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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第六章
148/192

35話

 あれから何がどうなっているのかと俺を問い詰めてようとする仲間たちを「緊急クエストのサイレンだぞ。そんな話はあとだ、あと」と、強引に無視してギルドまでやってくると、この街の冒険者たちのおそらく全員が各々自分の最高の武装をして、このためだけに並べ替えられた椅子に座っていた。

 ざわざわと、みんなが緊急クエストに対する不安と、眠いという不満を漏らしながらギルドから説明があるのを待機して待っている。

 俺たちもそれに倣って、近くの席に適当に座り込んだ。すると、タイミングを計ったかのようにギルドのお姉さんがみんなに見える位置に立った。


「こんなに朝早い時間にお集まりいただいて大変申し訳ありません。ただ、今回の緊急クエストはいつもの緊急クエストとは違います。断っていただいても結構です。断ったとしても我々ギルドはなにも言いませんし、問題にもしません」


 いつもと違う前言葉に冒険達は顔を歪ませる。まあ、そうだろうな。

 緊急クエストは基本何らかの事情で今この街にいなかったり、大けがをしていて動けなかったりしない限り、冒険者たちは全員参加だ。それが、最初の一言で否定されている。それを聞いて考えるのはよほど危険なクエストなのか、よほどおかしなクエストなのかのどちらかだ。


「どうして断ってもいいんだ? いつもは強制参加だろう?」


 みんなが同じ疑問を共している中、痺れを切らしたらしいこの街では中級レベルの冒険者が手を挙げて行った。その質問はギルドからしても当然のものだと思っていたんだろう。なんてことない様子で説明を始める。


「それにつきましては、今回は少し特殊な緊急クエストだからです。というほかありません。私たちが変に説明をするよりも、ご本人の口から詳しく説明してもらった方が早いと思いますので、質問はご本人の方へお願いします」

「ご本人? ご本人って誰……」


 みんながお互いの顔を見合わせる中、俺はそんなこともせずにその場で立ち上がる。そしてそのまま前で話しているギルドのお姉さんの元へと足を進めた。

 立ち上がった瞬間、パーティーメンバーとのじゃロリ、ルーシアが驚き何か言っていたが、全部無視した。どうせこれからわかることだ。


「それじゃあお願いしますねユウマさん」

「おう、無茶聞いてくれてサンキューな」


 お姉さんと笑顔で場所を交換し、俺は説明を始めようと顔を上げて前を見る。


「とまあ、こういうわけだ。俺がこの緊急クエストを依頼した張本人だ」


 ちょっと偉そうに腕を組みながら言うと、冒険者たちの訝し気な表情が増した。

 まあ、まだ今の状況じゃどういうことか理解しろって方が無理だよな。うん。


「いろいろと言いたいことがあるだろうけど時間がないんだ。まずは俺の話を聞いてほしい。実は王都がまずい状態なんだ」


 俺は王都の現状について必要なところだけを掻い摘んで話した。しかし、この前の一件のことでもわかる通り、始まりの街の冒険者と王都の冒険者の中はよろしいとは言えない。相手はこっちを見下してるんだから仕方ないっちゃないんだが。

 そんな理由で俺の説明を聞いた冒険者たちはみんな嫌な顔を見せた。


「みんなの言いたいこともわかる。俺たちをバカにするような奴らを助けるなんて嫌だと思う。俺だって嫌だ。でも、でもだ! それを見返してやりたいとは思わないか? この前王都の連中が来た時の顔を思い出してみろ。気分がスカッとしなかったか?」


