2話
「へぇ~。リリーナってすごい可愛い名前してたんだね」
「それに貴族さんだったなんて……。確かにリリーナさんは綺麗だし、礼儀作法とかもしっかりしてますもんね」
あの後、四人で朝食でも取りに行こうと部屋を出つつ、本題であるリリーナの本名についてを二人に話す。さっきのはその後すぐの二人の反応だ。
「ほれみろ。変に気にすることないって言っただろ。リリーナ・ラブ・フルハート。俺の言った通りじゃないかリリーナ・ラブ・フルハート。だからこれからはちゃんと、リリーナじゃなくて、リリーナ・ラブ・フルハートって名乗るんだぞ、リリーナ・ラブ・フルハート」
「フルネーム連呼するんじゃないわよ!」
「おっとっと」
ついにキレたリリーナが手に持った杖で俺を叩こうとする。
しかし、そんな怒りに任せた攻撃など簡単に避けることができた。
「おいおい。暴力はよくないぞリリーナ・ラブ・フルハート」
「キィィィィィィィィッ!!」
相当頭に来ているようでリリーナの顔が真っ赤に染まる。どうせなら恥ずかしさとか、可愛らしい理由で染まればいいのに。ある意味これも恥ずかしさだろうけど。
「リリーナ。わかってると思うけど、ユウマの相手を本気でしてたらきりないよ。こっちが大人にならないと」
「ユウマさんも、リリーナさんの名前をからかうのはやめてあげてください。せっかくお父さんとお母さんからもらった名前をバカにするのは良くないと思います」
ミカがリリーナに俺の対処法を。アイリスが俺にお説教をする。
確かに少しやりすぎたかもしれない。
「なんだ、その……悪かったな。リリーナ・ラブ・フルハート」
「あんた反省してないでしょ!」
一瞬で反省していないのがバレてしまった俺を、リリーナがまた杖で殴りかかろうとしてくる。それをミカが「まあまあ」と止め、アイリスが「ユウマさん!!」と本気で怒っているので、これ以上からかうのはやめた。
なんだかんだやり取りをしながらも、長い長い廊下の真っ赤な絨毯の上を歩き、ところどころに置かれている花瓶や壺をいくらくらいなんだろうな? なんて、とりとめもない会話のダシにして、進む。
五分ほど仮の自室から歩いたところでキッチンまでたどり着いた。
「さてと、俺はエイトに頼んでキッチンを好きに使っていいって言われてるけど、お前らはどうする? シェフになんか頼むか?」
この城の料理は確かに美味い。この前のパーティーの時は対抗心からあんなことを言ってしまったが、美味いものは美味いのだ。俺達なんかじゃお目に掛かれないような高級食材もたくさんあって、正直今のうちに楽しんでおいた方がいいとも思う。でも、やっぱりお上品なものは味もお上品なのだ。
別に薄味が嫌いなわけじゃないが、毎回それではやっぱり秋も来る。味の濃いものやジャンクなものが食べたい、そう思う時がやっぱりあるのだ。だから俺は、毎回許可をもらうのが面倒になってエイトにキッチンの使用を許可してもらっている。
「私は久しぶりにユウマさんのご飯が食べたいのですが。……一緒に作ってもらってもいいですか? お手伝いはもちろんしますので」
「いいよ、手伝いなんて。アイリスは昨日頑張ったからな。それでそっちの二人は?」
残りの二人の意見を聞きつつアイリスの頭を撫でると、アイリスは顔をふにゃっとさせ、喜んでくれた。アイリスの綺麗で長い銀髪が指の間を抜けて行って俺も気持ちがいい。
それに、本当に昨日のアイリスは頑張ってくれた。ヤマタニオロチの足にひたすら『フリーズ』を掛けて足止めをし、さらにはそこからヤマタニオロチのとどめも刺している。昨日パーティーが始まる前にアイリスの冒険者カードを確認したところレベルが一気に五も上がっていた。
え? 俺はどうなのかって? そりゃあ、とどめも何も刺してないからさ。一だよ。
でも勘違いしないでほしい。俺はあえてとどめに参加しなかっただけだ。ほら、たまにゲーム好きの人がやるじゃん? アクションゲームをレベル一でクリアとか。あんな感じだよ。あえてレベルを上げてないの。……ほんとだよ。
目から少し零れたのは涙じゃなくて、食塩水だから。
「じゃあ私もユウマの料理で。さすがにお城の料理は少し飽きてきちゃったし」
「そりゃあパーティーであんだけ食ってりゃそうもなるだろうよ」
