者の顔をしてるからよ」


 いきなり何を言い出したかと思ったら、リリーナ突然ロリ巨乳ちゃんにそんなことを言い出し俺を指さした。


「おい、リリーナ。さすがに犯罪者の顔ってひどいぞ。俺だって傷つくって何度言えば……」

「いや、ユウマスマホで自分の顔見てみなよ。リリーナみたく犯罪者の顔とまではいかないけど、それっぽい顔はしてるよ。幼馴染の私でも結構引いちゃうレベルで」

「そ、そんなまさか―――」


 そう思いつつも、ミカに言われた通りスマホを取り出し、画面をつけないままでブラック画面に映る自分の姿を見る。これはミカに聞いたことだが、なんでも女子は鏡とかがない時にはスマホの画面に電源を入れてない状態を鏡代わりにしたりするらしい。それを今俺がしているわけだ。

 そしてそこには―――


「……我ながらひでー顔してる」


 スマホの黒い画面に映るのは、顔をにやけさせ、鼻の下をこれでもかと伸ばす自分の顔だった。

 でも、待ってもらいたい。これは仕方のないことだ。

 さっきも言った通り、俺の両隣には性格はともかくとして美少女が座っている。そして狭いソファーで満員電車張りにぎゅうぎゅうの状態だ。それが意味するところは、両隣からなにやらいい匂いがしてきたり、肘がおつぱいに当たってしまったり、肩が触れ合ってしまったりなんかするわけで、普通の男子高校生なら悶絶物の状況なのだ。

 それでもなお、顔はともかく精神的にはまともな俺を褒めてほしい。怒られる言われもないはずだ。

 だから、少しばかりの反論を試みる。


「でも、それとこれとは話が別だ」


 さっきの言葉に続いてそう切り出した俺。

 しかし、次の言葉はギルドのお姉さんによって阻まれてしまった。


「あのー……仲良くしてるところ大変申し訳ないのですが、私たちも暇なわけじゃないのでそろそろ話を始めたいのですが……」


 笑顔を崩さぬまま、本当に申し訳なさそうな顔で言ったロリ巨乳ちゃんには悪いが、男には男の意地がある。

 どうしてもここは、リリーナとミカと話し合いが必要な場面だ。


「悪いけどちょっと待ってくれるか? すぐ終わるから」


 だから悪いとは思いつつ、ロリ巨乳ちゃんにそう告げようとして。


「狭いのでしたら誰かお一人私の隣に来てください。そしたらみなさんゆったりと座れますよね?」

「そうですね! では、僭越ながら俺が! 女の子を無駄に歩かせるのは主義に反するし、仕方ない! あーあ、本当に仕方ないなー!!」


 男の意地を一瞬で放り投げた俺は、そんな言葉を口にしながら立ち上がる。

 が、しっかりと立ち上がることはできなかった。


「な、なにしやがんだ。リリーナ、ミカ」


 なぜか俺の両隣のリリーナとミカが俺の服の裾を引っ張って離さない。

 力を入れて強引に抜け出そうとするも、二人ともそれなりにレベルが上がっている分力のパラメーターも高く、全然手を離さない。


「ユウマみたいなのを他の女の隣に置けるわけないでしょ」

「そうだよ。私たちみたいな美少女が三人もパーティーにいるのに、他の女の子に手を出そうなんて千年早いよユウマ」

「俺みたいな人を他の女の隣に座らせられないってなんだ! あと、よくもまあ自分たちのことを美少女だと臆面もなく言えるな! 最後に、百年はワンチャン生きてられるけど千年は無理だ!!」


 いつもはボケ担当のはずなのに、三つも一気にツッコミを入れてしまった。

 なんだろう。この敗北感は。


「私がお姉さんの隣に行くわ。ミカ、ユウマの面倒は任せたわよ。ちゃんと手綱を握っときなさい」

「任せてよ! 最悪は足の骨折ってでも止めて見せるから!」

「止めろ! マジで怖いし、できそうだからやめろ!!」


 なんなのこの脳筋美少女二人は! なんか今日の朝からやけに俺に当たりが強いんだけど! さっきだって、城で最後の挨拶とかでセツコさんとかルーシアとかと仲良く話してた時も邪魔してきたし、マジで何なの!?

 人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて地獄に落ちるんだぞ!

 それに手綱ってなんだ! 俺はお前らの冴えない夫か何かなのか!? それなら割と喜んで夫になるぞ! マジで!!


「やっぱり私にはみなさんの中に入るのはまだ早そうです……」


 そんなアイリスの悲しそうな声を最後に、俺たちは冷静さを取り戻し、アイリスへのフォローも忘れずに、ロリ巨乳ちゃんの話を大人しく聞くことにした。

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