「確かにあの時はスカッとしたよな」

「そうよね。あの時ばかりは偉そうな顔されなかったもの」

「今回も同じだってんなら話は変わってくるよな」


 俺の言葉も少しは効果があったのか、数人が意見を翻し始めた。後は押し切るのみである。


「それにだ。昨日俺と一緒にいるところを見たやつもいるだろうが、今こっちには王都のお嬢様がいる。のじゃロリ、ルーシアちょっと前に出てきてくれ」


 俺に呼ばれて驚きつつも前に出てくる二人。それを見て驚く冒険者たち。さすがは王都のお嬢様、こっちでも少しは顔が知れてるのか。


「ほれ、挨拶」


 二人が前に来たのを確認すると、俺は二人の背中をたたきつつ挨拶をするように言う。正直、緊張で離せなかったりしたらどうしようかと思っていたんだが、そこはさすがというべきか、伊達にお嬢様をやっていないとばかりに凛々しい顔つきで挨拶を始める。


「わ、妾は王都の際に王女のルリなのじゃ。よろしくお願いするのじゃ」

「わたしは~、王都の第一王女のる~……めんどくさいからユウマから説明して~」

「俺に頼む方が文字数が増えるぞ! 自分で自己紹介しなさい!」


 こんな場でなんでお説教しなきゃならんのだと思いつつ、ルーシアに説教をかますと、なんて恐れ多いこと、なんて声は聞こえてくる。

 ああ、そりゃあ一国のお嬢様にあんな口を聞いてたらこうもなるか。


「ルーシアです~」

「ちゃんと説明……まあ、いっか。さっきほとんど説明してたし」


 ちゃんとした自己紹介をさせることを諦めつつ、俺は緩くなってしまった空気を引き締めるために声を張る。


「見てわかると思うが、王都は王女候補二人をこの街に逃がすほど追い込まれている。その上で協力を俺は要請したい!」


「ん~……でもなあ~」

「勝てるかどうかもわからないし、というか向こうの冒険者が勝てない奴相手に俺たちが戦ってもなあ」

「死にたくないし、やっぱり王都の連中は好かないしね」


 ここまでしても冒険者たちは渋った。でも、ここまでは想定済みだ。

 こういう時は精神的に訴えるに限る。


「のじゃロリ、ちょっとこっち向け」

「ん? なんなのじゃ? ……何をするのじゃ!?」


 冒険者たちがどうするか話し合いを始める中、俺はのじゃロリを後ろに向かせる。そして目元に威力を限界まで落とした初級水魔法「ウォーター」を放つ。放つと言っても数適水が落ちただけだけど。

 でも、これで泣いてるようには見えるな。


「のじゃロリ。いいか? 俺が言った通りにするんだぞ」


 俺があることを耳打ちすると、のじゃロリは顔を真っ赤にして恥ずかしがった。


「……そ、そんなことしてどうなるのじゃ。普通にお願いした方がいいじゃろ。妾は自分のプライドを守るためにこの街の冒険者に頭を下げられぬなどとは言わぬぞ」

「いいからいいから。同じくお願いするなら効果的な方がいいだろ?」

「そ、それはそうじゃが……本当にこんなことで効き目があるのかの?」

「あるっ! 俺ならもう間違いなく協力する!!」

「うむ……わかったのじゃ。ユウマの言うことを信じよう」


 言ったことを渋ったのじゃロリを強引に説得する。箱入り娘感が少しあって将来が少し心配だ。今度洋二さんに忠告しておこう。

 本気でそう考えていると、のじゃロリがみんなの方へ向き直る。


「お、お願いなのじゃ……。王都を救ってほしいのじゃ」


 のじゃロリが瞳を潤ませながら両手を前で組んでやや俯きながら言う。大人というのは子供の頼み事に弱い。その上、目が潤んでいて、こんな可愛らしいポーズでお願いでもされたら大抵の奴は堕ちる。


「お、おい、なんかあの子泣いてないか……?」

「そ、そうね。泣いてるわね。……大人げなかったわ」

「よーしっ! ちょっくら本腰でも入れてやるかーっ!!」


 効果はこの通り。上手いことこの場の冒険者たちの大半を味方につけた。

 全く、ちょろいもんだぜ。

 ……俺ももう少し本腰入れるかなー。


「んー、確かにああまで王都のお嬢様に言われると断り辛いな……。」

「でも、命がかかってるんだぜ?」


 しかし、これだけのじゃロリが頑張っても堕ちない奴らも数人存在した。その数人はみんな男で、行かないわけじゃないけど、乗り気ではない。みたいな中途半端なことを言っていた。

