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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第六章
145/192

32話

 

「それで、俺たちは何をすればいいんだ? ここに来たからには俺たちにも何かしてほしいってことなんだろ? 当てにされても困るけど、少しくらいなら手伝うぞ」


 どうせ手伝うことになるのはわかりきっている。そうじゃないにしたって似たようなことを言われるのは目に見えている。なら、準備に充てられる時間を増やした方がいいに決まっている。

 そんな感じに俺は諦め交じりにエイトとセツコさんに目線をやった。


「違うよユウマ。今回は協力を求めに来たんじゃないだ」

「そうなのか? じゃあなんだ? 避難誘導の手伝いか? それともいつもみたいに冒険者のリーダーが暴走しないようにお守りか? どっちにしろやらなきゃいけないんだし、やってやるぞ?」

「いいえ、それも違いますユウマ殿」

「ありゃ? そうなんです?」


 考えていた案が完全に否定されて俺は少し困惑する。住民の避難誘導でもなく、ヤマタニオロチの討伐に駆り出されるわけでもなく、冒険者のリーダーのお守りでもない。正直これ以外にやることなんて特にないと思うのだが……。


「もしかしてあれか? さすがに王都の方まで来てるんじゃあ騎士団も戦闘に出ざる負えないから城の警備、っていうか、のじゃロリとルーシアの警護をしてくれって話か?」


 残された可能性と言ったらもうこれくらいしかない。

 だが、それもどうやら違うらしく、エイトは重々しく首を振った。

 そして―――


「ユウマたちにはすぐにでもここから―――王都から出て行ってほしいんだ」


 そんなおかしなことを言い出した。


「は……?」


 今の俺はさぞかしバカ丸出しの顔をしていたと思う。呆気を取られていたといえば聞こえはいいが、本当にバカの様な顔をしていたことだろう。でも、その顔をバカする奴は今ここにはいなかった。

 アイリスも、ミカも、リリーナも、全員が全員俺と同じような顔をしていたのだ。


「ど、どういうことなんですか!? 確かに私たちは始まりの冒険者でこちらの冒険者に比べたら実力も経験も劣ります! でも、いつもみたいに後ろから支援くらいなら!」


 いつもは大声なんて出さないアイリスが食って掛かるようにエイトに大声で反論した。しかしエイトもセツコさんも驚くことなく、まるで決められた言葉を言っているだけの様に淡々と告げる。


「そういうことではないんですアイリス嬢。今回はもう撤退ができないんです。つまりは討伐できそうにないから一度退くことができないんです。冒険者たちと騎士団が撤退をすることはヤマタニオロチの王都への侵入を意味しますから」


 確かにエイトの言う通りだ。今回は撤退ができない。失敗したからまた今度ということはできないのだ。こんな異世界でもセーブもなければロードもない。失敗したからやり直し、なんてことはできないのだ。

 魔法があっても、スキルがあって、ご都合主義だけはこの世界にもないのだ。


「ですので、皆様にはできるだけ早くイニティに帰っていただいてほしいのです。今までの冒険者たちの戦績を鑑みるに、王都専属の騎士団がいても討伐は難しそうですし、ここも安全とは言い切れませんから……」

「そんなっ! 私たちにここを見捨てて逃げろって言うの!?」

「そうですリリーナ嬢」

「でも! 私たちなら少しは戦力になれるよ! 二人だって私の力とリリーナの魔法は見たでしょ! アイリスちゃんの支援魔法だってあるし、ユウマだって頭くらいは使えるんだよ!」