ミカは昨日のパーティーとその前のパーティーの時、俺たちがちまちまと料理を食べているのに対し、一人だけバイキングにでも来ているかのような盛り方をして食べていた。しかもおかわりもしてたしな。
零すんじゃないかとか、落とすんじゃないかと、俺は内心気が気がじゃなかったが、料理のことに関してはドジのないミカ。一切零したり落としたりせずに、器用に食べていた。
「私も久しぶりにユウマのご飯が食べたいわね。スパゲッティ―がいいわ」
「いいけど、お前スパゲッティ―好きな」
「いいじゃない。おいしいんだもの」
「別に悪いって言ってるわけじゃねえよ」
リリーナは俺が今晩のご飯は何がいいかと聞くと、大抵の場合スパゲッティーと答える。ちなみにミカは「ユウマの作る料理は何でもおいしいから任せる!」と、俺も日本で母さんによく言っていたけど、自分が実際言われると困ることを言ってきて、アイリスはハンバーグやカレーのような子供が好きなものを頼む傾向にある。
「そんじゃあ適当に作ってくるか」
あれから三十分ほどで朝食が完成した。
リリーナのリクエストであるスパゲッティーをメインにサラダと汁物を用意しただけだけど、材料が高級なだけあっていつもよりも豪華でおいしそうに見える。
それは他三人も一緒のようで、早く食べたいという顔をしていた。
「「「「いただきます」」」」
近くの部屋に移動して、四人でテーブルを囲んで朝食を取る。
みんなが各々自分の好きなものを口にしていく中、無言というのが少しばかり苦手な俺は、昨日のヤマタニオロチ戦で気になっていたことを口にした。
「そういやさ、ミカに聞きたいことがあんだけど」
「むぁ? ふぁひひゅうま?」
「だから口のものを飲み込んでから喋れ。あと料理は逃げないからゆっくり食え」
何度したかわからない。食事の度にしているような気さえする会話を終え、ようやく口の中のものを飲み込んだらしいミカが今度はちゃんと言葉を喋る。
「それでなにユウマ? 私に聞きたいことって」
「いやさ、あの中に知ってる奴いたか?」
「知ってる人?」
「あぁ。こっち来る前からの知り合い」
別に俺は異世界から来たことをアイリスとリリーナに隠すつもりはないが、異世界転生物の主人公というのは、大抵なぜか異世界から来たことを隠したがる。ずっと東の国から来ただとか、今俺がアイリスやリリーナに使っている遠いところから来た。みたいな曖昧な返事をするのが基本だ。
だからというわけではないが、異世界があることを言ってもいいことなのかわからない俺は、次にラティファに会って確認するまではこのスタンスを貫くことにしている。
だからこその、今の遠回しな言い方だ。日本から来た俺とミカだからわかる質問。実際、アイリスとリリーナは特に気にした様子もない。
「……あぁ! そういうことか!」
今まで少しわからないみたいな顔をして俺を不安にさせていたミカが、ようやく意味が通じたらしく、手をポンとしながら頭の上で豆電球でも光らせるみたいなリアクションをした。
「うん。私が見かけただけでも何人かいたよ。えーっと……五人くらいは見たかな?」
「そいつらのスキルってわかるか?」
今度も一応遠回しな聞き方をしているが、俺は暗にそいつら異世界への転移ボーナスを聞いている。さすがに二回目ともなるとミカもすぐに察しがついたらしく、「うーんと」なんて赤い服を着た喋る黄色いクマのようなことしながら、ぽつぽつと喋る。
「確か……『パイロキネシスト』の人と、『テレポート』人と『幻術』を使う人と……あとは―――そうだ! 『俊敏』と『絶対命中』の人だよ! ほら、前にユウマのこと馬鹿にしたって二人」
「げぇ!? あの二人もいたのかよ。会わなくてよかったわ」
異世界に来て一か月も経たないうちに俺に絡んできて、日本にいたころでさえ俺をバカにしていたくせに、異世界でも俺をバカにして、さらにはアイリスとリリーナを引き抜こうとした奴ら。
最後の最後はちゃんと嫌がら―――お仕置きをしてやったものの、俺の気が完全に晴れたかというとそうでもない。嫌な記憶というのは楽しい記憶と違って忘れにくいのだ。
「ちゃんと確認したのはそいつらだけだったとして、他にもいたと思うか?」
