36話
「ユウマはその……信頼されておるのじゃな」
「そうだね~。すごい信頼だったよ~」
あれから二時間後。
ギルドにて今日の作戦会議を終えた俺たちは、冒険者たちの王都までの移動にテレポートを使うために向こうで待っている人が必要だという話をしたら、のじゃロリとルーシアが名乗りを上げてくれたので、その二人をテレポート屋まで送り届けている最中だ。その道中に二人は俺に対してこんなことを言ったのである。
ちなみに他の三人はヤマタニオロチ戦まで極力体力を温存しておきたいというので先に屋敷に帰してある。ここにいるのは俺とお嬢様二人だ。
「あれは信頼とは違うだろ……」
二人の言葉に俺は首をがくんと落としながら答える。
あれを信頼と呼ぶのなら、俺は一生信頼なんてものはされたくない。
「でも、みんなユウマがどうにかしてくれると信じておったから、作戦を聞く前からヤマタニオロチの討伐に身を乗り出してくれたのじゃろう?」
「そうだよ~。ユウマはもっと素直になった方がいいよ~」
「いや……。あれは二人のお願いに堕ちたのと、ヤマタニオロチなんて倒せれば報酬がたくさんもらえるからってだけだ。現にあの後の報酬の話の時にみんな盛り上がってたし……」
さっきまでのギルドの話し合いで一番盛り上がった時間は報酬の話をしている時だった。仮の話ではあるが、こちらのギルドが王都のギルドに確認したところ一人当たり五十万ギルは保証するという話だった。その中から王都とイニティのテレポート代を往復分自分で払ってもらうと話したが、それを差し引いても四十万ギルは確実。命だってある程度は保証されている。このビックウェーブに乗らないのは冒険者じゃない。
「でも、まあ上手くいったんならそれでいっか」
どう考えたってこれ以上いい考えにはなりそうにないので、強引に思考を振り切る。
「そういえばユウマ~。ユウマはお屋敷で少しでも休まなくて大丈夫なの~。さっきの話だと~。昨日寝てないんでしょ~」
「あぁ、平気平気。一日くらい寝ないのなんて慣れてるからさ」
日本にいたころはそれこそ、それなりのペースで徹夜したものだ。ネトゲのイベントや、アニメの一挙放送、漫画の一気読み、理由は様々だが、徹夜をこなした回数になら自信がある。
「それはすごいね~。私は一日、二四時間寝ないとだめだよ~」
「それだと、いつ起きてるんだって話になるんだが……」
冗談なんだか本気なんだかわからないルーシアの言葉に若干呆れつつ、どうにか二人がいつも通りに戻ってくれたことに内心ほっとする。ミカたちもギルドで別れる際には元気にしてたし、とりあえずは俺の行動は功をなしたらしい。
「おっ、テレポート屋が見えてきたな」
ギルドからゆっくりと三人で歩くこと十分ほどで、テレポート屋が見えてきた。
ちなみに、王都に行く際にテレポート屋を使わなかったのは少しでも心の準備をする時間が稼ぎたかったからだ。
「それじゃあ頼むな。たぶんみんな作戦の一時間前にはいくだろうからさ。俺たちはこっちの冒険者が全員テレポートしてから行くから、向こうで冒険者をまとめておくのは頼んだぜ」
「任せるのじゃ! 戦闘はお主らに任せることになるのじゃ、それくらいのことくらいはやってみせようぞ!」
「同じく~」
「そうか、それは頼もしいな。んじゃ、後でな」
「うむ、あとでなのじゃ」
「またあとで~」
ルーシアの緊張感も何もない言葉を最後にいったん俺たちは別れることとなった。
それから少し時間が過ぎ、俺はあのまま寄り道もせずに屋敷まで戻ってきていた。
「たでーまー」
さっき二人に平気だなんて言ってはいたが、体には結構きているみたいで割とだるい。正直なところ少し仮眠を取りたいところだが―――
「今は……九時か。こっちから冒険者たちを送り出すのにテレポート屋の前には三十分前には居たいよな。そうなると、さらに三十分前には屋敷を出ないとまずい。寝てる時間は―――ないよなぁ~」
王都に向かう時間は十二時という風にギルドでは話した。理由はヤマタニオロチが来るのがお昼頃だとエイトたちが言っていたから。おそらくエイトたち騎士団や王都の冒険者はお昼の少し前にヤマタニオロチの討伐に乗り出すだろう。その二つのグループと同じタイミングで戦わないことを考えると、俺たちがヤマタニオロチを狙うタイミングは実質二択。二つのグループよりも早く出るか遅く出るか。