「おいこら! 頭くらいは使えるってなんだ! 頭以外も使えるよ! 少しだけな!!」


 自分で言っていて悲しくなるツッコミをミカにしつつ、俺は冷静になってからエイトたちに向き直る。


「面倒ごとに巻き込まれるのは正直ごめんだけど、俺だってせっかく知り合ったやつが死にに行くのを黙って見ていられるほど鬼畜ってわけじゃねえんだけど」

「わかってる。ユウマがなんだかんだ言いながら優しいのはこの一週間でよくわかっているつもりだよ。だから、お願いがあるんだ」

「お願い……?」

「はい。さっきユウマ殿はルリお嬢様とルーシア嬢様の敬語をするのかと問われましたよね? さきほどは首を横に振りましたが、あれは全部否定したのではないのです」

「というと」

「ユウマ殿たちがイニティ帰る際にお二人も一緒に連れて行っていただきたいのです」


 ……なるほど。

 そういうことか。そういうことが言いたいのか。


「なんで二人だけなの!? 他の人たちはいいの!? 王都の住民たちは!?」

「落ち着けミカ」

「落ち着いてられないよ! だってこんなのおかしいじゃん!」

「そうですよユウマさん! こんなのおかしいです!」

「ユウマの言う通りよ二人とも。落ち着きなさい」

「リリーナまで!」


 どうやらリリーナは今の状況の意味も、セツコさんが言ったことの意味もちゃんとわかっているらしかった。伊達に未来の天才大魔法使いを名乗ってはいないらしい。こういうところでだけはちゃんと頭が回る。


「ミカ、アイリス、いい? こういう非常事態には仕方のないことなのよ」

「仕方がないって、そんな言葉で片付けられることじゃあ!」

「ないのはわかってる。でも無理なもんは無理だ」

「そうだとしても、ルリちゃんとルーシアさんと私たちだけ逃げるなんておかしいですよ!」


 俺たちは当たり前だけど考え方が違う。俺とリリーナは基本的に現実的にものを考えるタイプで、ミカとアイリスは理想を追い求めるタイプだ。もっと簡単に言うなら俺とリリーナは頭で考えるタイプでミカとアイリスは心で考えるタイプだ。

 心で考えるからミカとアイリスは今こんなにも怒りを露わにしている。だからと言って俺もリリーナも何も思っていないわけじゃないけどな。


「ミカ嬢、アイリス嬢。お気持ちは嬉しいのですが、これは仕方のないことなのです」

「エイトの言う通りです。私たちはお二人の気持ちだけで戦えます」


 エイトとセツコさんの少し悲しそうな顔を見る。その顔を見てどうやって信頼をしろというんだろうか。逆に心配しかできないだろうが。


「でも!」

「いい加減にしろミカ」

「でもユウマ!」

「こういう時はこうするのが普通なんだよ。王家の強い血筋の絶たせないためにも王家の血を継ぐ女子供を逃がして王家の再建を計る。お前だってそういう話は知ってるだろ」

「知ってるよ! でも、それは物語の話でしょ! これはアニメやマンガじゃないんだよ!」

「アニメや漫画ってのは大抵なにか元になるもんがあるんだよ。それが今だって話だ」


 アニメや漫画にだって元になる話はある。完全なるオリジナルなんてものはどうやったって作れない。どこかにほんのちょっとでも今までに出てきた言葉や現象が存在する。

 今みたいな現状だってアニメや漫画になる前に現実であったはずの話なのだ。この世界じゃなくて、元の世界でも。


「でも……でもさ……」

「ミカさん……」


 俺の言葉にミカが意気消沈する。そんなミカをアイリスが心配してみていた。


「話を脱線させて悪かったな。それで、いつまでにここから帰ればいいんだ?」

「うん。ヤマタニオロチが予想では明日のお昼頃に王都前の草原に現れるって話だから少なくとも明日のお昼前までだね。今すぐにって言いたいけど、お嬢様たちにも準備があるから最低でも今日のお昼までは待ってほしい」