「いたんじゃないかな? 私もほら、ちゃんと馴染む前にこっちに来てるし、ちゃんと顔が一致してる人って少ないんだよね。だからもう何人かはいたと思うよ」
「そうか……」
「ねぇ、ユウマ。それが何か昨日の戦闘と関係あるの?」
「あぁ、あるっちゃあるな。昨日の戦闘どころか、その前のヤマタニオロチ戦からずっとだけどな」
俺がずっと王都の冒険者について行って気になっていたこと。
それは―――
「なんでチート持ちがそんなにいたのにヤマタニオロチに苦戦なんてしてたんだ? 作戦は確かにあれだったけど、下手な作戦よりチート能力の方が上だろ。作戦を無視とかじゃなくても、多少はそれを使った戦術だって取れたはずだ」
そう。俺が心のどこかで気になっていた点。なんか違和感を覚えたりしたものの、結局それが何かもわからないまま状況が進んでしまったせいで、あやふやにしていた疑問。それがようやく言葉になって現れた。
「『パイロキネシスト』の奴は王都の冒険者があんだけ魔法を撃っても決定打にはならなかったからわからんでもないが、例えば『テレポート』持ちの奴に近距離武器持ちを何人か体の上に連れて行かせるとか、『幻術』持ちは相手の行動を制御するとか、『絶対命中』持ちは遠いところから的確に目を潰すとか、色々できたはずだろ? さすがに冒険者のリーダーがそれを知らなかったってのはおかしいだろ」
昨日の戦闘だけじゃない。今までの戦闘に置いて、女神ラティファからチートを授かった連中はそれこそ俺の目にも止まらない程度の活躍しかしていない。俺は確かに同じパーティーメンバーのリリーナとミカを追っていることが多かったが、それでも活躍している連中がいればそいつに少しは目を奪われるはずだ。
それが全くと言っていいほどなかった。それどころか決定打の一つも与えていたようには見えなかった。なんならミカやリリーナの方がよっぽど貢献していた。それがどうにも疑問でしょうがない。
そんな俺の素朴な疑問に「あぁ、冷めちゃう」なんて言いながらスパゲッティーを一口食べたミカが答える。
「ユウマー。たぶんユウマが思ってるほどチートも万能じゃないよ?」
「は? なんでそうなるんだよ。チートはすごいからチートって言うんだぞ? それがすごくなかったら意味ないだろ。それこそ卑怯とか、ずるとか、そんな言葉で罵られたって文句の言えないような能力のはずだ」
「あー。今のは私の言い方が悪かったねー」
言いながらミカは今度はサラダを少し口にする。
少しは手と口を止められないのだろうか。
「えっとね、私が言いたかったのは、チート自体がすごくても、それを使う人がちゃんと使えないと意味がないってことが言いたかったんだよね」
「つまりあれか? 道具は便利ですごいものだけど、ちゃんとした使い方を知らなかったら本来の力を使いこなせない的な奴か?」
「そうそう。私の『金剛力』は単に物理面の能力を上昇させてくれる能力だから平気だったけどさ、さっき言ってた『パイロキネシスト』とか『テレポート』の人は最初結構使い方に困ってたよ。―――最初ユウマに置いて行かれて、いろんな人のところにくっついてた時に聞いたんだけどね」
「うぐっ……」
ミカが若干恨みがましい目で俺を見ている。最初の頃の話をされると言い返す言葉もない。だから素直に、すまん、と謝っておく。
それで満足したのか、ミカはさっきの言葉の説明を続けてくれた。
「『パイロキネシスト』人は、確か最初に威力のコントロールとか発現位置に苦労したって言ってたかな? 『テレポート』の人も、移動する位置がわかりずらいとか言ってたと思う」
ミカの説明を聞いて、少し自分なりに整理してみる。
話を聞く限りだと、ラティファはチートを使えるようにはしたけど、それを使いこなせるようにはしていないみたいだ。さっきの二人のことをあげるとすれば、要するに二人は空間把握能力が足りていなかったように思う。相手との距離はどのくらいか、どのくらいの力を使えばいいか、その辺が不明瞭だったのだろう。
それに、これは前にミカに聞いた話だが、例えば今話題に上がっている『テレポート』この能力はチートとして与えられているが、この異世界にもちゃんと『テレポート』のスキルは存在している。現に俺たちはイニティの冒険者を王都に連れてくるのにテレポート屋を利用した。
では、その違いは何か?