「さすがに前は時間が足りなかったからな。まあ、これでも急げた方だろ」
経った一晩でここまでの準備をしたんだ。それもニートが。
褒めてほしい。美人で甘々なお姉さんと、面倒見の良い年下の子に甘やかされたい。
「なんて無茶な話か……」
妄想という字は亡き女を思うと書く。別に俺の妄想の女の子が亡くなっているわけではないが、無き女を思うという意味では間違ってはない。
「ユウマさん! おかえりなさい!」
「おっ? アイリス。どうしたんだ? お出迎えしてくれるのはうれしいけどさ」
ミカたちと一緒に少しでもヤマタニオロチ戦まで少しでも体力を温存しておきたいと先に帰ったはずのアイリスが、俺を笑顔で出迎えてくれた。
「それは来ますよ。ユウマさんが帰ってきたんですから。それに、言いたいことがあったんです」
「言いたいこと?」
「はい。すごく大事なことです」
そう言ったアイリスの顔は相変わらず笑顔のままで、でも、その笑顔はいつものよりも一層輝いて見えた。なにこれ、寝不足補正? なら俺毎日寝不足になるけど。
「ユウマさん。今回は―――いえ、今回も本当にありがとうございます」
アイリスはそう言って頭を下げる。きれいに九十度腰は曲がっていた。
「何してるんだよアイリス! アイリスが頭を下げるようなことないだろ?」
慌ててアイリスに頭を上げるよう説得する。だいたい今回のことは俺がもっと早く吹っ切れていればこんなことにはならなかったのだ。エイトに帰るように言われたときに意地でも帰らなければよかった。こっちに来た時にみんなの表情を見て何かを思ったときにだって行動できたはずなのだ。それを俺は面倒くさいという理由と、若干ふてくされていたという子供っぽい理由で行動に出なかっただけなのだ。もちろん、怖かったというのもあるけど……。
でも結局のところ、俺の優柔不安さがアイリスたちをあんな心境にしてしまったのだ。それに代わりはない。
「ユウマさんはやっぱり優しいですね。いつもリリーナさんやミカさんや私がクエストで足を引っ張っても、文句は言いますけど、結局はどうにかしてくれますし、パーティーを解消しないでくれています。ユウマさんならもっと他の人とだってパーティーを組めるはずですし、それこそ王都の方でも活躍できそうなのに私たちに付き合ってくれてるんですもん。ユウマさんは優しいです」
「それは言い過ぎだアイリス。俺は結局いつも口だけで何もしてないだろ? 今回の作戦合って聞いてただろ? 俺はほとんど何もしないんだぞ? 作戦のかなめの話をすれば間違いなくあの作戦に必要なのはアイリス、リリーナ、ミカの三人だ。俺は必要ないだろ」
実のところさっきギルドでヤマタニオロチとどう戦うかという作戦はみんなに聞かせてある。無駄に一週間近くヤマタニオロチ討伐に同行していたわけではない。だから、いくらか作戦はあった。それを一晩でどうにか使えそうなものにまでしただけだ。
そして、今言った通り今回も火力担当はミカとリリーナ。サポートの要はアイリスと、ファナの二人だ。他のみんなも必要な人材ではあるが、この四人ほど仕事が多い人間はいない。俺がどちらに入るかといえば、間違いなく、後者の他のみんな、側だ。
「いいえ、そういう話ではありません。ユウマさんがいつも私たちを気遣って助けてくれてることへのお礼がしたかったんです。いつも私は迷惑を掛けてしまってますから。リリーナさんやミカさんはオークの時やヴォルカノ討伐の際に頑張ってくれています。でも、私はどちらの時もお二人ほどお役には立てませんでした。お二人ほどお礼をできませんでした……」
確かにアイリスの言う通りどちらの戦闘においてもアイリスは戦闘面では二人には叶わないだろう。でも、それは仕方のないことだ。アイリスはサポート型、ミカとリリーナは魔法と物理という違いはあれど攻撃型だ。貢献すべき場所が違うのだから仕方がない。でも、アイリスはそういうことが言いたいんじゃないのだろう。
「じゃあアイリス。今回はアイリスにももっと頑張ってもらってもいいか?」
「え……? 私がですか? リリーナさんやミカさんでなく?」