 今回の作戦はかなり無理をするのでそんな気持ちで来られては困る。ここはもう一つの方法も実行せねばなるまい。


「ルーシア、ちょいこっち」


 この場の冒険者やギルドのお姉さんたちが、のじゃロリに「大丈夫だからね」とか「俺たちに任せとけ」なんて励ましの言葉を投げかけている中、俺はこんな状況だというのに眠そうにしているルーシアに近づく耳打ちする。


「ルーシア、いいか? のじゃロリがあんなに頑張ったんだ。お姉ちゃんのルーシアも負けてられないだろ? だからさ―――」

「別に私はルリちゃんに負けててもいいんだよ~。王位だってルリちゃんに譲るつもりだし~。面倒ごとは真面目なルリちゃんのほうが~」

「いいからやりなさい。肝心な時に動けないニートは本当に救いようがないぞ」


 日本にいたころの俺みたいにな……。

 心の中でそんな言葉を付け足しつつも、俺はルーシアに耳打ちを再開する。少しくすぐったそうに声をあげるものだから、妙な気分になりそうで本当に怖かった。それでも何も考えずに最後までやり遂げた俺はきっと世界一の紳士だろう。


「わかったな?」

「ん~。意味はわからなかったけど~。やることはわかったよ~」


 そう言うとルーシアはのじゃロリの隣に立ち、俺が言った通りの行動をする。

 腕を前の下の方で組み、胸を強調するようにして少し前かがみになる。眠いからかそのまま前に転びそうになっていたが、どうにか踏みとどまったようで、「おっとっと」なんて言いながら持ちこたえた。

 ルーシアは崩れてしまった姿勢を正しなおし、改めて俺の教えた言葉を言う。


「ルーシアもおねが~い~。王都も守りたいの~」


 のじゃロリと違って演技もくそもなかったが、ルーシアの方は正直演技力は半ばどうでもいい。肝心なのはそのポーズだ。腕を前で組み、胸を強調させ、さらには前かがみ。こんなことをされて喜ばない俺はいない。現に俺は鼻にティッシュを詰め終わっている。あっ、赤い液体が垂れてきやがった!!


「おいお前ら! もうやるしかねえよな!」

「あたぼうよ!」

「ヴォルカノに比べれば楽勝だろ!」


 渋っていた数人の男どももまんまと俺の作戦に堕ちた。男は大抵エロをチラつかせれば言うことを聞くのだ。俺だって聞くもん。


「よしっ! それじゃあみんな参加ってことでオーケーだな」


「「「「「異議なーしっ!!」」」」


 その場にいる冒険者たちが満場一致ということで一斉に返事をする。

 今ここで、イニティの街の全ての冒険者たちの心が一つになった。


「で、でもよいのか? お主らは始まりの街の冒険者。言っては悪いが、ヤマタニオロチは王都の冒険者たちでも苦戦するような相手じゃ。お主たちだって死んでしまう可能性があるんじゃぞ」

「そうだよ~。嫌ならちゃんと断ってほしいよ~。死んじゃったら何にもならないんだし~」


 冒険者たちの心が一つになったところで、のじゃロリとルーシアが申し訳なくなったのか、そんなことを言い出した。その表情は本当に申し訳なさそうで顔もやや下を向いている。それほど申し訳ないと思っているのだろう。

 のほほんとしているルーシアでさえ、いつもより声の調子がへこんでるみたいだったし、言葉の最後が尻すぼみしていた。

 そんな二人の美少女たちの心配にイニティの街の冒険者たちはなんてことないように答える。


「「「「鬼畜王ユウマがいれば大丈夫だろ(でしょ)」」」」


 と。


「お前ら本当に大好きだよっ!!!」


 やけくそ気味にお礼を言う俺がいた。


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