それは単に『テレポート』を取得するのに必要な大きなスキルポイントとそれを稼ぐ時間がなくなるのと、そして能力を使う魔力の消費量が少ない。というところにあるらしい。
これらのことをまとめ、もっと簡単に言ってしまえば。
「そうか。俺たちは特別な能力をもらったわけじゃなくて、強くてニューゲームさせてもらってるだけなのか!」
そうだ。俺たちは最初から色んな強力なスキルを使えるだけの普通の異世界人にしてもらっただけなんだ。
本来強くてニューゲームは一回目をクリアしているからこそ既にものにしている知識と、後半からしか使えないような強い能力を最初から使えるというものだ。俺たちの今の現状はその一回目の記憶がないような状態。強い能力だけを手に入れたけど、使い方は知らないよ。という状態。
なるほどなるほど。これで色々とつながる。
「んー。ユウマの言ってることあってると思うけど、でもギルドのお姉さんに私『金剛力』なんてスキル見たことないって言われたよ?」
「じゃあ、あれか? この世界にあらかじめあるような才能はそのスキルにして、ないものは新しく特別に作ったってことか?」
まぁ、その辺のこともまたラティファに聞けばいい。それで解決だ。
「でも、そのためには死ななきゃなんだよな……」
問題点があるとすればそこだ。俺がラティファに会うには死ぬ必要がある。あの時の俺の状態が死んでいるのかはまだ不明だが、ラティファのあの言葉たちを聞く限りでは俺は死んでいるはずだ。
「ゆ、ユウマさん……? 今死ななきゃとか言ってませんでしたか……?」
俺がついうっかり漏らしてしまった言葉に、今まで俺とミカの話をただ聞いていたアイリスが悲しそうな顔を向けて来る。気が付けばミカとリリーナも同じような顔を俺に向けていた。リリーナのは怒りも混じっているように見える。
「悪い悪い。冗談だよ冗談!」
「あの、冗談でも死ぬなんて言うのはやめてもらえませんか? 私……あの時本当に怖かったんですよ……?」
あの時とは、きっと俺がラティファに会っていたときだろう。
俺はなんとなく大丈夫ということがわかってるけど、それを知らない三人からしたらたまったものじゃないはずだ。
「それは、本当に悪いと思ってるよ。これからちゃんと気を付ける」
まぁ、俺の死亡した原因のほとんどがフレンドリーファイヤーのわけだが。
俺の言葉に安心したのか、アイリスがようやく笑顔を見せてくれた。他の二人もしぶしぶ、といった様子ではあるものの、怒りを鎮めてくれたらしい。
それを確認した俺は改めて今わかったことの整理を再開する。
まず、俺たちは基本的には特別な能力をもらったわけじゃなくて強くてニューゲームしているだけ。
その影響で、いくらその人の中で一番才能のあるものを能力としてもらっても、能力を使いこなせるとは限らない。
能力の効果もちゃんと使っていかないと上りはしない。
こんなところだろう。
「つまり、こっちにいるチート連中はチートに頼って生きてきたばっかりに本当の強敵には弱いと」
その辺の雑魚はチートでいくらでもどうにでもなったのだろう。それこそ離れたところから燃やしたり、いきなり後ろに回ってナイフでも突き立てたり、幻術で惑わせているうちに仲間にとどめを刺してもらったり、そんなことで生きてきたのだろう。
そんな戦い方しか知らないなら、あのヤマタニオロチに手も足も出ないのも納得がいくというものだ。
「もう一個気になることがあるんだけどさ。これはミカ以外にも知ってるなら答えてほしんだけど」
俺はそう前置きをしてからもう一つの疑問を口にする。
「王都の冒険者連中弱すぎないか? 一応この国の精鋭の冒険者だろ? それなのにあの戦い方ってひどくないか?」
みんな食事をとり終え、それぞれが皿をまとめながら俺の質問の答えを模索している。この様子だと、その答えは誰も知らないし、予想もできないようだ。
「仕方ない。そのことについてはあとでギルドのお姉さんにでも―――」
聞くとするか。と続けようとしたとことに部屋の扉が開く。
「その質問には僕が答えられそうだよ。ユウマ」
「エイトさま!!」
いきなり部屋に入ってきたイケメン腹黒騎士にミカが目をハートにする。
女ってのはイケメンを前にすると思考を停止するのが良くないとユウマは思います。
「妾たちもいるのじゃ!」
「わたしも~」
「失礼いたします」
「なんだなんだ。王都のメインメンバー勢揃いかよ」