「わかった。こっちはいつでも帰れる準備をしておくよ」

「ありがとうございますユウマ殿」

「お礼を言われるようなことはしてないですよ」


 本当にな……。


「それじゃあ悪いけど失礼するよ。僕達もこれから冒険者たちと一緒に対策会議があるんだ。もうそろそろ行かなくちゃいけない」

「そうか。忙しいところ悪かったな」

「こっちこそ、せっかく来てもらったのにこんなことに巻き込んじゃって悪かったね」


 そう言ってエイトとセツコさんは軽く会釈をすると、急ぎ足で部屋から出て行った。




 あれからミカとアイリスをリリーナを一緒に説得していると、あっという間にお昼になっていた。みんなでお昼ご飯でも食べようかと思ったのだが、ミカとアイリスは食欲がないというので、俺とリリーナだけで簡単な食事を作りに行く。


「あの二人は優しいから今回の話はきつかったんでしょうね。私も正直怒鳴ってやりたかったわ」

「そうだな。でも、最後に自分も怒鳴りたかったって言って、あんに俺だけ優しくない扱いすんのやめろや」

「だってそうじゃない。イニティでの自分の呼ばれ方も忘れたの?」


 可愛い顔して真顔で言うんだから美少女ってやつは汚い。


「しばらくは立ち直れないだろうよ。エイトたちの様子を見るに討伐も難しそうだしな」


 討伐が簡単ならエイトたちがわざわざあんなことを言いに来るはずがない。イニティに帰るように言っても、のじゃロリとルーシアも一緒になんて言わなかったはずだ。

 つまりは、事態はそれほど急を要していて、絶望的だということだ。


「ねぇ、ユウマ。いつもの悪知恵でどうにかならないわけ?」

「悪知恵言うな。……正直辛いな。可能性が全くないわけじゃないけど、俺の指示を聞いてくれるやつがいないし、いたとしても確実性には欠ける」

「そう……」


 短い返事を返してきたリリーナはそれきり口を開かなかった。

 いつもはうるさいくせにこんな時ばっかり静かになんなよ。いやでも考えちゃうだろうが。


「おっ? のじゃロリ、ルーシア。準備は終わったのか?」


 キッチンに向かう途中、リリーナと気まずい雰囲気になりながら歩いていると、のじゃロリとルーシアの姿が見えたので、努めていつも通りに振る舞いながら呼び止める。


「あぁ……ユウマか」

「ユウマ~」


 ルーシアの方はいつも通り間延びした返事を返してくれたが、のじゃロリの方は目に見えて落ち込んでいた。まあ、無理もないか。自分の国を捨てて逃げろって言われてんだから。


「準備はもう終わったのじゃ。お主らがいいのならいつでも出発できるぞ」

「私もだよ~ん」

「そうか? 親父さん……セントラル王に挨拶はしたのか?」


 考えたくはないが、もしかしたらもう会えなくなるのかもしれないのだ。ちゃんと挨拶くらいは済ませた方がいいに決まっている。


「話そうとはしたのじゃが、父上も忙しいらしくての……。話す時間が取れないみたいなのじゃ……」

「そ、そうか……残念だったな」


 我ながらなんて気のない返答なのかと自分をぶん殴りたくなる。

 そんな気分をどうにかしたくて俺はリリーナのスカートを勢いよくめくった。


「黒か……なんかエロいな」

「なんかエロいな、じゃないわよ変態!!」

「ハイザック!!」


 素敵なトレジャーを眺めて気持ちを整えていたらリリーナに頭を殴られた。

 なにすんだおい!