「あぁ、正直さっき話した作戦じゃ不安要素があってな。確実性を少しでも上げるならアイリスにも協力してもらった方がいいんだよ。で、ただでさえアイリスにはもう十分な仕事を任せてるけど、いけそうか?」
本当ならこんな無茶は言いたくない。アイリスはもう十分な仕事を任せてある。そこにさらに重要な仕事を与えるのは正直心苦しい。でも、アイリスはきっとこの方法以外では納得してくれないだろう。
「はいっ! やらせてください!!」
だからきっと、この選択は間違っていない。
アイリスがこんなにやる気になっていて、笑顔になっているこの選択に、間違いはないんだろう。
「あっ! ユウマ! 帰ってきてたんだ!」
「ミカか、なんだよ。ずいぶんと遅いお出迎えじゃないか。アイリスはすぐに来てくれたぞ」
「いやー、今日朝早く家を出ようって話だったから寝足りなくて、今まで寝てたんだよー。今はトイレに起きただけ」
ミカはそう言うと、「そうだった! 私トイレに行く途中だった」と、若年性アルツハイマーを疑う発言を残し、俺とアイリスに背を向ける。
「あっ! そうだユウマ! 私ユウマに言いたいことがあったんだよ」
「なんだなんだ? アイリスに続いてミカもか。いいぞ、今の俺は寛大だからな。何でも聞いてやるぞ」
「そう? じゃあ絶対に怒らないでね」
ミカはそう前置きをすると、少し間をおいて言う。
「ユウマ、男のツンデレは正直、誰にも需要がないと思うの」
「うっせーよ!! 俺とアイリスが作ったいい雰囲気返せよ!! あと、男のツンデレにだって一部の女性には需要があるんだよ! あと俺とアイリスの良い雰囲気返せ!」
大事なことなので二回言いました!!
「あーん! 怒らないって言ったのにーっ!!」
結局、俺とアイリスとミカは結局休むことなく居間で三人ダラダラと話していた。いつもと変わらないようなくだらない会話をして過ごすことにした。「リリーナさんだけこの場にいないのは仲間はずれみたいで悲しいです」というアイリスの優しさでリリーナを部屋まで呼びに行ったが返事がなく、俺が仕方なく『聞き耳』で中の音を盗み聞くと、なにやら怪しい魔術を使ってそうな声が聞こえてきた。魔法の詠唱の練習というところだろう。
いつもこのくらい真面目ならいいのに。
中の様子を二人に伝えると、二人は「それならしょうがないですね」、「リリーナは真面目だなー」なんて言いながらリリーナの部屋のドアを見やった。
俺からすれば、あんな面倒ごとに自ら首を突っ込んで、無理だとわかっていながらもどうにかしようとした二人だってよっぽどだと思う。
ミカが調子に乗りそうだから絶対に口にはしないが。
そんなこんなで三人で居間まで戻ってきた俺たちは、変に緊張しないためにも普通にすることにしたのだ。そうこうしている間にも時間は進み、あっという間に屋敷を出ないといけない時間になった。
「そろそろ時間だな。リリーナを呼びに行くか」
「そうですね」
「いこーっ!」
静かの立ち上がるアイリスに、手をグーにして突き上げながら立ち上がるミカ。
どっちが子供かわかったもんじゃないな。
「おいリリーナ。時間だぞ。早く出てこい。お前はもう包囲されている」
「ゆ、ユウマさん。なんで若干喧嘩腰なんですか?」
アイリスの不思議そうな声を背中で聞きながら、なかなか出てこないリリーナを呼ぶ。
「早く出てきなさい。実家のおっかさんも泣いてるぞ!」
ドアをドンドンと叩きながら言う。
すると、ようやくリリーナの奴が出てきた。
「なんなのよ! せっかく人がヤマタニオロチを倒すときに言うカッコいいセリフを考えてるのに邪魔しないでよ! あとユウマじゃないんだから両親泣かすようなことするわけないでしょ!!」
「お前詠唱の練習してるのかと思ったらそんなくだらないことしてたのかよ! あと、反論できない反論をするんじゃない! 本気で否定できないんだよ! 証人もそこにいるんだよ!!」
ミカを指差し、半ば涙目になりながら怒鳴る。
調子に乗って悪ふざけしたけど、今回はそんなにひどいことはしてない。さすがにここまで言われる筋合いはないはずだ。
「わ、悪かったわ……ごめんなさいね。さすがにそこまでひどいとは思ってなかったわ」
「やめろ! 謝るな! さらに傷口が開くから!!」
さすがに俺だって今は反省してるんだぞ!!