エイトに続いてのじゃロリこと、この国の第二王女ルリ、ルリと同じくこの国の第一王女ルーシア、そしてエイトと同じく王女様の専属騎士セツコさんまで部屋の中に入ってくる。
「お~、ユウマ! お主はまた面白くて美味そうなものを作っておるな!」
「食べるか? 少し余分に作ってあるから出せるぞ」
「良いのか!?」
「よいよい。俺は美少女の頼み事は断れないからな」
「やったなのじゃ!」
「ユウマ、わたしも~」
「へいへい」
俺が早速残っている朝食を二人分に分けて準備すると、エイトとセツコさんが申し訳なさそうに頭を下げてきた。
俺は別に気にすることないぞ。と答えておく。これできっとセツコさんたちの好感度が上がったはずだ。エイトのは上がらなくていいけど。BLルートは見る分にはいいけど、実際自分が通りたい道じゃない。
「それでエイト、さっきの質問に答えられるって本当か?」
二人に皿を出し、改めて自分の席の戻って言う。
エイトは軽く頷いて早速説明を始めた。
「実はね、あの冒険者のリーダー、ああいったことが初めてだったらしいんだ」
「―――は?」
「ユウマ殿、これは私たちも昨日ギルドの職員に聞いた話なのですが、エイトの言うことは本当らしいのです」
エイトが一人言ってるのなら俺をからかってるんじゃないかと疑いもするが、さすがに真面目なセツコさんに限ってその線はないだろう。俺はやや混乱した頭のまま更なる説明を要求する。
「あの冒険者のリーダーなんだけど、さっきも言った通り大型モンスターとの戦闘はもちろん、大人数の指揮を執ったことがなかったらしいんだよ」
「この国の冒険者たちはそんな奴をリーダーのおいたのか!?」
「彼の実力自体は本物だったらしいからね。普通のパーティーで普通のクエストをこなす分には、この国でもトップクラスのパーティーだそうだよ。実際戦果もちゃんと挙げていて、ギルドの人たちからも頼りにされてたらしい。でも―――」
「いざ今までと勝手の違う敵が出てきたら対処に困り、大勢の人間を同時に動かすのにも慣れてなくて、色々と考えているうちに自棄になったのがあの結果と。それも約一週間も……」
呆れてものも言えない。俺にここまで言わせるのだから相当だ。日本で親のすねをかじり続けた俺にこうも言われたら、あいつも俺の事情を知ったら死にたくなるだろう。いい気味だ。言わないけど。
「それに……お気を悪くしないでいただきたいのですが、ユウマ殿が一緒に来ていたことも彼にとっては嫌だったらしいのです」
「はあ!? なんで? 俺はただ見学しに来ただけだって最初から言ってたろ。仕方なく来てやってるだけだって。そりゃあ、撤退の時にはちょっとやんちゃもしたが、あれはあいつも悪いだろ」
セツコさんが悪い訳じゃないのはわかってるんだが、自分のミスをこっちの責任にされてはこっちだってご立腹である。
「さすがにそこまで言われちゃ俺だって黙ってないぞ、あのやろー。俺は今、ミカの腹の様にご立ぷくぁっ!!」
「ユウマ、それ以上言ったら……わかるよね?」
「もちろんです。ごめんなさい!!」
男ユウマ。撤退のタイミングは決して誤らない。
「ユウマ、それが少し違うみたいなんだ。彼はユウマがお目付け役の様に付いて来てたことが気に食わなかったらしい」
「どういうことだ?」
「つまりね。自分の実力がみんなに信頼されてないんだと勝手に思い込んでいたらしいんだ。それもあって彼は自分の信じた作戦を実行し続けたんだろうね」
「呆れた。子供かよ……」
「ユウマも人のこと言えないじゃない」
「おう、リリーナ。俺は別にいいんだぞ。お前のフルネームを叫びながら町内一周マラソンしても」
「うぐっ」
俺の脅しにリリーナがきれいな顔を引きつらせる。そんな顔をしても美少女は美少女なんだからずるい。でも、これは本当にいい武器を手に入れた。
「とにかくそういうことらしい。この国の冒険者のトップ集団としてのプライドが一段とすごかった。ただそれだけらしいんだ」
エイトとセツコさんの説明に納得は言ったものの、理解はできないまま、俺は朝食を終える。エイトたちと話しながら食べていた俺に比べて他のみんなは少し早く食べ終わっていて、気が付いたら俺が最後まで食べていてみんなを待たせてしまっていたらしい。
まあ、ここにそんな気をつかうような奴はいないので気にもしない。
「はぁ~。なんというか、なんとかだな~」
何か言おうとして、結局それが言葉にならず適当な言葉で濁す。
ただ、俺の気持ちはみんなも同じらしく、ただただため息を漏らすばかりだった。




