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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第七章
154/192

3話

 

「もう行ってしまうのか……?」

「さみしくなるね~」


 朝食を取り終え、みんな時間があるということで適当な無駄話に花を咲かせ、気が付くともうそろそろお昼という時間になっていた。それは、俺たちが帰る時間でもある。


「あぁ、ずっとこっちにいるのも悪くないけど、やっぱり迷惑だしな」

「そうね。ユウマが何かやりそうで心配だわ」

「確かにユウマならやりかねないかも……」

「おいそこの脳筋コンビ! お前らほんといい加減にしろよ! ヤマタニオロチ戦のことも踏まえて少しは俺の見方を変えろ!!」


 なんでいつもいつも、この二人は俺をバカにしないと喋れないんだ! なに? 枕詞かなんかなの? えーっと、とか、そのー、とかみたいな感じなの? それともただのツンデレなの?

 ちゃんと好感度パラメーター見せろよリアル!


「迷惑なんてことないのじゃ。妾はもっとユウマたちと話していたいぞ……」

「私ももっとユウマにいろんなだらけ方教わりたい~」

「ルーシアさん! ちょっとその口閉じようか!!」


 王都にいる間、俺は時間のある時、密かにルーシアに色々なだらけ方を教えていた。部屋でだらけるときは、なるべく移動しないでいいように周囲によく使うものをまとめておくとか、移動するときにどうやって移動して行ったら最短の移動で済むのかを考えて移動するとか、面倒なことの上手い断り方だとか、そういったことを少しだけ教えていた。

 それともいうのも、ルーシアはニートの才能を秘めていたからだ。お金持ちであるという一点を除いては、俺と生活パターンが酷似しており、理想の生活像が一緒だったからだ。

 あとは年が近いということと―――これが一番の本命ではあるのだが、美少女と少しでも話したい。という男の子の性である。

 でも、その話はここでは大変にまずい。一国の王女様に理想のだらけ方を教えている。なんて話をその専属騎士様の前で話されれば、どうなるのかは一目瞭然。

 その予感は見事に的中し、エイトとセツコさんは困ったような笑みを浮かべていた。


「ユウマ、できればそういうことをルーシア様に教えるのは止めてほしいな」

「申し訳ないのですが、私もエイトの意見と同じです。ただでさえルーシア様はお仕事や行事が嫌いなので、それに拍車を掛けられてしまうと困ります」

「いや、その……面目ない」


 返す言葉もない。

 ニート仲間としてはルーシアの味方をして、これからもニート仲間として仲良くやっていきたいが、もっと言えば、その仲間に俺も入れて仲良くだらけさせていただきたいが、俺とエイトたち、どっちが間違っているのかと言われれば、まあ、俺たちの方が間違ってるよなー。くらいには俺だって思っている。

 だらけるのが悪いとは言わないが、だらけすぎるのは悪い。それくらいには思うようになった。


「とにかく、俺たちはもう帰るよ。こっちじゃまともにクエストも受けられないし、それじゃあ借金も返せないしな」

「そうだねー。私やリリーナはどうにかなるかもしれないけど、ユウマには荷が重すぎるよね」

「ミカの言うとおりね。ユウマなんかこの辺の雑魚にすらやられそうだわ。アイリスの方がよっぽど戦力になるわよ」

「そ、そんな! わ、私だってユウマさんとそんなに変わりませんよ! いつもお二人ほど役に立ててませんし、やっぱり私なんかよりユウマさんの方が色々とすごいですよ」

「何言ってるのよアイリス。アイリスはいつも私たちを役に立ってるわよ」

「そうだよ。昨日だってアイリスちゃんがいなかったら私たち負けてたかもよ? 倒せたにしてもあのまま潰されちゃってたかもだし、私たちにはアイリスちゃんが必要だよ」


 再びのミカとリリーナのあんまりな言い分に、何か言い返そうと口を開いた俺だったが、あまりにも自分に自信のないアイリスを慰めるお姉さん二人が頑張っていたので、大人しくしておく。

 ここで水を差すほど俺は空気が読めないとここじゃない。むしろ俺が空気を読まないのはあえて読まない振りをしている時だ。


「で、ですが……」


 ミカとリリーナが珍しく良いことをしたが、アイリスはまだ自分に自信のないままだ。もう少しだけ背中を押してやる必要があるらしい。


「アイリス。謙虚なのはアイリスの良いところだけど、せっかく褒めてもらえてるときは素直に喜んどけ。子供らしく「わーい」とか「やったー」とか言ってはしゃげ、とまでは言わないけど、素直になることも大切だぞ」


 言いながら俺は癖の様にアイリスの頭を撫でる。アイリスは俺の手を否定はせずに、少しくすぐったそうな顔をしながらも、どこや嬉しそうに顔をゆがめている。

 そんなアイリスの可愛らしい顔に俺の頬も自然に緩み、いつの間にか周りの人間すべてが癒された顔をしていた。アイリスと年の近い、のじゃロリもすらも頬を緩めていたほどだ。


「ロリコン」

「犯罪者」


 すると、突然現実に戻って来たらしいミカとリリーナが俺のことをいきなり罵ってくる。

 何だよ、ロリコンと犯罪者って。犯罪者は確かに悪いけど、ロリコンは別に悪くないだろ! 手を出しさえしなきゃ、ただの子供好きで好感度高いだろうが!!