「まぁまぁ、お二人とも落ち着いてください」
「そうだよ二人とも。こんなところで体力使っちゃだめだよ。これからもっとすごいのに戦いを挑むんだからそこで体力は使わないと」
アイリスに言われるのはともかく、ミカに言われるのは若干来るものがあるが、今回は俺たちが悪い。ユウマは我慢のできる男なので我慢することにします。
……たぶんな。
「……」
リリーナも渋い顔をしていた。いつも仲がいいとはいえ、結構プライドの高いリリーナ。ミカに言われたのはさすがに堪えたのか、俺と同じような思考に行きついたらしい顔をしていた。
「これ以上傷つかないためにもお互い今日は我慢することにしようぜ」
「えぇ、珍しく同意見よ」
リリーナと謎の結束感ある固い握手を交わす。
「それじゃあ、みんな揃ったし行くか」
けだるい感じに言うと、みんながそれぞれやる気に満ちた返事をした。
にしても、これからテレポート屋の前で冒険者たちを誘導して、全員送ったら自分たちも王都に行ってまた冒険者を誘導して、さらには戦況を見極めてヤマタニオロチと王都の冒険者と兵士たちの戦いに激突。そこからヤマタニオロチの討伐。
自分でやると言っておいてなんだが―――無理くせ~……。
「なぁ、やっぱりもう少しあとに―――」
「「「ダメ(です)」」」
逃げ腰の俺に三人の美少女からの追い打ち。
逃げ場など、最初からなかった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「はあ~、今ので最後のパーティーか?」
「そうみたいです。もう装備をしている人はいないみたいですし」
テレポート屋の前で冒険者たちを送り出すこと数十分。ようやく最後のパーティーを送り出し、自分たちも王都に向かう番がやってきた。
「気が重いな~」
ここまで来ても結局恰好のつかない俺は、情けないことに泣き言を漏らす。
でも、みんなだって俺と同じ状況になれば、同じような心境になるはずだ。これは決して、俺がダメ人間だからではない。
「もう、まだそんなこと言ってるの? 私とリリーナの作戦を台無しにしたんだから、頑張ってよ」
「あのなー。あくまで俺の目的はお前らの王都行きの阻止だったんだぞ。そのために仕方なくこんな大掛かりなことまでしたんだ。でも、俺の目的はもう達成してる。やる気が出ないのなんて当たり前だろ」
そう。あくまで俺の目的はヤマタニオロチの討伐ではない。ヤマタニオロチを倒すとでも言わないと、脳筋コンビとルーシアを止められないと思ったからこうしているだけだ。その目的が果たされた今、俺のやる気は眠気に負けてしまっている。
「でも、王都が滅ぼされたら滅ぼされたでどうせ落ち込むじゃん。ユウマは面倒くさいから」
「面倒くさいはよけいだ。……まあ、するだろうけど」
さすがに俺だって自分と関係のない場所の出来事だからってなんにも思わないって程じゃない。少しくらいは可哀そうだなとか、ひどい話だ。くらいには思う。
「まあ、ミカの言う通りか。どうせもう後には引けないし、やるだけやってみるとするか」
「それでこそユウマだよ!」
「どこがだよ。こんなことしてる方が俺らしくないだろ」
「そんなことないよ。昨日も言ったけど、ユウマはなんだかんだ言って優しいもん」
「やめろ……。なんかこそばゆい」
「あ、照れてる~」
「うっさい!!」
なんだか恥ずかしくなってきたので、頬を突くミカの手を少し強引に払いのけながらそっぽを向く。
「そんなことより早くいくぞ。ほれ、アイリスとリリーナも待ってる」