「ははっ……お主たちはこんな時でも楽しそうじゃの」


 だが、俺のこんなバカな行為もそんなに無駄なことでもなかったらしい。小さな女の子を少しだけだけど、笑わせられるくらいには、役に立てたようだ。


「もう、やり残したことはないのか?」

「ないと言えば嘘になるの。まだまだやりたいことがたくさんじゃ……。でも、それをやっている時間は残ってはおらんじゃろ」

「ルーシアは?」

「私もだよ~。もうできることなんて全然ないよ~」


 対照的な返答の仕方をする二人に視線をやってからリリーナに視線をやる。

 あ、まだ少し怒ってるな。


「おい、リリーナ、どうするよ? お昼取るのは向こうに帰ってからにするか?」

「別に食べて行ってもいいんじゃないの? この子だって少しでも長くここに居たいでしょうし」


 そう言ってリリーナがのじゃロリをみやった。

 案外優しいところもあんだよなー。お姉さんぽいって言うか上に立つ者の品格みたいなのが。


「そうかもしんないけど、居ればいるだけ離れづらくなるもんだろ? ならさっさと行った方がいいんじゃないかって思ってな。ミカとアイリスも似たようなもんだし」

「確かに言われてみるとそうかもしれないわね……。そうね、この子とミカとアイリスがいいって言うならいいんじゃないかしら」

「そうか、じゃあ早速聞きにに戻るか」


 それから俺たちは四人並んで俺が借りている部屋まで戻った。



 結局あれから、暗い顔をしたままのミカとアイリスを少し強引気味に説得して、六人で専属魔法騎士団の人にテレポートを使ってイニティまで送ってもらった。

 約一週間しか離れていないはずのイニティの街並みが妙に懐かしい。


「それでは私は失礼します。……どうか、お嬢様方をよろしくお願いします」

「はい、わかりました」


 ここまで送ってくれた女の人にお礼を言って最後の別れを済ませる。女の人は俺の言葉に謝罪を返すと、そうそうにテレポートで帰って行った。


「わかってると思うけど、ここが始まりの街のイニティだ。王都の城ほどデカくはないけど、俺たちが所有してる屋敷があるから寝泊りに関しては安心してな」

「そうなのか、それは助かるの」

「ユウマお屋敷持ってるんだ~。冒険者なのにすごいね~」


 少しは元気になったらしいのじゃロリとやっぱり全然変わらないルーシアが返事を返してくる。


「それじゃあ案内するからついてきてくれ」


 よ。と、言葉をつなげようとして、俺は周りの人たちの視線に気が付いた。


「おい。ユウマ……。お前王都まで言って女の子誘拐してきたのか?」

「いつかはやるって信じてたけど、まさかこんなに早いとは……」

「お母さん! あれ、誘拐っていうんだよね?」

「見ちゃいけません!! あなたも誘拐されちゃいますよ!!」


 あぁ、帰ってきたって実感したわ。


「うっせーぞお前ら! なんで俺が女の子引き連れて帰ってきただけで誘拐を疑われなきゃなんねーんだよ! おかしいだろ!!」


 俺は断固として誘拐じゃないと主張しようと怒鳴り散らす。


「でも、今までの行動を見たらね……」

「子供好き、それも小さな女の子が特に好きなんて噂もあるし……」

「仕方ないよな?」


 どいつもこいつも好き勝手言いやがって。


「とにかくこれは誘拐じゃないからな! もし誘拐だったらこいつらが何かしてるだろ」


 俺はそう言って仲間たちを指さす。

 さすがにここまで言えば納得したのか、周りの連中はまだ半信半疑ながらも頷き始めた。


「そりゃあそうか。鬼畜なのはユウマだけだもんな」

「だよねー、私はユウマを信じてたよ」

「全くだ。だから言ったろ、ユウマはそんな奴じゃないって」


 こいつらの手はドリルか何かでできてんじゃないかと思うくらいの手の平返しっぷりだった。顔は覚えたかんな。後で覚えてろよコノヤロー。


「ったく、帰って来て早々なんだよこれ。しまいにゃ泣くぞ」


 数分後。

 屋敷に帰ってきた俺たちに来客があった。その来客とは憲兵でなにやら俺が王都から女の子を誘拐してきたと匿名の通報があったとかでやってきた。

 あいつら、絶対に許さない!!


 ちなみに後で問い詰めたところ、そいつらの言い分はこうだった。


 ユウマなら仲間すらも脅しかねない。


 そんなに俺って鬼畜野郎に見えますかね!!

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