「だって、こうも言いたくなるよ。私とリリーナがどんなに頑張ったってユウマ全然褒めてくれないじゃん。むしろ当然とばかりに言ってくるじゃん。下手したら失敗したところを罵倒してまでくるじゃん」

「そうよそうよ。ユウマはもうちょっと私たちの大切さを理解するべきだわ。私とミカがいないだけでパーティー半壊のくせに生意気よ」

「い、痛いとこ付きやがる……」


 確かにうちのパーティーのメイン火力は物理はミカ、魔法はリリーナだ。そのサポートにアイリスが入る。そこからミカとリリーナが抜けたら俺たちのパーティーには火力担当がいなくなって、火力が一気に落ちる。

 悔しいことだが、珍しく二人の意見は正しかった。

 でも、反論の余地がないわけでもない。


「それを言うなら、お前らだって俺がいなかったらまともに戦えないじゃねえか」


 そうだ。

 基本的な能力のスペックは高い二人だが、天は人にニ物を与えずとはよく言ったもので、残念なことに頭が悲しいくらいに足りない。その尻拭いをいつも俺がやっているのだ。


「「はぁ~!?」」


 俺の言い分に異議を申し立てる二人。

 だが、俺は間違ったことは言っていない。だから引く必要はない。


「てか、なんでいきなりこんなこと言い出したんだよ。いつもなら、俺が少しでも褒めようものなら明日は天変地異だとか、なんだとか言ってくるじゃん。なに? ツンデレなの? ツンデレさんなの? 俺のこと好きなの?」


 気分を少しばかり悪くした俺は、挑発気味に言葉を放つ。

 すると、二人は顔を真っ赤にして、でもどこかバツが悪そうに俺から顔を背けつつ、すねたように言った。


「べ、別にユウマに褒めてほしいわけじゃないし。……ただ、同じパーティーなんだからアイリスちゃんだけじゃなくて、私にもアイリスちゃんほどじゃないにしろ、少しくらいはさ、その……褒めてくれたっていいじゃん」

「そうよね。ミカの言う通りだわ。確かにユウマはアイリスだけ贔屓しすぎなのよ。みんな平等に扱ってほしいわね」


 なにやら恥ずかしそうに言う二人。

 え? なに? なんで恥ずかしがってるの?

 ギャルゲーだとこういう反応って主人公に好意がある証拠だけど、ミカはともかくリリーナにそこまでの好意があるとは思えない。ミカだって、最近桃色な雰囲気になることがあるが、あれはあくまでその場の雰囲気に流されてるだけで、それ以上のあれはないはずだ。

 事実、腹立たしいことにミカはエイトにメロメロだ。


 そりゃあ俺だって立派な男の子だから、みんなが俺のこと好きだっていうハーレム妄想を日に三回はするけど、それを現実と一緒にしてはない。

 結局それらしい結論が出ずに、俺が二人からの言葉に返事もせずに頭を悩ませていると、エイトが口を開いた。


「あはは、ユウマは案外自分のことはちゃんと見えてないんだね」

「はあ? なに言ってんだよエイト。俺はちゃんと周りが見える系男子だぞ。戦闘面では昨日正面済みだろ。一般生活においてだって、俺は周りがちゃんと見えてるね。少し前は話す奴がいなくて、それしかやることなかったからな」

「じゃ、若干悲しい言葉が聞こえてきた気がするけど、あえてスルーさせてもらうよ」


 エイトが申し訳なさそうな爽やか笑顔で言ってきた。

 ……別に悲しくなんてねぇし。


「そうだな、じゃあ言葉を少し変えるよ。ユウマは女の子の気持ちがわかってないね」

「はっ! それこそ間違ってるぜエイト! 俺はな、数々の女の子をシミュレーションで落としてる! 聞いて驚くなよ! 俺はな、現実じゃなきゃモテモテなんだ!」

「ユウマ……それほんとに自慢になってない」


 反論の最中、なぜかさっきから慌てた様子で顔を赤くしていたミカが、一気に顔をいつもの顔に戻し、可哀そうなものを見る目でツッコミを入れてくる。


「ユウマ殿……。申し訳ないですが、私もエイトの意見に賛成です」

「えっ!?」

「妾もじゃ」

「ほわぁ!?」

「わたしも~」

「ルーシアまで!?」


 なぜかこの場にいる全員に女心の読めない男認定されてしまった俺。

 なんで? 俺ってば数々のギャルゲーをクリアしてきた男だよ? エロゲーだってやってるし、なんならBLゲーだってやってた男だよ?

 男視点での恋愛も、女の子視点の恋愛もこなしてきた男だよ。

 その俺がなんで? やっぱりリアルと二次元は違うの? そうなの?


「やっぱりリアルってわかんねぇ……」


 選択肢の中に必ず正解があって、その選択肢すらわかりやすいゲームとは違って、選択肢の見えない、あったとしてもその中に正解があるかすらわからないリアルの非情さに、俺は大きなため息を零すしかできなかった。



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