先にテレポート屋の人の前で待っている二人が俺たちを待っている。アイリスに至っては天使のような顔で手まで振ってくれていた。
「そうだね。いこっか」
「あーあ、月曜日の会社に行くってこんな感じなのかね~」
悲しいことを口にしながら、俺たちは王都へとテレポートされた。
「おお! ユウマ!」
「ユウマ~」
王都にテレポートされるなり、こっちでイニティの冒険者たちの誘導をしてくれていたのじゃロリとルーシアが出迎えてくれた。
「おう、数時間ぶり。で、冒険者たちの誘導は……できたみたいだな」
周囲を見渡すと、そこに冒険者たちの姿はなく、数分前に送った冒険者たちの背中が、王都から外に出るために門へと続く道を歩いて行っているのが見える。
このようすなら合流地点にしてある門には既にほとんどの冒険者がそろっていることだろう。
「にしてもよく二人で捌き切ったな。こっちなんて四人でも面倒だったぞ」
「うむ! 実を言うとじゃな。みんなが手伝ってくれたのじゃ!」
そう言うと、のじゃロリは周囲に手を向ける。そこにはロクに名前も知らない王都に住んでいる住人たちがいた。
「こっちが外に行ける門でーす」
「道具の買い忘れがあったら言ってくれ、格安で売るぞ」
「お願いします。どうか王都を救ってください! 頑張ってきてください!」
住人のみんなが俺達始まりの街の冒険者を門の方まで誘導し、足りないアイテムの補充を率先して引き受けてくれて、さらには応援なんてものまでされている。
「す、すごいですね……」
「そうだね。そりゃあこれだけの人が協力してくれれば楽なはずだよ」
「向こうでもギルドがこれくらいやってほしかったわね」
俺以外の三人が思ってもいない光景に少し驚いていた。
俺もだけど。
「それじゃあ俺たちも行くか。ここでダラダラしてて、もう取り返しがつかなくなってました。じゃ、後味悪すぎだからな」
「さっきまで渋ってたくせによく言えるわね」
「うるさいぞ脳筋魔法使い!」
「だれが脳筋魔法使いよ!!」
さっきあんなに今日はお互いに大人しくしていると固く約束したのに、一時間も持たずに約束を破棄した俺とリリーナと他四人は門へと足を進めていく。
五分ほどで門までたどり着き、そこにはイニティの冒険者たちがぞろぞろと集まっていた。
「おーっす。 待たせたな」
俺たちが到着したことを知らせるために少し大声を上げると、イニティの冒険者達が一斉に俺たちの方を向く。
「おっ。やっと来たか。遅かったんじゃねえか?」
「もしかして、またなにかやらかしてるのかと思ったわよ」
「した後だったりして?」
「お前ら好き放題言い過ぎだろ!!」
俺のツッコミの後に大きな笑い声が響いた。もちろん出所はイニティの冒険者どもから。
こいつら、これから死ぬかもしれない戦場に行くのに小学生の遠足みたいなテンションしてやがる。
「くっそ! お前ら覚えとけよ! これからさんざん扱き使ってやるからな!!」
俺の言葉にまるで不安なんてないような返事が返ってくる。
俺達にはシリアスなんて似合わない。そう言われてるようでさえあった。
「行くぞお前らーっ! ヤマタニオロチブッ倒して、王都の冒険者と兵士たちにに恥かかせてやんぞ!!」
「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」」」
オーク戦、ヴォルカノ戦に続く、イニティの街冒険者たちによる壮大な戦いが幕を開けようとしていた。




